「財宝さ! おれは聖杯を使って、まだ誰も見たことのねェ大財宝を手に入れる!」

 町外れの酒場にて、周りの客から怪訝な瞳を向けられるのにも構わず――海賊は宣言した。

 「何でも願いが叶うんだろ!? だったらみみっちい使い方をしたってつまらねェ。
  ありったけ――ありったけだ! "ひとつなぎの大秘宝"なんざ目じゃねえくらいの宝を願うのさ!!」

 道化のような鼻に、時代どころか色々なものを錯誤した服装が特徴的な男だった。 
 彼を陰でクスクスと指差し笑う者もいたが、有頂天の彼の耳にそんなことは入らない。
 聖杯。あらゆる願いを叶える、万能の願望器。
 それがもうじき、この辺鄙な町に現れるという。
 まさに一攫千金の大チャンス。常に富を求め続ける海賊という人種が、そんな好機に黙っていられる筈はない。
 そしてそれは――彼、『道化』のバギーも同じであった。

 ゴール・D・ロジャーの今際の言葉を皮切りとして、世は『大海賊時代』と化した。
 我が道を行く者、略奪と征服を繰り返す者、はたまた民に安息と希望を与える者。
 良い意味でも悪い意味でも、人々の生活と海賊は密接に関わりがある。
 だが今バギーがいるこの町の人間はそうではない。
 バギーが海賊を名乗れば笑うか首を傾げるか。
 彼を海賊だと信じる信じない以前に、海賊なんて存在が今時町中に現れるわけがない、とすら思っている節があった。

 バギーも最初は面食らったが、"聖杯戦争の舞台"であるこの世界では――どうやら海賊という存在自体が廃れているらしい。一応存在はしているものの、そう広い範囲ではない上、財宝目当てに繰り出すような輩は皆無と聞く。
 要は略奪に重きを置いただけの、単なる窃盗団の延長だ。
 彼は元よりそういった阿漕なやり方も良しとする性格であったから特に何か思うことはなかったが、あの"麦わら"や"赤髪"が聞いた日には怒りそうだな、くらいの感想は抱いた。

 しかし、それまで。
 この世界の海賊がどうかなど知ったことじゃないし、心底どうでもいい。
 バギーにとって興味があるのは、まるでメルヘンの世界のような大財宝――"聖杯"だけである。

 「ギャハハハ! 近頃は肝の冷える出来事ばっかりでウンザリしてたが、聖杯さえ手に入りゃお釣りが来る!」

 バギーの最近は、らしくもない綱渡りばかりだった。
 大監獄インペルダウンからの脱獄はどこかの誰かさんのせいで予定よりも遥かに派手になり。
 挙句の果てにはマリンフォードの頂上戦争に参加する羽目になり、何度も何度も死にそうになった。

 ――けれどそれも、このための前振りであったとすれば歓迎できる!

 事実、道化のバギーは幸運だった。
 予期せぬ大乱に巻き込まれたのは紛れもない不運だが、彼自身も言っている通り、彼は常に綱渡り状態だった。
 少しでも躓いていれば即座に死んでいたような局面は腐るほどあったが、彼はそれを乗り越えてここにいる。
 その矢先に舞い込んできた、この"聖杯戦争"。
 天は自分に微笑んでいるとしか思えなかった。
 だからバギーは今日も上機嫌で、市民から奪い取った金で酒を呑む。

 上機嫌で。
 度数の強い酒を、赤鼻をテカらせて呷り続ける。


 「へぇ。ずいぶんご機嫌じゃないのさ、バギー」


 酒場の中で、明らかな異色――ついでに言えばお邪魔虫であるバギーに語りかける者は一人しかいない。
 彼も大概だが、こちらも相当に奇抜な出で立ちをした女傑だった。
 派手な赤髪と美貌もさることながら、踏んできた場数を象徴するような顔の傷が存在感へ拍車をかけている。
 彼女はカウンターの向こうの店員へ酒を勝手に注文すると、出されたそれを静かに含んだ。

 「これで機嫌を良くしねェやつなんざいねェよ。
  どんな願いでも叶うんだぜ? こんな機会、一生どころか百生分時間があったってもう一度あるとは思えねェ」
 「さあ、それはどうだろうねぇ。そう珍しいもんでもないとアタシは思うけど」
 「珍しくないィ? んじゃ何か? お前は"他の聖杯戦争"のことを知ってるってのかよ」

 問い返すバギーに、女傑は一瞬だけ沈黙する。
 それから彼女は、口許をニヤリと歪めて自分のマスターに微笑んだ。
 その表情はバギーが見てきた大海賊――化け物のような連中にもまったく引けを取らない、凄味溢れるものだった。

 「"知ってる"ってのはちと違うね。アタシの場合はもっと直接的だ。
  アタシにとって、今回の聖杯戦争は――"二度目"なのさ」
 「あん!? ……二度目だと!?」

 そうさ、二度目。
 頷く自身のサーヴァントに、バギーは驚きと怪訝が半々で混じったような表情を向ける。
 一世一代の好機だと思っていた聖杯戦争が彼女の言う通りそう珍しくないものだと知り――それでも、決してありふれたものではないのだが――少しだけ上機嫌に水を差されたというのもある。
 それ以上にバギーは、とある事実が気にかかった。

 「お前、結局どうなったんだよ」
 「負けたさ。この聖杯戦争とは聊か趣が違いはしたが、そこそこ序盤の方だったと記憶してる」
 「お、お前――本当に強いんだろうな! 大丈夫なんだろうな?!」

 カラカラと笑いながら敗戦を語る彼女に、バギーは早くも不安なものを感じた。
 マスターとしては当然の不安だろう。
 いくらバギーが悪魔の実を食べた能力者であろうと、サーヴァント相手に勝てるほど派手な能力ではない。
 数十軒もの家屋を破壊できる虎の子"バギー玉"は規模のデカさが裏目に出て、使い所を選ばなければ民間人へ被害を出して監督役のエセ神父から要らないペナルティを喰らわされかねない。
 それに、いくら威力があるとはいえそれは人間相手の話。
 サーヴァントに効くかどうかといえば怪しいし、やはり頼みの綱はこちらもサーヴァントになってくる。

 そのサーヴァントがダメなら、雲行きは怪しいどころかお先真っ暗だ。

 「やれやれ、小悪党で小心者なところは前のマスターとよく似てるね」

 捲し立てるバギーに、スカーフェイスの女傑は呆れたように肩を竦める。
 前――"月"の聖杯戦争でマスターだった男も、バギーと同じ小悪党だった。
 この手の人物とはどうも縁があるらしい、と益体もない感想を抱きながら、彼女は答えてみせる。
 言い淀むことなく、万感の自信すらそこに込めて。

 「安心しな。アタシは強いよ」

 なんたって、アタシは太陽を落とした女(エル・ドラゴ)なんだから。

 付け加えたその言葉の意味はバギーには分からなかったが――彼は早くもこう思い始めていた。


 (――――あれ? もしかして聖杯戦争って、とんでもねェ厄ネタなんじゃ…………?)


 道化のバギーと、ライダーのサーヴァント――フランシス・ドレイク。
 先に大海賊と呼ばれた者と、後に大海賊と呼ばれる者。
 彼らの凸凹な旅路は、まだ始まったばかり。  


【クラス】
ライダー

【真名】
フランシス・ドレイク@Fate/EXTRA

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運EX 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
 対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
 嵐の航海者:A+
 船と認識されるものを駆る才能。
 集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。

 星の開拓者:EX
 人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
 あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。

【宝具】
「黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)」
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:20~40 最大捕捉:前方展開20船
ライダーの生前の愛船である「黄金の鹿号(ゴールデンハインド)」を中心に、生前指揮していた無数の船団を亡霊として召喚・展開。圧倒的火力の一斉砲撃で敵を殲滅する。ライダーの奥の手にして日常の具現とも言える宝具。
対軍宝具でありランクも高いが、現在の所持金に応じて威力が増減するという変わった特性を持っている。
ゲーム的には、物理攻撃であり、前日のトレジャーハンティングでライダー側が手に入れた財宝の数と、宝具発動までのターン内での勝敗数がダメージに影響するというギャンブル性も持つ。

「黄金の鹿号(ゴールデンハインド)」
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:10~30 最大捕捉:前方展開1船
ライダーが黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)を展開した時に乗っている船。
グランド王国のガレオン船でありドレイクが私掠船として用いたことで有名。
全長三十七メートル弱、船首と船尾に四門ずつの砲を持つ他に、両側舷にも14の砲を搭載。
『黄金鹿と嵐の夜』とは関係なく召喚し、カルバリン砲での攻撃、乗船しての移動が可能。
彼女が「騎兵」たる所以であり水上でなくても船体を地面に隠しながらの移動などもできる。
ゲーム中ではシンジからの魔力供給がとぼしいため、砲弾の補充が十分にできていなかったが、今回の聖杯戦争でもマスターは違えど同じ理由で砲弾の補充が不十分。

【Weapon】
二挺拳銃

【人物背景】
愛船「黄金の鹿号(ゴールデンハインド)」を駆る海賊。商人にして冒険家、私掠船船長にして艦隊司令官。
人類で初めて世界一周を生きたまま成し遂げた星の開拓者。その収益で母国イギリスを、当時世界最強だったスペインを打ち破るまでに導いた英傑。史実では男性だが、EXTRAでは女性として現れている。
彼女が成し遂げた航海により、イギリスは当時二等国だったところから、世界に冠たる大英帝国に生まれ変わった。
まともな植民地もなく、技術的にはそれなりでも国力に乏しかったイギリスは、彼女の持ち帰った財貨と世界周航によって得られた地図によって東インド会社を設立させ、当時のスペインと互角に戦える艦隊をそろえられるに至る。
スペイン無敵艦隊との決戦において、彼女は英国艦隊の副司令官として参戦する。「火船」と呼ばれる特殊な戦法を使い、無敵艦隊を英国へ上陸させることなく大敗せしめた彼女は、スペイン人から「エルドラゴ」と呼ばれた。

【サーヴァントとしての願い】
二度目の聖杯戦争を愉しむ。


【マスター】
バギー@ONE PIECE

【令呪の位置】
右腕

【マスターとしての願い】
聖杯を獲得し、ありったけの財宝を手に入れる

【Weapon】
バギー玉などを始めとした、様々な火器。

【能力・技能】
超人系悪魔の実『バラバラの実』。
体を複数のパーツへバラバラに分離する事が可能になり、斬撃によるダメージを無効化出来る。
パーツは空中に浮遊し、思うがままに動かす事が出来るため、人体の限界を超えた間合いから攻撃も出来る。
しかし、足だけは飛ぶことが出来ず、両足を中心とした一定の範囲内でしかパーツをコントロールする事が出来ないほか、細かく分離し過ぎるとコントロールし切れなくなるらしい。
なお、頭と体が離れていても身体機能には影響がなく、食事も出来る。

【人物背景】
バギー海賊団船長。『道化』のバギー。
ピエロのような顔立ちをした男で、自分の赤くて丸い大きな鼻に凄まじいまでのコンプレックスを抱いており、鼻を指摘されると激怒する(聞き間違いで怒ることも非常に多い)。望みは世界中の財宝を手に入れること。

【方針】
聖杯を手に入れるために、どんな汚い手でも使う。
……使うけど、早くも色々不安になってきた。

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