第三話 平和じゃなくなるのが怖いなら潔くそんな事は忘れて今を一生懸命生きよう
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gundam_dollda
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グワッシュが構える40mm機銃。その銃弾が次々と銃口から旅立っていく。無数の銃弾の
目の前にはもう一機のグワッシュが双剣を手に待ち構えていた。一撃目は胸部。二~六撃目、
命中せず。七撃目~十三撃目、左腕部。十四撃目以降は全て双剣で弾かれた。やがて弾が
切れ、機銃からは音だけがした。パイロットが取った判断は機銃を捨てる事。定石。それに
変化を加えた。ただ捨てるだけでなく、相手に向かって投げる。当たれば軽いダメージを
与えられる。当たり所によっては優勢に導ける。当たらずとも相手の気を機銃にひきつける事
が出来る。さらに前方からの攻撃を軽減する事も出来る。これらのメリットをパイロットは
弾切れと同時に見出した。先ほどまで攻撃を受けていたグワッシュのパイロットはその手を
読んでいた。機銃が命中する1秒前に後退。理由は射程距離。どんな銃弾であろうと
放物線を描き、いずれは落下する。銃弾ですらない機銃本体の射程距離は短いにもほどが
あった。そして、後退する事で視野を広げた。攻撃を受けていたグワッシュのパイロットは
相手のパイロットに隙を与えなかった。機銃を投げると同時に回りこんだグワッシュは逆に
回りこまれた。結果、足を斬られて敗北する。
目の前にはもう一機のグワッシュが双剣を手に待ち構えていた。一撃目は胸部。二~六撃目、
命中せず。七撃目~十三撃目、左腕部。十四撃目以降は全て双剣で弾かれた。やがて弾が
切れ、機銃からは音だけがした。パイロットが取った判断は機銃を捨てる事。定石。それに
変化を加えた。ただ捨てるだけでなく、相手に向かって投げる。当たれば軽いダメージを
与えられる。当たり所によっては優勢に導ける。当たらずとも相手の気を機銃にひきつける事
が出来る。さらに前方からの攻撃を軽減する事も出来る。これらのメリットをパイロットは
弾切れと同時に見出した。先ほどまで攻撃を受けていたグワッシュのパイロットはその手を
読んでいた。機銃が命中する1秒前に後退。理由は射程距離。どんな銃弾であろうと
放物線を描き、いずれは落下する。銃弾ですらない機銃本体の射程距離は短いにもほどが
あった。そして、後退する事で視野を広げた。攻撃を受けていたグワッシュのパイロットは
相手のパイロットに隙を与えなかった。機銃を投げると同時に回りこんだグワッシュは逆に
回りこまれた。結果、足を斬られて敗北する。
「あっれー…なんでいつもディランに勝てないんだ?ってかなんであんなに強いの?」
煉滋がディランに対して言う。
「まぁ俺の父上が軍人だからね。小さい頃にコンピューターゲーム代わりにシュミレーション
で遊んでたんだよ…(その後、実際にパイロットになって訓練を積んだのだけど)…」
ディランが軽く返す。既にディランが転校して2週間が過ぎていた。
「なーるほど!そいつはそこらのコンピューターゲームなんぞより面白そうだなぁぁぁぁ…」
煉滋が幼さを感じさせる声から野太い声で歌うように言った。
「そうでもないさ、実際の戦闘と殆ど変わらないし、敵が迫ってくる恐怖感があるからね。」
ディランが鼻で笑う。
「むぅ…そう言われればそうかも。…っと。今日はは頃奈の新プログラムの発表だったな」
煉滋がディランに対して言う。
「まぁ俺の父上が軍人だからね。小さい頃にコンピューターゲーム代わりにシュミレーション
で遊んでたんだよ…(その後、実際にパイロットになって訓練を積んだのだけど)…」
ディランが軽く返す。既にディランが転校して2週間が過ぎていた。
「なーるほど!そいつはそこらのコンピューターゲームなんぞより面白そうだなぁぁぁぁ…」
煉滋が幼さを感じさせる声から野太い声で歌うように言った。
「そうでもないさ、実際の戦闘と殆ど変わらないし、敵が迫ってくる恐怖感があるからね。」
ディランが鼻で笑う。
「むぅ…そう言われればそうかも。…っと。今日はは頃奈の新プログラムの発表だったな」
メールボックスに新着メッセージが届いていた。発表を午後に控えた頃奈は休憩時間を利用
して画面だけを見つめていた。新着メールの件名の項目を選択し、回覧が始まった。
「お返事が遅れてすみません。仕事が忙しく、ころにゃんさんに会えなくて寂しかったです。
お詫びと言っては何ですが、進宇宙記念学園の郵便局にマイクロハードディスクが届いている
ハズです。私の依頼主であるソフトウェア会社「水月」の新商品なのですが、まだ発売の
3ヶ月前です。でも、ころにゃんさんは親友なので特別にさしあげます。詳しい事は付属の
説明書をご覧ください。良いですね。今度、是非お会いしましょう。」
頃奈は上下左右に視線を泳がせ、静かに微笑む。返信を書こうとしたが、新規作成画面で
取り消した。なぜなら、この時頃奈は何よりも大切にしていた"誰よりも早く返信を書く"
というポリシーよりもI☆BU☆KIの作品を見たいという好奇心が優先していたからだ。
して画面だけを見つめていた。新着メールの件名の項目を選択し、回覧が始まった。
「お返事が遅れてすみません。仕事が忙しく、ころにゃんさんに会えなくて寂しかったです。
お詫びと言っては何ですが、進宇宙記念学園の郵便局にマイクロハードディスクが届いている
ハズです。私の依頼主であるソフトウェア会社「水月」の新商品なのですが、まだ発売の
3ヶ月前です。でも、ころにゃんさんは親友なので特別にさしあげます。詳しい事は付属の
説明書をご覧ください。良いですね。今度、是非お会いしましょう。」
頃奈は上下左右に視線を泳がせ、静かに微笑む。返信を書こうとしたが、新規作成画面で
取り消した。なぜなら、この時頃奈は何よりも大切にしていた"誰よりも早く返信を書く"
というポリシーよりもI☆BU☆KIの作品を見たいという好奇心が優先していたからだ。
放課後。頃奈は郵便局にいた。
「では、こちらの金庫になります。ご本人かどうかの確認のためパスワードのご入力をお願い
します。」
「…(認証ヲ開始シマス。暗証番号ヲ入力シテクダサイ)…」
緑を基調としたコンピューターの認証画面から合成音声が開始を告げた。メールに添付して
あったI☆BU☆KIからのパスワードを瞬時に記憶し、メモの一つもなしに慣れた手つきで
タイピングを見せる頃奈。普段、機械に触らない者は手遊びに見えた。
「0105079933774020401050340203213402383421042422421343232978923294929109392412…」
最後に決定キーを押す。その高らかな指使いは音楽の指揮者のそれに近かった。
「…(認証シマシタ。0801番金庫ノロックヲ解除シマス)…」
液晶画面に映る淡い緑色が一瞬白くなり、その直後に深い黒に染まった。
「では、こちらの金庫になります。ご本人かどうかの確認のためパスワードのご入力をお願い
します。」
「…(認証ヲ開始シマス。暗証番号ヲ入力シテクダサイ)…」
緑を基調としたコンピューターの認証画面から合成音声が開始を告げた。メールに添付して
あったI☆BU☆KIからのパスワードを瞬時に記憶し、メモの一つもなしに慣れた手つきで
タイピングを見せる頃奈。普段、機械に触らない者は手遊びに見えた。
「0105079933774020401050340203213402383421042422421343232978923294929109392412…」
最後に決定キーを押す。その高らかな指使いは音楽の指揮者のそれに近かった。
「…(認証シマシタ。0801番金庫ノロックヲ解除シマス)…」
液晶画面に映る淡い緑色が一瞬白くなり、その直後に深い黒に染まった。
同時刻。ディランはすでに煉滋との訓練を終えていた。学生寮の自室で疲れを癒す間もなく
任務遂行と人間関係の間で葛藤していた。それは今に始まったことではなく、ディランは来る
日も来る日も無意識に頭皮をかきむしっていた。彼の爪は油とフケと血と腐臭にまみれていた。
火星軍のスパイでありながら、2週間も連絡を取ってないのは彼にとって故郷を失ったと同義
だった。
任務遂行と人間関係の間で葛藤していた。それは今に始まったことではなく、ディランは来る
日も来る日も無意識に頭皮をかきむしっていた。彼の爪は油とフケと血と腐臭にまみれていた。
火星軍のスパイでありながら、2週間も連絡を取ってないのは彼にとって故郷を失ったと同義
だった。
「そう言えば頃奈とディランってコロニー出身だったよな?なんで地球に入れたんだろう?」
ロビーでグレン・ベルが何気なく呟いた。コーヒーを飲んでいた煉滋が思い出す。
「確かー…頃奈の母親は地球出身だから…。で、あれ?えーっと…離婚して…親権が母親に
移った…だったかな?」
「なるほどー…、それなら納得だわな」
コロニー出身者が地球に入れる唯一の条件として、親族が地球出身者である事。ただ、頃奈に
とっては思い出したくもない過去なのだが。
「でもさ…ディランはどうやって入れたんだ?」
グレンが疑問に思う。その発言に二人は沈黙した。
ロビーでグレン・ベルが何気なく呟いた。コーヒーを飲んでいた煉滋が思い出す。
「確かー…頃奈の母親は地球出身だから…。で、あれ?えーっと…離婚して…親権が母親に
移った…だったかな?」
「なるほどー…、それなら納得だわな」
コロニー出身者が地球に入れる唯一の条件として、親族が地球出身者である事。ただ、頃奈に
とっては思い出したくもない過去なのだが。
「でもさ…ディランはどうやって入れたんだ?」
グレンが疑問に思う。その発言に二人は沈黙した。
受け取ったマイクロハードディスクを携帯電話に挿しこむ頃奈。すると、青いウインドウが
開いた。いくつかデータがある。機械に詳しい頃奈は"Setup.exe"を選択。今度は全画面表示
になり、メッセージが表示された。
「"水月兄妹"をお買い上げいただき誠にありがとうございます。どちらをインストールします
か? →兄 →妹」
兄と妹。それぞれにカーソルを合わせると3Dグラフィックが表示された。兄はツンツンした
髪型に猫耳の二頭身キャラクター、妹はショートヘアーに猫耳の二頭身キャラクターだった。
頃奈は妹の方を選択。すると、携帯電話が再起動。画面構成は大幅に変わっていた。
「そっか、この子はOSなんだぁ…」
関心している内にまたウインドウが表示された。
「何だろ…?」
「お名前を入力してください」
「お名前…何がいいかなぁ…。やっぱり可愛いのがいいよね」
入力と取り消しの繰り返し。頃奈が思いついた名前はシンプルな名前だった
「初めましてなのです~。私の名前はヒカルなのです~。よろしくなのです~!」
「…よろしく、ヒカル!」
開いた。いくつかデータがある。機械に詳しい頃奈は"Setup.exe"を選択。今度は全画面表示
になり、メッセージが表示された。
「"水月兄妹"をお買い上げいただき誠にありがとうございます。どちらをインストールします
か? →兄 →妹」
兄と妹。それぞれにカーソルを合わせると3Dグラフィックが表示された。兄はツンツンした
髪型に猫耳の二頭身キャラクター、妹はショートヘアーに猫耳の二頭身キャラクターだった。
頃奈は妹の方を選択。すると、携帯電話が再起動。画面構成は大幅に変わっていた。
「そっか、この子はOSなんだぁ…」
関心している内にまたウインドウが表示された。
「何だろ…?」
「お名前を入力してください」
「お名前…何がいいかなぁ…。やっぱり可愛いのがいいよね」
入力と取り消しの繰り返し。頃奈が思いついた名前はシンプルな名前だった
「初めましてなのです~。私の名前はヒカルなのです~。よろしくなのです~!」
「…よろしく、ヒカル!」
「そうだ!えーっと……………」
何を思いついたのかど忘れ。思い出そうと黙り込む頃奈。
「………………あ!」
思い出す。
「ヒカルにお家をあげるよ!」
「お家…?」
何を思いついたのかど忘れ。思い出そうと黙り込む頃奈。
「………………あ!」
思い出す。
「ヒカルにお家をあげるよ!」
「お家…?」
それは日が暮れる6時間前。頃奈が毎日のように開発していたプログラムが先日完成し、
電子工学科による発表が行われた。司会者が進行する。
「えー…では続いての発表は本日最高プログラムです!電子工学科1年生、宗谷頃奈さん
お願いします!」
会場の入り口にスポットライトが当たる。期待する観客。しかし頃奈は現れなかった。
「いけない!バグを取って疲れて寝てたら遅刻しちゃった!もう始まっちゃってるよ!」
その時、頃奈は廊下を走っていた。廊下を走るなと注意する担任のクラーク・クラーク先生。
「頃奈…遅いなすとらいくりすます。」
煉滋が爽やかな声で真面目に茶化した。
「…お前、MSパイロットよりも声優か芸人にでもなれば良いんじゃないか?」
グレン・ベルが話題を作る。
「いや、俺はMSパイロットがいい。それでリアル・ヒーローになるんだぜ!…(ヒーロー
なんている訳ないだろ常識的に考えて)…」
「はっはっはっは…お前らしいな。また頃奈は寝てるんじゃないか?」
グレンの発言を横で聞いていたディランは笑顔の裏に汚れた顔が潜んでいた。ブーイングの
飛び交う会場。それを見て不機嫌な煉滋ご一行。それを見て一番困っている司会者。
「………えー、では宗谷頃奈さんは欠…」
ドアが開く。サイドで結んだ黒髪に大きな丸眼鏡。毎度毎度お約束の宗谷頃奈であった。
「…す…すいません…遅…れまし………た…」
先ほどから走ってきていたので息が上がってる。観客のだらけきった視線が頃奈を襲う。
「…あ…その…」
怯える頃奈。それに追い討ちをかける観客。
「お前が遅れてきてどれだけ待たされたと思ってるんだ!?」
「そうだそうだ!」
もう俯き、涙目な頃奈。自分のせいでもあるが、今までの積み重ねが無駄になったと考えると
とても寂しく悲しかった。救いの手を差し伸べたのはグレンだった。
電子工学科による発表が行われた。司会者が進行する。
「えー…では続いての発表は本日最高プログラムです!電子工学科1年生、宗谷頃奈さん
お願いします!」
会場の入り口にスポットライトが当たる。期待する観客。しかし頃奈は現れなかった。
「いけない!バグを取って疲れて寝てたら遅刻しちゃった!もう始まっちゃってるよ!」
その時、頃奈は廊下を走っていた。廊下を走るなと注意する担任のクラーク・クラーク先生。
「頃奈…遅いなすとらいくりすます。」
煉滋が爽やかな声で真面目に茶化した。
「…お前、MSパイロットよりも声優か芸人にでもなれば良いんじゃないか?」
グレン・ベルが話題を作る。
「いや、俺はMSパイロットがいい。それでリアル・ヒーローになるんだぜ!…(ヒーロー
なんている訳ないだろ常識的に考えて)…」
「はっはっはっは…お前らしいな。また頃奈は寝てるんじゃないか?」
グレンの発言を横で聞いていたディランは笑顔の裏に汚れた顔が潜んでいた。ブーイングの
飛び交う会場。それを見て不機嫌な煉滋ご一行。それを見て一番困っている司会者。
「………えー、では宗谷頃奈さんは欠…」
ドアが開く。サイドで結んだ黒髪に大きな丸眼鏡。毎度毎度お約束の宗谷頃奈であった。
「…す…すいません…遅…れまし………た…」
先ほどから走ってきていたので息が上がってる。観客のだらけきった視線が頃奈を襲う。
「…あ…その…」
怯える頃奈。それに追い討ちをかける観客。
「お前が遅れてきてどれだけ待たされたと思ってるんだ!?」
「そうだそうだ!」
もう俯き、涙目な頃奈。自分のせいでもあるが、今までの積み重ねが無駄になったと考えると
とても寂しく悲しかった。救いの手を差し伸べたのはグレンだった。
「黙ってろ!」
その一言で静まり返る。不謹慎だが悲しいことにコレもまたお約束。
「やれやれ、流石はうちの特攻隊長ざんすねぇ…」
煉滋が立ち上がり、深呼吸を2~3回ほど終えて、司会者のマイクを借りて言う。
「君たちは名前聞いてもすぐ忘れられるような顔をしてるくせに偉そうな事言わない!
頃奈は遅刻するのはお約束なんだからさ、軽く可愛いって笑い飛ばそうよ!全く…君たちの
ブーイングは笑えない!楽しくない!エンターテイメントじゃない!ただでさえ少ない尺を
君ら脇役のくだらない会話で時間取ると内容のない駄作になる事を君たちは知らないのか!
だから君たちは顔も名前も売れないんだよ!」
口を開け、ドン引きする観客。テンションも高く論点もずれてる煉滋の電波は常人には受け
入れ難い。ただ、それでも説得させる煉滋は凄いと思うグレンであった。
「はい!良い役お疲れ、俺。ディランくーん!開始の合図お願いね!」
「あの…司会者僕なんですけど…」
「君の声は冴えない。メインイベントなら女性ファンも男性ファンも確保できるディランが
言うべきでしょう」
「はぁ?…(コイツはどっかの映画監督か何かか?)…」
煉滋はマイクをディランに投げる。上手くキャッチ。
「了解した。それでは皆様、大変お待たせしました。電子工学科1年生・宗谷頃奈さん!」
「はい!よろしくお願いします!」
先ほどとは打って変わって歓声と拍手の嵐。
「私の発表はfixed言語によって開発したセキュリティソフトです!」
「…(おおおお!)…」
「このソフトは従来のセキュリティソフトとは真逆です。従来のウイルスが進入した瞬間に
ウイルスを絶対的に安全な場所に隔離するのに対して、このソフトは既存のデータの全てを
絶対的に安全な場所に隔離します」
「…(おおおお!!)…」
「…(それならそのセキュリティソフトにウイルスが感染した場合はどうするんだ?)…」
「ご心配ありません。このセキュリティソフトはコンピューターへログインするプログラム
そのものに寄生しています。ログイン中に破壊は理論上不可能です。」
「…(セキュリティソフトそのものがウイルスだと言うのか?)…」
「以前、私のプライベートPCに感染したウイルスを元に参考にしました。害意はありません
が、セキュリティソフト内部にウイルスが存在します。」
「…(何だと!我々をを馬鹿にしているのか!?)…」
「どうか落ち着いてください。このソフトの映像的イメージは"7階建てマンション"です。」
「…(七階建てマンション?)…」
「OSなどの重要度の高いデータが7階にあり、ユーザーデータが6階、ツール・ユーティリ
ティが5階、ドキュメントデータが拡張子順に4~3階にあります。2~1階はセキュリティ
ソフトそのものに感染した場合、"外部から許可なしに侵入したプログラムを無差別に破壊"
する防衛ウイルスが待機しています。マンションは1階から入りますからね」
「…(ぬ……悔しいが……斬新かつfixed言語による安全性…私の負けだ!)…」
頃奈の発表にずっと揚げ足をとっていた男は落胆する。
その一言で静まり返る。不謹慎だが悲しいことにコレもまたお約束。
「やれやれ、流石はうちの特攻隊長ざんすねぇ…」
煉滋が立ち上がり、深呼吸を2~3回ほど終えて、司会者のマイクを借りて言う。
「君たちは名前聞いてもすぐ忘れられるような顔をしてるくせに偉そうな事言わない!
頃奈は遅刻するのはお約束なんだからさ、軽く可愛いって笑い飛ばそうよ!全く…君たちの
ブーイングは笑えない!楽しくない!エンターテイメントじゃない!ただでさえ少ない尺を
君ら脇役のくだらない会話で時間取ると内容のない駄作になる事を君たちは知らないのか!
だから君たちは顔も名前も売れないんだよ!」
口を開け、ドン引きする観客。テンションも高く論点もずれてる煉滋の電波は常人には受け
入れ難い。ただ、それでも説得させる煉滋は凄いと思うグレンであった。
「はい!良い役お疲れ、俺。ディランくーん!開始の合図お願いね!」
「あの…司会者僕なんですけど…」
「君の声は冴えない。メインイベントなら女性ファンも男性ファンも確保できるディランが
言うべきでしょう」
「はぁ?…(コイツはどっかの映画監督か何かか?)…」
煉滋はマイクをディランに投げる。上手くキャッチ。
「了解した。それでは皆様、大変お待たせしました。電子工学科1年生・宗谷頃奈さん!」
「はい!よろしくお願いします!」
先ほどとは打って変わって歓声と拍手の嵐。
「私の発表はfixed言語によって開発したセキュリティソフトです!」
「…(おおおお!)…」
「このソフトは従来のセキュリティソフトとは真逆です。従来のウイルスが進入した瞬間に
ウイルスを絶対的に安全な場所に隔離するのに対して、このソフトは既存のデータの全てを
絶対的に安全な場所に隔離します」
「…(おおおお!!)…」
「…(それならそのセキュリティソフトにウイルスが感染した場合はどうするんだ?)…」
「ご心配ありません。このセキュリティソフトはコンピューターへログインするプログラム
そのものに寄生しています。ログイン中に破壊は理論上不可能です。」
「…(セキュリティソフトそのものがウイルスだと言うのか?)…」
「以前、私のプライベートPCに感染したウイルスを元に参考にしました。害意はありません
が、セキュリティソフト内部にウイルスが存在します。」
「…(何だと!我々をを馬鹿にしているのか!?)…」
「どうか落ち着いてください。このソフトの映像的イメージは"7階建てマンション"です。」
「…(七階建てマンション?)…」
「OSなどの重要度の高いデータが7階にあり、ユーザーデータが6階、ツール・ユーティリ
ティが5階、ドキュメントデータが拡張子順に4~3階にあります。2~1階はセキュリティ
ソフトそのものに感染した場合、"外部から許可なしに侵入したプログラムを無差別に破壊"
する防衛ウイルスが待機しています。マンションは1階から入りますからね」
「…(ぬ……悔しいが……斬新かつfixed言語による安全性…私の負けだ!)…」
頃奈の発表にずっと揚げ足をとっていた男は落胆する。
「さらに、このセキュリティプログラムはPC、携帯電話、MS等、幅広い媒体にインストール
できます。」
「…(おおおおおおおお!)…」
できます。」
「…(おおおおおおおお!)…」
「やっぱ頃奈は普段トロイけど凄いわな。」
煉滋が言う。
「うんうん」
グレンとディランが続いて言う。
煉滋が言う。
「うんうん」
グレンとディランが続いて言う。
そして6時間の時が流れた。
「これが…私のお家…」
「そうだよ、ヒカルのお家。私が作ったから安全なハズだよ!私は宗谷頃奈!
「これが…私のお家…」
「そうだよ、ヒカルのお家。私が作ったから安全なハズだよ!私は宗谷頃奈!
「よろしく」