「なっ何だよお前ら…どうしてここに……!?」

「マスターであるあなたの拠点を特定したからですが?」

「ふざけんな!アサシンの気配遮断が何でこんなあっさり……!」

聖杯戦争。願望器を巡るバトルロワイアル。
本来参加するはずであったそれとは異なる聖杯戦争に参加することになったバゼット・フラガ・マクレミッツ。
彼女は目の前にいる敵対マスターのあまりのレベル、意識の低さに呆れを通り越して困惑さえ抱いていた。

「そりゃお前、サーヴァントの力に胡坐をかきすぎってもんだ。
一般人を殺して金目のものを巻き上げて、挙句すぐ近くのホテルを拠点にしてたらアサシンでも誤魔化しきれねえよ」

「サーヴァントの気配を消しても人や物の不自然な流れを辿ればマスターを探し当てることはできる。
アサシンを運用するのであれば襲撃を受けない工夫を凝らすべきでしたね」

アサシンのマスターの動きはとにかく短慮で場当たり的だった。
殺し合いに対する覚悟も超常の力もさしたる見識も持ち合わせない男はただ金を都合しアサシンと共に隠れていればやり過ごせると信じて疑わなかった。
今まで生き残ってこれたのは単に彼に目をつけるマスターが他にいなかっただけでしかない。

「まあもっとも、アサシンが消えた今では言っても詮無いことですが」

「そ、そうだ!俺はもうマスターじゃないんだ!見逃したって罰は当たらないだろ!?」

「そうはいきません。あなたに令呪が宿っている限りはぐれサーヴァントと再契約する可能性がある」

哨戒をしていた男のアサシンはバゼットのランサーによって呆気なく倒されていた。
元よりアサシンはマスター相手の攻勢でこそ真価を発揮するクラス。
気配遮断により発見されにくい分いざ相手から襲撃された際の対応力はキャスターにすら遥かに劣る。
三大騎士クラスの一角であるランサーの相手になるはずがなかった。
そしてアサシンを倒しているとしてもバゼットは男を見逃す気は毛頭なかった。

「バゼット、オレがやろうか?」

「必要ありません。あなたは万一に備えて周囲の警戒をお願いします、ランサー」

それを聞いた男は一つの光明を見出した。
自分があの女を殺せばランサーと再契約し命脈を保つことができる。
実際にバゼットを殺せたとしてランサーが再契約に応じるかは別の問題だが男は敢えてその問題から目を逸らした。
こんなこともあろうかとアサシンに命じて古美術店から盗ませた日本刀を手に取った。
剣道の有段者である男はこの刀さえあればそうそうマスターに遅れはとたないものと確信していた。
さらに相手が無手。であれば負ける道理はない。

「なあ、おい。剣道三倍段って知ってるか?
外人さんにはわからないだろうなあ…要するに今の俺はお前の三倍強いってことだああっっ!!!」

それが男の人生最後の台詞となった。
男が刀を振り抜くよりも前にバゼットの放った拳が男の頭部を粉砕したので。
男とバゼットの間に横たわる実力差は三倍どころか百倍以上だったというだけの話。



敵マスターの“処理”を終えたバゼットは男が拠点にしていたホテルの部屋を見回していた。
やはりどこにも魔術礼装の類はなく、男からも魔力を感じられなかった。どういうことなのか。

「この世界の聖杯は魔術回路を持たない人間でもサーヴァントと契約できるシステムを作り出した…?何のために?
それに無作為にマスターを選んでいる節がある。いや、これでは無作為に選ぶことが目的だと言わんばかりだ」

バゼットが認識する限り鎌倉の聖杯戦争のマスターは質のムラが大きい。
以前倒したマスターは彼女でも手こずる戦闘タイプの魔術師だった。今殺したマスターとは雲泥の差である。
元々魔術協会から聖杯を持ち帰ることを命じられたバゼットとしては無視できない違和感だ。

「考えるのもいいが今は騒ぎになる前にここから出た方が良いんじゃねえか?
大体だな、あんたは長々考えるのが似合うタイプじゃねえだろ」

「む、失礼ですねランサー。その言い方ではまるで私が頭脳労働に向いていないかのように聞こえる」

「ん?違ったか?」

「……言いたいことは山とありますがひとまずここを出てからにしましょう。
…しかし参加者を招致する方法といいマスター選定の基準といい一体どのような理屈で成り立っているのか……」

バゼットは予定外に巻き込まれたこの聖杯戦争の様相に困惑を抱いていた。
完全な平行世界から人間を呼び寄せるなど聖杯としての能力はこちらが上と思われる。
であれば冬木の聖杯以上に誰とも知れぬ者に聖杯を渡すわけにはいかない。必ず魔術協会に持ち帰らなければ。
足早にホテルを後にするバゼットをランサーは複雑な表情で見つめていた。



(ああ、まったく同感だぜバゼット。本当にこいつはどういう理屈なんだろうな)

ランサーはこの鎌倉でほとんど最初からバゼットと行動を共にしていた。
それ故バゼットは冬木で召喚したランサーが自分諸共鎌倉に招かれたのだと考えた。
だが厳密には違う。

(あの時、オレは確かに世界諸共消えたはずだ。
それが記憶を持ったまま、言峰に騙し討たれる前のバゼットに召喚されるとはな)

繰り返される四日間。衛宮士郎とバゼットによって終わったはずの世界の記憶を何故己が持っているのか。
期せずしてある種のやり直しの機会を得てしまったことになる。
出来るものなら今度こそ主を守り抜いてみせろと、聖杯に言われているようにさえ思える。

いいだろう、赤枝の騎士の名にかけて今度こそは彼女に聖杯を捧げてみせよう。
未練を残したつもりはないが、バゼットを守れなかったことはランサーの中に後悔の一つとして残っていた。
朱槍を強く握りしめ、生前の師の面影を残す女の後を追った。


【マスター】
バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/hollow ataraxia

【マスターとしての願い】
聖杯の調査及び冬木市への帰還。
……ただしバゼットの場合は優勝狙いと同義である。

【参戦時期】
第五次聖杯戦争でランサーを召喚してから言峰の騙し討ちを受けるまでの間

【宝具】
「斬り抉る戦神の剣(フラガラック)」
迎撃礼装と呼ばれる類の宝具。伝説ではケルトの光の神ルーが持つとされる短剣で、持ち主が手をかけるまでもなく鞘から放たれ、敵が抜刀する前に斬り伏せると言われる。
フラガの家が現代まで伝えきった神代の魔剣であり、数少ない「宝具の現物」。
二つ名でもある「後より出でて先に断つもの(アンサラー)」の詠唱によって待機状態に入り、相手が切り札として認識する攻撃(宝具の真名解放による一撃など)の発動に反応してこちらも発動する。
つまり必然的に、こちらの発動及び攻撃は相手の攻撃よりも後になる。
にもかかわらず、この宝具は因果を逆転させて自らの攻撃を「先」に書き換えることができる。時を逆行して放たれる先制の一撃は相手を確実に殺害、「死んだ者は攻撃できない」という概念によりその攻撃をキャンセルし、始めから無かったことにしてしまう「切り札殺し」。
ただし蘇生能力などの「死してなお甦る」性質を持つ者とは相性が悪い(死亡後の蘇生を阻むことができないため)。
さらに相手の切り札を見極めそれを使わざるを得ない状況に追い込み発動の瞬間に叩きこむ必要があるなど、使用者に求められる資質が非常に多い。
バゼットはこの聖杯戦争にフラガラックを三発分持ち込んでいる。

【weapon】
硬化のルーンを刻んだ手袋

【能力・技能】
ルーン魔術を修めている戦闘特化の武闘派魔術師。
細かい魔術は苦手だが、魔術師としての腕前はA+と評される。
素手での戦闘を好み、硬化のルーンを刻んだ手袋をはめ、時速80kmの拳を繰り出す。
社会生活能力が低い反面野外生活能力は非常に高い。

【人物背景】
本作の主人公の一人。アイルランドの寒村にあるルーンの大家の出身。
15歳で家門を継いだ彼女の代で、親族の反対を押し切って初めて魔術協会の門を叩く。
しかし、権威があるにも関わらず生真面目でどの派閥にも属さない彼女は貴族達には非常に扱い難い存在であり、待っていたのは封印指定の執行者という、態のいい便利屋として利用される道だった。
性格は生真面目で融通の利かない堅物。クールを決めているものの、実は短気でちょっとした我慢ができない。
また起こす行動は過激でアグレッシブだが彼女自身の内面は後ろ向き。
人生経験があまりに偏っていることから出会った男性に片っ端から惚れ込むほれっぽい一面もある。


【クラス】
ランサー

【真名】
クー・フーリン@Fate/hollow ataraxia

【参戦時期】
本編終了後、記憶が継続した状態で召喚される。

【属性】
秩序・中庸

【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A+ 魔力:B 幸運:E 宝具:B+

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。  

ルーン:B
北欧の魔術刻印・ルーンの所持。ランサーはこのスキルを持つことからキャスターのクラスにも該当する。

矢よけの加護:B
飛び道具に対する防御。狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。

【宝具】
『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大捕捉:1人
突けば必ず相手の心臓を貫く呪いの槍。ゲイボルクによる必殺の一刺。
その正体は、槍が相手の心臓に命中したという結果の後に槍を相手に放つという原因を導く、因果の逆転である。
ゲイボルクを回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、ゲイボルクの発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。
幸運のランクがA以上で稀に外れるとされるがBランクでも高ランクの直感スキルとの組み合わせで回避できる場合がある。


『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:5~40 最大捕捉:50人
ゲイボルクの呪いを最大限に開放し、渾身の力を以って投擲する特殊使用宝具。
もともとゲイボルクは投げ槍であり、使用法はこちらが正しい。
死棘の槍と違い、こちらは心臓命中より破壊力を重視し、一投で一部隊を吹き飛ばす。
なお、「刺し穿つ死棘の槍」、「突き穿つ死翔の槍」ともにルーン魔術による一時的なランクアップが可能。

【人物背景】
第五次聖杯戦争でバゼット・フラガ・マクレミッツに召喚されたサーヴァント。
バゼットが言峰綺礼の騙し討ちに遭い脱落して以降は彼のサーヴァントとして使役された。
聖杯戦争が終わる頃には言峰は死亡していたがカレン・オルテンシアと契約し冬木市に現界し続ける。
繰り返される四日間の中、事態の解決を図る衛宮士郎に一時的に協力。かつてのマスターであるバゼットと戦い相討ちになる。
無限の残骸との最終決戦には参加せずバゼットの行く末を見届け消え去った。……筈だった。

【サーヴァントとしての願い】
召喚されたからには今度こそバゼットを守り抜く

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