ここは鎌倉の地にある倉庫の一つ。
本来であれば荷物の搬出入で人気が有るのだが現時刻は深夜二時。
ただ静寂と暗闇がこの倉庫を支配する。

しかし耳を澄まし目を凝らしてみるとコンクリートの床に寝息を立てながら仰向けになっている人物がいるのが確認できる。
背格好からして20代後半か30代前半の男性だろう。
その体は鍛えられている。
ただその髪の色は老人のように白く染まっていた。
その人物は固い床を苦とせず規則正しい寝息を立てている。

「うわああああ!」

だが突如倉庫中に響かんばかりに大声を上げ起き上がる。
悪夢に魘されていたのか体中に汗をかき息も乱していた。

「ヒロコ……ユミ……」

その目には一筋の涙が流れている。
そして悲痛な面持ちで俯く。
彼はヒロコとユミと呼ぶ人物のことを思い出しているのだろうか。

「プログレス!」

下に俯いていた顔を上げると悲痛な顔はとうに消え失せている。
代わりにその顔は恐ろしいまでの憎悪で満たされていた。
もしこの場に人が居たとしたら恐怖のあまり失禁していたかもしれない。
その恐ろしいまでの殺気をまき散らす白髪の男性に臆することなく近づいてくる人影が一つ。

「大丈夫か」
「あんたは誰だ?」
「ドーモ、マスター=サン、ライダーです」

ライダーは手を合わせ礼儀正しくお辞儀する。
そのサーヴァントは赤黒のシノビ装束を身に包み、口には「忍」「殺」とリリーフされた鋼鉄のメンポを装着している。
あからさまにニンジャだ。

一方サイモン・ヘイトはそのニンジャをただ茫然と見つめていた。
この鎌倉の地に呼ばれた直後に聖杯戦争についての知識は自然と植え付けられていた。
数々の偉業を成し遂げた英霊、それがサーヴァント。
そのサーヴァントが目の前にいる。そして圧倒的存在感に思わず息を呑む。
これほどまでか。
自分は様々な人物と戦ったことがあるがそれらの比ではない。
仮に戦うとなれば瞬きの間で命が絶たれると言っても過言ではないだろう。

「ところでマスター=サンは聖杯に何を願う?」

ライダーは鋭い眼光でヘイトを見つめる。
まるでヘイトという人物を見定めるように。
ヘイトもこの問いにすぐさま答えることができなかった。
鎌倉に呼ばれたのは今の時間から数時間前。
聖杯戦争に勝ち残ったものは聖杯によって願いが叶うことは知っていた。
だが突然自分が知っている鎌倉とは違う鎌倉に呼ばれる。
突然の出来事で混乱していたことと直前までの旅の疲労で願いをどうするか考える余裕がなかった。
そして今改めて考える。
自分が叶えたい願いは何か?
様々な願いがヘイトの頭の中で浮かび上がる。
暫くしてからヘイトはポツポツと喋りはじめる。

「俺には妻と娘。そして五人の友人が居た。
その友人は俺を裏切り両腕とヒロコとユミの命を奪った。
俺はその友人を許すことができず復讐の戦いに身を投じた。
四人の友人を殺し、最後の一人を殺すために旅をしていた時にこの地に呼ばれた」

ヘイトは自分の過去をライダーに聞かせるように語り始める。
その顔は怒りと悲しみが混ぜ合わさったような悲痛な表情をしていた。
実際頭の中で自分の腕を奪われ、妻と娘の遺体を見せつけられた地獄のような光景を思い出していた。

「ならば聖杯への願いは最後の仇の死か?それとも妻子が生き返ることか?」
「昔の俺ならそう願ったかもしれないな」

ヘイトにはある特殊な力を持っていた。
その名はゼスモス
怒りと憎しみ執念によって発動する「繋ぎとめる力」
その力で四人の友人を葬ってきた。
そして最後の仇であるプログレスに挑み敗北した。

敗北した理由。
それは自分の憎しみが足りないから。
自分の人間性とゼスモスが自分と出会ってきた人物を繋げ、その力が自分の復讐心を薄れさせたと。

そしてヘイトは人間性を捨てた。繋がりを捨てた。
自分の心をすべて復讐の憎悪に注ぎ込む。
その憎悪の心がゼスモスを増幅させ圧倒的な破壊の力が宿る。
自分は人間性を捨て悪魔になると誓った。

だがそれではダメだと気づく。
自分の強さは繋ぎとめること。
人と人を繋ぎとめること。人間性を持ち続けることが自分の強さであると。
それを自分が出会った人物たちに教えられた。

「だが俺は仇の死も妻子の生き返りも願わない!俺は聖杯戦争には参加しない!」

聖杯戦争は多くの人間を犠牲にして自分の願いを叶える戦い。
人間性と繋がりを捨てようとした自分だったら躊躇なく参加者を殺し妻子の生き返りを願っただろう。

だが今は違う。
参加者を殺して願いを叶えることは人間性と復讐の旅で出会った人々の繋がりを捨ててしまうことと考えていた。
ヘイトは人々からダイモンズ・ヘイト、悪魔の怒りと恐れられていた。
復讐の為に人間を殺していく自分は悪魔であると自覚している。
ただ自分は五人の友人にとっての悪魔だ。
願いのために人々を殺してしまったら五人にとっての悪魔でなく本当の悪魔になってしまう!
そうなれば自分の復讐は無意味になり死んでしまった妻子に顔向けできないと思っていた。
何より妻子は自分の中にいる。
生き返ったとしてもそれは自分が愛した妻ヒロコと娘ユミではない。
ゆえにヘイトは聖杯に願わない。

ライダーは決断的な意志を秘めたヘイトの目を見据える。
妻子を殺され復讐の戦いに身を投じた男が妻子の生き返りや、仇が死ぬことを願わないわけがない。
だがそれでも自分の意志が自分の信念が聖杯に願わないことを決めた。
その答えを出すことに多くの葛藤が有ったのかはヘイトの雰囲気で感じ取っていた。
数々の自問自答をしてきたのだろう。自分と同じように。

「ではこれからどうするのだ?」
「この地から脱出する方法を探し出す。そしてプログレスを殺す」
「そんな方法はない」
「何としても探し出す」

この聖杯戦争は今までの聖杯戦争とは違う。
リタイヤという選択肢はない。死ぬか、聖杯を勝ち取るか二つに一つ。
座から知識を与えられたライダーもそれは理解し、聖杯戦争に関する知識を植え付けられたヘイトも理解しているはず。
だがヘイトはそれを理解しながらこの地から脱出するという方針を選んだ。

「……分かった。これからはオヌシの方針に基づいて行動しよう」

ヘイトはライダーが自分の方針に賛同してくれたことに胸をなで下ろす。
サーヴァントが居なければ自分はこの地から脱出することはできない。

「とりあえず今日は寝ろ。オヌシは相当疲れている。見張りは私がしておく」

ライダーはニンジャ観察力でヘイトの身体は限界に近いことを見抜いていた。
その言葉を聞いた時にヘイトの瞬間に疲労が一気に襲い掛かってきた。
プログレスを探すためにまともな休みを取らず旅を続けていたのを思い出した。

「すまない」

ヘイトは礼を述べたあとライダーの言葉に甘えその場で横になり眠り始める。


ヘイトは天井を見つめながら先ほどのライダーとの会話について思い出していた。
何故自分の過去をあそこまで包み隠さず打ち明けたのだろうか?
普段なら初対面の相手に過去のことを語ることは滅多にない。
だがライダーからは自分と似た何かを感じていた。
まるで鏡で自分を見ているように。

だがそれ以上のことを思考できなかった。
ヘイトの意識は睡魔によって断たれ、深い眠りに落ちていた。



「フユコ……トチノキ……」

ライダーは倉庫の屋上で見張りをしながら生前のことを思い出していた。

クリスマスの夜。
ネオサイタマにあるマルノウチ・スゴイタカイビルで妻子と共に数少ない休日を楽しんでいた。
だがニンジャ抗争により妻子は無慈悲に殺される。
そしてライダーは妻子の復讐の為にすべてのニンジャを殺すもの「ニンジャスレイヤー」になった。

そして自分のマスター、サイモン・ヘイトについて考える。
ニンジャスレイヤーはヘイトが魘されるのを見ており、あの時からヘイトは自分と同じ復讐者であると見抜いていた。

あのヒロコとユミと呼んでいた人物。
ヘイトにとって大切な人だったのだろう。
流した涙を見ればすぐに理解できた。
プログレスという人物。
ヘイトにとっての憎き仇なのだろう。
あの憤怒の表情。
そしてニンジャ感覚で知覚した腕から噴き出している謎のオーラ。
何かはわからないが憎しみを凝縮した禍々しいものを感じた。
あのオーラを見たらすぐに理解できた。

自分を呼び出したあのマスターは自分と共通点が多い。
妻子を無慈悲に殺された。
妻子の復讐のために修羅の道を選んだ。
そして自分も生前に同じように聖杯戦争に招かれていたらヘイトと同じように聖杯に願わず、この地から脱出するという方針を取っただろう。
あのマスターのサーヴァントに自分が選ばれたのは必然だったのかもしれない。

ニンジャスレイヤーはヘイトに対して強いシンパシーめいたものを感じていた。
できることなら彼の復讐を手助けしたいとすら思っていた。
復讐の助け、それはヘイトの身を守ること。ヘイトを元の世界に帰すこと。
だがヘイトが選んだ道は聖杯を勝ち取るより険しい道かもしれない。
普通に考えれば不可能だ。
ライダーはヘイトと会話してその胸に宿る執念のようなものを感じていた。
仇を討つまでは絶対に死なない
その執念が不可能を可能にするかもしれない。

「ネオサイタマの死神」と恐れられたニンジャスレイヤー。
「ダイモンズ・ヘイト」と恐れられたサイモン・ヘイト。

悪魔と死神の物語が鎌倉の地で幕を開ける。


【クラス】
ライダー

【真名】
ニンジャスレイヤー(フジキド・ケンジ)

【パラメーター】
筋力B (A) 耐久C (B) 敏捷B (A) 魔力D (C) 幸運E 宝具A

【属性】
混沌・善 

【クラススキル】
騎乗:E
騎乗の才能。バイクやミサイルを乗りこなす程度

対魔力:E
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。  
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

チャド―の呼吸:A
魔力を消費し、回復力を高めるスキル。
また精神集中の効果があり精神干渉攻撃をある程度無効化できる。

アイサツ:D
アンブッシュで相手を仕留めきれなかった、相手と対峙した際に自分の名前を名乗らなければならない。
名乗らない場合にはステータスが大幅に下がる。
ニンジャにとってアイサツは絶対である。古事記にもそう書かれている。

魔力補給:D
スシを補給することにより通常の食事より多くの魔力を回復することができる。
特にオーガニック・スシの大トロは普通のスシより多くの魔力回復が見込める

【宝具】

「地獄飛脚大人女(アイアンオトメ)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:1人

ヘルヒキャク社製最新モデルインテリジェントモーターサイクル「アイアンオトメ」
ライダーが愛用し、数々のイクサをともに戦った愛機が宝具化したもの。
非常に高度な自動操縦機能が備わっており、ライダーの意を汲んだような動きをしてくれる。
ライダーが許可したサーヴァントやマスターならばこの宝具を使用することが可能。

「狂人はミサイルでやってくる(サツバツ・ナイト)」
ランク:E 種別:対城宝具 レンジ:1~1000 最大補足:50人

ライダーがライダーたる所以の宝具
ライダーが生前遠く離れた仲間の窮地を助ける為にとった行動。
それはミサイルに騎乗してその地に向かうことだった。
この狂人の所業としか思えないような逸話が宝具したもの。
ライダーにとってミサイルは武器ではなく移動手段。

ライダーの騎乗スキルにより召喚したミサイルを正確な位置に着弾させることができる。
ただ着弾させる途中までライダーが騎乗していなければならない。
またライダーの性格上、着弾させた際に周囲の人々に被害が及ぶ場合はこの宝具を使うことは無いだろう

「三種の神器が一(聖なるヌンチャク)」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ1~10 最大補足:5

半神的存在ニンジャ、そのニンジャの祖と呼べるカツ・ワンソー。
「カツ・ワンソーの骨」を鋳込んだインゴットから作った真の三神器の一つ。
このヌンチャクの力を解放するとそれぞれの棍棒が赤黒の煙と炎を纏って赤熱化する。
赤熱化したヌンチャクは紅い軌跡を描き、破壊力が増大する。
また鎖の部分が数十メートル伸びる。伸びた鎖が槍のように固まり相手を貫くなど超自然的な変化も可能。
ただしこの宝具を使用中に「定命者の怨嗟の魂(ナラク・ニンジャ)」の宝具を使用することができない

「定命者の怨嗟の魂(ナラク・ニンジャ)」
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:自分 最大補足:1

ニンジャスレイヤーの中にある内なるソウル。ナラク・ニンジャ
その正体はニンジャ達に虐げられ踏みにじられたモータルの恨みの怨念の集合体である。
ニンジャスレイヤーはナラク・ニンジャと共鳴することで筋力、耐久、敏俊、魔力のステータスを一段階上がる。
さらに不浄の炎と呼ばれる炎を出すことができ、触れば敵を滅ぼす武器となる。
また不浄の炎を使い黒い金属を生成することや、切断された手を繋げることも可能。

【weapon】

「スリケン」
魔力を消費することで生成が可能

「カラテ」
数々の戦いで鍛えたカラテ

【人物背景】
サラリマン、フジキド・ケンジはネオサイタマの地で妻フユコ、息子トチノキと慎ましく生活していた。
だがクリスマスの夜、無慈悲にも妻子は殺される.
そしてナラク・ニンジャが憑依したことにより一命を取り留め妻子の復讐の為ニンジャを殺すもの「ニンジャスレイヤー」となり復讐の戦いに身を投じる。

ニンジャを無慈悲に殺していくその姿は「ネオサイタマの死神」と恐れられていた。
ただ元の性格は律儀で生真面目。

【サーヴァントとしての願い】
自分の願いはない
ヘイトの脱出を手伝う


【マスター】
 サイモン・ヘイト@ダイモンズ

【マスターとしての願い】
 特になし。早く自分の世界に帰りプログレスを殺す。

【weapon】
鉄の腕
様々な合金で作られた腕。
腕の中に小型の爆弾が内蔵されている

【能力・技能】
『ゼスモス』

繋ぎとめる力と呼ばれる念動力の一つ。
この力で自分と繋がった物質を手足のように操ることができ、ヘイトのこの鉄の腕はゼスモスの力で動いている。
相手を支配する「エレセロス」と呼ばれる力を自分を繋ぎとめることで支配から逃れることもできた。

【人物背景】
元はナノテクノロジーの研究者。
医療目的で研究したナノテクが軍事目的に転用されることを知ったヘイトは告発しようとする。
だがそれは親友プログレスに発覚してしまう。
報復としてプログレスのボディーガードでもある四人の友人に両腕を奪われ。
プログレスに最愛の妻ヒロコと娘ユミを殺されてしまう。
何とか一命を取り留めたヘイトは鉄の腕を身につけ復讐の戦いに身を投じる。

【方針】
聖杯戦争に参加するつもりはない。
何とか脱出して元の世界に帰る。

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