あるところに、強い化物がいた。
しかし、強すぎたせいで化物の周りには誰もいなかった。
化物は孤独に苦しんだ。

そこで化物は自らの魂を二つに分けた。
化物は二人になった。
これで孤独ではなくなった。



◆ ◇ ◆



いつの間にか一人ぼっちになっていた。

「スターク………?」

結局のところ、元々は『一人』なのだから『片割れ』がいないことに気づける。
近くにはいない。だけど、遠くにもいない。
まるでこの世界とは別の次元へ隔離されてしまったかのように、彼女――
リリネットの片割れ、スタークは存在を消していた。

いいや、違う。
隔離されたのはスタークではなく、リリネットの方だろう。
ここは、他の虚の気配や死神の気配すら感じない不気味な世界であった。
閉じ込められたのは分かる。
分かっているが、無力だと理解していながらリリネットは舌打つ。

「くそ! どうなってんだよ!! いっ……?」

手の甲に妙な印が浮かび上がる。
令呪なのだが、リリネットは冷静にそれを分析する余裕などなかった。
スタークがいないのだ。もう一人の『片割れ』がどこにもいなければ、彼女自身の力など無力に等しい。
否、それ以上の不安と恐怖が渦巻いている。

一人は嫌だ。

これほどまでに孤独を感じた事はない。
彼女はつねに『彼』と共にあり続けたからこそ自覚していなかっただけだった。
やはり魂は二つになっても、一つであった名残は残る。
片方がいなければ、とても不安定だ。

何か物足りない。
このままでは駄目だ。
ああ、きっと彼も自分と同じになっているはずだ。

焦りばかりが募るリリネットは、何もかも見失っていた。
今ここが戦場であることを――聖杯戦争の火ぶたが切られた事を――……


「■■■■■■■■■■■■■■■────────────!!!!!」

「え」


瞬間、狂気の塊が彼女にぶつかる。
体が重く軋む。馬鹿みたいに彼女の小さな体は吹き飛ばされた。
リリネットは人ではなく、弱くとも破面の一種。並の人間よりかは頑丈ではある。

それでも彼女は弱い。
彼女だけでは何もできない。ここにはスタークはいないのだから。

彼女の体はただただ吹き飛ばされ、建物や木々を破壊しながら、ようやくアスファルトの地面に叩きつけられ止まった。
辛うじてリリネットは生きている。
だが再び、理性を失った、破壊するだけのサーヴァント・バーサーカーの一撃を食らえばどうなるか。
何とか立ち上がろうとするリリネットへ追い打ちをかけるかのように、一声が聞こえた。

「ん? こいつ……サーヴァントじゃないのか。変な姿してるから、そうだと思ったんだが――」

現れたのはバーサーカーのマスター。どう見ても、ただの人間だった。
本来ならリリネットの姿すら捉えられない程度の存在だろう。
しかし、令呪の影響か、彼女の姿を発見し、バーサーカーに奇襲をかけさせたのだ。
魔力の消費が激しいためか、マスターは顔色を悪くしながら言う。

「さっさと来い、バーサーカー。まだ生きている」

「う………」

死にたくない。
一人で死にたくないよ。

「助けて、スターク……」

思わず、ここにはいない彼の名をリリネットは呟いた。


◆ ◇ ◆


リリネットは聖杯戦争というものを全く理解していなかった。
同時に、バーサーカーのマスターもそれを理解していなかったのである。


◆ ◇ ◆



「が……はっ!?」

バーサーカーのマスターを紅の腕が貫く。
姿や気配もなく、いつの間にか彼は絶命を遂げてしまっていたのだ。
マスターが警戒するべきものはアサシンのサーヴァント。
殺意を発するまで、一切の姿を見せない暗殺者。

バーサーカーはマスターの死亡と同時に消滅してしまう。
強力なサーヴァントであろうとも、マスターが死ねばそうなるだけで終わる。

リリネットは茫然としながらも、マスターを殺した存在を目にした。
それこそが彼女のサーヴァント・アサシン。


だが


「あれ……?」 「……!!!」


リリネットとアサシンは、ほぼ同時に感じ取った。
能力だとか理屈の問題ではなく、それはただの第六感、本能に近い感覚だった。

同じだ、と。

決して、二人は酷似した容姿ではない。
リリネットは破面故に変わった姿だが、アサシンも暗殺者のくせして奇抜な恰好をしている。
だからといってそういう意味での『同じ』ではない。
同じなのは――魂の在り方だった。

魂が完全ではない。
魂が不完全である。
魂が一つではない。


魂が―――二つに分けられていた。


「もしかして――」

先ほどマスターの体を貫いた腕が、今度はリリネットを掴む。
首が締め付けられるのを彼女はなんとかもがこうと足掻いた。
一方のアサシンは焦りを浮かべている。
特殊な存在のリリネットは、ある意味で彼の『予想外』な事態であったというべきなのだ。

「まさか……俺の秘密を『感じる』奴がいるとは! 俺のような奴が他にもいたとは!!
 無知であれば良かったものを――知った以上、確実に消し去ってやる!」

アサシンは自身の正体を知られるのを何よりも恐れていた。
たとえ、次の聖杯戦争があろうがなかろうが、自身に纏わる情報を隠蔽しなくてはならないと自棄になる。
ちっぽけなミスがアサシンの『絶頂』を崩壊させた。
だからこそ、アサシンは聖杯を手にすれば元よりマスターを始末する算段であった。

リリネットは違う。
アサシンの能力だとかそんなものではなく、アサシンの一番の秘密を知ってしまった。

かつては二重人格であったことを。
一つの魂を二つにしたことを。
もはや、片割れの魂がどこにもないことを―――

「ま、てよ……! 何があったかしんねーけど……あんた『片割れ』を探してるんだろ!?」

真っ先に挙げられた話に、アサシンの表情がさらに歪む。
焦りや苛立ちよりも動揺が走り、力が緩んだ。


「あたしもソイツを探してやる! だから、とっとと離せ!!」


◆ ◇ ◆


馬鹿か、俺は

アサシンが我ながら呆れていた。それでも彼の苛立ちは募るばかり。
落ち着け、冷静になれ、状況を把握しろと自分自身へ必死に言い聞かせた。

あの子供……見た目通り人間ではない。
魔力を持たない連中に姿を捉えられないと言うじゃあないか。
身分を隠蔽させる必要はないし、奴の姿を捉える者は敵だと判断できる。
全く以て都合のいい存在だ。シンプルで分かりやすい。利用のしがいが十分ある。

それに……気に食わんが奴は協力すると申し出てきた。
人ではない故、人間を殺す抵抗などない。それは本心か、何度も確認したが「馬鹿にしてるのか」とキレられた。
部屋の隅でガタガタ震え命乞いするのや、聖杯は要らない・殺人は許容できないと平和ボケをかます奴と比べろ。
ああ…確実にマシだ。大分マシだぞ。

それに気付けなかったのは、アサシンが冷静を失っていたから。
自身の秘密を知られた事もそうだが、リリネットがアサシンのもう一人の人格のことを指摘したことが
アサシンにとって何よりの苛立ちだった。


――きっと、あんたの片割れも寂しがってる。あたしが言うんだから間違いないよ。


過去はバラバラにしてやっても、石の下からミミズのように這い出てくる。

忌々しい黄金の精神を持つ少年。
自身が犯したミスにより生じてしまった娘。
思い返せば返すほど、過去には忌々しいものばかりが残っている。

しかし、リリネットが触れて来るのはよりにもよってアサシンの片割れ。
病的なまでに神経質なアサシンが、最も信頼した自分の片割れ。
決して何とも思っていない訳がない。
だが、彼が戻って何になる。帝王の座に返れるとでも言うのか?

それだけで――『ドッピオ』が戻るだけでどうにかなるほど軟な世界ではない事くらい
この俺が最も理解している……!!

アサシンはまだ簡単な答えに辿りついていなかった。
シンプルで、単純な答えに。

結局のところ、『ディアボロ』と『ドッピオ』は一人ではあったが二人でもあった。
孤独ではなかった。
ただ、それだけのことを。


【クラス】アサシン
【真名】ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険
【属性】混沌・悪

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:D 幸運:E 宝具:B


【クラススキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。


【保有スキル】
二重人格:-
 かつては『ドッピオ』という人格がいたが、アサシン自ら切り捨てた。

裏社会:C-
 横領など悪に手を染める者(NPCに限る)を操り
 隠蔽工作や情報収集などが可能。

情報抹消:B
 対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から
 彼の能力・真名・外見特徴などの情報が消失する。


【宝具】
『墓碑銘』(エピタフ)
ランク:E 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:-
『真紅の帝王の宮殿』(キング・クリムゾン)の補助である未来予知能力。
予知できる時間は「5秒」に制限されている。
未来の見聞きできるだけで何が起こるかを正確に知る事はできない。

『真紅の帝王の宮殿』(キング・クリムゾン)
ランク:B 種別:対人(対界) レンジ:1~10 最大補足:-
予知した最悪の未来、その過程を消し去る能力。
アサシン自身がその時間だけを認識し、自在に動く事が可能。
その間、何かに触れる・何かに触れられることはできない。消し去れる時間は「5秒」に制限されている。
連続で能力を使用することは不可能で、時間を置かなければ再び使用することはできない。
時空間を消し去る能力故、固有結界など空間内で使用すると何らかの影響を与える。

空の雲はちぎれ飛んだ事に気付かず
消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ認識しない
都合の悪い過程は誰の記憶にも残らず
そして、結果だけが残った

これが全てであり、これ以上の邪悪を説明する必要はないだろう。


【weapon】
スタンド「キング・クリムゾン」
ステータスは筋力:A、耐久:D、俊敏:Aに相当する。
スタンドがダメージを受けると、本体もダメージを負ってしまう。

スタンドはスタンド使いにしか視認できないものだが
サーヴァントになった以上、サーヴァントにも視認が可能になった。


【人物背景】
あるところに悪魔がいた。悪魔は魂を二つに分けた。
二人だからどんなこともできた、二人だから帝王になれた。
一人になったから帝王ではなくなった。
ただ、それだけ。

【サーヴァントの願い】
帝王の座に返り咲く。それだけが彼の願望。
きっと、恐らく……多分。



【マスター】
リリネット・ジンジャーバック@BLEACH

【マスターとしての願い】
聖杯なんてどうでもいい。スタークのところへ帰りたい。
でもアサシンは放っておけない。

【能力・技能】
弱いとはいえ破面。
魔力を持たない人間には彼女を視認できないのが強み。
令呪を持つマスターならば、たとえ魔力がなくとも彼女の姿を捉えられる。

【人物背景】
孤独に苦しんだ化物の片割れ。

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