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エピソード」(2016/05/28 (土) 21:49:32) の最新版変更点

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~あらすじ~ 第一回流血におけるハルマゲドン勃発の真相を探る中で、探偵部により地下の祭壇が発見された。 「真実の追求こそが、ハルマゲドンを防ぎ、将来のリスクを回避することになる派」(探偵部陣営)と、「地下の祭壇を閉鎖し、真相を闇に葬ることが、学園を守ることになる派」(風紀委員会陣営)に対立してしまった。 お互いに議論を交わしている間にも――。 流血少女-Diabolic Flowers- エピソード『月華の死神』 (1)狂月 ある日の放課後、風紀委員&ruby(きりつまもる){鬼立守}が学内の見回りをしていると、 「……っ、開いている!?ここは閉鎖して誰も入ることは出来ないはず。まさか、また探偵部の連中が――」 もし連中によるものならば、いや誰の仕業であろうと風紀委員として見逃すわけにはいかない。ようやく学園が落ち着きを取り戻してきたところだというのに、祭壇のことが明るみになってしまえば学園に新たな混乱を招いてしまうだろう。真実の追求が必ずしも良い結果に繋がるとは限らない。今、余計な事をされては困るのだ。 地下へと続く回廊。季節は7月だというのに中は肌寒さを感じるほどで、まるで外の世界とは切り離された空間なのではないかと考えさせられてしまう。あまり長居はしたくない、と思う。 自分の足音を除いて物音ひとつ聞こえないが、決して周囲への警戒は緩めることはない。 慎重に歩を進めていくと、広い空間が見えてきた。 「いつ見ても異様な光景ね――。」 そこは敷き詰められるように十字架が並び立っていた。 さらに、その奥に設置されているもの。例の祭壇である。 と、祭壇近くに座り込んでいるのは人だろうか。 「ちょっと、そこの貴女。ここは立ち入り禁止区域よ。今すぐにこちらに来なさい。」 反応はない。 聞いているの?と守は思った。 「どうやって開けて入ったのかは知らないけど、これは風紀を乱す行為よ。わかっているの!」 何度呼びかけようと、向こうからの反応はない。 まったく!ピクリともしないとはどういうことか。 「わかりました。そちらがそのような態度をとるのなら、こちらにも考えがあります。」 無視をするとはいい度胸だ。少しは痛い目に合わなければ分からないタイプなのだろうか。 歩を進め人影に近づいていくと、 「貴女は――!&ruby(なぞときすいり){亡添説推理}!?」 亡添説推理、彼女は探偵部の部員である。真実を明らかにしようという気持ちが人一倍強く、そのため祭壇を閉鎖して真実を闇へと葬ろうとしている風紀委員会とは最も意見が対立している一人であった。 「貴女、まだこんなことをやって!さぁ、立ちなさい。」 守が推理の腕を持って立ち上がらせようとした時、 つ、冷たい!?驚いて手を放してしまった反動で推理の身体はぐらりと傾き、そのまま倒れた。 「し、死んでいる――」 呼びかけに応じないのは当たり前のことであった。彼女は物言わぬ肉塊へと成り果てていたのだから。 何故、推理は死んでいたのか。誰かに殺害された?しかし、ここへの出入りは禁止されている。では、自殺?いや、推理は生前から自殺そのものを嫌っていた。(しかしながら、それは犯人が自殺という結末で終えてしまう事件は探偵として興ざめするからという、おおよそ凡人には理解に苦しむ理由からであったが。) 「と、とにかくまずは委員会に連絡しなければ。」 携帯を取り出そうとした、その時――! 「……っ!?」 ガンッ……という衝撃が頭を襲い、守は倒れた。不意の一撃だったため防御が間に合わなかった。魔人とはいえ、ダメージが大きいのか視界が揺れる。 だ、誰っ――。痛む頭を押さえ何とか起き上がろうとしたが、 「っつぅぅ……ガッ!アガッ!」 立て続けに衝撃が襲い掛かる。ガンガンッとまるでハンマーにでも殴られているような。 止むことのない殴打の嵐は、守の意識を徐々に奪っていく。 一体――。守の意識が途切れる寸前、視界が捉えたもの。 それはハンマーだと思っていた血塗れの拳と、 「お、お前、はッ――」 ※※※※ 「フ、フフフ、フフフフフ……。」 眼下に息絶えた守を見下ろしながら襲撃者、霜月サビーネ(以下、サビーネ)は恍惚な表情を浮かべながらひとり嗤っていた。 いつもの快活さからは信じられない、底冷えするような声色を伴わせて――。 (2)謀月 「なかなか興味深いな。」 妃芽薗学園で発見された謎の祭壇。『暦』部員(表向きは『カランドリエ』部員だが)、サビーネによって齎されたそれは、卯月言語(以下、言語)の好奇心を刺激するには十分なものであった。 サビーネによれば、祭壇には大量の血痕がこびりついていたようだが、かなり前の時代と思われるものもあれば比較的新しいものも付着していたという。 普通に考えれば、祭壇は何らかの儀式のために用いられるものであろう。 一体何の儀式なのだろうか?とそこへ、 「今、良いかしら?」 「すでに部屋に入っておいて、良いも悪いもないだろう。それで何か見つかったのか、咲夢?」 「これ、ちょっと見てみて。」 咲夢から手渡された資料に目を通すと、 「雛代中学?……っ、あの雛代か!」 46年前に閉校されてしまった雛代中学。閉校直前、学校はハルマゲドンの真っ只中にあったという。 当時、事態を収束させるべく学校サイドが冥界より呼び出したのが鮫氷しゃちであったのだが、その時に用いられたというのが、 「例の祭壇――、というわけか。」 「ええ。雛代中学が建っていた場所に、妃芽薗学園が建っているということは――」 「かつて使用された祭壇と今回学園で発見された祭壇は恐らく同じものだろうな。先のハルマゲドンによって生徒会、番長グループ双方ともに疲弊している上に、探偵部と風紀委員会も冷戦状態。――実に好ましくはないな。」 咲夢から冷たい視線が刺さる。 長年行動を共にしているせいか、言わずとも何を言いたいのか大体わかるが。 「今の学園の状態で、鮫氷しゃちを召喚しても皆殺しにされてしまうだけだろう。それでは、面白くない。対抗するための意志を引き出すには、強い生存本能を持たせることが必要不可欠だ。そこで、ハルマゲドンが役に立つ。」 やっぱり、また余計な事を――。咲夢はそんな顔をこちらに向けてきた。 「でも、生徒会も番長グループも満足に争える状態ではないのでしょう?流石に今回は無理があると思うのだけど。」 「確かにその両陣営では無理がある。が、別のグループどうしを争わせるのはどうだ?」 「――探偵部と風紀委員会、ということね。」 「そういうことだ。ちょうど、サビーネから手元の死体はそれぞれの陣営に属していたものという確認もとれた。これを利用しない手はない。」 一呼吸置き、顔を上げる。 「咲夢。頼みたいことがある。」 「面倒なのは嫌よ。」 「まぁ、そう言うなよ。俺自身が出向いていきたいところだが、ご覧のとおり今は人工魔人の研究で手が離せないのだ。それに妃芽薗は男子禁制だろ。頼めるのがお前しかいないのだよ。」 暫し両者口を閉ざしていたが――、 「はぁ~。仕方ないわね。やっても良いけど、きちんと動けるように場は整えておいてよ。」 「それは任せておけ。学園には俺からコンタクトをとっておく。任せたぞ。」 (3)咲月 微かだが足音が聞こえる。と言っても常人には全く聞こえはしないだろう。 暗部として日陰に生きてきた者だからこそ聞き取れる程度の音。 相当な手練れがやってきたことに身を震わせながら、サビーネは祭壇の前から姿を消した。 ※※※※ 気配を殺し、物陰に隠れながら辺りを伺う。 足音の主は、ゆっくりとだが祭壇へと近づいているようだ。 三歩、二歩、一歩――、祭壇の目の前で足音が止んだ。 誰かを待っているのだろうか、そこからじっと動かない。 ここで殺りに行くべきか?いやいや、まだ早い。スキを晒すまでは、じっと我慢しなければ。 死体に目線が逸れる一瞬さえあれば良いのだ。 殺りたい我慢殺りたい我慢殺りたい殺りたい我慢殺りたい殺りたい殺りたい殺りたい――。 早く、早くまたあの感触を味わいたいッ! と、ここで遂に視線が動いた。 スキを、さ・ら・し・た! この程度の距離であれば、こちらに気付くまえに確実に殺れる。 サビーネは考える。 さっきの子は撲殺しちゃったから、今度はぁぁぁ―― 斬・殺にし~よぉ!サビーネの目が狂気に染まる。 さらば、名も知らぬ肉の塊!そして、こんにちは私のお人形! 手にした鉈が相手の首を切り裂こうとしたその時……! か、躱された、だとぅぅぅぅ!?サビーネの表情が驚愕に変わる。 さらに―― 「……っ!」 不意打ちに失敗したと思ったのと同時に激痛が生じた。 あぁ、憐れッ!サビーネの両腕はあらぬ方向へと捻じ曲げられていた。 「ムッ、ムッギィィィィィ!!!!!」 強烈な痛みと激しい怒りで謎の雄叫びをあげるサビーネ。 許さん許さん許さーんッ!誰かは知らねぇが屈辱!――涙と鼻水で顔をグショグショにさせ、惨めな命乞いを強要してから、惨殺してやるぅぅぅぅ!とサビーネが殺意を高まらせているその時、 「サビーネ、ちょっと飢えすぎ」 背後から聞き覚えのある声がぽつりと呟いた。 「……ふ、副部長補佐!?なぜ、ここに!?」 サビーネが襲った相手、それは『暦』副部長補佐、皐月咲夢であった。 「言語から連絡があったはずだけど。」 「――気付き、ません、でした。すみま、せん。」 「次は気をつけてよ。それじゃ、言語からの伝言ね。 サビーネは、『カランドリエ』で欠員となっているメンバーの代わりとなれる者を探してくるように。期限については特になし。リュドミラには既に指示してあるとのことよ。 それと、これは事後報告の形になってしまったけれど、貴女の能力と私の能力を一時的に共有させてもらうことになったの。この間、貴女も私の持つ“探索”の能力を使用することが出来るわ。試しに一度発動させてみたら?」 言われた通り使ってみようとして、なるほど。 これが“探索”の能力――。学園内に残っている人物がどこにいるのか把握することが出来る。 どうやら副部長補佐の言っていることは本当のようだ。 「サビーネ、貴女はもう部に戻って良いわよ。あとは、私の仕事だしね。」 咲夢から退出を促されたサビーネは暫し下を向いた後―― 「ぽよよーい☆了解ッしちゃいました~、副部長補佐殿!! 現在進行形で不肖テレテレ、霜月さんは任務に直行するでありまするぅ~♪」 そう言うと、ハイテンションモードになったサビーネはあっという間に駆けていってしまった。 「いつも思うのだけど、切り替えが極端なのよね。 さてと、時間も無いしこちらも始めますか。 言語からの連絡だと、数年前に殺害された蓮柄まどかという生徒もこの祭壇によって復活させることが出来るという話しだったけれども、実際のところはどうなのかしらねぇ。」 一人ごちてみたが、知らないことを考えてみても答えが出てくるはずもない。 ならば、さっさと行動に移してしまった方が良いというものだろう。 そう結論づけた咲夢は、亡添説推理と鬼立守、両者の亡骸を祭壇へと投げ入れるのであった――。 流血少女-Diabolic Flowers- エピソード『月華の死神』 ~完~ ----
#center(){&color(orange){&size(25){流血少女-Diabolic Flowers- エピソード『月華の死神』}}} ~あらすじ~ 第一回流血におけるハルマゲドン勃発の真相を探る中で、探偵部により地下の祭壇が発見された。 「真実の追求こそが、ハルマゲドンを防ぎ、将来のリスクを回避することになる派」(探偵部陣営)と、「地下の祭壇を閉鎖し、真相を闇に葬ることが、学園を守ることになる派」(風紀委員会陣営)に対立してしまった。 お互いに議論を交わしている間にも――。 流血少女-Diabolic Flowers- エピソード『月華の死神』 (1)狂月 ある日の放課後、風紀委員&ruby(きりつまもる){鬼立守}が学内の見回りをしていると、 「……っ、開いている!?ここは閉鎖して誰も入ることは出来ないはず。まさか、また探偵部の連中が――」 もし連中によるものならば、いや誰の仕業であろうと風紀委員として見逃すわけにはいかない。ようやく学園が落ち着きを取り戻してきたところだというのに、祭壇のことが明るみになってしまえば学園に新たな混乱を招いてしまうだろう。真実の追求が必ずしも良い結果に繋がるとは限らない。今、余計な事をされては困るのだ。 地下へと続く回廊。季節は7月だというのに中は肌寒さを感じるほどで、まるで外の世界とは切り離された空間なのではないかと考えさせられてしまう。あまり長居はしたくない、と思う。 自分の足音を除いて物音ひとつ聞こえないが、決して周囲への警戒は緩めることはない。 慎重に歩を進めていくと、広い空間が見えてきた。 「いつ見ても異様な光景ね――。」 そこは敷き詰められるように十字架が並び立っていた。 さらに、その奥に設置されているもの。例の祭壇である。 と、祭壇近くに座り込んでいるのは人だろうか。 「ちょっと、そこの貴女。ここは立ち入り禁止区域よ。今すぐにこちらに来なさい。」 反応はない。 聞いているの?と守は思った。 「どうやって開けて入ったのかは知らないけど、これは風紀を乱す行為よ。わかっているの!」 何度呼びかけようと、向こうからの反応はない。 まったく!ピクリともしないとはどういうことか。 「わかりました。そちらがそのような態度をとるのなら、こちらにも考えがあります。」 無視をするとはいい度胸だ。少しは痛い目に合わなければ分からないタイプなのだろうか。 歩を進め人影に近づいていくと、 「貴女は――!&ruby(なぞときすいり){亡添説推理}!?」 亡添説推理、彼女は探偵部の部員である。真実を明らかにしようという気持ちが人一倍強く、そのため祭壇を閉鎖して真実を闇へと葬ろうとしている風紀委員会とは最も意見が対立している一人であった。 「貴女、まだこんなことをやって!さぁ、立ちなさい。」 守が推理の腕を持って立ち上がらせようとした時、 つ、冷たい!?驚いて手を放してしまった反動で推理の身体はぐらりと傾き、そのまま倒れた。 「し、死んでいる――」 呼びかけに応じないのは当たり前のことであった。彼女は物言わぬ肉塊へと成り果てていたのだから。 何故、推理は死んでいたのか。誰かに殺害された?しかし、ここへの出入りは禁止されている。では、自殺?いや、推理は生前から自殺そのものを嫌っていた。(しかしながら、それは犯人が自殺という結末で終えてしまう事件は探偵として興ざめするからという、おおよそ凡人には理解に苦しむ理由からであったが。) 「と、とにかくまずは委員会に連絡しなければ。」 携帯を取り出そうとした、その時――! 「……っ!?」 ガンッ……という衝撃が頭を襲い、守は倒れた。不意の一撃だったため防御が間に合わなかった。魔人とはいえ、ダメージが大きいのか視界が揺れる。 だ、誰っ――。痛む頭を押さえ何とか起き上がろうとしたが、 「っつぅぅ……ガッ!アガッ!」 立て続けに衝撃が襲い掛かる。ガンガンッとまるでハンマーにでも殴られているような。 止むことのない殴打の嵐は、守の意識を徐々に奪っていく。 一体――。守の意識が途切れる寸前、視界が捉えたもの。 それはハンマーだと思っていた血塗れの拳と、 「お、お前、はッ――」 ※※※※ 「フ、フフフ、フフフフフ……。」 眼下に息絶えた守を見下ろしながら襲撃者、霜月サビーネ(以下、サビーネ)は恍惚な表情を浮かべながらひとり嗤っていた。 いつもの快活さからは信じられない、底冷えするような声色を伴わせて――。 (2)謀月 「なかなか興味深いな。」 妃芽薗学園で発見された謎の祭壇。『暦』部員(表向きは『カランドリエ』部員だが)、サビーネによって齎されたそれは、卯月言語(以下、言語)の好奇心を刺激するには十分なものであった。 サビーネによれば、祭壇には大量の血痕がこびりついていたようだが、かなり前の時代と思われるものもあれば比較的新しいものも付着していたという。 普通に考えれば、祭壇は何らかの儀式のために用いられるものであろう。 一体何の儀式なのだろうか?とそこへ、 「今、良いかしら?」 「すでに部屋に入っておいて、良いも悪いもないだろう。それで何か見つかったのか、咲夢?」 「これ、ちょっと見てみて。」 咲夢から手渡された資料に目を通すと、 「雛代中学?……っ、あの雛代か!」 46年前に閉校されてしまった雛代中学。閉校直前、学校はハルマゲドンの真っ只中にあったという。 当時、事態を収束させるべく学校サイドが冥界より呼び出したのが鮫氷しゃちであったのだが、その時に用いられたというのが、 「例の祭壇――、というわけか。」 「ええ。雛代中学が建っていた場所に、妃芽薗学園が建っているということは――」 「かつて使用された祭壇と今回学園で発見された祭壇は恐らく同じものだろうな。先のハルマゲドンによって生徒会、番長グループ双方ともに疲弊している上に、探偵部と風紀委員会も冷戦状態。――実に好ましくはないな。」 咲夢から冷たい視線が刺さる。 長年行動を共にしているせいか、言わずとも何を言いたいのか大体わかるが。 「今の学園の状態で、鮫氷しゃちを召喚しても皆殺しにされてしまうだけだろう。それでは、面白くない。対抗するための意志を引き出すには、強い生存本能を持たせることが必要不可欠だ。そこで、ハルマゲドンが役に立つ。」 やっぱり、また余計な事を――。咲夢はそんな顔をこちらに向けてきた。 「でも、生徒会も番長グループも満足に争える状態ではないのでしょう?流石に今回は無理があると思うのだけど。」 「確かにその両陣営では無理がある。が、別のグループどうしを争わせるのはどうだ?」 「――探偵部と風紀委員会、ということね。」 「そういうことだ。ちょうど、サビーネから手元の死体はそれぞれの陣営に属していたものという確認もとれた。これを利用しない手はない。」 一呼吸置き、顔を上げる。 「咲夢。頼みたいことがある。」 「面倒なのは嫌よ。」 「まぁ、そう言うなよ。俺自身が出向いていきたいところだが、ご覧のとおり今は人工魔人の研究で手が離せないのだ。それに妃芽薗は男子禁制だろ。頼めるのがお前しかいないのだよ。」 暫し両者口を閉ざしていたが――、 「はぁ~。仕方ないわね。やっても良いけど、きちんと動けるように場は整えておいてよ。」 「それは任せておけ。学園には俺からコンタクトをとっておく。任せたぞ。」 (3)咲月 微かだが足音が聞こえる。と言っても常人には全く聞こえはしないだろう。 暗部として日陰に生きてきた者だからこそ聞き取れる程度の音。 相当な手練れがやってきたことに身を震わせながら、サビーネは祭壇の前から姿を消した。 ※※※※ 気配を殺し、物陰に隠れながら辺りを伺う。 足音の主は、ゆっくりとだが祭壇へと近づいているようだ。 三歩、二歩、一歩――、祭壇の目の前で足音が止んだ。 誰かを待っているのだろうか、そこからじっと動かない。 ここで殺りに行くべきか?いやいや、まだ早い。スキを晒すまでは、じっと我慢しなければ。 死体に目線が逸れる一瞬さえあれば良いのだ。 殺りたい我慢殺りたい我慢殺りたい殺りたい我慢殺りたい殺りたい殺りたい殺りたい――。 早く、早くまたあの感触を味わいたいッ! と、ここで遂に視線が動いた。 スキを、さ・ら・し・た! この程度の距離であれば、こちらに気付くまえに確実に殺れる。 サビーネは考える。 さっきの子は撲殺しちゃったから、今度はぁぁぁ―― 斬・殺にし~よぉ!サビーネの目が狂気に染まる。 さらば、名も知らぬ肉の塊!そして、こんにちは私のお人形! 手にした鉈が相手の首を切り裂こうとしたその時……! か、躱された、だとぅぅぅぅ!?サビーネの表情が驚愕に変わる。 さらに―― 「……っ!」 不意打ちに失敗したと思ったのと同時に激痛が生じた。 あぁ、憐れッ!サビーネの両腕はあらぬ方向へと捻じ曲げられていた。 「ムッ、ムッギィィィィィ!!!!!」 強烈な痛みと激しい怒りで謎の雄叫びをあげるサビーネ。 許さん許さん許さーんッ!誰かは知らねぇが屈辱!――涙と鼻水で顔をグショグショにさせ、惨めな命乞いを強要してから、惨殺してやるぅぅぅぅ!とサビーネが殺意を高まらせているその時、 「サビーネ、ちょっと飢えすぎ」 背後から聞き覚えのある声がぽつりと呟いた。 「……ふ、副部長補佐!?なぜ、ここに!?」 サビーネが襲った相手、それは『暦』副部長補佐、皐月咲夢であった。 「言語から連絡があったはずだけど。」 「――気付き、ません、でした。すみま、せん。」 「次は気をつけてよ。それじゃ、言語からの伝言ね。 サビーネは、『カランドリエ』で欠員となっているメンバーの代わりとなれる者を探してくるように。期限については特になし。リュドミラには既に指示してあるとのことよ。 それと、これは事後報告の形になってしまったけれど、貴女の能力と私の能力を一時的に共有させてもらうことになったの。この間、貴女も私の持つ“探索”の能力を使用することが出来るわ。試しに一度発動させてみたら?」 言われた通り使ってみようとして、なるほど。 これが“探索”の能力――。学園内に残っている人物がどこにいるのか把握することが出来る。 どうやら副部長補佐の言っていることは本当のようだ。 「サビーネ、貴女はもう部に戻って良いわよ。あとは、私の仕事だしね。」 咲夢から退出を促されたサビーネは暫し下を向いた後―― 「ぽよよーい☆了解ッしちゃいました~、副部長補佐殿!! 現在進行形で不肖テレテレ、霜月さんは任務に直行するでありまするぅ~♪」 そう言うと、ハイテンションモードになったサビーネはあっという間に駆けていってしまった。 「いつも思うのだけど、切り替えが極端なのよね。 さてと、時間も無いしこちらも始めますか。 言語からの連絡だと、数年前に殺害された蓮柄まどかという生徒もこの祭壇によって復活させることが出来るという話しだったけれども、実際のところはどうなのかしらねぇ。」 一人ごちてみたが、知らないことを考えてみても答えが出てくるはずもない。 ならば、さっさと行動に移してしまった方が良いというものだろう。 そう結論づけた咲夢は、亡添説推理と鬼立守、両者の亡骸を祭壇へと投げ入れるのであった――。 流血少女-Diabolic Flowers- エピソード『月華の死神』 ~完~ ----

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