それは鎌倉の何処か。
ただ一つ、夜闇が深まり、月の輝きが露わになる時刻であったことは確かだ。
駅近くの中心街。まだ雑踏が多く蠢いている中、一人の人間が歩みを進めていた。
口元から吐き出された溜息は空へと溶けていき、風に乗っていく。
がっしりとした体格の男であった。
夜闇に包まれた街をゆっくりと歩き、口元を真一文字に締めたその顔つきは戦場帰りの兵士と錯覚してしまう程だ。
救いの手を取れなかった男、赤坂衛は一人夜空を見上げ、再び溜息をついた。
金色に光る月は見る者を魅了する美しさを放ち、空高く上っている。

……何が正しくて、何が間違っているか。

月に目をくれず、赤坂はひとり考える。
あの日、あの時、救えなかったもの。
そして、永遠に還ってこないもの。

「……梨花ちゃん」

そっと呟いた言葉は行き交う人々の声に溶け、風に乗っていく。
歩く。歩く。覚束ない足を動かして、歩く。
やがては人通りの少ない住宅街へと赤坂の姿は溶けていった。

「成程。それが貴方の願いに繋がる少女ですか」

そして、いつのまにかに彼の横には一人の男が立っていた。
燕尾服に華奢な体。視る者の目を引く絶世の美形。
それはまるで御伽話の中で語られる王子様のようで。

「……セイバー」
「御機嫌いかがですか、主」
「最悪、だね」

セイバーと呼ばれた男は淡々と事務的な言葉を赤坂へと投げかける。
マスターとサーヴァント。
主従という括りで当てはまる彼らは令呪で繋がっていた。

「正直言うとね、僕は迷っている」

あの時犯した間違いを正せるならば。
取り戻せない過去を取り戻せるならば。
聖杯の奇跡に縋ることで、少女の笑顔をもう一度。
けれど、たった一人の為に他の多くの人間を蹴落とす行為は決して許されるものではない。


「セイバー、君はどうだい?」
「これはまたわかりきった問いを投げかける」

何故、古手梨花は救われなかったのか。
自らの願いを疑いもせず、迷いもせず、聖杯戦争を戦う。
それができたらどれだけよかったことか。

「誰しもが願いを持って此処にいる。刃を振るい、敵を屠るのは全ては願いが為に」

古手梨花を救う。
過去改変という願いの代償は知らない誰かを蹴落とすことだ。
もっとも、そんなことをせずとも聖杯の奇跡が使える可能性が残っているのかもしれない。
手を取り合って、全員が幸せになれるエンディングは耳心地がいい。
しかし、そんな希望はセイバーによってぽっきりと折れてしまった。

「願いを得るのは一組のみ。全員が救われるという安易な希望に目をくらませるのはやめてもらいたい」
「……ッ」

願うなら殺せ。抗うなら生き残れ。
所詮は血生臭い黄金の器だ、犠牲無しで叶えられるものなんてないのだ。
縋らなくては生きれないのなら、いっそのこと諦めてしまえばいいのに。

……少なくとも、俺の願いに救いはない。

セイバー――幽雫宗冬は今も希望を信じ続ける赤坂のことを覚めた目線で見ていた。
あの日起こった惨劇よりも、たった一人の少女を殺すことを願いの源としている自分はどうしようもなく、狂っているのだろう。
狂気に委ねた仲間達を殺して、抜け殻のような自分に感情を注いだ辰宮百合香に恋をした。
恋をしたからこそ、殺したい。
お花畑な彼女に本物の想いを思い知らせる為にも――幽雫宗冬は彼女を殺す/救うしかない。

「迷うぐらいなら最初から願わなければいい。貫けないなら諦めればいい」

愛することも、愛されることも、全てが定められたものならば。
いっその事全てを終わらせてしまえばいい。
信じられないなら、殺すことで証明してしまえばいい。
あの日、喪失した『幽雫宗冬』という自分を、今日も心の奥底へと蹴り棄てて偽りの自分を被る。

「もっとも、俺は――――そんな腑抜けた結末は御免だ」

その果てが報われないとは言わない。
だって、最初から報われることを期待していないのだから。
幾ら力を持っていようが、聡明な頭であろうが、過去は変わらない。
否、変えられないのだ。
それがわかっていながらも、心の片隅で希望を見出す自分が、一番無様だ。
辰宮百合香がほんの少しだけ、外を見てくれたら――。
あるはずもない展望を携えて、幽雫宗冬は聖杯を望む。
辰宮百合香に本物を教える為に、総てを殺す。



【クラス】
 セイバー

 【真名】
 幽雫宗冬@相州戦神館學園八命陣

 【パラメータ】 
 筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:E 宝具:B

 【属性】
 秩序・中庸

 【クラススキル】
 対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。

 騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

 【固有スキル】

 単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

 邯鄲の夢:A
 夢界に於いて超常現象を発現させる力の総称。
 幽雫は全てにおいてハイクオリティな剣士の理想を体現したバランス型。

 盲目の愛:B
 幽雫は恋をしている。ただ一人、辰宮百合香の為だけの刃で在り続けると誓っている。
 それ以外は見えない知らない聞こえない。
 決して彼は願いを見失わない。その精神は揺らがない愛でできている。

 【宝具】

 『総じて、この世は紙風船』
 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人

 この宝具の効果は、自身に近づく物体全ての重量を羽毛同然にまで軽くするといった重力操作である。
 能力は幽雫の周囲の物体全てに無差別に発動するため、宝具使用中の幽雫と共闘することは困難を極める。
 もっとも、【重み】を操る者ならば、この宝具を容易に相殺できるだろう。

 『穢跡金剛禁百変法』
 ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

 この宝具の効果は相手にとって絶望的な事象を具現化。
 発動条件は相手に幽雫宗冬の左腕には何か切り札のようなものがあると認識させること。
 ちなみに、相手によって絶望的な事象は変わり、幽雫の事を知れば知る程、戦えば戦う程陥りやすいといった罠がある。

 【Weapon】
鋭剣。

 【人物背景】
 辰宮百合香の足を舐めることが好きで自分でちんぽをこすることもできない腰抜け。
 きれいなのは見た目だけで、中身は腐った精液しか詰まってない。
 辰宮百合香を殺したい程愛しているマゾ家令。

 【サーヴァントとしての願い】
  未来永劫、どんな破滅が待ち受けようとも、辰宮百合香が望む幸せの為だけに。
  それだけが、幽雫の願いである。

 【基本戦術、方針、運用法】
 セイバーらしく、前線で運用するのが一番ではあるが、単独行動を利用して奇襲といった搦め手もあり。


 【マスター】
  赤坂衛@ひぐらしのなく頃に

 【マスターとしての願い】
  古手梨花を救う。運命を変える。

 【weapon】
  鍛え上げた肉体。

 【能力・技能】
  豊富な戦闘経験、空手。

 【人物背景】
  少女が伸ばした手を取らなかった男。

 【方針】
  彼女を救う為に、生き残る。絶対に死ねない。

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