これは、第二の生の始まり。
これは、幸せを取り戻すための狂気。
これは、理想の“世界”にするための闘争。




 ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~





最初は、わけがわからなかった。


私は、いつの間にか観光地として有名な鎌倉にいた。
何故、私が鎌倉にいるのか、わからなかった。
だって、記憶がないから。
なんのために鎌倉に来たのか。どうやって鎌倉まで来たのか。
誰かと一緒だったかどうかさえも、わからなかった。
だからすぐに、近くに□□さんや◇◇、◆さんや■がいないか見渡した。
でも、何故か思い出せない。不鮮明な情報となって、要領を得ない。
記憶を手繰ってみる。ちょっと前までは普通に学生生活を送っていたことは思い出せる。
けれども、直近の出来事を思い出せない。
頭の中を検索しようとする。ノイズが走る。エラーが生じる。
禁忌に触れてはならぬように、気分が悪くなる。


わからない。わからない。わからない事だらけで。
正体を掴めない人混みの中で怯えていた時、私の顔は相当困惑したものであったのだろう。
だから心配そうに、一人のお姉さんが声を掛けてきた。
お人好しで優しい女性が差しのべられた手を見て、私は自身の現状を話そうとしたが。
しかし混乱して上手く話せず、その場では何も伝えられなかった。
そしたら「まずは落ち着きましょう」と言って、近くの別荘でゆっくりすることを提案された。
普通なら、そこで訝しむところだけど。
私はなんだか安心感を覚えて、お姉さんの後についていくことにした。



 /・/・/

そこまでが、多少の変異はあれど、なんの危機感もない、平穏な風景だと思っていた。
けれども、それはすぐに崩壊する。
これから体験する事が、壮絶な運命へと誘うことになろうとは…

 /・/・/




「逃げてっ!!」

人気のない道を歩く最中、なんの前触れもなくお姉さんが叫んだ。
突然の出来事に当然私は吃驚する。でもそれは序の口だ。
目で捉えられない速さで突貫してくる黒い影。
もしそのままぶつかっていたら、私達は木端微塵になっていただろう。
そうなる寸前に、別の人影が現れて、辛うじて黒い影を受け止めた。
傍から見るその光景は、怪物《ヴィラン》と英雄《ヒーロー》が激突し合う様式美、そのもの。
けれどもしかし、いつの世も英雄《ヒーロー》が勝利する、という理想とは違い。
あまりにも一方的に殴り続ける化物《ヴィラン》の狂騒が、現実の非情さを告げていた。


「ごめん、あなたを守りきるだけの余裕は無さそう…っ!」

それでもなお、目の前のお姉さんは気丈にしていた。
最初の衝突で吹き飛ばされた私とは違い、このような修羅場にも慣れているような感じだった。
それに比べて、私は何も出来ていない。
むしろ怯えてばかりで、邪魔になっているのだろう。


「早く、何処かへ行きなさい!!」

焦る声に促されて、私はやっと動くことができた。
見捨てた女性の事を引き摺りながら、私は当てもなく逃げ出した。



 /・/・/

こうして、一難の悪夢から逃れる事ができた。
しかし、すぐさま別の悪夢が忍び寄ってきた。
だから、世界の歪みから生まれた悪夢で塗りつぶした。

 /・/・/



「悪いけど、目撃されたからには消えてもらうよ」
逃げ延びて、息切れする身体と処理が追いつかない頭を落ち着かせようと足を止めた所で。
一人の男が現れて、ナイフを手にゆっくりと歩み寄ってきた。
先程とは違う、明確に近づいてくる“死”を感じる。
すぐに逃げようとしたが、できなかった。
体は怯え疲れていて、既に退路も断たれてしまっていたからだ。


  あはははっ……
  なによこれ、嘘、でしょ
  いや…いや、嫌!
  死にたくない、死にたくない!死にたくないよ……
  ねぇ誰か、助けてよ……誠……

  ――――――あっ


一瞬にして流れる膨大な走馬灯。生命の危機感が、今までの矛盾を剥がす。
ここにきて『西園寺世界』の記憶が蘇る。
凄惨な結末を迎えた、思い出したくもない自身の死に際に背筋が凍った。


  そう、だ、わたし、は

  あれだけ、全てを捧げて、投げ打って、信じたのに

  全ての元凶に、私達は狂わされたせいだ

  最期も、欺かれて、殺されて、引き裂かれて

  お腹の子供を、■■■■■


刺々しい複数の想いが混濁する。全てを受け止められずに、身の毛がよだつ。
だが、現状もっとも強く抱く感情はただ一つ。


  もう一度殺されるのは嫌だ
  死にたくない
  生きていたい


抗えない現実を前に、諦観の想いで塗りつぶされた。
それでも、命あるものならば、誰しもが持つ生への渇望を抱く。
だからこそ、絶望の中で一番強くなる切望が。


  ―――私も、生きたかった
  ―――私も、救われかった
  ―――私も、帰りたかった

  ―――だから 契約しよう

  ―――おかあさん《マスター》



一つの奇跡/悪夢を呼び起こした。



それから後の出来事は瞬く間に終わってしまった。
突如として覆う黒い霧が周囲を覆い隠し、視界を遮る。
男は変調をきたし呻き声をあげるが、世界は平然と相手の異変を感じ取るだけ。
鈍い音が鳴り、世界の身体に大量の何かが付着する。
顔には、仄かに熱いねっとりとした感触が伝う。

あれだけ殺意を露わにしていた男の気配はなくなり。
代わりに、暗闇の中から小さな少女が現れた。
幼き体に似合わぬ露出の多い服装に、全身の所々から滴る紅い雫。
縫い傷のあるあどけない顔には、えも言われぬ魔性が忍んでいる。


「おかあさん、大丈夫?」


   おかあ、さん? なん、なの?
   いったい、この子は

   ――ああ、そうだ


   ――この子は、わたしの 子 供 だ


聖杯戦争に巻き込まれる前の、死ぬ前の体験が誤解を生む。
錯乱した思考が、自分の思うが儘に目の前を解釈する。
奪われたものが、帰ってきた。
ならば、まだ私は、失われたものを、取り戻せるはずだ。
世界はしゃがんで、愛くるしい子供の頭を撫で始めた。


「ええ、ありがとう。ええっと、あなたは…」
「私はジャック。ジャック・ザ・リッパー、ってなまえ《真名》だよ」
「それじゃあジャック、行きましょうか」



 ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



その後、私はジャックを連れて逃げてきた道を引き返して、すでに亡くなっていたお姉さんと再会した。
結局、あの人はどういった目的で私と接触したかわからない。
けど、所持品を確認してみたら、本当に別荘を所有していることがわかった。
そこへ行ってみると人気がない場所に建っていて、お姉さん以外誰も住んでいないことが調べてみて判明した。

だから私達は、そこに身を置いて活動の拠点にすることにした。
やっと落ち着いた所で、ジャックから今の状況についてある程度教わった。
参加者が各々の願い(エゴ)を叶える為に殺し合う儀式、奇跡を呼び起こす聖杯戦争。
それに私は図らずしも参加させられてしまった。
けれども、どうして私が選ばれてしまったのか、死んだはずなのになぜ生きているのか、記憶を失っていたのか。
そこら辺の事情についてはジャックも分からないようだった。

他にもジャックから色々と聞かせてもらった。
中でもマスターとサーヴァントの関係について、私だと魔力供給が足りない事について。
だから私は、さっきジャックが男やお姉さんにしていたように。
同じように聖杯戦争に参加している人や、場合によっては参加者以外から。
“魂喰い”することを許容することにした。

それが、私の決意。
もう、どんなことがあっても。
私は、やり直しを願いたいのだから。



 ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~



【クラス】アサシン
【真名】ジャック・ザ・リッパー@Fate/Apocrypha
【属性】混沌・悪

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:E 宝具:C


【クラススキル】
気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ、隠密行動に適したスキル。
 完全に気配を断てば発見することは不可能に近い。
 攻撃態勢に移ると気配遮断のランクが大きく落ちてしまうが、
 この欠点は“霧夜の殺人”によって補われ、完璧な奇襲が可能となる。


【保有スキル】
霧夜の殺人:A
 暗殺者ではなく殺人鬼という特性上、加害者の彼女は被害者の相手に対して常に先手を取れる。
 ただし、先手を取れるのは夜のみ。

精神汚染:C
 精神干渉系の魔術を中確率で遮断する。

情報抹消:B
 対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から彼女の能力・真名・外見特徴などの情報が消失する。

外科手術:E
 血まみれのメスを使用してマスター及び自己の治癒が可能。
 見た目は保障されないが、とりあえずなんとかなる。


【宝具】
『暗黒霧都(ザ・ミスト)』
ランク:C 種別:結界宝具 レンジ:1~10 最大補足:50人
 霧の結界を張る結界宝具。魔力で発生させた硫酸の霧そのものが宝具である。
 サーヴァントならばダメージは受けないが、敏捷が1ランクダウンする。
 霧の中にいる誰に効果を与え、誰に効果を与えないかは宝具の使用者が選択可能。
 霧によって方向感覚が失われるため、脱出するにはランクB以上のスキル“直感”、もしくは何らかの魔術行使が必要になる。

『解体聖母(マリア・ザ・リッパー)』
ランク:D~B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1人
 ジャック・ザ・リッパーの殺人を再現する宝具。
 「時間帯が夜である」「相手が女性(または雌)である」「霧が出ている」
 すべての条件が整っているときに宝具を使用すると、対象の身体の中身を問答無用で外に弾きだし、解体された死体にする。
 条件が整ってない場合は単純なダメージを与えるに留まるが、その際も条件が一つ整うたびに威力が跳ね上がる。
 この宝具はナイフによる攻撃ではなく一種の呪いであるため、遠距離でも使用可能。
 宝具を防ぐには物理的な防御力ではなく、呪いへの耐性が必要となる


【weapon】
主武装として六本のナイフを腰に装備。
太股のポーチには投擲用の黒い医療用ナイフ(スカルペス)などを所持。

【人物背景】
言わずと知れた産業革命時代のロンドンで発生した猟奇殺人事件の犯人、ジャック・ザ・リッパーの一つの姿。
その中核に出来ているものは、当時の劣悪な環境・社会の中で死んでいった子供達の怨念が集合して生まれた怨霊。
強烈な胎内回帰願望と母親に対する憧れを抱いており、聖杯獲得のために暗躍する。

【サーヴァントとしての願い】
おかあさん《マスター》と一緒に聖杯を獲得する。



【マスター】
西園寺世界@School Days(アニメ)

【マスターとしての願い】
誠が私だけを見る事を願う。そのためにはどのような邪魔者も排除する。

【weapon】
なし

【能力・技能】
なし

【人物背景】
School Daysのメインヒロインの一人。榊野学園1年3組。
主人公・伊藤誠に恋心を抱いていたが、もう一人のメインヒロインで親友の桂言葉と三人で交友が始まったことにより物語が(悪い方向に)動き出す。
気さくで明るい性格と明瞭な口調から多くの友人を持つムードメーカーだが、追い詰められると自宅へ引き籠もってしまうなど、精神面は脆い。
出典はアニメ版、しかも最終話の死亡後からであるため、相当な精神汚染もしくは精神異常をきたしている。

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