「令呪を以て命じる! セイバー、全力でバーサーカーを迎撃しろ!」

 何をも映し出さない深淵が如き澱みを湛える視線に晒された瞬間、アンジェリカは躊躇することなく己が持ち得る切り札を開帳した。
 アンジェリカの宣誓に呼応するように、彼女の右手に刻まれた紋様から赤い光芒が浮かび上がる。同時、三つの赤線が絡み合った紋様の内一画が消失し、次いで膨大な魔力の奔流がアンジェリカの周囲を迸った。

「へぇ」

 感心する呟きを漏らす白髪の少年、バーサーカー。その背に追い縋るかのように、歪な何かを振り上げた影が躍り出た。アンジェリカが従えるサーヴァント、セイバー・針目縫である。
 小柄な体躯は少女のようで、しかしそんな儚げな印象を裏切るように、針目はその手に自身の身長をも超えかねないほど巨大な長物を握りしめていた。それは刃物の姿をしていて、しかし刀剣の類では決してなく、ただ対象を「切る」ことのみが共通していた。
 片太刀バサミ。何物にも冒されず、切断されることのない生命繊維を断ち切ることのできる唯一にして最強の刃、その片割れだ。
 常人ならば持ち上げることすらできないであろう巨大な鉄塊であるそれを、しかし針目は華奢な片腕のみで、それも軽々と振るってみせた。迫る形相は狂笑に染まり、それは絵面通りの喜悦ではなく敵戦力を殲滅するのだという殺意に満ち溢れている。

「そおりゃッ!!」

 一閃。歪にして巨大な刃が、大気を裂く音と共に空間を断割した。
 その速度は先の比に非ず。音の壁など当の昔に超越して、針目自身すらも残像が見えるほどの超速だ。それは遊びなど度外視した渾身の一撃であったこともあるが、それ以上にアンジェリカの使用した令呪の効能が大きかった。
 アンジェリカの視界に映し出された針目のステータスは目に見えて上昇していた。数値に換算して全ステータスが1ランク、敵排除に最も必要な筋力に至っては2ランク。それだけの莫大なブーストが、針目にはかけられているのだ。
 バーサーカーの排除という、短期的かつ具体的な命令内容。そしてマスターとしては破格の性能を持つアンジェリカの実力が相まった、その結果である。
 しかし。

「対応速度はそれなり。少なくとも、恐慌状態に陥ったり状況を呑みこめなかったりしないあたりは及第点ってところかな」

 既に、そこにバーサーカーはなかった。睥睨するかのような声が聞こえてきたのは、彼女たちの背後。振り返った先には高所に座り込み見下ろす少年の姿。
 起死回生の一撃は、彼の体を捉えることなく空を切ったのだ。

「化け物め……」
「じゃあ君はなんなんだいお嬢さん。人かな、人形かな、それとも魔術師? まさか英雄なんてガラじゃあないよねぇ。
 けどまあ、結局」

 苦々しく吐き捨てられるアンジェリカの舌打ちに、銃弾が装填される無機質な金属音が応えた。
 ルガーが吠える。モーゼルが哭く。
 両手に銃、右目に眼帯。昼光に輝く銀髪の下、見開かれた碧眼は決して満たされぬ飢えと渇きに狂った獣。
 人の姿をした狂獣が、今その口を開き。

「君らに明日がないということに、変わりはないんだけどね」

 同時、二つの銃口から等しく轟音が迸った。

「───ッ!?」

 爆発、そして連続する銃撃音。そして否応なく感じ取れる、桁外れと言っていい存在の圧力。
 それらが耳に届くより先に、片太刀バサミを構えた針目の総身が塵屑のように吹き飛ばされた。

「お前ェ───ッ!!」

 常の針目とは思えぬほどに、余裕も遊びも介在しない本気の絶叫。劈く声だけをその場に残し弾かれる針目は、しかし彼女がすべき最低限の役割だけはしっかりとこなしていた。
 すなわちマスターの防御。アンジェリカに照準されていたルガーの弾幕を、彼女は自身の損傷を度外視して片太刀バサミにて叩き落すことに成功したのだ。
 無論、これは言うまでもなく自殺行為である。マスターが死ねば自分も消滅するという大前提があるにせよ、針目自身に照準されていたモーゼルの弾幕は回避も防御もなしに無防備に受けることになるのだから。普通に考えて即死、幸運に恵まれたとしても戦闘能力の喪失は不可避であろう。
 彼女が普通のサーヴァントであったならば。

「ムカつく、ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!!!
 さっきから黙ってればチョーシに乗って! そのクソウザい軍服諸共ボクが切り刻んでやる!!」

 全身に致命の弾丸を浴びたはずの針目は、しかしその弾痕を急速に再生させながら、何らダメージを負っていないかのように地を踏みしめ跳躍した。
 『生命繊維の怪物(カヴァー・モンスター)』。それは針目縫が持つ宝具の真名であり、彼女を構成する肉体そのものであり、そして彼女が未だ生存していられる要因である。
 生まれながらにして生命繊維───宇宙より飛来した地球外生命体たる超繊維を身に宿して生まれた針目は、常軌を逸する生命力と身体能力、そして不死身とも呼称されるほどの再生能力を保持する。
 三ツ星極星服着用者による大規模な破壊に巻き込まれても平然としていられる耐久力、開胸し心臓を抉り出した程度では小揺るぎもしない生命力。それらは針目を針目足らしめる最大の要素であり、最大の武器でもあるのだ。
 宝具として昇華された現在において、彼女の肉体はBランク以上の宝具による攻撃以外では傷一つ付かないまでの鉄壁を誇っている。ばかりか、本来なら致命傷となるほどの傷を負ってなお即座に修復されるほどの再生能力までも兼ね備えているのだ。
 最強の盾に、最強の治癒力。
 こと防御という点において針目を凌ぐサーヴァントなどそうはいまい。これこそが、シュライバーの猛攻を受けてなお全く継戦能力を損なわない理由だった。
 そう、それは事実であるのだが。

「うふ、うふふふふはははははははははははははははは───」

 針目の全霊を賭した突撃刺突を、しかしシュライバーは躱すことさえしないまま、軽く銃口を向けることで容易に対処した。
 尚も断続的に鳴り響く銃撃音、数えることも億劫なほどに繰り出される無数の銃弾。
 豪雨のように降り注ぐそれを甘んじて受けるしかない針目の肉体は、その瞬間血袋が弾けるように大量の鮮血をまき散らした。

「ガ、ハァ……!?」

 慣性に従って崩れ落ちる針目の膝、そして急激に修復される肉体。しかしその治癒が終わるより先に、横殴りに押し寄せる銃弾の波が針目を右方向へと弾き飛ばした。
 針目の肉体は高ランクの宝具以外では傷つかない。しかし、現実としてシュライバーの魔弾は再生能力と拮抗する程度とはいえ、針目の肉体を傷つけることに成功していた。
 真っ当に考えて正気の沙汰ではないだろう。何故ならシュライバーが持つ二挺の拳銃は、宝具などでは決してないのだから。
 ならばこれは防御効果や加護の類を貫通する特殊スキルの恩恵なのか。それとも他の宝具によって強化された代物であるのか。
 いいや違う。そういった特殊性を、シュライバーは保持しない。
 シュライバーの放つ銃弾が針目を傷つけられる理由は単純にして明快───そこに込められた威力と魔力の桁が違っているという、そんな子供の理屈じみた悪夢的な事実なのだ。

「そらどうした人外のセイバー。君はその程度でボクと聖杯を競う気か?」

 銃口をこちらに向け、天真爛漫に笑うシュライバー。しかしその目は狂熱で煮えたぎり、殺戮への欲求で満ち溢れている。

「つまらない戦場しか宛がえない劣等はいらないなぁ。ボクに触れることもできないノロマの愚図が、一端に英雄を気取ろうなんて百年早い」

 瞬間、シュライバーの姿が文字通り掻き消えた。
 同時に巻き起こる極大規模の衝撃波。車が、電柱が、周囲の民家に至るまで何も見えないのに弾き飛ばされていく。子供が持つ玩具のように、紙ふぶきのように。あらゆる物が宙に舞った。
 そこで針目は直感した。敵手は消えたのではない、ただ高速で移動しているだけなのだと。
 音など遥か置き去りにして、奴は空間を三次元的に飛び跳ねている。その後を追うように発生する、爆撃じみた衝撃波。ただすれ違っただけで車が吹き飛び、足場にされただけで民家が砕け散る。
 針目はそこに、暴風雨の影を見た。死をばら撒く嵐の化身。そんな荒唐無稽なイメージが、無意識に針目の脳内に浮かび上がった。

「───ッ!?」

 一際大きな衝撃と共に、足場となる大地が陥没して土砂が舞う。
 直径にして30m、それだけの範囲が一瞬で破壊された。攻撃ではない、単なる移動と踏み込みの結果としてそれが成されたのだと、アンジェリカと針目は否応なく理解させられた。
 見上げた上空───彼方に見えるビルすら飛び越えた高みの空に、シュライバーはいた。

「───アハ☆」

 その光景を前に、しかし針目はその顔を悪辣に破顔させた。それは一縷の勝機を見出した者の貌であり、同時に下手を打った相手を嘲笑する笑みでもあった。

「いつまでもいい気になるなよ……下等な猿風情がァ!!」

 瞬間、吼えた針目の姿がブレた。高速移動したときの残像のように、重なるが如く像がいくつにも分裂した。しかもそれは左右どちらにも、何処までも伸び続け、一瞬の後には無数の針目たちによる隊列が出来上がっていたのだ。
 それは残像などではなく、れっきとした実体であった。針目と寸分違わぬ精巧な分身が、ただの一瞬で無数に出現したのだ。

「そぉれっ!」

 無数の針目たちは次々と跳躍すると、その腕から赤く細長い一本の糸を伸ばした。それは中空にて絡み合うように複雑な模様を描き、空一面を覆うかのような巨大な網を作り上げる。
 精神仮縫い───接触した相手の意識を乗っ取り、自在な操り人形とする針目の技である。
 物理的な破壊能力こそ皆無だが、ただ触れただけで相手を行動不能にできるという性質上、それは単なる攻撃よりも余程厄介な代物だ。それを針目は、無数の分身たちに一斉に使わせることにより、疑似的な糸の結界として機能させたのだ。
 触れれば終わる糸の檻。それが、宙へ浮かび上がったシュライバーを完全に包囲していた。

「震えて叫べゴミカスザル! キミはボクが屈服させてやるんだから!」

 そうして針目は作り上げた糸の球体結界を、急速に縮小させることでトドメとした。例えあの銃撃で結界の一部を砕かれようが、この数の分身が放つ糸の多重奏が即座に欠損を修復する。糸に触れずに脱することなど絶対不可能!
 どれだけ強い力を持とうが、どれだけ早い足を持とうが、所詮地球の類人猿が生命繊維の申し子たる己に勝てるはずもなし。
 人形のように踊らせて、奴自身の手で自壊させてやる!

 けれど。

「泣き叫べ、劣等」

 蒼天に輝く赤い巨大球体が唸りをあげるその中で。
 声だけが、不思議と響き渡り。

「今、この場に奇跡は存在しない」

 ───轟音と。
 ───衝撃と。
 ───砕けて舞い散る、赤い糸の欠片たち。

 生命繊維の球体結界の一部が吹き飛ばされ、そこから小さな一つの影が躍り出た。それは見るも武骨な軍用バイクに跨り、地上を走るはずのそれを何故か中空にて駆りながら。
 唖然とした針目の視界の端に、今も落ちゆく糸の欠片が映った。それはバーサーカーが巻き起こす衝撃波に巻き上げられて、儚くその身を華と散らせた。

 呆けたような針目を後目に、アンジェリカは無銘のクラスカードを湯水のように使い捨てることで辛うじて衝撃波からの防衛を成立させながら、その思考を目まぐるしく回転させる。そしてたった一つの決定的な、それでいてあまりにも遅すぎる答えを導き出した。

(駄目だ、こいつは我らの手に余る───!)

 開戦当初、アンジェリカはこの場で白髪のバーサーカーを打倒する腹積もりであった。それは自分とセイバーの実力に相応の自信を持っていたことも確かだが、それ以上にこのバーサーカーを見逃すなど許せないという私的な感情もあった。
 何故ならこれは災害そのものだ。例えこの場を逃れたとしても、奴は必ず自分たちを地の果てまで追ってくる。何の根拠もありはしないが、何故かそのことをアンジェリカは確信を以て断言することができた。
 だから自分たちが助かるには、この場でバーサーカーを殺害する以外にないと考えた。如何に性質が邪悪であろうとも、自身が従えるセイバーは間違いなく一級のサーヴァント。そこに令呪によるブーストを施せば、勝利する見込みもあると、そう考えた。
 その認識はあまりに甘かったのだと、アンジェリカは遅すぎる後悔を抱いていた。
 残る令呪は二画。裏切りの可能性を考慮すれば使えるのは実質あと一回のみ。しかしその一回をセイバーの強化に充てたところで、現状の打開は厳しいと判断する。
 故に、取るべき手段は一つだった。

「令呪を以て命じる……!」

 再び無銘のクラスカードによる魔力障壁を具現し、それがコンマ一秒と経たず微塵に砕けるのを視認しながら、アンジェリカは右手を翳し言い放った。
 赤い光芒が、眩く輝く。

「セイバー、私ごと安全地帯まで離脱しろ!」

 瞬間、今まさにバイクによって轢殺されようとしていたセイバーの体が魔力の光に包まれたかと思うと、目にも止まらぬ速度でアンジェリカの元まで急行。次いでその光は流星となって戦場跡を飛び去った。
 敵バーサーカーに勝利することは困難。ならば取るべきは逃走の一択である。
 令呪による離脱行為。それは時に時空の壁をも突き破るほどの力を持ち、故に追い縋れるサーヴァントなど存在するはずもなく―――



「ああ、なんだ。やっぱり君ら敗北主義者かい。諦めが早すぎて悲壮感に欠ける」



 針目に抱えられ、中空を翔けるアンジェリカの耳に。
 不意に、そんな言葉が届いて。



「そんな絶望じゃあ安すぎる。悲劇としても喜劇としても、陳腐に過ぎていけないじゃないかァ!」



 全身を貫く衝撃と共に、アンジェリカの意識は漆黒に閉ざされたのだった。





   ▼  ▼  ▼





「これは、酷いな……」

 呟かれたのは、みなとの半ば呆然とした言葉だった。
 植物園での戦闘を終えて暫し、次なる拠点と敵サーヴァントを求めて歩んでいた彼の耳に轟音が飛び込んできたのは、つい数分前のことだ。
 即座に金色の杖を取り出し駆けつけた彼の目の前に広がっていたのは、見るも凄惨な破壊の爪痕であった。

 見渡す限り、全てが破壊されていた。
 舗装された道路、軒を連ねる家々、安置された公的な設置物。それらが皆粉々に砕かれ、あるいは吹き飛ばされ、地面は月面のクレーターのように抉られて無残な土色を晒していた。
 この様子では生存者など期待できまい。恐らくは運よく巻き込まれずに済んだ近隣の住民が、何かしらの通報をしているだろうが、その類の喧騒も今は遠いどこかの話でしかなかった。

「……」
「どうかしたのかライダー、もしかして敵の気配が……ッ!?」

 唐突に実体化したライダーに尋ねようとしたみなとはしかし、次の瞬間には自身に叩きつけられる殺気に振り返ることを余儀なくされた。
 反転した視界の先、前方およそ10m。そこには瓦礫を椅子にした白髪の少年が、左手に赤色の何かを掴みながら、ひらひらと親しげに右手を振っていた。

「やあ、マキナ。久しぶりじゃないか。現世(こっち)の感想はどんなもんだい?」
「……」

 あくまで親しげに、覗き込むように言葉を紡ぐ白髪の少年───シュライバーに対し、マキナと呼ばれた黒衣の偉丈夫は無言のままだった。
 アハハと笑う姿は子供のようで、天真爛漫という言葉がよく似合う。しかしそんなシュライバーを前に、みなとは親近感ではなく眩暈を覚えた。
 少ない人生経験と対人経験しか持たないみなとでも分かる。これは、駄目だ。
 一言で言えば、シュライバーは殺気の塊だった。屈託なく笑っているものの、この少年には殺意しか存在しない。何よりみなとの視界に映し出される少年のクラスが、狂戦士を示すバーサーカーであることが、その異常性を何より雄弁に語っていた。
 人型を取って、言葉を話し、服を着込んでいるだけの異物。それがこのバーサーカーの本質だ。如何に言語を解そうと、これとコミュニケーションなど取れはしまい。

「……し、て……や……」

 そこで、みなとは初めて"それ"に気付いた。
 バーサーカーが持つ異質な気配、突きつけられる殺気の多寡。そうした諸々によって視線はバーサーカーへと釘づけになっていた故に、気付くのが若干遅れてしまったのだ。
 それは、バーサーカーが無造作に下げた左腕に掴みあげられた、真っ赤な色をした大きなもので……

「ボク、は……殺し……」

 それは、最早原型を留めないほどに破壊し尽くされて。
 下半分が千切れ消失していたけれど。
 胴も半ばで分断された少女の上半身であると、そこでようやくみなとは気付いたのだった。

「僕のほうは、まあそれなりに楽しんでいるよ。何せこの六十年死体ばかり殺してきたんだから欲求不満でね、取るに足らない劣等でも暖かい血と肉の感触は良いもんさ」
「……お前が」

 そこでようやく、マキナは重い口を開き。

「お前がいるということは、これはハイドリヒの差し金か」
「そうでもないんだなぁこれが。少なくとも僕は誰の命令を受けたわけでもない。単なる余興みたいなもんさ」

 傍らにある異常物など歯牙にもかけず、二騎のサーヴァントは知己のように会話を続ける。
 しかしそこに親しさなど皆無だ。バーサーカーは変わらず殺気だけを放ち、マキナもまた相応する覇気で以て応じている。

「けど、一つ言えることがある。僕と君がここにいるんだ、ならザミエルがこの街に招かれていない理由なんてない」
「……随分と悪趣味なものだ」

 黒騎士としては珍しく、苦々しく吐き捨てるような口調に、バーサーカーの白騎士は苦笑の響きだ。

「そう言うなよマキナ。折角の機会なんだ、ここらでいっそ……」
「お前、ら……し、て……」

 その時、微かな囁きが風に乗って、みなとの耳にまで聞こえてきた。

「ムカ、つく……ふざけ……切り刻……」
「……」

 困ったような笑みを浮かべ、白騎士は左手を目の高さまで持ち上げる。
 少女の頭髪は掴んだまま。

「ねえ。僕は今、彼と話をしているんだよ。ちょっと後にしてくれないかな」
「ふざ、けるなぁ! こんなにしやがって、お前は……!?」

 衝撃音。
 顔面に、右拳がめり込んだ。

「後にしてって、言ってるだろ?」
「ぐ、ガァ……」

 あまりに突然の暴挙に、みなとは反応すらできなかった。マキナは言葉なくそれを睥睨していた。

「ああ、悪いねマキナ。そういうわけでさ、本当なら今ここで君と殺し合ってもいいんだけど、ザミエルがいるってんなら話が別だ」

 バーサーカーが手を離し、支えを失ったセイバーの少女が呆気なく地に落ちた。血だまりにぶつかる湿った粘質音。地に伏せる頭蓋を、バーサーカーの足が勢いよく踏み砕いた。
 血飛沫と脳漿のコントラストが、バケツの水をぶちまけるかのような音と共に、水面に跳ねる波紋のように地面に広がった。

「僕らが雌雄を決するのは今じゃない。ザミエルが揃って、僕ら三人が乱れ狂う。それこそが決着に相応しい舞台だ」
「首級を競うというのか」
「その通り。僕らはハイドリヒ卿を楽しませる楽器だ。それが、こんな辺鄙な場所の辺鄙な場面で潰し合っていいはずがない。騎士たるもの、死ぬならば相応のものが必要だろう?」

 言って、バーサーカーはここで初めて、みなとのほうへと向き直り。

「やあ初めましてマキナのマスター。そういうことだから、今回だけは君のことを見逃してあげるよ。精々死なないように頑張ってよね」

 ───声がみなとに届いたかという、その瞬間には。

 既に、この場からは白髪のバーサーカーの姿が消え失せていた。

 反応はおろか、視認することすら叶わなかった。"魔法"を手に入れたみなとは、超音速の移動にも耐えうるようにその反応速度も強化されているにも関わらず。
 無意識に、その頬を汗が伝った。

「……ライダー、今のは」
「聖槍十三騎士団黒円卓第十二位、大隊長。ウォルフガング・シュライバー」

 そこでライダーは言葉を切って、彼にしては珍しいことに、辟易したかのような感情の色を含ませながら。

「……どうしようもない、狂犬だ」

 いずれ必ず激突するであろう敵の名を、みなとに告げたのだった。



【アンジェリカ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡】
【セイバー(針目縫)@キルラキル 消滅】



【D-3/破壊された街/一日目・午前】

【みなと@放課後のプレアデス】
[令呪]三画
[状態]魔力消費(極少)
[装備]金色の杖
[道具]
[所持金]不明(詳細は後続の書き手に任せます)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の奇跡を用い、自らの存在を世界から消し去る。
0:どこか休まる場所を探したい。
1:聖杯を得るために戦う。
2:次に異形のバーサーカーと出会うことがあれば、ライダーの宝具で以て撃滅する。
[備考]
直樹美紀、バーサーカー(アンガ・ファンダージ)の主従を把握しました。
バーサーカー(ウォルフガング・シュライバー)の真名を把握しました。


【ライダー(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)@Dies Irae】
[状態]健康
[装備]機神・鋼化英雄
[道具]
[所持金]マスターに依拠
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯獲得を目指す。
1:終焉のために拳を振るう。
[備考]
バーサーカー(ウォルフガング・シュライバー)を把握しました。ザミエルがこの地にいると確信しました。


【バーサーカー(ウォルフガング・シュライバー)@Dies irae】
[状態]健康
[装備]ルガーP08@Dies irae、モーゼルC96@Dies irae
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し。
1:サーヴァントを捜す。遭遇次第殺し合おうじゃないか。
2:ザミエル、マキナと相見える時が来たならば、存分に殺し合う。
[備考]
みなと、ライダー(マキナ)を把握しました。ザミエルがこの地にいると確信しました。


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025:幸福の対価、死の対価 投下順 027:抽象風景
017:旅路 時系列順 018:狂乱する戦場(前編)

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016:白狼戦線 アンジェリカ GAME OVER
セイバー(針目縫)
バーサーカー(ウォルフガング・シュライバー) 032:血染めの空、真紅の剣
015:機神英雄 みなと 036:夢は巡る
ライダー(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)

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