◇




 ――――はじめまして! わたしは丈槍由紀……みんなからは「ゆき」って呼ばれてます。

 皆さん、こんにちは。お昼じゃない人は、こんばんは。
 今日は私達、私立巡ヶ丘学院高等学校学園生活部の一日を……ちょっとだけお見せしちゃおうと思います!




 ◇

 「いや~っ、ちこくちこく~~っ!!」

 はい! これがわたし、ゆきです!
 ……てへへ、いきなり遅刻しちゃいそうになってますけど、そこは気にしないでください。
 割といつものことなんです。学校は好きなのに、朝は起きられない……あるあるですよね、こういうの。
 とにかく、今日もこうして慌ただしくわたしの一日は始まるわけなのです。
 たたたたたっ。
 全力疾走で廊下をダッシュしていると、向かい風が気持ちよくて残っている眠気も消えていきます。
 お寝坊しちゃうのはいけないことって分かってるけど……てへ。でも、この感覚は嫌いじゃありません。
 むしろ、好きです。 

 とはいっても、あくまで大事なのは目的地に辿り着くことです!
 みんなが待ってる部室に行って、りーさんのおいしいごはんを食べないといけません。
 りーさんというのは――わたし達、学園生活部の部長さんです。
 怒ると怖いですけど、普段はとっても優しくて面倒見のいいお姉さんなんですよ!

 「~~~~っ、遅れてごめーーーん!!!」

 がらがら!
 勢いよく部室の扉を開けると、案の定その先には、部員のみんなが揃っていました。
 テーブルの上にはおいしそうなカレーライスが湯気を立てています。

 「あら、ゆきちゃん。おはよう。またお寝坊さん?」
 「うう……起きれると思ったんだけどなあ……」
 「まあ、タイミングとしちゃギリギリセーフってとこだなー。ちょうど今料理も出てきたとこだよ」
 「ほんと!? よかったぁー。えへへ、今日のわたし何だかツイてる予感がするよ~」
 「もう。ゆきちゃん、ちゃんと反省しなきゃだめっ」
 「あうっ」

 ぴんっ、とデコピンをされてしまいます。
 この人がさっきも言った「りーさん」。
 そしてそんなわたし達を見て、チャーミングな八重歯を見せて笑っている女の子は「くるみ」ちゃんです。
 くるみちゃんはいつもシャベルを持ち歩いていて、力仕事はお任せあれ! ……って感じな頼れる女の子です。

 「……さて。先輩も来たところですし、ごはんにしましょうか」

 この子は「みーくん」!
 学園生活部の中では最年少さんです。
 わたしやくるみちゃんより大人っぽい子だけど、とってもかわいいんだよ!


 「そうね。
  それじゃあみんな、手を合わせて――――」


 「「「「 いただきまーす!!!! 」」」」


 わたし達の朝はこんな感じでした。
 ――――じゃあ次はもうひとり。少し気弱だけどとっても優しい先生を紹介します!


 「いや~~っ、今日わたし日直だった~~~~っ!!!」

 だだーっ! ……って感じで、またわたしは廊下を走っています。
 ついお腹いっぱいでゆったり気分になっちゃってましたけど、今日はわたしが日直なんでした。

 「……あ」

 と。そんな時、廊下の向こうに見慣れた顔を発見します。
 紫のウェーブヘアーを白いリボンでまとめた、同じ生徒にも見えるような人。
 わたしは教室へ向かう足を方向転換させて、その人のところへ走っていきます。
 日直のお仕事……はもちろん大事だけど、きっと走れば間に合う……と、思っておきましょう。

 「めぐねえーっ! おはよーっ!!」
 「あら、ゆきちゃん。おはよう……って、佐倉先生と呼びなさいって言ってるでしょ」

 この人は「めぐねえ」! 国語の先生をしてくれている大人さんです。
 何を隠そうこの人、学園生活部の顧問でもあるのです!
 いつも優しくにこにこ笑顔で、でも叱る時は厳しく叱ってくれる、生徒想いのとってもいい先生なんですよ。
 ただ、たまにみんなからいないもの扱いされてたりする、ちょっぴり不幸な人でもありますけど……。

 さてと! これでわたし達、学園生活部のメンバーと顧問の先生は全員となります。


 ――きーん、こーん、かーん、こーん。


 そして大変! ついつい話し込んじゃって、始業のチャイムが残酷に鳴り響いてしまいました!
 めぐねえとお別れして、わたしは急いで教室に駆け込みます!
 教科は確か英語。
 この前も居眠りをしちゃって、次やったら補習と言いつけられてるとってもまずい教科です。

 ドアの小窓から、こっそりこっそり中をのぞきます。
 ……先生がお寝坊したとか、そういうラッキーがあるかな、と少し期待したのですが。
 もう黒板にはむずかしい英文が書かれていて、どこからどう見ても授業が始まっちゃっていました。

 「あい、えんじょいど、すたでぃんぐ……? うぃず、えぶりわん。
  れっつ、すたでぃー……とげざー。
  ばっといっと、どね……?? なんて読むんだろう…………」

 うーん。やっぱり、英語はよくわかりません。
 でも、授業をサボっちゃうのは学生の模範であるべき学園生活部に似つかわしくない行動です。
 ……りーさんの受け売りなんですけど。それはともかく、やっぱり素直にごめんなさいして、授業を受けようと思います。



 がらがら――


 「ごめんなさい! 遅刻しちゃいましたーっ!!」


 …………………………。
 …………………………――――。


 ◆



 All is in the darkness in the past.(全ては過去の暗闇の中)
 Please don`t throw me away.(お願いだから見捨てないで)
 Help me.(助けて)



 ◆


 夕日が、はるか向こうの空に沈んでいきます。
 ふと、わたしはその「いつもどおり」に違和感を感じました。

 「あれ……? 窓からの景色、こんなだったっけ…………」

 海が見えます。
 グラウンドの向こう側にある家や道の形が、どこかいつもと違う感じがします。
 けれど、これは確かにいつもどおりのはずで――……はてな? とわたしは首をかしげてしまいました。
 でも、まあいっか、とすぐにそれで納得しちゃいます。
 だってわたしたちは学園生活部。学校で暮らしちゃう部活なんですから。
 お外がいつもと違うのは少し気になるけど、不思議だなー、くらいのことでしかありません。

 そんなことより!
 最後はみなさんに、わたしだけの秘密を教えてあげちゃおうと思います!
 えへへ、部員のみんなにもまだ教えてないんだよ。
 みんなで飼ってる太郎丸にも、クラスのみんなにも、めぐねえにも教えてないんだから!


 「――――参られたか。ユキ殿」


 夕焼けでまっかに染まる教室の中に、演劇の黒子さんみたいな、真っ黒くろすけさんがいます。
 顔にはこわ~いガイコツのお面をつけていて、きっと誰が見てもお化けにしか見えないでしょう。
 でも、わたしは違います。わたしとこの人は……えっと、しゅじゅう、の関係で結ばれた、パートナー同士なんです!
 ……もちろん、別に「そういう」意味ではありませんよ!?

 「アサシンさん、こんばんはー! 今日はどうだったの?」
 「以前不覚を取ったセイバーを、我が宝具にて屠り去った。
  優れた英霊であったことに間違いはないが、暗殺者の執念を聊か侮っていたようだな」
 「ほえー……そうなんだ。お疲れ様……」

 この人は「アサシン」さん。
 あまりたくさんおしゃべりする人ではないんですけど、なんだか格好いいおじさんです。
 でも、アサシンさんの言っていることは難しくてたまによくわかりません。
 けど、今日は前にケガをさせた人をすぱーん! とやっつけてきたみたいですね。
 弱い者いじめは学園生活部としても見逃すわけにはいきませんが、これならおあいこです。

 「これより私は、再び闇に潜る。ユキ殿はこの廃校に篭っておられよ」













 ――――――――――――――――――――――――――――廃。







  ̄ ̄ ̄ ̄ ――――――、――――――

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 『――この学校に篭っておられよ。
  敵の襲来があれば令呪を使われれば飛んで駆けつけるが……そうならないに越したことはない』

 「はーい! アサシンさんも、うーんと、……そうだ、聖杯戦争! 聖杯戦争、頑張ってきてねーっ!」

 聖杯戦争。
 アサシンさんは、そんななんだか物騒な名前のイベントに参加しているそうなんです。
 なんでも二人一組でなければ出られないイベントらしくて、彼のパートナーにわたしが選ばれたんだとか。
 こういうことを言っちゃうとアサシンさんを不安にしてしまうかもしれませんけど、正直、ちんぷんかんぷんです。
 でも、なんだか危ないこともあるイベントらしいので……出来れば、早く終わってほしいなあ……。
 アサシンさんはわたしの大事なパートナー……「サーヴァント」なんですから。
 怪我したり辛い目に遭ってるのを見ると、わたしも悲しいです。


 ふと気が付くと、アサシンさんはどこかへ行ってしまっていました。
 あの人はいつもこうなんです。いついなくなったのか、いつやって来たのか、はっきりその瞬間を見たことはありません。
 せっかくなのでいつか見てやろうと思ってるんですけど……やっぱり難しいですね。

 ――あ、大変。そろそろお夕飯の時間。


 それではみなさん、今日は長々お付き合いいただき、ありがとうございました!
 これからもわたし達、学園生活部のことを――――よろしくお願いしまーす!



 ◆


 「痛ましい娘だ」

 アサシンのサーヴァント――――ハサン・サッバーハは、自分のマスターが滞在する校舎を振り返り呟いた。
 人が立ち入らなくなってずいぶん経つのか窓ガラスは割れ、壁も所々が剥げ落ちて蔓が這っている。
 過去にはグラウンドだったろう場所も、今や腰の丈ほどの藪と化している。
 廃校。誰がどこからどう見てもそうとしか形容出来ないだろう荒れ果てた建物が、幽けく夕暮れ時に聳えていた。

 「過去に何があったのか知らんが、完全に壊れている。聖杯も酷な選別をするものだ」

 暗殺者は見てきた。
 召喚されて間もなく、彼女に「学園生活部」の面々の紹介も受けた。
 もっとも――――彼には、彼女以外の人間が見えた試しなど一度たりとてなかったが。
 「くるみ」は、体育倉庫から引っ張り出してきた錆びついたシャベル。
 「りーさん」は、屋上にあったプランターの痕。
 「みーくん」は、二年生の教室。
 「太郎丸」は、何の生物かも分からない小さな白骨。
 「めぐねえ」は、おそらく聖杯戦争の中で死亡したのであろう、ミイラ化した女性だった。

 遅刻を詫びながら騒がしく入っていった教室には、当然授業をする先生もそれを聞く生徒もいない。
 ガラスの割れた窓を開け閉めして風を調節し、彼が調達した食糧を都合よく解釈して食べている。
 それが、アサシンの目から見た丈槍由紀という少女の真実。
 彼女は現実を認識できないまま、しかし彼女にとってはれっきとした真実である空想の中を生きている。

 「だが、たとえ夢に酔う童女であれども、契約を結んだ主であることには変わりない。
  よかろう。ユキ殿はただ夢を見続けていればよい。
  私は変わらず勝利のみを持ち帰り続ける――――そして、最後には聖杯を持ち帰ろう」

 忠節という言葉とは最も縁遠いであろう立場にある彼だったが、彼は契約を重んじる質だ。
 たとえ相手が夢と現実の境すら曖昧な壊れた少女であれ、契約がそこにあるなら死守しよう。


【クラス】
 アサシン

【真名】
 ハサン・サッバーハ@Fate/stay night

【パラメーター】
 筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:E 宝具:C

【属性】
 秩序・悪

【クラススキル】
 気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
 投擲(短刀) :B
 短刀を弾丸として放つ能力。

 風除けの加護:A
 中東に伝わる台風避けの呪い。

 自己改造:C
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

【宝具】
 『妄想心音(ザバーニーヤ)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:3~9 最大捕捉:1人
 普段は長い布に包まれているシャイターンの右腕。使用時には腕を伸ばし、赤い異形の腕を開放する。
 対象に触れることで、エーテル塊による心臓の二重存在(コピー)を作り出す。
 この鏡面存在を握りつぶすことによって対象本人の心臓を破壊し、呪殺を成立させる。
 如何に硬い鎧で身を護ろうとも心臓を掴み上げることができるが、幸運や魔力で対抗可能。
 作中の描写から接触していないと鏡面存在を作れないようだが、腕の長さがその弱点を補っている。
 人を罰するモノ故、言峰綺礼のように既に人のモノではない心臓は呪えず、また心臓限定であるがゆえに既に心臓がないものや心臓を潰されても活動可能な相手には効果や必殺性や即死性が薄い。

【weapon】
 黒塗りの短刀「ダーク」

【人物背景】
 イスラム教の伝承に残る「暗殺教団」の教主、「山の老翁」。
 この名は個人のものではなく、教団の教主に代々襲名されてきたもの。複数いる「ハサン・サッバーハ」を継承した暗殺者の内の1人が彼であり、暗殺者という出自から「反英雄」に分類される。
 通称「真アサシン」。何かと不遇な人。

【サーヴァントとしての願い】
 失われた自らの顔を取り戻し、自身が唯一のハサン・サッバーハになること

【基本戦術、方針、運用法】
 宝具の効果も相俟って即死性能の高いアサシン。
 ただしマスターのゆきは問題だらけなので、そこを突かれると厳しい。
 序盤に良い同盟相手を見つけられるかどうかがターニングポイントかもしれない。


【マスター】
 丈槍由紀@がっこうぐらし!

【マスターとしての願い】
 そもそも、聖杯戦争についてを朧気にしか理解していない

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 なし

【人物背景】
 天真爛漫な少女で、学園生活部のムードメーカー。
 元々子供っぽい性格であったが、ゾンビ騒動を機に幼児退行した後、慈の死をきっかけに現状を認識できなくなったかのような言動をとるようになる。
 彼女がこの聖杯戦争で見ている「夢」は以下の通り。
 ・鎌倉の廃校を巡ヶ丘学院高校と誤認している
 ・学園生活部の面々やクラスメイト、教員たちなどを「存在している」ものとして見ている
 ・聖杯戦争については、アサシンの参加しているちょっと危険なイベント程度の認識。
 ・殺人などのキーワードについては、無意識的に理解を拒んでいる。

 食事は基本的にアサシンが即座に食べられるものを調達。
 それを都合よく解釈し、空想の友人たちと食べている。 

【方針】
 みんなで楽しく、学園生活!


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