「はっ! 噂に聞くガンダールヴがその程度とは。やはり骨董品だな」
「なっ!?」
至近距離から放たれた魔法を、なんとかデルフリンガーで受け止める。
「くそっ!」
キラは焦燥を隠しきれない。
ラウ・ル・クルーゼとの死闘。その終焉直後に発射されたジェネシスにより、彼の愛機は消滅した。
退避が一歩遅れたのは、相手がプロヴィデンスに残した執念か。
「やはり風の遍在には手も足も出ぬか!」
「なんだとっ!」
叫びながら剣を夢中で振り回す。
工学系の学生だったキラは、正式な訓練を受けていない。
ヤキン・ドゥーエ攻防戦前の数ヶ月間に、ムウやアスランから手解きを受けた程度である。
確かにルーンが自分の力を上げている事は実感できるが、それでも多人数相手では分が悪すぎた。
「だけど、僕は……!」
諦めるわけにはいかない。
死んだと思った直前、自分は不思議な鏡に吸い込まれた。
その結果としてルイズの使い魔とされたが、元より死んだ身だ。不満など感じなかった。
自らの在り方を語ったクルーゼの言葉も、いまだに心の中に焼き付いている。
一人の人間として生きるには、コーディネーターという枷から逃れられない。
だが。
「ルイズが僕を救ってくれた。僕はここで生きていけるんだ!」
ルーンが輝く。
メイジという明らかに特別な存在は驚きだった。
しかし、それ以外の無力な平民、そこには何の区別もない。ナチュラルもコーディネーターもないのだ。
だから。
「僕には、守りたいものがあるんだ!!」
ルーンが一際激しく輝いたとき。
なにかが割れるような幻想とともに、走った剣閃は全てのワルドを一瞬で薙ぎ払った。
最終更新:2008年08月16日 15:18