現れろ、■■■■■。
満たされぬ魂を乗せた方舟よ、光届かぬ深淵より浮上せよ――――■■■■■召喚

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潮の香り漂う七里ヶ浜、月夜を眺めてひとりたそがれる少女の姿があった。
手にはピーチの缶ジュース。甘ったるい風味が冷えた身体に心地いい。
ぷはあ。最後の一滴を飲み干すと、彼女はややわざとらしくそう締めくくる。
それは少女期の元気さの片鱗が窺える行動であったが……どこか、孤独を紛らわそうとしているようにも見える。

――駆逐艦『如月』がこの鎌倉を訪れてから、早一週間が経過した。
もう大分町の営みにも慣れ、今では顔馴染みのマスターがいる喫茶店さえ見つけている。
身分がないこととロクな手持ちもないことには面食らったが、なりふり構わなければ然程難しいことではない。
如月が取った行動は、それを「後ろめたいこと」として考えない……というものだった。
戸籍がない。身分がない。手持ちもなければ、家や職もない。
そんな自らの境遇を、少しでも親しくなった相手にはオープンに公開していったのだ。

まだ十代そこそこの少女が背負うには、あまりにも不釣り合いな境遇。
ひけらかしにするつもりはないが、それなりに上等な方へ部類されるだろう容姿。
当然良からぬことを考える者もいるかもしれない。しかしそれ以上に、同情する人間の方が多い。
少なくとも彼女の場合は、そうだった。
最初に打ち明けた――ちょうど、ここで出会った――釣り人の男は、如月に同情して少しばかりの施しをくれた。
受け取るのに躊躇はしたが、如何せん死活問題だ。その場はありがたく受け取ることにした彼女は、その出来事をきっかけに、この鎌倉聖杯戦争を生き抜くコツを見出すことになる。

別に物乞いをするわけじゃない。
ただ、人脈を作る。
自然を装って接触し、仲良くなり、信頼されれば、自然とその行いは自分にとってプラスに働いてくれた。
買いすぎた食べ物を分けてくれる人もあったし、近くの公園の管理者は園内にある小屋の中で夜を明かすことを黙認してくれるようになった。そして、顔見知りの住人が経営する飲食店で雇ってもらうこともできた。今は散歩の名目で外出しているが、普段はそこの従業員の親類が持つアパートの空き室を借りて暮らしている。

この通り―――今や如月は、完全にこの鎌倉に、自分にとっての「別世界」に適応を果たしていた。

「でも、ここは如月の居場所じゃないのよね……」

それでも、ここは自分のいるべき世界じゃない。
深海棲艦がおらず、したがって鎮守府も、艦娘も存在しない平和な世界。
そんな世界の海は、昼夜を問わず静かな安らぎに満ちていた。
静かな海を願った少女たち、艦娘。彼女たちがそもそも存在しない世界に、その求めたものがあるだなんて……まったく、趣味の悪い皮肉としか言いようがないだろう。
如月だって、出来ることならこの世界に留まりたい。
聖杯戦争も何もかも放り出して、ただのんびりと平和を謳歌していたい。

しかし。それをしてしまえば、一生彼女たちには会えないのだ。


駆逐艦如月――W島攻略作戦にて轟沈。


それが、彼女の体感時間でちょうど一週間ほど前の出来事。
如月が鎌倉へ辿り着く前に辿った末路だった。
頭上に感じた激しい熱と衝撃に声をあげる間もなく、気付けば彼女は海の底へと沈んでいた。
その時彼女の胸中にあったのは、今際の際とは思えないほど落ち着いた、二度目の生への別れの念。
そして、許されるなら大切な友人ともっと言葉を交わしておきたかった―――ただそれだけの小さな願いだった。

「睦月ちゃんに、会いたい」

反芻する。
それは、負けて死んだ船には許されない願い。
ありえるはずのない、三度目の奇跡でも起きない限り、絶対に叶うことのない願望だ。
しかし、ここにはいずれ奇跡が降りる。それに頼れば、願いは叶えられるはず。


「だから、如月と一緒に来てくれるかしら。――ランサー。いえ」

その時。
彼女の声に呼応するように、海の底から浮上してくるモノがある。
それは、方舟。静寂の底から浮かび上がり、立ち塞ぐ敵を滅殺する水の騎士だった。
駆逐艦娘の如月の元に、この方舟(サーヴァント)が召喚されたのは……あるいは必然の因果だったのかもしれない。

 アーク ナイト
「Ark Knight」

S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アークナイト)。
それが、如月の召喚に応えたランサーのサーヴァント。
しかしだ。この英霊、聖杯戦争のセオリーで考えるとあまりに異質と言う他ない。
Ark Knightは、本来ある使い手が所持していた宝具(カード)の一枚だ。
混沌より生まれし、百一番目の「オーバーハンドレッド・ナンバーズ」……そもそも、英霊としてこんなものが召喚されたという時点で前代未聞だろう。まして、彼は現時点ではランサーの象徴である槍さえ持っていないときた。

それでも、このモンスターは槍兵である。
混沌の力から生み出された騎士。それが、Ark Knight。
艦船が転生を果たし、生まれ変わった少女たちに「改二」という可能性(さき)があるように。
オーバーハンドレッド・ナンバーズにも先がある。
カオス・エクシーズ・チェンジ―――混沌の数字という先が。

「どうか、如月に未来をください」

懇願する声に応えるように、Ark Knightの船体が一度だけ、淡く発光した。


【クラス】ランサー
【真名】No.101 S・H・Ark Knight
【属性】混沌・中庸

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:A 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
エクシーズモンスター:A
 ランサーは「レベル」という概念を持たない。
 そのため、一定以下の威力の攻撃を無力化する、といった能力や宝具を無効化出来る。

戦闘続行:A+
 自らのエクシーズ素材と引き換えに、死(破壊)を免れる。
 霊核が破壊された後でも生存可能。但し、その状態では一部宝具が使用不可能になる。(後述)


【宝具】
『永遠なる魂の救済(エターナル・ソウル・アサイラム)』
ランク:B 種別:対人 レンジ:1~20 最大補足:1人
ランサーというモンスターが保有する、固有能力が宝具になったもの。
「召喚された存在」に対しのみ作用する宝具で、対象を自身の内部へ取り込み、「オーバーレイユニット」に変換することができる。ただし同じサーヴァント相手に決めようとするなら対象が余程衰弱していない限りは、不可能。より正確に言えば不可能ではないが、マスターの如月の魔力量ではそこまでの出力を期待できない。
一方でサーヴァントよりも格下の使い魔や召喚物に対しては特効の効き目を発揮する。
宝具の使用の際にはランサーが持つオーバーレイユニットを一つ取り除く必要があり、そのため前述の戦闘続行スキルが発動すれば、オーバーレイユニットが存在しなくなってしまうためこの宝具は使用できなくなる。

『浄滅の洪水(ミリオン・ファントム・フラッド)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:15人
方舟の全砲門より砲撃を行い、寄せ来る敵を殲滅する。
これ自体にそれ以上の特別な効果はなく、宝具としては実にシンプルなものとなっている。

『混沌昇華せし七皇の魔剣(カオス・エクシーズ・チェンジ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
方舟の姿で行動し、ランサーの象徴である槍すら持たないこのサーヴァントを次の領域へ進化させる宝具。
Ark Knight自身でオーバーレイ・ネットワークを構築し、新たなるサーヴァントをエクシーズ召喚する。
この宝具は普段、一枚のカードとしてマスターの手に渡っている。
なので実質、ランクアップの指示を出すのはマスターとなる。

【weapon】


以下、『混沌昇華せし七皇の魔剣』使用後。
真名やステータスが変化し、負っていたダメージもリセットとなる。

【クラス】ランサー
【真名】CNo.101 S・H・Dark Knight
【属性】混沌・中庸

【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:D 魔力:A 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
エクシーズモンスター:A
 ランサーは「レベル」という概念を持たない。
 そのため、一定以下の威力の攻撃を無力化する、といった能力や宝具を無効化出来る。

戦闘続行:EX
 消滅級のダメージを負っても、自らのオーバーレイ・ユニットを全て取り除くことで再び蘇る。
 条件付きでこそあるものの、継戦能力としては間違いなく最高峰のそれ。


【宝具】
『暗黒へ還る魂魄(ダーク・ソウル・ローバー)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:1~20 最大補足:1人
ランサーというモンスターが保有する、固有能力が宝具になったもの。
「召喚された存在」に対しのみ作用する宝具で、対象を自身の内部へ取り込み、「オーバーレイユニット」に変換することができる。カオスの力を得て強化されたランサーの力ならば、サーヴァントをも吸収対象として扱うことさえ容易。
無論英霊を吸おうと思えばマスターの如月に生じる負担は大きいが、以前に比べれば格段にマシになっている。
サーヴァント以外の召喚物が相手であれば、同ランクの相手だろうと吸収可能。

『辺獄よりの再臨(リターン・フロム・リンボ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
規格外の戦闘続行スキルによって死の淵から蘇った際に自動発動する。
マスターの如月の魔力及び体力を最大の約三分の一ほど回復させる。

【weapon】
槍(トライデント)。

(ここから共通)

【人物背景】
バリアン七皇のリーダー、ナッシュが使用するオーバーハンドレッド・ナンバーズ。
混沌の力を用いることでカオス・オーバーハンドレッド・ナンバーズへ昇華(ランクアップ)することができる。
幾度となく復活する蘇生効果から、「朽ちることを知らぬ漆黒の槍術師」と呼ばれた。
普段は元となった「No.101 S・H・Ark Knight」/「CNo.101 S・H・Dark Knight」のカードの中に封印されている。

【サーヴァントの願い】
願いは持たない。
ただ、使われるのみ。

【基本戦術、方針、運用法】
とにかくしぶとい。ステータスはそれなりでも戦闘続行とランクアップで相当粘り強く戦える。
ただしどちらの形態でも言葉を交わして意思疎通することができないのがネック。


【マスター】
如月@艦隊これくしょん(アニメ版)
【マスターとしての願い】
生きて、もう一度帰る

【能力・技能】 
12cm単装砲を装備。しかし威力は本来に比べてだいぶ抑えられている。

【人物背景】
睦月型2番艦。W島攻略作戦にて艦載機の爆撃を受け轟沈する。
その今際の際に抱いた生への渇望が、彼女を鎌倉の地へと迷い込ませた。

【方針】
やれるだけやってみる


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