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*タイトル未定 作:生姜 **1-1 見知らぬ川原にて 目覚めると僕は、見知らぬ場所に居た。 川が勢いよく流れる音、鳥の鳴き声、木々のざわめき。都会で生まれ育った自分には、どれも聞きなれない音だ。 目の前は川。両側には、急な斜面が切り立っている。 どうやら僕は、深い谷底の川原に居るらしい。 上へ目をやると、車が通れそうな頑丈で現代的な造りの橋梁が架かっている。 あの幅からして、恐らく二車線ぐらいはあるか。 橋梁以外の建造物は、周囲を見渡す限り見当たらない。 ふと僕は、なぜここに居るのかという疑問を持つ。 記憶を辿ってみる。 「確か、中学時代の友人と飲み会に行って、・・・・・・行って、そこで僕はどうしたんだ・・・?」 全く記憶が無い。また飲みすぎたか。 僕自身、飲みすぎで記憶が曖昧になることは何度かあったが、 ここまできれいに記憶が抜け落ちているのは始めてだ。 「もしかして酔った状態でここまで来たっていうのか?」 都心から、こんな場所まで来るなど、いくら酔いつぶれて意識が朦朧としていたとしても、ありえない。 同じ大自然溢れる山間でも、二車線国道の脇で寝そべっていたというのなら、まだ現実味がある。 が、今自分の居るこの場所は、川原である。 もちろん、上に通っているであろう道路に出れそうな道は、見当たらない。 「もしかして、事件に巻き込まれたのだろうか・・・?」 嫌な汗が頬を伝う。 あわてて、自分の身に怪我はないか確認する。 よかった、怪我は無い。となると服装、荷物はどうか。 服装は、飲み会に行った時のままだ。特に破れたり切られたりした痕跡は無い。 持ち物は・・・・・・、 普段から使っているリュックは抱きかかえながら寝ていたし、中身も特に変わった形跡無し。 コートに入れていた携帯や財布も無事だ。 ひとまず自分の身と持ち物は問題無いと分かって、僕は少々気が楽になった。 思わずほっ、と一息つく。 そうだ携帯を確認してみよう。 コートから携帯を取り出し、電源を、電源を・・・・・・、 あれ?つかない。 まさか、充電切れか。よりにもよってこんな時に。 携帯に入っているアプリ『ゴーグルマップ』で現在地を確認出来ればと思ったのだが、現実は非情である。 さて、どうしたものか。 とにかく、ここに留まっていてはどうしようもない。 僕はひとまず、この川原から抜け出せそうな道を探す事にした。 ここまで無傷で来れているのだから、無傷で抜け出せる道はどこかにあるはずだ。 探すこと数分。僕は、川原から上がれる小道を見つけた。 他に上がれそうな場所も無さそうなので、道なりに歩く事にした。 *1-2 森 まってて(はぁと *1-3 結末 まってて(はぁと
*タイトル未定 作:生姜 **1-1 見知らぬ川原にて 目覚めると僕は、見知らぬ場所に居た。 川が勢いよく流れる音、鳥の鳴き声、木々のざわめき。都会で生まれ育った自分には、どれも聞きなれない音だ。 目の前は川。両側には、急な斜面が切り立っている。 どうやら僕は、深い谷底の川原に居るらしい。 上へ目をやると、車が通れそうな頑丈で現代的な造りの橋梁が架かっている。 あの幅からして、恐らく二車線ぐらいはあるか。 橋梁以外の建造物は、周囲を見渡す限り見当たらない。 ふと僕は、なぜここに居るのかという疑問を持つ。 記憶を辿ってみる。 「確か、中学時代の友人と飲み会に行って、・・・・・・行って、そこで僕はどうしたんだ・・・?」 全く記憶が無い。また飲みすぎたか。 僕自身、飲みすぎで記憶が曖昧になることは何度かあったが、 ここまできれいに記憶が抜け落ちているのは始めてだ。 「もしかして酔った状態でここまで来たっていうのか?」 都心から、こんな場所まで来るなど、いくら酔いつぶれて意識が朦朧としていたとしても、ありえない。 同じ大自然溢れる山間でも、二車線国道の脇で寝そべっていたというのなら、まだ現実味がある。 が、今自分の居るこの場所は、川原である。 もちろん、上に通っているであろう道路に出れそうな道は、見当たらない。 「もしかして、事件に巻き込まれたのだろうか・・・?」 嫌な汗が頬を伝う。 あわてて、自分の身に怪我はないか確認する。 よかった、怪我は無い。となると服装、荷物はどうか。 服装は、飲み会に行った時のままだ。特に破れたり切られたりした痕跡は無い。 持ち物は・・・・・・、 普段から使っているリュックは抱きかかえながら寝ていたし、中身も特に変わった形跡無し。 コートに入れていた携帯や財布も無事だ。 ひとまず自分の身と持ち物は問題無いと分かって、僕は少々気が楽になった。 思わずほっ、と一息つく。 そうだ携帯を確認してみよう。 コートから携帯を取り出し、電源を、電源を・・・・・・、 あれ?つかない。 まさか、充電切れか。よりにもよってこんな時に。 携帯に入っているアプリ『ゴーグルマップ』で現在地を確認出来ればと思ったのだが、現実は非情である。 さて、どうしたものか。 とにかく、ここに留まっていてはどうしようもない。 僕はひとまず、この川原から抜け出せそうな道を探す事にした。 ここまで無傷で来れているのだから、無傷で抜け出せる道はどこかにあるはずだ。 探すこと数分。僕は、川原から上がれる小道を見つけた。 他に上がれそうな場所も無さそうなので、道なりに歩く事にした。 *1-2 森 道なりに歩いて、30分ぐらいは経っただろうか。 辺りは鬱蒼とした森が広がっている。 川の音は聞えなくなり、今は小鳥のさえずりと木々のざわめきが聞えるのみだ。 しかし自分は、なぜあんな所で寝ていたのだろうか。 一瞬は事件に巻き込まれたのかと疑ったが、もしそうだとすれば、大抵何らかの怪我を負ってたり、持ち物を取られていたりするものだ。 謎だ、謎すぎる。 もしかして、何かのドッキリか? いやいや、こんなの、ドッキリでもなんでもない。ただ迷惑でしかない。 全く、誰だか知らんがいい加減にしてくれよ・・・。 などと半ば現実逃避気味に考えていると、突然、血生臭さが鼻を刺激する。 「なんだこの臭いは!?」 反射的に、臭いの発生源に目をやる。 するとそこに、犬が血を流して倒れているではないか。犬種は柴犬だろうか。 よく見ると、左足の付け根や腹部に刺し傷がある・・・・・・!? その瞬間。 遠くから、銃声がした。その直後、微かながら女性の悲鳴も聞えた。 ・・・何が・・・・・・起きてるんだ・・・・・・!? この森は、危ない。そう直感が告げていた。 今は犬などを気にしている必要は無い。 僕は立ち上がり、この森を抜けるべく、さっきよりも少し早い速度で歩き始めた。 歩くこと数十分。 突然飛び込んできたその光景に、僕は思わず呻き声を漏らしていた。 なんと、女性が、血を流して倒れているではないか。歳は、まだ20代前半ぐらいだろうか。 腹部には数箇所の刺し傷がある。銃痕は見当たらない。 彼女は、まだ息をしていた。 そして・・・・・・、 かすかに何か言っている!? 僕は、「大丈夫ですか!?」と叫びながら、彼女に駆け寄った。 「・・・フェの、・・・・・・イドカフェの・・・、男が・・・・・・」 彼女は、そう言った。確かにそう言った。 カフェ?何のことだ、一体どういうことなんだ。 「しっかりするんだ!ここで何があったんだ!?」 犬の刺死体に始まり、銃声、悲鳴、そして刺し傷から血を流し死にかけている女性。 このあまりに非日常すぎる出来事の連続に、僕の脳は焦りと混乱で支配されていた。 「おい!しっかりしろ!大丈夫か!大丈夫か!」 それから間もなくして、彼女は息を引き取った。 何度も彼女の体をゆすっていたため、いつの間にか手や服は血だらけになっていた。 もう、わけがわからない。僕は、ただその場に立ち尽くすことしか出来なかった。 「おいお前!そこで何をやっているんだ!」 この一言で、僕は我に返った。 反射的に声のした方向を見ると、やや息を切らした警官が、そこに立っていた。 「い、いえ、僕はその―――」 何でこんな時に、言葉に詰まってしまうのか。自分が恨めしい。 「これはお前がやったのか!」 「僕が来た時には、既にこうなって―――」 「ではその手はなんだ!動くな!逮捕する!」 見るとその手は、見事なまでに鮮やかな赤色に染まっていた。 くっそ!どうして、どうしてこうなるんだよ!! 僕は、その場から逃げ出した。 くそっ、どうして逃げなきゃならないんだ! 心中で悪態をつきつつ、ひたすら走る。 ここは森だ。ゆえ、落ち葉と下草の所為で、足場が非常に悪い。 警官もよくこの中を走ってこれるものだ。 そういう自分も、普段は滅多に運動しないくせに、よく走っている。 『人間は、普段なら自分の持つ力の80%までしか出せないが、本能が危機を感じると120%もの力が出せる』 という話をどこかで耳にしたことがあるが、まさにその通りなのかもしれない。 逃げねば。逃げねば。その衝動が、自分を加速させている気がした。 と、その時――― っ!? 足先が木の根に引っかかり、転んでしまった。 くそっ、何やってんだ僕は! またすぐに立ち上がりまた走ろうとするも、うまく起き上がれない。どうやら足首を挫いてしまったらしい。 その後間もなく警官に追いつかれ、僕は確保された。 *1-3 結末 僕は逮捕されてしまった。容疑は殺人。今は刑務所の中だ。 僕が確保されて間もなく、現場周辺から血の付いた刃物が発見された。 その血は、被害者の血液と一致。柄には僕の指紋が付いていたそうだ。 最初は、そんな馬鹿な話があってたまるかと思っていたが、現実は非情だ。 また、事件の前日にあの森の近辺で「僕と同じ服装の人を見た」と証言する人が、複数人居るそうだ。 どうやら僕は、誰かに嵌められたらしい。 こうして僕は、罪人になった。 今勤めている会社は間違いなくクビになる。 僕は一体、どこで何を間違えたというのだろうか。 今はただ、真犯人を恨むことしか出来ない。 (終わり?) キーワード:目覚め/川/犬/カフェ

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