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1.3

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1.3音波の性質
図1.1に描かれている状況に戻ろう。そしてピストンが一定速度uで動き始めたときの、ピストンの直前の流体のふるまいについて簡潔に述べよう。
図1.4に描かれているように、微小時間tのあと、ピストンはutという距離を動いており、音波の先端はピストンの始めの位置からCotという距離動いている。
流体はすぐに一定の圧力と密度を仮定する。それぞれpo、ρoとしてあらわす。
圧縮された流体は圧力と密度がそれぞれpとρだけ増え、そしてρというのは音響的な密度の変動である。
ほとんどの場合、圧縮される流体の元素から熱が逃げる時間が無いほど、音波の圧縮は十分に速いということが保障される。(断熱変化だということ)
このような状況下では、圧縮はエントロピー不変(例えば、Pierce,1981、チャプター1)と考えられ、流体の密度変化は流体の圧力の変化とは独立したものであり、温度の変化に依存しない。しかし、流体の温度は圧縮の過程においてわずかに増加するだろうが。
密度と音圧の関係の形態は流体の特性によるだろう。
もし瞬間の流体の総圧力をPtot=Po+Pとおき、また同様に瞬間の総密度をρtot=ρo+ρとおくと、それらの関係は(1.3.1)式のように表される。

二つ目の仮定は音圧と密度の増加pとρは線形関係として扱えるように十分に小さいと考える。
pとρが一般的にその周囲のPoやρoと比べてとても小さいというのは、単純な例を用いて証明できる。
フルスピードで走らせた典型的な自動車のエンジンの振動している表面のすぐ近くで図った最大の音圧変動pでも10Paを越えそうにない。それは我々が対処できる(表1.1をみよ)もっとも大きな音の一つであるにもかかわらずだ。
これが気圧であるPoの10の5乗Paと比較される。
同様に密度変化ρは10の-4乗[kg/m3]のオーダーをとり、周囲の約1.2[kg/m3]と比較されるのだ。
Ptotとρtotの関係が示されている特徴的なグラフが図1.3に示されている。
pとρが周囲のpoやρoに比べて非常に小さな変化のため、我々はpとρが直接比例すると仮定し、その比例定数は周囲のpoとρoにおける曲線f(ρtot)の傾きで与えられる。
これはf(ρtot)のテイラー級数展開を使うことによって形式的に証明できる。

そして我々はdf(ρo)/dρtotが密度ρoによって与えられる関数の勾配として書くことができる。
密度増加ρがとても小さい(勾配の変化率の関数d2f(ρo)/dρtot2もまたあまり大きくない)ので、ρの2乗とより高いρのべき数の比例項は級数展開のなかで無視されてよいだろう。
f(ρtot)=po+p、f(ρo)=poなので、ρに比例する項だけが残り、(1.3.2)式のように表される。
これは音圧と密度の増加の間に比例関係が成り立つことを示しており、その比例定数は周囲の(圧縮されていない)流体から得られる密度(ようするにρoのこと)における圧力の変化率で与えられる。

音圧の増加分pはまた、ピストンの速度とそれによって生じる粒子速度uにも比例する。
このことはMorse and Ingard(1968年、チャプター6を見よ)が示したように、ピストンの直前の流体に、運動量保存の法則を適用することによって証明することができる。
ピストン付近の微小部分にかかる正味の力は、pSによって与えられる。ここで、Sとは微小部分の断面積である。
これは(1.3.4)式で表されるような流体の運動量の変化率に等しい。ここで(ρocotSu)は圧縮されていないときの微小部分(図1.4を見よ)における流体の総質量として与えられる。
(1.3.4)式より次の(1.3.5)式が導かれる。

この比例関係の比例定数はρoCoである。
この量は媒質の固有音響インピーダンスとして知られている。
空気中では大気圧中、気温20度という条件のもとでは、この値は415(単位は本文参照)という値をとり、一方純粋な水中、20度という条件のもとではこれは1.48×10^6(単位は本文参照)という値に等しい。
よって与えられた表面の速度は、空気中よりも水中での方がはるかに大きな圧力を生み出すことになる。

最後に我々は小さな密度増加ρと粒子速度の間に、さらに発展させた比例関係を証明しよう。
再びMorse and Ingard(1968年、チャプター6を見よ)にしたがって、質量保存の法則を流体の考える部分に適用する。つまりその圧縮前と、時間tが経過した後のその部分の流体の質量は等しいとするものである。
これは(1.3.6)式を与える。

上のように書いたが、音波の密度増加ρはρoに比べてとても小さい。
また、一般的に、粒子速度はに比べてとても小さい(先に述べたような一般的な車のエンジンの表面の振動速度は0.1ms^-1にも満たない)。
よってこの方程式の右辺のカッコでくくった項を展開すると、二つの非常に小さい値の積で表されているため、方程式の右辺の他の項にくらべて非常に小さいとみなされ、ρuという項は無視される。
この項の無視によって、直接的な関係(1.3.7)式が導かれる。

 (1.3.3)、(1.3.5)、(1.3.7)式を組み合わせて、(1.3.8a,b)が求められる。

音速はそれゆえに流体の周囲の特徴とは関係なく決まり、(1.3.1)式で表される音圧と密度の関係に依存する。
この種の関係は断熱変化の圧縮によっているということを思い出してほしい。
そのような断熱圧縮を受けた、理想気体の特定の状況(空気中はこれと良く近似できる)においては、音圧と密度の関係式は次の(1.3.9)式で与えられる。ここでγはきたいの比熱比である(例えば、Kinsler el al、―――――を見よ。そのような圧縮の熱力についての詳細)
この式を微分し、密度ρoにおける導関数を求めると、つぎの(1.3.10)式のようになる。
理想気体での音速は、それゆえに周囲の流体の圧力と密度に単純に比例する。
音速の周囲の流体の状態への依存性の、より完全な議論は例えば固体内における音速を考えた人でもある、Pierce~~~によってなされている。

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