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[トレイン・アゲイン]

 禁欲。
 なにもしたくてしてるんじゃない。
 とにかく忙しいんだ。
 朝早くからアパートを出て会社までの二時間、電車に揺られる。着いた会社をタイムカードを押しただけで、すぐ飛び出す。
 仕事は営業補佐。先輩と一緒に、お得意さんや新規開拓にあちこち巡って、夜遅く会社に戻る。タイムカードを押したらもう終電。
 そんな毎日が続いている。

 休日は、ぐったりとただ眠るだけ。
 その日も起きたのは夕方だった。だが、まだ疲れが取れていないのか、半分寝ぼけている。
「とりあえず、なんか食うか」
 昨日買っておいたコンビニ弁当と缶の発泡酒を冷蔵庫から出す。弁当をレンジで温めている間に缶を開け、ノートパソコンを起動する。
 ネット上をブラブラしながら、飯を食うのがいつもの俺の休日スタイルだった。

 弁当をほおばりながら、ブックマークを巡回。すると、あちこちのページで見かける結婚相談所の広告が、今日はなんだかうっとおしく感じた。
 結婚どころか彼女すら作るヒマねーよ。営業部は男ばっかりだし。
「はぁ……」
 広告を避けるかのように、見ていたページのリンク先をテキトーに選んで飛んだ。
「ネット都市伝説……か」
 ふーん。なんだかどれもこれも、どこかで見聞きしたことのある話ばかりだな。
「ん」
 ふいに目に留まった《禁断少女》の文字。
『禁欲した物書きの元に現れ、禁欲のご褒美として精を抜いてくれる』
 はっ! ばかばかしい。そう思うと同時に。
 俺も昔、小説みたいなものを書いてたな、なんて思い出した。
 そう言えば、このノートパソコンだって最初はそのつもりで買ったものだ。これがあれば、どこでも話が書ける。新入社員の頃そう思い、初のボーナスをつぎ込んで当時の最新型を買った。
 最初の頃は思い付いたものを手当たり次第、書いた。でも、営業部に配属が変わってからはとてつもなく忙しくなって。結局、ネットとゲーム以外で使うこともなくなった。最近はゲームすらしない。いや、できない。そんな時間はない。
 物を書くのだって相当、時間は掛かる。そう思ったにも関わらず。
「たまには……何か書いてみるか……」
 そんな気が起きたのは、なぜなのか。解らない。


 とりあえずエディターを立ち上げた。
「っていってもネタもないしな……」
 俺は弁当の空いた容器を見つめて、腕を組む。
 それからしばらくは、話を考えてうろうろしたり、ネットを検索したりしていた。
 しかし長い間、そういう脳の使い方をしていなかったせいで全くなにも思い浮かばないまま、眠りについてしまったのだった。

 次の朝早く、俺はいつものようにスーツに着替えて出勤した。
 いつもの時間に、いつもの駅へ、いつもの電車が滑り込んでくる。
 目の前で開いたドアにいつものように入る。朝早いから今日もガラガラだ。というか誰一人この車両には乗っていなかった。
 そんなこともあるさ、そう思いながら反対側のドアの前まで行き、もたれ掛かる。窓の外を眺めたかった。
 車内アナウンスが聞こえ、入ってきたドアが閉まろうとしたとき。
 ふいに、バラの香りがした。
 何気なくそちらを見ると、一人の女子高生らしき女の子が風のように入ってきた。

 なんて俺好み……。それが第一印象だった。
 手を胸に当て、肩で息をしている。どうやら急いで来たようだ。
 肩より少し長い黒髪が体に合わせて、さらさらと揺れる。
「はぁはぁ……間に合いましたわ」
 髪を直し、つぶやく。涼やかな声。高過ぎず、張りのある響き。そして、聞き慣れないお嬢様口調。
 それら全てがその子の持っている清楚で、なおかつ気品の溢れた雰囲気にマッチしていた。
 背は俺よりは低いが、それでも女子高生にしては高い。和服の似合いそうな良い姿勢だ。
 二重まぶたで、大きな瞳。すぐ下に泣きぼくろがある。
 ハッキリした眉。その上の広いひたい。前髪だけまとめてピンで留めているせいで、よけいにひたいが広く見える。
すっと通った鼻筋。綺麗なピンク色で、形の良い唇。

 夏用の制服には、肩の部分に学校のマークが刺繍されている。途中の駅にあるお嬢様学校のものだろう。
 俺はいつも早いから学生たちとは一緒になったことはほとんどない。だが、二、三度見かけたことはあった。
 その時は皆、テニスラケットを持っていた。早朝練習なんだろう。
 彼女もそれを持っているところを見ると、早朝練習に違いない。ご苦労なことだ。

 列車がゆっくりと走り出した。急行だから、ほとんど駅には止まらない。次の駅までは軽く三十分はある。
 彼女は座らなかった。俺と同じように立ったまま、吊革に手を掛けていた。
 俺は彼女から目を離せなかった。ずっと見つめていた。
 その腕はテニスをやっているわりには白く、細い。胸はBカップくらい。理想的な大きさだ。
 腰は細く、しかし短めのスカートの下に隠れている尻はボリュームがありそうだ。
 そこから伸びる足はニーソックスに包まれていたが、引き締まった感じだった。
 列車内で、こんな可愛い女の子と二人きり。
 俺は自分自身のモノが硬くなってくるのが解った。


 やべ! ダメだダメだ! これじゃ犯罪者になっちまう!
 俺は真っ赤になった。カバンで股間を隠しながら、目を逸らす。

 ドアの外を見ようとしたとき、すっと正面に彼女がやってきた。
 俺は思わず、見つめる。彼女もまた、見つめ返す。
 ふいに彼女は笑った。まるで今日の朝日がやっと昇ったかのように。
 彼女はカバンとラケットを床に置いて、話しかけてきた。
「いいですわよ?」
「えっ、なにが」
 彼女は一歩近づいた。バラの香りが強くなる。
「ですから」
 彼女はさらに一歩、近づく。彼女の艶やかな唇が動いた。
「えっちなこと……したいんじゃなくて?」
 俺の心臓が跳ねた。
 彼女は俺のネクタイに手を掛けると、もうかたほうの手を俺の股間に持って行く。
「タイが曲がってましてよ?」
 ネクタイを引っ張り、強引に顔を近づけさせた。
「いやダメだ、それ俺、犯罪しゃ……んん!」
 彼女の甘い吐息が顔に掛かったと思ったとたん、唇を奪われた。
 それはねっとりと深く、緩やかな波のようなキスだった。
「ぷふあ……」
 朝日に煌めく銀糸がお互いの口唇から伸びて、切れた。
 彼女はまぶしそうに微笑んだ。
「大丈夫ですわ。あなた……清介(せいすけ)さんは犯罪者にはなりませんわよ」
 彼女は俺のモノをズボンの上から、やわやわと揉みながらそんなことを話す。
「え、なんで俺の、う、名前……そ、それに犯罪者に、な、ならないって、どういう……んん」
 俺は喘ぎながら、なんとか質問をした。その間に彼女の手によって俺のモノは一気に硬直していく。

 もう一度、キス。
「んふぅ……んぁ」

 ぴちゅ。俺たちの唇が出す水音が聞こえる。もう列車の音は聞こえない。
「んん……?」
 彼女は“どう?”というように俺の歯の裏に舌を滑り込ませ、ゆっくり丁寧に舐める。
 俺の中で理性が……とろけた。
 俺はカバンを床に捨て、彼女の肩を掴む。
 少し、びくっとする彼女。
「んん?!」
 俺の舌で彼女の舌の裏側を舐め伝う。そのまま向こうの口に挿入する。
「ん! んぅふぅ!」
 口を大きく開け、受け入れてくれる彼女。
「あ、んふぅ、んん……」
 口でお互いを求め合う。

 いつの間にか俺は彼女の腰を抱き寄せていた。
 彼女は唇を離すと、耳元に囁く。
「あは、はぁ……荒々しくて、まるでケダモノみたいですわね……」
 俺のモノを触っていた彼女の手が一瞬離れ、ジッパーを一気に引き下ろした。
 彼女の細く柔らかい指が俺のどろどろになったモノを直に掴んだ。
「うう!」
 彼女の瞳が怪しく光る。
「ふふ、こっちも……ものすごく熱くて、ケモノじみてますわ……」
 ぬるぬるとしごく。
「うあ、き、きもちいい……」
 彼女の頬がすーっと赤くなった。
「うふふふ……気持ち、良いんですのね? わたくしに、おちんちんを攻められて、きもち良いんですのね?」
 彼女の声に興奮の色が混じる。
 俺は熱にうなされるように答えた。
「ああ……いいよ、いい……」
 粘液の絡まる少女の手のひらが、くちゅくちゅと俺の亀頭を包み込み、上下に揺らす。
「はぁはぁ……溢れてますわ……それに硬さも大きさもどんどん……こんなにして、恥ずかしくないんですの?」


 彼女の言葉が俺の脳を犯す。
「ねぇ、清介さん? 答えてごらんなさい」
 動きが速くなる。
「う、うう!」
 俺はちっぽけな男の尊厳を失いたくなくて、意地になった。
 彼女の腰に回していた手を下げる。
「ひゃうっ?!」
 彼女は可愛らしい悲鳴を上げて、俺のモノから手を離してしまう。
 俺はハリのある少女の尻の感触を楽しむ。
「んん! いやぁ、ああん」
 スカートをまくり上げながら、揉みしだく。
 俺は彼女のパンティ越しの恥丘に、俺のモノを押しつけた。
「あ、はぁっ! あ、当たってますわ……ごりごりしてますの……あ、ああ」
 うあ、このまま出ちまいそうだ……。
「ね、ねぇ、清介さん。これ……わたくしの中に、入れたくて?」
 挑むような目の輝き。しかし、俺はその中に期待を見て取った。
「あ、はぁっはぁっ……ど、どうですの? ねぇ、清介さん。言ってごらんなさい」
 彼女は俺の背中に腕を回し、首筋を舐めながら聞いてくる。
「うう、くっ! い、入れたい……」
 彼女も意地なのだろう。甘い快楽と戦いながら命令してくる。
「なぁに? 聞こえません、わ……っ、も、もう一度、仰って……」
 俺はその甘い吐息に、堕ちた。
「入れたい!」
 彼女のパンティに両手を掛け、一気に引き下ろす。
「ああっ! 乱暴になさらないで……」
 くるくると丸まりながら、太ももの途中で止まる濡れた布。
 立ち上がるミルクのような香り。
 その大事な部分を恥ずかしそうに手で覆い隠す彼女。
「ごめん……優しくするから」
 俺は優しく彼女の手を握り、どけさせる。
「ん……」
 手のひらで恥丘に触れると、ほとんど陰毛がなかった。
 脊髄を興奮が駆け上る。
「はぁはぁ、指、入れていい?」
 答えを聞かず、指をその蜜壺に入れてしまった。
 一瞬、彼女の背中がピンと伸びる。
「んっ! もう、清介さんたらぁ……んん!」
 彼女は指を出し入れされながら、少し足を開いていく。
「ね、ねぇ、わたくしに陰毛が少ないのを、ん、気に入りましたでしょう? それにこの容姿も」
 俺はハッとした。
「な……まさか、おまえは《禁断少女》なのか? だから……」


 俺の指が止まる。
 彼女は微笑んでうなずく。
 一歩下がると、スカートをゆっくりとまくり上げて行った。

 やがて女性と少女の中間の特徴を兼ね備える、むき出しの下半身が現れた。それは列車のドアから入る、日の光を浴びて輝いている。なんて異常でエロい光景なんだ。
「さぁ……清介さん。いらして」
 彼女はドアに手をついて、お尻を突き出す。
 俺は操られるように、一歩進んだ。
 彼女は髪の間から、艶めかしい光を放つ瞳で俺を見た。
 口元を緩め、淫猥な言葉を口にする。
「ふふふ……そのぬめぬめした、いきり立つケダモノのおちんちんで、わたくしを……貫いてよくってよ?」
 俺は吼えた。
 彼女の尻を両手で掴むと、剛直なモノを一気に挿入させた。
「ふぁぁぁぁッ!」
 彼女は俺に突かれてしなやかに動き、腕と頬をドアのガラスに押しつける。
 その横顔の向こうには、いつも見ていた外の景色が流れる。
 俺は今、いつもの電車の中で、ものすごく好みの女の子とセックスしている。
 そう思うとめまいにも似た感覚に襲われ、何もかもがあやふやになり現実感を失った。

 彼女がよだれを垂らしながらひくひく痙攣している。
「あお、お、おっきいのぉ……し、子宮に入ってますぅぅ……」
 なんていやらしい女だ。
「あ、またおっきくなったぁ……はぁっ!」
 俺は加虐的な気持ちになって、攻め立てた。
「あっあっあっ、はぁっ、気持ちい、いい! 清介さん!」
 俺の動きに合わせて、腰をくねらせる彼女。
「うう、俺もき、気持いいぜ! おら! おら!」
「ひぅっ、うぅっ、うぅっ! はぁっはぁ、ああっ!」
 暑い。
 心臓が破裂しそうだ。
 彼女の尻に汗が浮かぶ。
「も、もっと突いて、突いてッ! んぁっ!」

 俺は彼女の背中にのし掛かるような姿勢になり、その胸を乱暴に揉んだ。
「はぁっ! お、おっぱい、も、いい! きもち、い! あっ!」
 ぱつ、ぱつ、ぱつと彼女の尻の肉と俺の下腹部がぶつかる卑猥な音を車内に響かせて、お互いを高め合う。
「あ、ああ! い、いいの! も、もうすぐ、イきますぅ! イ、イク、イクぅ、ふぁ!」
 俺は彼女の背中に張り付くようにして、腰の回転を上げた。
「お、俺も、俺も出そう、出る、出る、う、出る」
 彼女は叫ぶ。
「あ、ああ! な、中! 中にいっぱい、出して! ああっ! ひ、イク!」
 もう俺の脳は沸騰していた。放出することしか考えられない。
 ガクガクと激しく腰を打ち付けた。
「ああ、出る! 出る! 出るゥッ!」
 彼女の中も俺の精液を絞り取ろうとするように、強く締め付けてきた。
「来て来て来て!」
「うあァァァッ!」
「はぁぁぁぁあ――ッ!」

 気が付くと、俺は自分の部屋にいた。
 目の前には空になったコンビニ弁当とノートパソコン。そこの時計を見ると、ちょうど飯を食べ終わったくらいの時間だった。
 やがて、じっとりと下半身がねばる感覚がやってきた。
「うわ、夢精かよ!」
 慌てて立ち上がると、パンツを脱ぐ。
 それはそのまま捨てて、新しいものに換えた。
「なんなんだいったい……確かにすっげぇエロくて……いい夢は見たけど……」
 パソコンに目をやると、立ち上げていたエディターになにか話のようなものが書かれている。
「ん? なんだこれ……」
 内容は、さっき見た夢だった。
「マジかよ……《禁断少女》が来たってのか……」
 でも、なんで? 俺は物書きなんてほとんどしてないのに。
 そう思いながら、そのエディターの文面を最後までスクロールさせると。
 改行スペースを開けて、話と関係ない俺個人宛のメッセージが書いてあった。

『清介さんへ。きっとまた逢えますわ。これからあなたは、たくさんお話を書いていく人生ですもの。ですけど、今度逢うときには奥様にバレないよう、お気を付けて』


 奥様……って、俺には嫁さんなんていないぞ。
 いや。そうか、もしかしてこれはあいつが――《禁断少女》が、俺の未来を予言してくれたってこと、なのか……?
 もし、そうなら……。

 それからしばらくして、俺は会社を辞めた。
 バイトで食いつなぎながら、俺は小説を書いて書いて書きまくった。

 数年後。
 俺はなんとか、ちょっとした賞を取ることができて、まがりなりにもプロになれた。
 その頃、編集部で知り合った女の子を好きになり、嫁さんにした。

 そんなある夜。
 俺は自宅マンションで原稿を書いていた。
 嫁さんが眠そうに、自室から出てきた。
「もう寝るわ。おやすみー。あなたもあんまり根を詰めないでね」
「ん。ああ、ありがとう。おやすみ」
 俺はパソコンの前から立ちがると、嫁さんに軽くキスをして寝室に送った。
 彼女が寝室に入るのを確認し、またパソコンの前に戻る。だが顔はにやけていた。

 俺は長期間、禁欲していた。
 オナニーは当然してないし、嫁さんとも仕事があるからとセックスをしていない。
 もちろん、嫁さんのことは愛してる。愛してるが、しかし……。
「男ってのは大抵、ひとりは忘れられない女がいるんだよ……すまん」
 そうつぶやいて、いそいそと仕事用とは別のエディターを立ち上げた。あの頃のプログラムだ。
「さぁ、来てくれ。《禁断少女》」
 そう目を閉じて、念じると……。

 急にうるさい電車の音が聞こえてきた。
 目を開ける。電車の床と、向かいに立つ女の子の靴先が見える。
 ふわりとバラの香りがした。
「ふふふ。やっぱりまた、逢えましたわね」
 凛とした気高く美しく、そして懐かしい声が俺の耳に届く。
 見上げると、彼女がいた。
 あの時と同じように、朝日のように輝く笑顔だった。