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  序文

 これから、人が初めて宇宙を航海した時をのことを話そう。
 時は今より六十年ほど昔、第一次世界大戦直後。現在のように完全な紋章重力機関もなく、
月の正体さえ定かではなかった頃だ。
 舞台は鉄の街、機甲都市―伯林。
 そこに、無謀と言われつつも宇宙へ行こうとする者達がいた。
 話の主人公は彼らである。
 ……さあ、心の準備はいいだろうか?
 それでは、話を始めよう
パンツァーポリス1935,P13

  末文

 こうして、人は宇宙へと、初めの一歩を踏み出したのである。
 この話を事実と受け取らない諸氏もいるだろう。確かに、もはや存命でない人間が
多々登場するし、調査の行きとどかないところも多かった。だが、これは事実である。
 なぜなら、私の幼い頃、冒険家としてならした祖父が、
事あるごとにこの話を聞かせてくれたのだ。
「彼らがいなければ、私も、こんな満足した生活をしていないよ」
 と、彼はよく言っていた。
 その祖父とは、この話に出てくる一人の軍人のことなのである。
今はもう故人だが、彼の生き方は私に多くの影響を与えた。
 いずれ、別の機会で、また彼のことを語るときが来るだろう。
 では、今は銀河を飛び出せるほどになった地球文明と、時代を切り開いた
全ての人に幸あることを願い、ペンを置くことにする。

1996・12・25 午後四時五分、人が二度、初めて宇宙へ出た時に。
ミハイル・シュリアー
パンツァーポリス1935,P296

末文

 一九三八年四月。
 独逸は大独逸帝国宣言を行い、今後は他国の干渉無しに国の発展を行うことを誓う。
 この際に機甲都市化計画もその内容が明かされ、
国民の中に純血主義が広く行き渡ることとなる。
が、この計画は何の象徴もなく、学校など公共機関によってその詳細が
広く知らされていくこととなった。
 なお、G機関の姿は表に出ることなく、全ては政府の国家事業として進み行く。
 人と鉄と、時さえも結ぶ答えは、こうして始まった。 

2000・1・10 かつて一人の少女が泣いた夜に。
ミハイル・シュリアー
機甲都市 伯林,P334

末文
 一九三九年九月一日。
 遂に独逸の政軍はポーランドへ進行。
 第二次世界大戦が始まることとなる。
 反独隊の牽制は結果として政府中枢にわずかな動揺を与えたものの、既に時の流れは
とどまることなく、機甲都市化計画は急速に果たされていった。
 なお、G機関第八基。地の破壊劇は独逸政軍には予備基地での実験中の事故として扱われ、
反独隊、G機関それぞれの名は一般に知らされることがなかった。
 G機関のガルド級構成戦艦一番艦の再建造は四〇年後期には終了。“祖国”の働きも
加わった上で、独逸は一歩で遅れの形を取りながらも、G機関による国防の力を固め、
欧州制覇に向け進軍する。鋼と人の連携による電撃戦をもって。
 人と機械が、戦場で結ばれる時代が始まったのだ。

2000・7・30 一人の少女が一つの言葉を堪えた午後に。
ミハイル・シュリアー
機甲都市 伯林2,P350

末文
 戦局が幾多の転回を見せる中、連合軍は反独隊が三九年のガルド級構成一番艦破壊の折に
入手した“祖国”の情報から“トリスタン”として地脈逆流の対加圧施設を研究、
四三年初頭から実験に入った。
 機械の援護には機械で対抗する、そういう思考である。
 しかし、戦場を機械が駆け抜け支配するのとは逆に、終わりの見えない戦局に人々は苛立ち、
悪夢を見続け、世界は不安にとらわれつつあった。
 戦争はもはや世界的に新しい局面を迎えていたのだ。
 人と機械ではどちらが過ちを止められるのか。
 三八年の大独逸帝国宣言と同時に始まり、四三年に潰えた機甲都市化計画は、その答えを知っている。

2001・5・31 一人の少女が歩き出した朝に
ミハイル・シュリアー
機甲都市 伯林3,P350

末文
 一九四三年七月。連合軍によるハンブルグ空爆は市街の約七割を崩壊させたが、
初期段階におきた指揮系統の喪失から焼夷弾による
炎熱効果実験を完了することはできなかった。
 連合軍は独逸に王手をかけた証明として同年八月二十三日に“新伯林”へ向けて中規模空爆
を敢行することを決定した。この作戦のために連合軍は世界中にある不安の遺伝詞を奪取した
“祖国”から地脈に逆流させ、八月二十三日にその逆流加圧のピークが来るように調整。
更に連合軍は新開発のACBSを“新伯林”の“天蓋”破壊に発艦する予定であったが、
独逸側資本の多い反独隊との交渉の末、
「反独隊がACBS発艦より早く“天蓋”を止めたならば、ACBSの発艦を中止する」
 ことを了承した。
 対するG機関は大将ハイリガーの命令によって、長である
レーヴェンツァーン・ネイロルが“トリスタン”内部の部品とされたこととなっている。
 さあ、人と機械ではどちらが過ちを止めることができるのか。
 その答えは機甲都市化された伯林、“新伯林”にある。

2001・7・25 一人の少女が決断した朝に
ミハイル・シュリアー
機甲都市 伯林4,P350

末文

 かくしてこの夜の出来事はその大規模性にもかかわらず、連合軍の隠匿性とG機関や
反独隊の黙秘性もあり、そのほとんどが公表されぬ逸史となっている。
だが、各国の予言者たちは、
この夜を過ぎた後に未来の歴史遺伝詞を再び読めるようになったことを、
「寸断され、読むことのできなくなっていた未来の歴史遺伝詞が、
何らかの理由で四三年八月二十四日、
午後四時四十二分を境に本来の流れに接続されたのではないか」
 と、そういう見解として発表している。
 この後、連合軍は“天蓋”を持たぬ伯林への攻撃を開始。四五年五月七日に独逸が 
無条件降伏することで大戦は終了し、伯林は東西に分割。六二年には“伯林の壁”が建設され、
異族と機械、そして人によって激動した都市は壁によって分かたれる。
 だが、その壁はもはやない。八八年に数名の若者達によって破壊され、乗り越えられた。
 そして、壁を越えた若者たちの多くは、詞と呼応する機械を己の傍らに置いていたという。
 人と機械ではどちらが過ちを停めることができたのか? その答えは既に出ているのだ。

2001・8・24 一人の少女が謳った朝に
ミハイル・シュリアー
機甲都市 伯林5,P368