そこは暗い暗い地の底。鍾乳洞の最深部。
 蝙蝠の糞の匂いや生臭い水の香りが立ち込めるここは人の住めるところではない。
 いわば一種の未開の地であるが、そう呼ぶには奇異な点がいくつもある。
 一つが呪符だ。陰陽道、仙道、神道など東洋の魔術めいた札がいくつも張られ百年の歳月より腐った今でもその効力を発揮していた。
 夥しい札は風水の法に則って張られており、互いに相乗効果を生み出し符界の中心部に絶大な封印力をもたらしていた。
 二つ目が符界の中心。人為的に一部が削られ更地となった所に蹲る何かがあった。
 それは人形ではあるものの呼吸もせず、鼓動もせず、身動きしない木乃伊。
 しかし────

「────抑止の環より来い。天秤の守り手よ」

 もはや声帯など存在しない木乃伊から声がする。ボソボソと呟いていたのは呪文だ。
 そう、この聖杯戦争のサーヴァントを召喚するための────

「サーヴァント・セイバーいざ推参した。問おう、君が我輩を召喚したマスターか?」
「そうだ。俺がお前のマスターだ」

 目に嫉妬と憎悪の炎を燃やして己がサーヴァントを見る。
 襤褸を纏い全身から腐乱臭漂わせた穢れた木乃伊とは反対で美しい容貌と、いい匂い、仕立てのよい衣装に身を包んだ少女がそこにいた。
 妬ましい。なんで俺が、こんな目になっている。

「貴様が俺の下僕か? 精々使ってやるから俺の役に立て」
「そのザマで何を偉そうにしているのだね?」
「黙れ。俺を見下したな? 屑が。誰を蔑んでいる? 貴様などいつでも八つ裂きにできるのだぞ」
「ふむ」

 はぁ、とため息をつき。

(これはいらんな)

 そう判断したセイバー。腰のレイピアを抜いて木乃伊へ突き立てようとし、その異変に気が付いた。


〝干キ萎ミ病ミ枯セ。盈チ乾ルガ如、沈ミ臥セ〟


 空間が変容する。
 物理が変革する。
 現実が変異する。
 そう、これこそが────!!


〝急段、顕象〟



 爆発の如き音と共に現れたのは化物の軍勢だった。
 まるで紫色の腐肉を粘土のように子ね合わせて作った髑髏の群れがセイバーに襲いかかる。


   *   *   *


 何だこれは?
 サーヴァント・セイバーとして召喚された英霊『魔法少女プキン』は瞠目する。
 突如現れ周囲を冒す肉髑髏の群れは木乃伊のマスターを中心にこちらへ迫る。
 反射的に迫る髑髏をレイピアで迎撃しようとするも霞のように、レイピアを通り抜けてプキンの肉体へと接触した。

「グ、ガァ、アアアアア!」

 突如にプキンの体内に病という病が氾濫する。腹が、胸が、末期癌特有の激痛を訴える。更に黒い、汚物の臭いのする何かを吐瀉する。

「生け贄風情が見下したな?」

 更なる化物の群れがプキンを蹂躙する。髪の毛が抜け落ち、足が緑色に変色して激痛と共にへし折れる。

「貴様、一体何を」

 あり得ない光景だった。
 サーヴァントをここまで蹂躙する魔術など何の工程も踏まずに発動できるはずがない。

「何をしただと? 単純に俺に敵意を向ける貴様が間抜けなだけだ。
 そんなことより早く俺の役に立て。さっさと聖杯を持ってこい」

〝早く俺の役に立て〟と〝聖杯を持ってこい〟という命令に令呪が発動する。
 起きるのは瞬間移動と屈服。瞬間移動の命令により一瞬の間にプキンは都市部のどこかにいた。
 そしてもう一つの命令。鬱陶しくも動きや思考が制限されている。
 すなわちプキンが木乃伊のマスターの命令を忠実に実行しない限り、性能が制限されることに他ならない。
 さらに病魔も深刻だった。プキンの身体を貪り病原たるマスターの思念がドロドロと流れ出している。
 耳障りなあの木乃伊の声がするのだ。

 俺の役に立て俺の役に立て俺の役に立て
 俺の役に立て俺の役に立て俺の役に立て
 俺の役に立て俺の役に立て俺の役に立て
 俺の役に立て俺の役に立て俺の役に立て
 俺の役に立て俺の役に立て俺の役に立て
 俺の役に立て俺の役に立て俺の役に立て

 プキンは己の剣で己の頬を軽く切った。そして己の宝具の力で己に〝私は世界最高位の外科医だ〟と暗示をかける。
 ついでに耳障りな声も〝聞こえない〟ことにした。

「ふん」

 まずは高ランクの外科手術スキルに依存した病巣の物理的摘出を行う。
 傷口を抉り、掻き分ける苦痛や悍ましさを〝感じない〟ようにして外科手術による治療は完了する。
 業腹であるが、プキンが戦闘のための行動を取り続ける限りある程度は令呪による補整が入るらしい。
 三つほど内蔵を削っても消耗が少ないのはそのせいだ。

「こんなものだろう」

 糸も麻酔も無しに肉体から患部を取り除き、状況を整理する。
 とりあえず、あの下郎の始末は後だ。我輩にも通ずるあの魔術があればサーヴァントにも後れは取らぬだろう。
 問題はアレの寿命だが、正直死んでも問題ない。新しいマスターを探すか、適当なサーヴァントを殺して再契約すればいい。

「では、ひとまず当代の文化を楽しむとするか」

 スキルに黄金律を付けてプキンは街へと踊り出た。


【サーヴァント】
【クラス】
セイバー

【真名】
プキン

【属性】
秩序・悪

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:E
 神秘の薄い時代に生まれたため無効化は出来ない。
 ダメージ数値を多少削減する程度。

騎乗:D
 「乗り物」の概念を持つものを乗りこなすスキル。

【保有スキル】
心眼(真):D(A)
 数多の修羅場をくぐったことで得た洞察力。
 いかなる窮地においても戦況から活路を見出す。
 本来ならば高ランクなのだが、スキル『無辜の怪物』により上手く発動していない。

無辜の怪物:A
 後世の風評によりその在り方がねじ曲げられるスキル。
 セイバーは魔法の国では「将軍」とよばれ冤罪を作って人を狩った魔法少女として後世に記録された怪物。
 人間世界にも多大な影響があったとされ、グレートブリテン島に人を喰い殺す「プキンとソニア」というマザーグースが残されている。
 そのためより嗜虐性が増し、「加虐体質」や「反骨の相」、「拷問技術」捕食による「吸収」が可能。
 代わりに武術に関するスキルと技量が軒並みランクダウンしている。
 このスキルは外せない。

貧者の見識:C-
 言葉による欺瞞を見抜き相手の本質・真実を見抜く能力。
 プキンは人間を見抜く力は確かにあるが、自分にとって都合の良いように解釈するため能力が安定しない。

魔法少女:D
 魔法の国から与えられた超人的身体能力と魔法を持つ美少女に変身できる能力。
 魔法少女の中でも最古参で最高の能力を持つ。
 また思念によってステータスを一時的に上昇させられることができる。
 またこのスキルを持つ者は通常のサーヴァントよりも霊格が下がり、人間でも傷つけられる。
 プキンは旧型の魔法少女であるためランクが低いため回復にも大量の魔力か、食事が必要。

【宝具】
『汝は邪悪なり』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:一人
 プキンが生前使用した魔法。固有武器の魔剣で傷をつけられた者を洗脳する。
 単純な精神操作だけではなく、洗脳が本人にとって現実になり持ち得ないステータス、スキルを獲得する。
 スキル獲得に関してはどんな錯覚するかで得るスキルが変わる。また神性などの先天的なものは得られない。
 加えて保有スキルのランク上げや効果を打ち消すことはできない。
 また一度傷をつければ錯覚の内容は解除しない限り何度も変更可能。
 プキンは生前、これで他者を操ったり、自分に使って耐久値EXの不死身さを得た。

【weapon】
 名も無き魔法の細剣
 南瓜の柄を持つレイピア。


【人物背景】
魔法少女育成計画limitedより参戦
130年前にイギリスで大量の冤罪を生み出し、犯罪者から没収した財産で私腹を肥やした。
冤罪が発覚した後に監獄に収監され130年間もの間、封印されて汚れ仕事のためだけに駆り出される。
そして自由を条件に反体制勢力の任務に加わり脱獄する。
その任務中に敗走、従者の死亡と仲間の裏切りが重なり暴走した。

【サーヴァントとしての願い】
我輩が冤罪を作って私腹を肥やしたという間違った事実を修正する。

【マスター】
緋衣 征志郎@総州戦神館学園 万仙陣

【マスターとしての願い】
盧生になる

【weapon】
なし

【能力・技能】
  • 邯鄲法
夢の世界から力を引き出す術式。
身体強化、魔弾発射、空間破壊など基本的になんでもありだが何が可能かは適性に作用される。
征志郎は空間の創造と力の放射と身体能力強化にあたる。
尤も、木乃伊化している彼には最初の二つしかできないが。

  • 急段
邯鄲法の位階の一つ。下から序、詠、破、急、終。
相手に特定の条件を満たさせることで発動する能力。
合意したことにより相手の全力+自分の全力が乗るため防げない必殺性を持つ。
サーヴァントが有効なのも単純にサーヴァントの力が上乗せされているため。

【人物背景】
夢の世界から邯鄲法を現実へと持ち出せる適性を持つ人物を盧生と呼ぶ。
ただし適性を持っていても盧生になるには夢の世界に潜る必要があり、それを可能とするのは逆十字と呼ばれる一族の秘術のみ。
逆十字という一族は常に死病に冒される体質を抱えており、これを癒すために盧生の資格を欲した。
初代逆十字の聖十郎、二代目の征志郎は盧生を作って盧生の資格を奪おうとして失敗した。
征志郎は第四の盧生の眷族として邯鄲法が使えるが肉体は封印され木乃伊のまま百年ほど生き続けてきたのだ。


【方針】
木乃伊化して動けないのでプキンに他のサーヴァントを片付けさせる。

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