「粗暴ね」

 血臭の充満した路地裏で、蝙蝠の羽を持つ少女が顔を顰めた。
 繁華街の突き当たりにあるこの通りは、深夜になるとチーマーの溜まり場と化す。
 喫煙、飲酒、シンナー、暴力沙汰……派閥も幾つか存在するようで、それらが小競り合いを起こすことも屡々だ。
 しかしそんな彼らも、所詮は子供。粋がってはいるものの、本当の"悪"を知る者はごく僅か。
 現に殺人に発展したことはなかったし、本格的な組織戦争と言うよりかは、まだごっこ遊びの色合いが強かった。
 今宵、不運にもこの場へ居合わせてしまった者達は、人生の最後に自分が悪(ワル)だと信じてやってきたことがどれほど下らなく、取るに足らないものであるかを否応なしに理解させられたことだろう。
 武器一つ持たない、未だ高校生ほどであろう女の手によって。

 「仮にも私のマスターを名乗るなら、それに相応しい品格を身に付けるべきね。沈利」
 「――あぁ? 五月蠅いわよ、クソガキ」

 窘める自身の従僕(サーヴァント)へ、殺戮の下手人は憮然と返す。
 その手に一瞬、凶器の残り香が揺らめいた。
 残り香といえど、何も恐ろしげな毒ガスを使ったわけではない。
 第一、毒ガスではこうはならないだろう。
 手足が千切れ飛び、腹に大穴が穿たれ、吹き飛ばされた頭の欠片がアスファルトに焼き付くような有様には。

 「で、どうなの? マスターは居た?」
 「決まってるでしょ、ハ・ズ・レ。これだけ人が集まるんだから、可能性はそれなりにあるかと思ったんだけど。
  ……にしてもそろそろヤバいかもにゃー、こりゃ。ちっと殺しすぎたかねえ」

 彼女――麦野沈利が"マスター狩り"の一環として行った虐殺の犠牲者は、凡そ十六人にも及んだ。
 民間人殺しは度が過ぎればペナルティが課されるというが、これだけ殺せば十分その対象となり得る筈。
 今回目を瞑って貰えたとしても、次もそうなるとは限らない。
 暫く、こういうやり方は控えなければならないか。

 「ま、エセ神父に何か言われたら愛想笑いで謝っとくわ。こんなに殺したのは初めてだし、大目に見てくれるでしょ」


 麦野沈利は女子高生だ。
 しかし、見ての通り殺人行為に躊躇いはない。それどころか、初犯ですらない。
 これまでにも老若男女、両手の指に両足の指を足しても足りないだけ殺してきた。
 暗部組織『アイテム』。それが、麦野という怪物を創り上げた環境である。
 超能力開発を謳い立ち上げられた科学の街・学園都市――さりとて、光の裏には影がある。
 あの街では今しがた麦野が殺した少年達より尚幼い学生でさえもが闇に堕ちている。或いは、墜ちている。
 張本人の麦野をして、思う。学園都市は地獄だ。この鎌倉に存在する影など、全て引っ括めても到底足りない。

 そんな所から抜け出てきた怪物に、あろうことか彼らはちょっかいを出した。
 麦野とて、最初から殺すつもりではなかったのだ。しかし女だと知るなり鼻息を荒げ、それで少し挑発してやれば顔を真っ赤にして襲いかかってきた。だから、後は適当に殺してやっただけのこと。

 学園都市第四位の超能力――『原子崩し(メルトダウナー)』の力を使って。


 (凄いわね。人間の身で、此処まで魔道に近付くなんて――なんて、醜悪)


 そして。
 彼女に召喚されたサーヴァント・ランサーは内心で自らのマスターへと悪罵を叩く。
 死体の山を築き上げ、それを一体一体蹴り飛ばし一箇所へ集める様。
 それは断じて人の所業ではない。麦野沈利という女は、ある種魔人の域に達している。
 だから彼女は、それを醜いと軽蔑する。人として生まれながら、こうまで堕ちさらばえるとは。

 (この聖杯戦争、飽きるまでは付き合ってあげるわ。でも、勘違いしないことね。
  私を飼い慣らせたなどと思ったら大間違い。私はいつだって、貴女の首筋に牙を立てることが出来るのよ)

 ランサーには、願いがない。
 英霊の座から突然呼び出され、召喚されただけ。
 聖杯戦争など彼女にとっては只の暇潰しと、高潔な吸血鬼たる己が他の英霊に遅れを取るなど許容できぬという強い自負があるから取り組んでやっているだけの座興に過ぎない。
 対し、麦野沈利は違う。彼女には、聖杯へ託す望みがある。
 それをランサーは未だ聞かされていなかったが――もし耳にしたならば、より自らの主へと失望を強めるだろう。


 「……首を洗って待ってろよ、はーまづらぁ」


 最後の一体を蹴り上げて、麦野は呪わしく呟く。
 その顔は下卑た笑みに歪んでおり、どこか人として不自然なものであった。
 当然だろう。彼女は本来、片目を引き裂かれた大傷を顔面へ負っている。
 今のこの容貌は特殊メイクと義手で補っているだけに過ぎず、本来の姿は更に怪物じみたものだ。
 そして麦野沈利が聖杯へ懸ける願望の矛先となる人物こそが――浜面仕上。学園都市第四位の超能力者(レベル5)を、無能力者(レベル0)の身で撃破した忌まわしい男である。

 浜面仕上を殺す。
 この世に存在するあらゆる苦痛を賞味させ、苦しみ抜かせた末に殺す。
 それだけではない。奴が愛している、元同僚の滝壺理后もだ。
 滝壺を徹底的に破壊してやれば、浜面は絶望し、怒り狂うだろう。しかし、聖杯が吐き出す呪いは彼を嘲笑う。
 壊し、壊し、壊し、壊し――壊し尽くした末に、奴ともう一度殺し合いを演じること。それが麦野の願いだった。

 聖杯の力で、浜面仕上とその恋人を呪う。
 まぐれで二度生き延びたからと言って、無能力者の一人も殺せない自分ではない。
 ――無能力者を殺すのに聖杯の力へ頼るなど、第四位のプライドが許さない。
 あくまで浜面を殺すのは、『原子崩し』の力でなくてはならないのだ。そうでなければ、この復讐は終わらない。

 (つーワケで、飽きるまでは使ってやるよ、槍使いのお嬢様。精々飼い犬として頑張ってくれや)

 何も、己が背を預けるパートナーへ悪感情を抱いているのはランサーだけではなかった。

 麦野もまた、自身のサーヴァントを快く思っていない。
 戦力に申し分はないのだが――どうも、こういうお高く止まった女は苛つかせる。
 しかしだ。ランサーがどれだけ高潔な英霊なれど、麦野には彼女を絶対に平伏させることの出来る権限がある。

 これから面白くなりそうだ。
 どんな敵が来ようと、聖杯を奪おうとするならば皆殺しにしてやる。
 積み重ねた死体の山へ、証拠隠滅の超高温を解き放ち、麦野沈利は鮮烈に笑ってみせた。


【クラス】ランサー
【真名】レミリア・スカーレット
【出典】東方Project
【性別】女性
【属性】秩序・中庸

【パラメーター】
筋力:C 耐久:B 敏捷:A 魔力:A 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
運命操作:D
彼女の持つ能力。運命を操るとされるが、実際のところ操れてはいない。
なので「それとなく幸運が起きる」程度の代物であり、しかも本人に時期の操作は不可能。

吸血鬼:B
強靭な肉体と再生能力を両立する。
但し、直射日光を浴びれば気化してしまう弱点を持つ。

【宝具】
『運命射抜く神槍(スピア・ザ・グングニル)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1-99 最大補足:1人
正確には槍そのものを投げているのではなく、弾を超高速で投げつけることで槍のように変化させるとされるランサーの十八番。原典におけるランサーの代名詞とも取れる技であるが故に、此度の聖杯戦争において宝具の域にまで昇華され、とうとう持って振るうことも投げることも可能な槍へと変貌を遂げた。
真名開放と同時に投擲することで真価を発揮する。
その性質は不明だが、単純に強力であるが故に穴がない「対軍宝具」。

【weapon】
 なし


【人物背景】
東方紅魔郷の舞台、紅魔館の主である吸血鬼の少女。
吸血鬼としては少食で、人間から多量の血が吸えない。また、吸い切れない血液をこぼして服を真っ赤に染めるため「スカーレットデビル(紅い悪魔)」と呼ばれている。
貴族らしい威厳や体面を重視しており、自らを「誇り高き貴族」と呼んだり、ツェペシュ(ドラキュラのモデルないし、吸血鬼の始祖)の末裔を名乗ったりしている。ちなみにスペルカードにも彼の名を冠した物があるが、実際の血縁関係にはない。だがその本質は尊大かつ我が儘で、非常に飽きっぽいという少し幼い思考。常日頃から退屈しており、気紛れで突拍子も無い事を思いついては周りを振り回している。 強大過ぎる程強大なので、周りは良い迷惑であるとのこと。

【サーヴァントとしての願い】
なし。飽きるまでは付き合ってやる。

【基本戦術、方針、運用法】
日光に弱いという弱点を持つため、主に夜間を中心とした戦闘が望ましい。



【マスター】
麦野沈利@とある魔術の禁書目録

【マスターとしての願い】
浜面仕上と滝壺理后を呪い、最後に浜面と再戦する。

【weapon】
なし。自身の超能力を用い闘う。

【能力・技能】
非常に高い身体能力。そして、第四位の超能力『原子崩し(メルトダウナー)』。
本来粒子又は波形のどちらかの性質を状況に応じて示す電子を、その中間状態に固定し、強制的に操ることができる。
操った電子を白く輝く光線として放出し、絶大なる破壊を撒き散らす。
正式な分類では粒機波形高速砲と呼ばれる。「電子を操作する」という特性ゆえか、電撃の軌道を曲げることもできるが、逆に自身より上位の電子操作能力者には、粒機波形高速砲を逸らされてしまったことも。

【人物背景】
『アイテム』のリーダーを勤める女にして、学園都市第四位の超能力者/レベル5。
リーダーらしく、『スクール』の襲撃予想場所を割り出すなど頭は切れる模様。
しかし、気に入らないという理由で相手を殺したり、仲間の死をなんとも思わないととても残忍。
またミスを許せない人間でもあり、ミスをしてしまった場合はそれ以外で帳消しにしようと別の目的を見出そうとし、それにこだわることで結果的に本来の目的にさえ意識を向けなくなる。
浜面仕上と交戦、敗北したことから彼へ並々ならぬ執着心を抱く。


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