PREV:目醒めのルサールカ(前編)






 愛してください。僕は男じゃないけれど。

 愛してください。僕は女じゃないけれど。

 愛してください。僕は出来損ないだけど。

 貴方たちのことが好きなんです。





   ▼  ▼  ▼





 異形都市に舞い降りる白い御使い。
 その容姿は天使のようで、されどその精神は狂った魔獣。
 魔人揃いの黒円卓で、至上最も人類種を殺戮し尽くした者。

 聖槍十三騎士団黒円卓第十二位、ウォルフガング・シュライバー=フローズヴィトニル。
 狂乱の白騎士が、星屑によって乱される蒼月の輝きを背負い、赤薔薇王の前に顕現していた。

 弦月に歪む口で見下ろすシュライバーへと、ストラウスはただ静かに。
 言葉を告げる。それは停戦の意味を持てども、敵意の絶無であることを示すわけでは決してなく。


「生憎と、私は無意味な戦いはしたくない性質でね。大事の前に余計な消耗は控えたい。
 退いてくれ、と言われて素直に退いてくれるなら嬉しいんだが」

「く、ふふ……」


 言葉になっていない含み笑いが、返答の全てを物語っていた。見逃すなどありえない、眼前の凶獣は認識した存在を皆殺しにしなければ気が済まないのだ。
 それは例えば、星屑へと突貫しようと猛るアストルフォへ向けて、遥か遠くよりその殺意を滾らせていたように。
 愛も、憎しみも、この獣にとってあらゆる感情は殺害へと結びつく。無関心などあるはずがない。ウォルフガング・シュライバーという狂人は、殺害という手段でしか他者と関わることができないのだ。


「白騎士の名を知っておいてまだそんなことを聞くのかい? 僕にそんな道理が通じるとでも思ってんならご愁傷様、君がここで死ぬのは確定事項だ。
 まあ君がどこの誰でどうやって僕のことを知ったかなんてどうでもいいんだけどさ、その涙ぐましい努力もここで水の泡だ」


 案の定、シュライバーの答えなど決まりきっていたらしい。そうと分かっていたからこそ、ストラウスは彼を引きつける殿としてこの場に残ったのだ。
 月を背後にその燐光を受けるシュライバーは、その口許に笑みをこぼす。しかしそこに親しみの湧くような要素は欠片とて存在しない。
 まともな理性、まともな思考、まともな精神を持つ相手ではない。あるのはただ、煮え滾る殺意と糜爛した愉悦。
 強者と血の臭いに狂乱した、最悪の嵐そのものなのだ。


「ああそれとも、逆に僕を殺してみせるかい?
 どんな御大層な大義名分を掲げても、結局は力で押し通さなきゃ叶わないのが世の常だ。弱けりゃ死んで強けりゃ勝ち残る、至極単純で当たり前の理屈だよ。
 君が僕を退けたいなら、その剣で首でも刎ねてみるといいさ」


 自分の首に親指を当て、見せつけるかのように横に引く。できるわけがないだろうと、嘲笑も高らかにそう言っているようでもあった。


「できるもんなら、だけどね」


 くつくつと、シュライバーは侮蔑を隠そうともしない口調で語りかける。会話の体を取ってはいるが、彼にとってストラウスとのやり取りは対等な会話ですらない。これから潰す虫に対して、気紛れに話しかける退屈凌ぎでしかないのだ。相手に知性など期待していないし答えなんか聞いちゃいない。
 ただ、彼は誇っているのだ。地を這う虫を踏みつぶすことで自分が大きく偉大な存在であるのだと確認するのと同じく、足を上げる前に大仰な演説でもするのと同じく。
 ストラウスへの言葉の全て、結局はそうした自己愛の発露に過ぎない。


「お前を倒す、か」


 真っ向からぶつかる視線と視線。侮蔑と優越に染まるシュライバーの目は、しかしまさしく凶眼だった。
 人も獣も、そして知る限りの吸血種でさえも。あんな目はしていないと断言できる。
 極大の殺意と嗜虐性に憑りつかれた昆虫の眼光。この世に真に悍ましいものがあるとすれば、この目とそれを生み出した人生そのものに違いない。
 常人ならば視線に宿る殺気だけでとうに気を失うか、あるいは狂死しているだろう。英霊であっても生半な相手ならば五体無事で済むかどうか。
 侮れる道理はない。これを前にしては、誰もが死を目前とした構えを取ってしまうだろう。


「容易い。お前はありふれている」

「……はぁ?」


 しかし。
 ストラウスの返す言葉の、なんとあっけらかんとしたものか。シュライバーは思わず呆けた声を上げてしまう。

 今、こいつは何と言った?
 容易い、ありふれている。誰が? ───僕が?
 この僕を、死なずの英雄を、超人より錬成されし魔人集う黒円卓にあってなお隔絶した力を持つ、三騎士の一角たるこのウォルフガング・シュライバーが?

 凡俗であると。
 劣等であると。
 今、こいつはそう言ったのか?

 だとすれば、それは───


「……んー、残念だったね。とりあえずそういうのには引っ掛からないぞって言っておこうか」


 努めて冷静なまま、シュライバーは嗤いを顔に張り付けて言ってのける。出鱈目な躁鬱の落差と嵐のような暴力を振り回す気質ではあるが、しかし彼は馬鹿ではない。
 というよりも、あまりにも単純すぎて外部からの影響を受けないのだ。壊れた理性は共感を知らず、他者の心理を現象として受け止めている。例えば優れた狩人が、動物の言葉こそ分からずとも、その習性や動きの法則性を理解するように。シュライバーという男は殺した人数と浴びた血の数だけ、人類という獲物を知り抜いている怪物なのだ。
 故に、罵倒や挑発といった心理戦は意味を為さない。いつでも潰せる虫に何を言われたところで人は怒りを覚えないのと同じように、彼は他者という存在をそのように認識している。


「ま、君が何を根拠にそんなこと言ったのかなんて興味ないけど、そのカールクラフトみたいな減らず口を黙らせるってのも悪くないね。あいつには───」


 そして、これ以上喋らせてはいけない。
 話せば胸糞悪くなるとかそういう問題ではない。これ以上シュライバーから言葉を引き出せば、内に秘めた何かが露出する。
 恐らくシュライバー本人も気づいておらず、自覚もしていないドロドロに爛れた感情の腐汁───
 それが滾々と漏れ出していることに、ストラウスは気付いていた。
 故に。


「出来損ないって言われたんだ」


 黙れ、もうそれ以上喋る必要はない。
 中空に生成した魔力弾を宣告なしに射出する。魔力の爆発と共に放たれた弾丸は───


「お前なんか、お前なんか、お前なんかがいい気になるな。男のくせに男のくせに、私のほうが綺麗なのに女なのに……」





「お前なんか、出来損ないの化け物じゃないか───!」





 瞬間、爆音を弾けさせてシュライバーの姿が掻き消えた。


「そうだよ、僕は女じゃないが男でもない! そんな普通の枠に囚われるようなちっぽけな存在じゃない!」


 続く衝撃は絶叫に先んじ、ストラウスの立つ地面そのものが圧し潰され、深く巨大なクレーターに陥没する。


「───」


 衝撃と余剰魔力と粉塵によって掻き消される空間にあって、ストラウスは何も行動に移さなかった。いや、できなかったのだ。シュライバーが行ったのは技術も何も存在しないただの体当たり。しかし余人は愚かサーヴァントの動体視力ですら視認の叶わない速度のそれは、まさしく砲弾の一撃である。
 全壊し堆積したかつてホテルだったコンクリ塊の瓦礫が、一斉に吹き飛ばされゴミのように空を舞った。激震が周囲を伝わり、バリバリと振動する大気が轟音となって地平線まで駆け廻る。


「女だったムッターは殺した。男だったファーターも殺した。小さい子供も老いさばらえた年寄も、みんなみんな殺しまくった!
 死ぬんだよ、あいつら簡単に死ぬんだ! ちょっと首を掻っ捌いてやったり頭を銃でぶち抜いてやったりするとさァ!
 じゃあ僕は! 殺し続けても死なない僕はいったいなんだ!? そんな下等な連中とはわけが違う!」


 狂える白騎士は止まらない。敵対象の姿が砂塵に紛れ見えずとも、魔力反応で今確かにそこにいると分かっている故に攻撃の手は休まらない。
 空間を乱反射する光線の如く、慣性の法則すら置き去りにして駆け回り手に持つ銃からは無数の銃弾が射出される。一度の交錯毎に地面は割れ、建築物の壁面が巨人の槌でも受けたかのように陥没し、後追いで発生するソニックブームで真横を通り抜けられた物体は悉くが粉微塵となってばら撒かれた。
 ただの一瞬で、閑静な通りに面するホテルの周辺は見渡す限りが更地と化して崩壊した。
 天を衝くような轟音がそこかしこに鳴り響き、大質量が如き衝撃波が大地を抉る。視界の彼方まで一直線に大地が爆ぜ、直撃した民家が文字通りに紙屑のように宙へと舞った。
 これほどまでの大破壊が、軍や城塞ではなくただ一人の人物へと向けて放たれているのだと、一体誰が信じられるであろうか。しかしそれが現実なのだ。一挙手一投足が宝具の一撃に匹敵する破壊の嵐、しかしそれすらシュライバーにとっては余技ですらなく、手足を動かす際の空気の揺れと同程度でしかないという事実が恐ろしい。

 魔速に霞むシュライバーの顔が喜悦に歪む。強大な己を誇るように、そしてその力を以て他者を轢殺する優越に浸るかのように。


「僕は不死身の化け物なんだよ! 男でも女でもない僕は子を成せず孕ませることもできない、つまり種として完成されてる世界に僕一人だけの完全無欠の生命体!
 たった一人で生きられる僕は、つまり死なないってことなんだよォッ!!」

「なるほど。それがお前の信仰か」


 声と同時、空間を断ち切る一閃がシュライバーを襲う。
 まき散らされる衝撃諸共断割される空間を、一足飛びに宙を駆け抜け回避するシュライバーは、それを見た。

 ストラウスは一歩すら動くことなく、膝を屈することさえなく未だその場に立っていた。
 無傷だった。今まで暴風のような攻撃に晒され続けたはずのストラウスの総身は、傷はおろか細かな汚れすら付着していない。並みの英霊なら一撃毎に十度は死んでいる破壊の嵐、そよ風にすら劣るとでも言わんばかりにストラウスは視線を強めて。


「随分と幼稚なものだ。特に意外性もない」

「……ムカつくなぁ。それ、僕の一番嫌いな目だ」


 猫撫で声は悪辣で、そして敵意の塊だ。絞り出した声は怨嗟が詰まっており、怒りが可視化されてまるで炎のよう。
 だがしかし、殺意を浴びるストラウスは動かない。ただ常と変らぬ鋭い視線で、狩人の側であるはずのシュライバーを下らぬものだと見つめていた。

 怯えもしない。狼狽えも、身構えさえ不要。淡々とこちらを観察する無機質な眼光。
 観察者の瞳がシュライバーの神経を逆なでする。こちらを見下し、一挙一動を値踏みしているかのような立ち振る舞い。
 所詮は狩られる立場に過ぎない雑多な獲物が、何を一丁前に狩人を気取っている。
 ああ気に入らない。気に入らないぞ劣等。不愉快にも程がある。
 技術だの武術だの、せせこましく効率を追求していたらこんな瞳になるのだろうか。
 ならばやはり自分はお断りだ。ただ圧倒的に、容赦なく、超越者としての純粋な強さで以て駆逐するのみ。

 だってそうだろう?
 せっかく人を超えたってのに、なんで今更習い事などしなきゃいけない?
 自分たちは人を超え、常識を超え、特別な存在になったが故に高みへと飛翔したのだ。


「その薄汚い口閉じてさっさと死になよ劣等。いい加減うざったいからさ」


 抜き打ちで銃を揮う。認識すら追いつかない超速で攻撃動作を終えたシュライバーの手から、魔弾としか形容のできない銃弾が百では利かない数で以て撃ち出された。
 聖遺物の起動は必要ない。黒円卓の魔人さえ一撃のもとに打ち砕く銃弾は、猛禽が如き鋭さでストラウスの総身へと迫る。
 音さえも風圧で切り裂くだけの速度、破壊力。
 人体など、これにかかれば紙細工。それが例えサーヴァントのものであろうとも、単純な頑健さでこれを上回る存在などそうはいない。


「もう一度言おう。やはりお前はありふれている」


 しかし。
 しかし、それでも銃撃はストラウスを穿つことはなく。
 その手前の空間で弾かれる。黒きものに阻まれて、その身に秘めた暴威を発揮すること叶わない。

 彼の影が揺らめく。
 彼の影が不気味に伸びあがっていく。
 言葉に応じるかのように。
 意志に応じるかのように。
 それは影だ。漆黒の、彼が手繰る魔力の形だ。

 それは、黒く。
 それは、昏く。
 それは、荒ぶる魂の具現として。
 白騎士から放たれる破壊を、触れるものすべて砕き崩す衝撃と銃撃とを受け止め、泡と消しながら押しとどめる。
 砕かれようが押し寄せる。
 崩されようが押し寄せる。
 それは底のない無尽蔵の力として、彼の総身より放たれる。


「人を殺し、魂を吸い上げ、魔人となったお前は『自分だけは特別』だとでも思いこんだか。
 人を超えたと? 他人とは違うのだと? ああ聞き飽きた、"お前たち"はいつも同じことを口にする」


 告げるストラウスの表情は、能面のように冷たい無表情だった。
 侮蔑浮かべるシュライバーとは対照的だ。彼の裡には嘲りも、義憤も、怒りすらない。目の前の存在にそうした感情を抱くだけの価値を認めていなかった。
 どこまでも取るに足らない、哀れで、つまらないものを見る目。


「正直に言えば、私はお前のように人を捨て力を得た類の連中は見飽きた。そして、彼らは皆口を揃えて同じことを言っていたよ。
 誰もが自分は人間でないと言い、誰もが人を超えたと言い、誰もが自分は特別な枠にいるのだと言う。
 揃いも揃って判を押したように、お前のような者は掃いて捨てるほど溢れかえっていた」


 故にありふれている。
 特別に憧れた普通。枠を超えた絶対者の吹き溜まり。この世にただ一つの希少が溢れかえる溜まり場。全てが矛盾している。
 特別という言葉の安売りだ。何十万といるありふれた害虫の一匹が、害虫らしく行動しているだけに過ぎない。珍しくもなんともない。
 男女の垣根を超えたが故に自らは唯一無二だとする思想はシュライバー以外に持たない? ───くだらない。
 そんな取ってつけたような小さい考えなど、彼が得たという特殊性の片鱗にすら及ばない。それすら、大海に落ちた雫の一滴にまで希釈される。


「父母を殺したと言ったな。男のくせにと、女である自分には及ばないとでも母親に言われたか。
 幼少期の性倒錯環境と日常的な暴力行為、シリアルキラーとしては典型的な見苦しい経歴だな。やはり凡俗だよ、見るべきところがない」


 その言葉を最後に、断続的に響き渡っていた発砲音が、ぴたりと止んだ。ストラウスの周りに落ちる銃弾が、カラカラと澄んだ音を立てる。
 彼に向かって射出された銃弾の数は、今や千を超え数万もの大台に突入していたが、その一つすら彼の体を傷つけること叶わず影によって阻まれた。
 ストラウスに銃撃は意味を為さない。こんなものでは彼を倒すことはできない。
 それを悟ったシュライバーは───しかしそんな道理など思慮の外に投げ飛ばして、叫ぶのだ。


「……いいだろう。これを見てもまだその悪態をつけるなら、認めてやってもいい。けどまあ───」


 噴き上がる黒煙の向こうより響くは、不吉そのものである声。
 怒りに震えるでもなく、驚愕に慄くでもない。
 静か、ただどこまでも静かな声。

 そのはずであった。けれど次瞬、含まれる純粋な殺意は激する炎のように燃え盛り。


「その時には潰れた挽肉になってるだろうけどさァッ!」


 ───帳が、魔獣に引き裂かれるが如く四散した。


「…………」


 吹き荒れる裂波に煙も砂塵も弾かれる様を視界に収めながら、ストラウスは敵手の繰り出した一手の正体を見極めるより早く、一瞬にして周囲に満ちた臭気に眉を顰めた。
 血の臭い、何千何万ではきかない。
 万単位の人間を地獄の苦悶の元に引き裂いて磨り潰し、阿鼻叫喚で飽食した人食いの末路がそこにはあった。

 頭上、白亜に彩られた異形の空にひと筋の流星が閃く。目で追えないほどに速く、大群体の星屑たちに比べるとあまりに小さく、そしてあまりに速い物体が、縦横無尽の夜空を駆けまわっていた。
 そして"それ"が星屑の海に接触する度に、雷鳴めいた爆轟を響かせて破砕・爆散させ、一分の隙間もない空に網の目のような空隙を作りだしているのだ。
 切り裂かれる大気の絶叫、魂まで凍らせる咆哮は、可燃性の血に猛るエグゾースト。
 主と同じ単眼の光芒(ヘッドライト)が、闇夜を裂いて地上を照らす。

 ───永劫破壊第二解放、形成位階。

 ドイツの軍用バイク、ZundappKS750を素体としたこの聖遺物は生まれ自体は近現代であり、積み重ねた神秘は極めて薄い。
 代わりに、本来ならば宝具になり得ないただの機械でしかないこのバイクは、足りない霊格を常軌を逸した血肉で満たし、無理やりに聖遺物と押し上げたのだ。
 神秘の代わりに血と怨嗟を。
 概念の代わりに魂と絶望を。
 "聖なるもの"という言葉から連想される一般的なイメージとは異なり、より直接的に幾多もの戦場に使われたこの宝具は、聖性や荘厳さとは無縁であるものの通常の聖遺物を遥かに凌駕する剣呑さを持つ。
 それも当たり前だろう。伝説に謳われ宝物庫で錆びついた古いだけの骨董品より、より洗練されより効率的に敵を殺すことを考え作られた現代の兵器のほうが殺傷力で上回るのは当然である。

 戦争のために生み出され、その存在証明として血肉を貪る鋼の魔獣。
 その巨躯が地上の一点、すなわちストラウスを射抜くように照準し。


「真名解放、暴嵐纏う破壊獣(リングヴィ・ヴァナルガンド)───潰れろ、砕けろ、粉々に砕け散って死ね!」


 ───不可視の流星と姿を変えて、突貫した。

 白き怪物が吼え狂う。
 蠢き、天空に坐する白き星々の残骸の悉くを吹き飛ばして。

 それは恐るべき殺意の咆哮。
 それは恐るべき呪詛の咆哮。
 人の意志と思考を凍らせ、のみならず物理的な破壊能力すら獲得した魔性の音撃。

 ただの咆哮のみで周囲のすべてを砕きながら。
 ただの移動のみで付随する衝撃が星の軍勢を崩壊させながら。
 直下の街並み、並び立つ家々、大気を構成する細かな粒子に至るまで。
 音の届く範囲にあるものすべて、諸共に砕き消滅させながら。
 縦横無尽に駆け回る。あまりに速く、捉えられる者などいない速度で。
 誰も動ける者はいない。
 人々、誰も。あるいは彼の咆哮により既に命を落として、あるいは精神を凍らされて。

 誰も、為す術なく。
 誰も、逃げることができずに。


「確かに速いな」


 それでも───
 それが絶対の破壊でも。
 それが超越者の理でも。
 赤き薔薇の意志宿す彼の、心を砕くことはできない。

 立ち向かうように前へと立って。
 怯むことさえなく一歩を踏みしめて。
 声、言葉を告げる。高らかに謳うが如く。

 ただ静かに、迫る白銀の流星に向けて。
 その右手を、前へと伸ばし───


「だがそれがどうした。私は最初から、お前の土俵で戦うつもりは微塵もない」


 着弾。


 …………。

 …………。

 …………。










「───なん、だと……?」


 信じられないという響きを湛えた声は一つ。辺りに木霊した衝突の轟音は、零。

 ───ストラウスの掲げた右手が、上空より飛来した機械獣の前輪を受け止めていた。
 風に揺らぐ柳のように柔らかく、接触すれば万物轢き潰すはずの車輪を、いとも簡単に。
 受け止めて、彼は立っていた。僅かな傷すら負うこともなく、ただ悠然と。
 轟音はなく、破壊もなく、一瞬前まで激動の戦闘を描いていたはずの世界は、しかし今は完全に静止したかのように音もなく、その動きを止めていた。


 ───馬鹿、な……


 拭い難い驚愕が、シュライバーの心中を満たした。何故ならこれは、あまりにも想像の範疇を逸脱している。
 エイヴィヒカイトにおける戦闘力は位階が一つ上がる毎に次元違いとなる。先程までのシュライバー、すなわち第一段階である活動位階においての彼でさえ、大隊長以下の黒円卓や並みの英霊程度であれば造作もなく瞬殺できるほどの実力があるのだ。事実、初戦において彼の相手となったセイバー・針目縫は令呪の強化を受けてなおヴァナルガンドの一撃により容易くその命を散らした。しかもそれは真名解放を伴わないただの凶器として運用したヴァナルガンドによる轢殺であり、真名解放まで行使した今回とは比較にならないほどの低威力である。今のシュライバーは比喩抜きで、鎌倉という街そのものを一撃のもとに消滅させることも可能な威力を放出したのだ。
 それが、弾かれるでも避けられるでもなく、受け止められた。それだけではない、余波だけで周辺地形を崩壊させて余りある威力の全てが、最初から無かったかのように掻き消されていた。一体どれだけの異常出力と精密動作性があれば実現し得るのか、18万もの魂の吸奪によって条理を逸した演算能力を獲得したシュライバーでさえ皆目見当がつかない。

 信じられない。
 あり得ない。
 こんなことが、たかが劣等如きに行えるはずがない。

 その一瞬、シュライバーの思考は確かな停止を見せた。100万分の1秒にも満たない、あって無きに等しい僅かな時間。
 しかしそれは、赤薔薇王の前で晒すにはあまりにも致命的すぎる隙であった。


「……あ」


 忘我に追いやられたシュライバーの視界の端で、ストラウスの持つ黒剣が振り上げられた。
 遅い。サーヴァントの基準に当てはめれば疾風の如き速さだが、シュライバーと比すれば亀も同然。シュライバーとその聖遺物たるバイクを狙う一撃を、常の彼なら容易く回避することができたはずだ。
 だが、彼は出遅れた。
 精神を瓦解させる出来事からいち早く思考を回復させ、戦闘用に切り替えて対処してもなお、一手遅かった。それでもシュライバー自身は躱せたが、剣の軌道上から未だ動かせない聖遺物だけはどうしようもない。
 聖遺物の破壊は術者の破壊。
 故に彼は、自分と武装の二つを同時に回避させる必要があり……


「───ッ!」


 瞬間、剣が直撃すると思われたバイクが姿を消した。形成の解除、武装化した聖遺物を概念存在へと還し、自身の中に呼び戻したのだ。
 強制的に位階を下げたことによりスペックもまた比例して低下するが、それでも他を圧倒する迅速は健在。故に何の問題もなし、敵手は千載一遇のチャンスを逃したのだと心でほくそ笑み、シュライバーは改めて殺し合いを再開しようと───


「させると思ったか?」


 疾走を開始しようとするシュライバーの目の前に、小さな漆黒の弾丸が一つ出現する。至近距離から眼球を狙って直接出現した影弾を、シュライバーは紙一重で身を捻って躱す。
 その回避した先に、待ち構えていたかのように新たな影弾が出現する。
 シュライバーの超加速を完全に先回りし、わずかずつのタイムラグをつけて次々と生み出される影の魔力弾。その釣瓶打ちにシュライバーの進行方向は少しずつ逸らされ、いつしか完全に別方向に動かされてしまったシュライバーはついに蹴り出すための大気の壁を失してしまう。
 時間にしてわずか0.1秒足らず、ほんの一瞬の攻防。
 落下しかけたシュライバーがそれでも体勢を立て直し、その口が何某かの文言を紡ごうとして。


「そう、そこで創造位階の詠唱」


 小さく呟いたストラウスが、右手の指を細かに動かす。それに応えるように幾何学的に射出された弾丸がシュライバーの矮躯に殺到。追い立てられるように回避した先に数十の影の弾丸が新たに出現、ちょうどシュライバーが通り抜けられないぎりぎりの間隔を置いて球形の配置に展開し、中空の体を中心に回転しながら全方位から包囲を狭めていく。
 発動が間に合わないと見るや、シュライバーは右手の銃を持ち上げ、目の前の空間に発砲を試みる。
 全く同時のタイミングで、その手の動きを封じる位置に、新たな魔力弾が左右一つずつ出現する。
 シュライバーの動きが今度こそぎこちないものとなる。無理な体勢から手首を返して強引に軌道修正、自分の行く手を遮る弾丸を撃ち落とす。体勢が更に不安定なものとなり、次の瞬間、それでも強引にこちら目掛けて飛びかかろうとしたシュライバーは目を見開く。
 針山のように球形に列を成し、シュライバーを全方位から取り囲む、長さ50㎝を優に超える数百本の影の矢。
 これまでの攻撃とは比較にならない大質量。
 シュライバーは断続的に襲い来る鏃を両の拳銃で必死に撃ち落とし、とうとう圧力に抗しきれなくなったのかこちらを離れ背中向きに落ちていく。


「おま、えェ……ッ!」


 シュライバーの表情が歪む。空という絶対の高みを奪われたことへの怒りと、かの黄金の獣を除けば初めて地に落とされたという屈辱がないまぜになって憤激する。
 銃弾による面制圧はシュライバーもよく知るところの戦術であるが、ストラウスの見せた戦い方は彼自身のそれとは根本的に異なっている。
 シュライバーがよくやるような、自身の圧倒的な性能に任せて大量の攻撃を叩きつけるのではない。
 ストラウスは「相手が避けたり受けたりできる攻撃」を一発ずつ高い精度で撃ち出し、それを迎撃ないし回避させることで相手の行動の選択肢を制限、自分の望むとおりに動かざるを得ない状況に敵を追い込むのだ。
 単純な速度ではシュライバーのほうが圧倒的に勝っている。けれど何故か、シュライバーは後手に周るのを余儀なくされていた。それは動作としての速度ではなく、読みの速度において完敗を喫しているからだ。シュライバーが何か行動を起こそうとした瞬間には、その四手も五手も前から既に敵手の攻撃は完了している。
 尋常ならざる芸当だった。シュライバーとてその思考速度は条理を逸脱した域にあり、内に渦巻く幾万の魂の経験値により優れた戦術眼を持つ。それをすら上回り、常に先手を打つその手際、一体どれほどの熟練度を持てば至れる境地であるのか。
 それはシュライバーの殺戮本能と直感に拠った戦闘法ではなく、ザミエルが手繰る戦略術によく似ていた。
 いや、この精度を見るに、もしかすれば彼女以上の……


「図に、乗るなァ……! 勘違いするなよ間抜け……!
 この程度でボクを追い込んだとでも思ってるなら───!?」


 背面に足を蹴りだし空気を足場にしようとして、やはり図ったかのようなタイミングで出現した弾丸に行く手を阻まれ、シュライバーは本来の意図とは全く別の方向への跳躍を余儀なくされる。
 弾丸は次瞬には細く鋭い槍に姿を変え、上方に退くシュライバーに追い縋る。数は僅か三本。だが、それはストラウスが魔力の出力を極限まで絞っているからだと既に理解している。
 全力で戦えば……いや、周囲に垂れ流されてる余剰の魔力だけでもこの数百倍の数の攻撃を繰り出せるはずなのに、そうはしない。如何な場面でも細かな制御のみでこちらの動きを制限し、ここぞという場面でのみ適切な物量を投入する。それが奴の戦略。
 これが創造位階や、あるいは聖遺物を形成した状態だったならば、無理やりにでも突破することは可能である。しかし話はそう簡単ではない。今のシュライバーは己の狂気を強く認識し瞑想に至る詠唱を唱えることは愚か、形成のための予備動作さえ行う余裕がない。呼び出そうとする度に、こちらの思考を読んだ上で未来を予測していたのではないかと思えるほど正確かつ的確に攻撃が配置され、その迎撃と回避に行動を消費し次の段階に踏み込むことができないのだ。
 思えばあの一手、ヴァナルガンドで突撃した瞬間から自分は敵手の糸に絡め取られていたのだ。腕一本で形成の一撃を受け止めるド派手な演出でこちらの意識を奪い、一度後手に回すことで聖遺物への攻撃回避に形成解除を強制させられた。あとは活動位階にまで劣化した自分をこのように追い込めばいい。そもそも、自分に形成させ突撃させようと思わせたその時点で、彼に誘導された結果なのではないか?
 最初から詰まされていた。
 最初から掌の上だった。
 ───怒りが、沸き起こる。


「だからさァ───」


 凶相が歪む。
 総身から噴き出る魔力が、爆発的に質量を増す。
 嚇怒に彩られた表情のまま、シュライバーは高らかに絶叫して。


「調子に乗るのもいい加減にしろよ、薄汚い劣等がよぉぉぉおおおおおおおおおおぉぉおおおおおお──────ッ!!!」


 瞬間、爆縮する空間諸共周囲の黒が弾き飛ばされる。物質を崩壊させる存在圧に耐える魔力弾の諸々が、その耐圧すら上回る魔力によって悉く消し去られる。
 その一瞬、束縛より解き放たれた凶獣は、爆散する魔力嵐を身に纏い一つの弾丸と化して突撃した。
 理屈は至って単純、エイヴィヒカイトの標準能力である魔力放出を行使したというだけ。しかしその規模が度外れている。
 今までシュライバーが当たり前に行使していた程度のものではない、今や彼の肉体そのものが自壊する領域で出力は上昇し、噴き出る魔力は目に映る瘴気の域にまで至り空間を侵食している。
 小賢しい小細工を労する劣等の塵屑如き、圧倒的な力で上回ればそれでいい。厳然たる実力差の前に、多少の策や罠が何だというのか。
 この身に傷を負わせた不埒者、最早一秒たりとて生かしておくものか。無様な敗残者としてこの僕の前に屍を晒すがいい───!


「そう、その程度で終わるなら、午後の段階でお前は英雄王に殺されている」


「ぎッ……!?」


 絶速であるはずのシュライバーが、しかし強制的に停止させられた。手が、足が、指の先から硬直する。壁に縫い付けられた昆虫のように、身動きのできない身体が中空に固定される。


「お前を殺すのに速さはいらない。何をしようとお前は万物の先を行く。
 お前を殺すのに威力はいらない。指の一押しであろうとお前は容易く死に至る」


 静かに告げながら、ストラウスは剣を抜く。前傾体勢となり、一挙動に跳ね飛んでシュライバーへと迫る。
 瞬時、振りかざされる黒剣。シュライバーの目は、その切っ先が自らの首を両断せんとする瞬間を、克明に知覚した。

 ───物質の存在は空間を歪曲させる。
 一般相対性理論によれば、全ての有質量物質はただ存在するだけで周囲の空間を自分のほうへと引き込み、捻じ曲げている。
 曲がった空間の中を直進しようとすれば、その軌道は必然的に捻じ曲げられ、何らかの力に引かれた───つまり重力を受けた運動として観測される。例えば惑星サイズの質量であればその影響は誰の目から見ても明らかなほど大きくなるが、そうでなく如何に小さな質量であったとしても、空間の歪みとそれに伴う万有引力はあらゆる物体に付随して存在している。
 それを読み解き自在に操るとは、すなわち空間を操るに等しい。
 空間曲率制御。
 ストラウスたち夜の一族が手繰る魔力は万物に作用する。たとえそれが無形の存在であっても、必要な出力と精密ささえ用意できれば例外はない。
 例えば、中空に静止するシュライバーのように。
 固定化された空間そのものによって捕われた彼は、必然物理的な力で動くことは叶わない。

 エイヴィヒカイトの位階とは渇望の深度。行使する位階が上がれば上がるほどに、力が増す代わりに己の渇望に縛られる。
 それは逆を言えば、低位の状態においては渇望の反動を受けずに済むということ。
 活動位階において、シュライバーの「接触拒絶」のタブーはその効力を極限まで低下させる。それでも他者に触れられたなら彼は狂乱の檻に囚われるだろうが、自傷の域であるならまだ耐えられる。
 そう、ストラウスは最初からそこまで織り込み済みだった。
 活動位階に動きを制限したシュライバーは、こちらの包囲網を力尽くで突破してくるのだと。
 故に、こうして事前に仕掛けておいた。


「僕は……」


 すぐ目の前に迫る黒剣。走馬灯のように緩やかな視界の中で、シュライバーは呆然と呟いた。

 負ける。
 ───負ける、僕が?

 男でも女でもない僕は、だから完全で無敵の存在であれたのに。
 そんな僕が、どうして。

 ───どうして?

 自問する彼は論理の破綻に気付かない。
 シュライバーは陰も陽も持たない虚無。それは完全どころか"無い"ということ。
 駆け抜けた、駆け抜けた、殺し続けて食い続けた。
 彼の人生は轢殺の轍。振り返った後に見る屍の山でしかない。

 その信仰は、最初から虚構だった。


「───黙れ」


 空洞となった右眼窩から血が流れる。
 穴。僕には穴がないから抉り取られたんだ。
 出来損ないじゃなくなるように、ムッター(ママ)に愛される少女に僕はなりたくて。
 完全になることを求めて欠落した。もう取り戻せない人間部分。
 喪ったのは全ての愛情───


「ハイドリヒ卿は僕の穴を埋めてくれるんだ」


 屍を。屍を。屍を。屍を───
 無限にこの星を覆い尽くすまで殺し続ける。
 僕の轍を、駆け抜けた僕の穴を埋めてくれるのはあの人しかいない。


「だから僕は、お前を勝利(わだち)にするはずだったのに」


 この右目に、この魂に、お前たちの残骸を詰め込もう。
 そして僕は完全となる。
 人も男女も超越して、黄金のグラズヘイムに生きる真に不死身の英雄となるんだ。

 ───そのはずだったのに


「完璧になるはずの僕が、どうして……!」


 どれほど希っても。
 その声は届かない。赤薔薇の振るう黒剣、音もなくするりと滑り込んで。


「敗れ去った夢想の残滓に縋り泣くその姿、男として実に醜い。
 幻の愛を求めて鬼となり錯乱するその姿、女として実に醜い」

「─────────!」


 ───噴血の水音が、辺りに木霊する。

 断末の絶叫さえも置き去りにして、音もなく黒の剣が振り抜かれた。
 月が照らす空の下、胴体から泣き別れとなった首がくるくると舞う。

 残心の構えを崩さないストラウスは、ただその行く末を見守って。





 ───その二人を、猛烈な勢いで拡散する黒霧が瞬時に包み込んだ。





   ▼  ▼  ▼





 体中の至る箇所に鮮やかな白い溝を走らせた星屑が、次瞬には大小7つの部位に切断され、地面の上に墜落した。


「……なに、これ」


 床の上に転がる、血液ともつかない異様な白い液体を垂れ流す巨大な肉塊。
 つい今しがた自分の手で解体した星屑を眺め、エミリー・レッドハンズは不思議そうに首を傾げた。


「おばけ?」


 と言ってはみたが、流石にそれが真実であるとはエミリーも思っていない。
 ふと通りの向こうを見遣れば、そこでは自分と同じように白い何かに襲われる人々の姿。悲鳴と怒号が飛び交い、それに倍する血飛沫の音が木霊する。今しがた路地の入口を横切ろうと走ってきた女は、後ろから迫る化け物に頭から食い付かれ、千切れた下半身だけが力なく地面に崩れ落ちるのだった。
 阿鼻叫喚。
 そう表現するのが一番相応しいだろう。どうやらこれはエミリーのみを狙ったものではなく、本当に無差別に人を襲う代物らしい。十中八九サーヴァントの仕業だろうが、随分と派手なことをしたものだと思う。道徳や倫理観を説くつもりはないが、単純に馬鹿なのではないか。
 自分のサーヴァントである、シュライバーと同じだ。

 と、そこまで考えて。


「っ、痛……」


 突如、右手の甲に鋭い痛みが走る。ナイフで串刺しになったような熱に顔を顰め、痛みに耐えること暫し。
 異常が治まり何事かと患部を見たエミリーは、僅かな驚愕と嫌悪の声を上げた。


「シュライバー……なにしてるの」


 掲げられたエミリーの右手。
 そこに刻まれた令呪は、いつの間にか一画分の輝きを喪失し、ただの赤痣に戻っているのだった。





   ▼  ▼  ▼





 闇に閉ざされた公園。
 中心に立つ街灯の白く無機的な灯りだけがぼんやりと照らしている。


「まずは非礼を詫びるわ。殺すつもりで攻撃したのは事実だもの、仕方ないとは言わないわよ」


 その誰もいない、モダンな煉瓦造りの床石が敷き詰められている広場の真ん中で、レミリア・スカーレットは彼女にしては珍しい畏まった声を出した。
 暗闇の中、一人。
 周囲には、誰もいない。
 そして、何の音も聞こえない。
 そこかしこで蠢くはずの星屑も、それに捕食される人々の叫喚も、今この場においては存在すらしていないかのように。
 ぴん、と張りつめた闇が世界には満ちて、レミリアの声が虚しく空間に広がった。
 木々も、建物も、ただ陰影としてのみ、周囲に存在している。その墨色の闇に、レミリアの声は静かに吸い込まれ、溶解して消える。

 静寂が広がる。
 透明な、静寂。
 そんな静寂を湛える闇が、レミリアの声を吸い込むと、あたかも混沌をかき混ぜたかのように、微かな気配を一つ生み出した。


「応じる姿勢はあるということか」


 その闇が、声を発した。
 刹那、冷たい闇の気配が凝縮し、黒衣の男がレミリアの後ろに顕れた。
 いや、その表現はおかしい。彼はずっと前からその位置に立っていた。ただ、彼女の声に応じて気配を現したというだけだ。それまで無謬の闇としか認識できないほどに気配を薄めて、熟達の暗殺者でさえこうも上手くはいくまい。
 夜色の外套。その輪郭は周囲の闇へ溶けて、青い頭髪と白い顔がくっきりと闇夜に浮かび上がる。


「夜の国に豊穣をもたらした赤薔薇の王。力、頭脳、全ての技能と能力に於いて他種を圧倒する夜の一族の中でなお、魔人とまで恐れられた御伽噺の黒の王。
 貴方のことは寝物語に幾度も聞かされたわ。座より与えられた知識とは大分違っていたけれど……歴史という名の大海より消え果て最早伝説となった貴方と会えるなんて、英霊召喚のシステムにも一応は感謝しなくちゃいけないかしらね?

「……なるほど。純血種のヴァンパイアは極めて希少な種、なおかつ大戦が終わりブリジットがダムピールの存在を俗社会から切り離した後の生まれとなると自ずと出自は絞られる。
 見たところスカーレット家の嫡子か。君の父君には迷惑をかけた。今更私が言ったところで、詮無きことではあるが」

「姉のほうよ。それと、全然気にしてないから。私自身は実害被ってないし、結果的には良いきっかけにもなったしね。
 幻想郷、知ってるのではなくて?」

「そうか。コミュニティの網にかからなかったのも頷ける」


 男の声が納得の響きを返す。
 同時、その気配が濃度を増した。
 見る者、感じる者すべてを凍えさせる、そんな気配を総身に湛え、ローズレッド・ストラウスは静謐の中、静かに、しかし有無を言わさぬ圧力で問いを投げた。


「君にいくつか聞くことがある。沈黙は肯定と解釈する」

「ええ、どうぞ」


 そんなストラウスを背後にしても、レミリアの調子は変わらなかった。
 常人ならば背筋が凍る、この黒衣の魔人に対して。ただ友人と語らうかのように、気軽に返事をしてみせたのだ。


「まず第一、君はマスターを失い単独行動にある」

「……」

「第二、その性質は君が持ち合わせる能力ないし逸話、あるいはクラススキルによる恩恵ではない」

「……」


 迂遠な質問だ。しかし彼がそうする理由を、レミリアは理解できる。
 いわば爆弾の解体作業と同じだ。事を急いて不用意に手をかければ起爆してしまう。そしてそのスイッチがどこにあるかは分からない。
 ストラウスにも、そしてレミリア自身にも。


「第三、この剣を退けた場合、君は即座に私に襲い掛かる」

「……」


 背後の気配が動く。同時、彼を覆う闇が薄れ、レミリアの首筋に突きつける黒剣が姿を現した。
 今この瞬間に宛がったものではない。言葉を交わすよりも遥か以前、レミリアが最初に声を発したその瞬間には既に、この剣は首に触れていた。あまりにも卓抜した隠行の術で、今までその気配を悟らせなかっただけだ。
 レミリアはそれを知覚していた。
 故に、この瞬間まで穏当な会話を続けることができたのだ。
 そして。


「第四、君はこの有り様を善しとしない」

「……」


 ………。

 ……。

 …。

 ────────────。

 結局。
 レミリアは全ての質問に対し黙して語ることはなく、しかしその沈黙こそが何より雄弁に彼女の答えを示していた。


「では、これが最後の質問だ」

「あら、もういいの?」

「生憎時間をかけていられる余裕はなくてね。だからこれで終わりだ」


 静かな声のままに、首に添えられた剣を虚空へと霊体化させて。


「君の他にあと何人いる?」


 ───猛然と振り返ったレミリアの手から、"二発"の光弾が放たれた。
 あらん限りの力を込めた手加減抜きの魔力弾が、闇の只中に佇むストラウスへと殺到する。後ろ手に後退したストラウスの姿が闇夜に溶けるように消え、光弾はその残影を貫いて背後の公園樹を半ばからへし折って地面を爆散させた。
 砂煙が朦々と立ち込める中、今度こそ自分以外の気配が無くなった公園の真ん中で、レミリアはひとり息を吐く。


「……食えない男ね」


 レミリアの行動にはある種の制限が掛けられている。
 大前提としては「聖杯戦争参加者との戦闘の強制」。彼女の戦意を問わず、認識した瞬間に強制的に攻撃を加えるよう体が動くのだ。
 とはいえそれは殺意に塗り潰されたバーサーカーのそれではなく、今もレミリア自身の自由意思は健在であるために、戦闘内容にもある程度の自由が生まれる余地がある。
 それは例えば、「敵に命を握られた状況で、より長く生存するために敢えて無抵抗となる」であるとか。


「最初から分かってそうしたのかしら。まあ、傍目から見ても分かるくらいズタズタではあるけどね、私の霊基」


 苦笑の響きが漏れる。あの瞬間、何処かのサーヴァントを下した赤薔薇王の姿を見た時、接触しようと試みて正解だったかもしれない。
 《この胸を苛む痛み》。万物の自壊を誘発させる黒霧を充満させる、防御も回避も不能の一撃。
 如何な手段でそれを潜り抜けたのか、レミリアにさえ見当がつかない。元々自分の力ではないのだから当たり前だが、それを抜きにしても尋常なる手段でこの黒霧を無効化するなど想像もつかないのだ。
 あれこそが伝説。
 超絶の力を以て永遠とも思える時間を生きる存在。

 ……思わず軽く身震いをしてしまう。


「でも、これで私の"具合"も多少なりとも分かったことだし。次はもうちょっと上手くやりたいわね。
 ……あーもう、分かっちゃいたけどお先まっくらー。こんなとき咲夜がいてくれたらなー」


 大きくため息をひとつ、とぼとぼ歩きながらぶつくさと吐き捨てる。
 そして、それを最後に二人の吸血鬼の邂逅は本当の意味で終わりを迎えたのだった。

 夜に溶けるように、ストラウスの姿が跡形もなく消え失せた空間。
 レミリアはその場所から再び空を振り仰ぎ───渦巻く暗雲を見上げ、その目を険しく細めて。


「見てなさいよ」


 努めて不敵に、獰猛な笑みを浮かべる。


「私が必ず、お前たちを引き摺り下ろしてやる」


 ───その右手は、高みの月へ。




『???/異形の空/一日目・禍時』

【アーチャー(東郷美森[オルタ])@結城友奈は勇者である】
[状態] 《奪われた者》、単独行動、精神汚染
[装備] 満開による浮遊砲台、シロガネ、刑部狸の短銃、不知火の拳銃、《安らかなる死の吐息》
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し
1:聖杯の力で世界を破壊し、二度と悲劇が繰り返さないようにする。
2:バーテックスの侵攻を以て鎌倉市を滅ぼす。
[備考]



『D-3/ホテル跡地/一日目・禍時』

【アティ・クストス@赫炎のインガノック- what a beautiful people -】
[令呪] 三画
[状態] 健康、正体不明の記憶(進度:極小)
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] アーチャーにより纏まった金額を所持
[思考・状況]
基本行動方針:抱く願いはある。けれどそれを聖杯に望む気はない。
0:私は……
1:自分にできることをしたい。
[備考]
鎌倉市街の報道をいくらか知りました。
ライダー(アストルフォ)陣営と同盟を結びました。
アーチャー(ストラウス)の持ち込んだ資料の一部に目を通しました。それに伴い思い出せない記憶が脳裏に浮かびつつあります。が、そのままでは完全に思い出すのは困難を極めるでしょう。
ヒポグリフに騎乗しています。


【笹目ヤヤ@ハナヤマタ】
[令呪]三画
[状態]精神疲労(大)、魔力充填
[装備]
[道具]
[所持金]大分あるが、考えなしに散在できるほどではない。
[思考・状況]
基本行動方針:生きて元の場所に帰る。
0:キッモ!なにあれキッモ!
1:聖杯獲得以外に帰る手段を模索してみたい。アーチャーが良いアイデアあるって言ってたけど……?
2:できる限り人は殺したくないからサーヴァント狙いで……でもそれって人殺しとどう違うんだろう。
3:戦艦が妙に怖いから近寄りたくない。
4:アーチャー(エレオノーレ)に恐怖。
5:あの娘は……
[備考]
鎌倉市街に来訪したアマチュアバンドのドラム担当という身分をそっくり奪い取っています。
D-3のホテルに宿泊しています。
ライダーの性別を誤認しています。
アーチャー(エレオノーレ)と交戦しました。真名は知りません
ランサー(No.101 S・H・Ark Knight)を確認しました。真名は知りません
如月をマスターだと認識しました。
アーチャー(ローズレッド・ストラウス)と同盟を結びました。
ヒポグリフに騎乗しています。


【ライダー(アストルフォ)@Fate/Apocrypha】
[状態]魔力充填
[装備]宝具一式
[道具]
[所持金]マスターに依拠
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを護る。
0:すたこらさっさだー!
1:基本的にはマスターの言うことを聞く。本戦も始まったことだし、尚更。
2:とは言ってもこの状況は一体何なのさ!?
[備考]
アーチャー(エレオノーレ)と交戦しました。真名は知りません
ランサー(No.101 S・H・Ark Knight)を確認しました。真名を把握しました。
アーチャー(ローズレッド・ストラウス)と同盟を結びました。
アーチャー(ストラウス)の持ち込んだ資料の一部に目を通しました。
ヒポグリフに騎乗しています。



【アーチャー(ローズレッド・ストラウス)@ヴァンパイア十字界】
[状態] 魔力消費(小)
[装備] 魔力で造られた黒剣
[道具] なし
[所持金] 纏まった金額を所持
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守護し、導く。
0:?????
1:最善の道を歩む。
2:赤の砲撃手(エレオノーレ)、少女のサーヴァント(『幸福』)には最大限の警戒。
3:全てに片がついた後、戦艦の主の元へ赴き……?
[備考]
鎌倉市中央図書館の書庫にあった資料(主に歴史関連)を大凡把握しました。
鎌倉市街の電子通信網を支配する何者かの存在に気付きました。
如月の情報を得ました。
笹目ヤヤ&ライダー(アストルフォ)と同盟を結びました。
廃校の校庭にある死体(直樹美紀)を確認しました。
B-1,D-1,D-3で行われた破壊行為を認識しました。
『幸福』を確認しました。
廃校の資料室に安置されていた資料を紐解きました。
確認済みのサーヴァント:
ランサー(No.101 S・H・Ark Knight)、アーチャー(東郷美森)
真名を把握したサーヴァント:
アーチャー(エレオノーレ)、ライダー(マキナ)、ライダー(アストルフォ)、アサシン(スカルマン)、バーサーカー(シュライバー)、ランサー(レミリア)


【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態] 《奪われた者》、単独行動
[装備] スピア・ザ・グングニル、《この胸を苛む痛み》
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:玩弄されるがままに動かざるを得ない。しかし───
1:強制の綻びを利用し、少しでも自分の思うように動きたい。
[備考]






   ▼  ▼  ▼





 Silberner Mond du am Himmelszelt,strahlst auf uns nieder voll Liebe.(天に輝く銀の月よ。その光は愛に満ちて世界の総てを静かに照らし)


 Still schwebst du über Wald und Feld,blickst auf der Menschheit Getriebe.(地に行きかう人達を、いつも優しく見下ろしている)


 Oh Mond, verweile, bleibe, sage mir doch, wo mein Schatz weile.(ああ月よ そんなに急がないで 教えてほしい 私の愛しい人は何処にいるの )


 Sage ihm, Wandrer im Himmelsraum,ich würde seiner gedenken: mög'er,leucht ihm hell, sag ihm, dass ich ihn liebe.(天空の流離い人よ 伝えてほしい 私はいつもあの人を思っていると ああ 伝えてほしい 私があの人を愛していると)


 Sieht der Mensch mich im Traumgesicht,wach' er auf, meiner gedenkend.(愛しい人が 夢の中に私を見るなら その幻と共に目覚めてちょうだい)


 O Mond, entfliehe nicht, entfliehe nicht! Der Mond verlischt(ああ 月よ 行かないで そんなに早く逃げないで)


 verzaubert vom Morgentraum,seine Gedanken mir schenken.(あの人をその光で照らしてほしい その輝きで あの人が何処にいても分かるように)


 Oh Mond, verweile, bleibe, sage mir doch, wo mein Schatz weile(ああ月よ そんなに急がないで 私の愛しい人は何処にいるの)










 そして後には静寂だけが残された。

 月と異形が見下ろす都市、その一角。今は朽ち果て崩壊した。
 静寂に包まれている。もう誰も、そこにはいないから。壊す者も死ぬ者も、誰一人としてそこにはいない。
 無辜の民は死に果て、シャルルマーニュの騎兵と二人の少女は何も知ることなく逃避し、二人の吸血鬼は願いだけを共にし袂を分かち、狂える凶獣は塵と消えた。

 そのはずだった。
 けれど、得体のしれない"何か"が、周囲の空気を震わせていた。
 誰か人がいたならば、その空間が正常なものではなくなっていくのを感じることができただろう。
 強烈な腐臭が噴出する。それは今や煮詰めたように濃縮し、呼吸するだけで胃液が逆流するであろうほどに空気から飽和し始めていた。その異常極まる腐った大気は崩れ落ちた瓦礫の空間から直接沁み出し、臭いも空気も空間も、正常なものを悉く犯して塗り潰していった。
 それはかの白き者が首を飛ばした瞬間、まき散らされる血煙を触媒にしたかのように加速を始め、世界を滲ませ境界を溶かし、徐々に現実の世界を侵食していった。
 そして。
 腐敗した空気を押しのけるかのように、「獣の気配」がその密度を増した。

 ───塵が、宙を舞った。
 それは砂粒よりもなお小さく、儚く頼りない粒子の群れであったが、しかし場を埋め尽くす獣の気配は他ならぬその塵から発せられていた。
 塵は風に吹かれながら渦を巻き、黒い霞のように満ち満ち始める。瓦礫を覆い、地面を覆い、一面をわさわさと這いまわりながら、徐々に一点へと集中していく。


 おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!


 激しい感情、敵意、殺意、あるいはもっと別の何か。そうしたものが空間を満たし、巨大な気配が湧き出ようとする。
 黒い霞の中心点。そこに滲みだす、禍々しい気配。
 塵は今や黒く渦巻き、尖塔のように聳え立っている。
 徐々にそれが形を歪め、塵の塊が何か別の形に見えてくる。
 黒い塔は輪郭を不定形に崩しながら形を変え、中央の気配を肉付けし、造形していった。
 塵が飛び散り、また群がり、その度に輪郭が霞み、また形を変えた。
 それは、人間だった。
 伸び上がり、鞭のように四肢を伸び撓ませて、昏い都市の一角に《天使》の姿がそそり立った。


『────────────』


 それは、黒く不浄な塵でできたとは思えないほどに白く、滑らかで、美しい姿をしていた。
 背丈は小さく、体躯は細く、月光に映える白磁の肌は陶器で形作られた人形であるかのよう。
 白く長い頭髪は僅かな光を反射して煌びやかに舞っている。その様は正しく天より遣われし御使いの如く。
 白痴の眼差しが空を見上げる。
 茫洋と開かれた口が何事かを謳う。
 ああ、けれど。けれど。
 それは断じて天使などではない。人を救うものではあり得ない。
 白きもの。白く世界を冒すもの。ああ、それが真に純粋なる存在であるはずなど───


「……ふふ」


 "それ"は笑う。怒りも悲しみも蔑みも憎しみも、あるいは『幸福』さえもないただ透明なだけの笑みを。
 その穢れなき顔に浮かべて。彼は笑うのだ。

 死世界、ニブルヘイムがこの世に降誕する。
 逃れ得る者など、何処にもいない。



『D-3/市街地/一日目・禍時』

【エミリー・レッドハンズ@断裁分離のクライムエッジ】
[令呪]一画
[状態]活動位階、魂損耗(中)、魔力消費(中)、思考混濁、疲労(大)、精神疲労(大)、全身にダメージ、身体損傷(急速回復)、殺人衝動(小・時間経過と共に急速肥大)、"秒針"を摂取
[装備]鮮血解体のオープナー(聖遺物として機能、体内に吸収済み)、属性付与済みのナイフ複数。
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯狙い。皆殺し
0:何があったの……?
1:自分の力を強化する。
2:敵を殺す。
3:その後でシュライバーも殺す。
4:化け物共も殺すがいちいち相手にしてられない。
[備考]
※魔力以外に魂そのものを削られています。割と寿命を削りまくっているので現状でも結構命の危険があります。
※半ば暴走状態です。
※活動位階の能力は「視認した範囲の遠隔切断」になります。
※最低でも数十人単位の魂を吸奪しました。


【バーサーカー(ウォルフガング・シュライバー)@Dies irae】
[状態]?????
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:?????
1:……
[備考]
みなと、ライダー(マキナ)を把握しました。ザミエルがこの地にいると確信しました。
イリヤ、ギルガメッシュの主従を把握。
アーチャー(ローズレッド・ストラウス)を確認しましたが……?



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072:閑話・墜落の逆さ磔 投下順 075:ここは地獄にあらず
071:終わりの始まり 時系列順

BACK 登場キャラ NEXT
070:世界救済者を巡る挿話・その3 アーチャー(東郷美森[オルタ]) 080:雲の彼方の空遠く(前編)
ランサー(レミリア・スカーレット) 086:Holocaust
065:そして終わらぬエピローグ アティ・クストス 078:誰かを信じる金曜日
アーチャー(ローズレッド・ストラウス) 080:雲の彼方の空遠く(前編)
笹目ヤヤ 078:誰かを信じる金曜日
ライダー(アストルフォ)
069:見えざる者の夜 エミリー・レッドハンズ 079:デンジャラスゲーム
069:見えざる者の夜 バーサーカー(ウォルフガング・シュライバー) 079:デンジャラスゲーム
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