ほんのちょっとの勇気(前編)


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「ふ~、ただいま」
「お帰り、お姉ちゃん。こなちゃんとのお買い物、楽しかった?」
「買い物って……またわけわからないグッズを買うのに付き合わされただけよ」
「そう、なんだ……」
学校が終わった後、こなちゃんはお姉ちゃんを誘った。
お姉ちゃんも、またなの?、と呆れたように言いながらも、付き合ってあげた。

――私はほとんど、誘ってもらえない……。

ゆきちゃんは方向が全然違うからってわかるけど、こなちゃんはお姉ちゃんを誘っても、私を誘ってくれることはほとんどなかった。

「こなたも、一人でいけば良いのにね」
「さみしいんだよ、きっと」
「違う違う、ただ私がラノベ買う分のポイントが欲しいだけよ」
お姉ちゃんはそう言いながら、リビングまで歩いていく。
私はその後ろ姿を見つめながら、ぼんやりと考えていた。

本当にそうなのかな……。
そんな理由だけじゃない気がするよ……。




私は自分の部屋で、飾ってある皆で撮った写真を見ながら、さっきのことを考え続けていた。


こなちゃん……。
最初に仲良くなったの、私なのに……。
私といてもつまんないのかなぁ……。
お姉ちゃんみたいに突っ込んだり出来ないし、ゆきちゃんみたいに頭もよくないから。
私じゃ、こなちゃんを満足させてあげられないのかな……。



こなちゃんは、初めて私一人で作った仲良しの友達。
それまでは、必ずお姉ちゃんや他の人が何らかの形で関わってくれて出来た友達だった。

高校に入って、お姉ちゃんと遠いクラスになっちゃって。
それに、お姉ちゃんは委員会に入っちゃって、私はすっごい不安だった。
現実に私は最初、クラスで誰とも話せなかった。友達になれなかった。
引っ込み思案で全然話せなくて、1度話しかけてくれた子も、次には話しかけてくれなかった。
みんな仲良くなっていくのに、私だけがずっと1人のまま。

……どうしよう……。

教室にいるときは、いっつも不安だった。

だから、お姉ちゃんと一緒の登下校だけが、唯一私が安心出来る時間だった。

そんなある日。
「ごめん、つかさ。今日委員会の集まりがあるから、先帰ってくれる?」
「えっ……あ、うん、わかったよ」
私は、その時間すら失うことがあることを知った。



1人の下校。
皆、仲良しの人と一緒に歩いてるなか、私だけが、仲間外れにされてるみたいに、1人だった。


なるべく周りを気にしないようにして歩いていると、突然、声をかけられる。
「Excuse me, I'm lost」
驚いて顔をあげると、そこには外国人さん。
「わ、わっ、お、お姉ちゃん」
あ、お姉ちゃん、いないんだ……。
「は、はろぉ……」
た、多分英語だよね、でも私英語全然喋れないよぉ……。
「Can you point to where I am on this map?」
ど、どうしよ……何言ってるか全然わかんないよぉ……。
わ、なんか本みたいなの差し出されたよ……なんなんだろ……。
「あ、あいきゃんとすぴいくいんぐりっしゅ」
「HAHAHA ! No Kidding ! You are speaking English now!」
この人、笑いながら何言ってるんだろ……。
うう……私どうすればいいのかな……。


その時、私の横から、スッと何かが現れた。

「でやーッ!生半可なナイトでは使えないホーリ……じゃくて、竜巻旋風脚ゥッ!」
空中で、綺麗な蒼い髪をもつ女の子が舞う。
そして、外国人さんに空中で蹴っ飛ばした。
「Oh!What!?」
びっくりしている外国人さん。
私と外国人さんの間に、スッと着地する女の子。
「とんずらを使って普通ならまだ付かない時間できょうきょ参戦、すばやくフラッシュを使い盾をした!今の私はまさに黄金の鉄の塊で出来ているナイト、そしてリアルではモンクタイプ!ふっふっふ、あかりには指一本触らせないぞ~!」
着地した後ろ姿を見つめる。
蒼い綺麗で長い髪。私と同じ制服。
その姿は、とっても頼もしく見えた。
「S , sorry」
外国人さんはそう言うと、どこかに行ってしまった。

「あ、あの、その……あ、ありがとう……ございます」
思ったように、言葉が言えない。
引っ込み思案な性格が、もどかしく感じる。
「ん~別に、お礼を言われる程のことはしてないよ」
この子の私より頭一個小さいのは、あんなに強いんだ……。
あれっ、そういえば、どこかで見たことあるような……。
「私としても、彼のヒーロー気分が味わえたし……何より見た目がそっくりってだけで大満足だから」
「え……?」
「あ、こっちの話だから、気にしないで。……さて、じゃあ、私はこれで」
そう言って、その子は一度手を振ると、くるっと反転、歩き出した。
少しずつ小さくなる背中。

私の中の思いが、だんだん強くなる。

――――変わりたい。
いつまでも、お姉ちゃんに頼ってばっかりじゃ、ダメだよね……!
あの女の子みたいに、積極的になりたい……!

必要なのは――――ほんのちょっとの勇気。

「ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
自分が思ってたより、ずっと大きな声が出た。

私でも、こんな声、出せるんだ――。
そのことに、初めて気付いた。

「ん~?」
女の子は、私の声に少し驚いたように、振り返った。
綺麗な長い蒼の髪が、女の子の動くのと一緒に舞う。
それがあまりにも綺麗で、私は一瞬見とれてしまう。
でも、はっと我に返って、慌てて言葉を紡ぎ続ける。
「あの、お名前とクラス、き、聞いても、いいですか?」
「別にいいのに……」
「だ、だめ……ですか……?」
「うんにゃ、いいよ。名前は泉こなた」
「泉、こなたさん……」
「クラスは、あなたと同じだよ、柊さん」
えっ!?
私はその言葉を聞いて、びっくりした。
「おんなじクラス……なんですか」
「うん。黒井先生が担任」

泉さん、私と同じクラスなんだ……!
さっき見たことあるって感じたのは、教室で、だったんだ。
奇跡みたいな偶然に、信じられない程の勇気が湧いてくる。
その勇気に託して、心の中の思いを、私は言葉にした。

「あ、あの、お友達になってもらえませんか?」

泉さんの返事が返ってくるまでの数秒間、私の心臓が凄い早さで動いているのを感じる。
そして永遠とも思えた、でもたった数秒の時間が過ぎる。

「うん、私でよければネ」
「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」
「そ、そんな喜ぶこと……?」
「私、ずっと1人だったんで……」
「そうなんだ。それじゃよろしく、柊さん……いや、つかさ」
「うん、よろしく、えっと、こなたちゃ……ううん、こなちゃん!」

これが、私とこなちゃんの出会いだった――――。

こなちゃんと色々話してたら、不安もなくなっていった。
そのうちお姉ちゃんとこなちゃんも仲良くなって、ゆきちゃんもお姉ちゃんが同じ委員で、少しその話している時にこなちゃんが色々話しかけたのがきっかけで、私たちとも友達になった。

みんなでお話していると、いつもいつも、楽しかった。

……でも最近、私はこなちゃんは私より、お姉ちゃんやゆきちゃんと話していることのほうが多いって感じるようになっていた。

また、私、1人になっちゃうのかな……。

寂しいよ……。
でも、もっとそれ以上に……辛いよ。
なんで、こなちゃんがお姉ちゃんと話してると、こんなに息が苦しくなるんだろう……。
なんで、こなちゃんがゆきちゃんと話してると、こんなに胸が痛くなるんだろう……。


――――こなちゃん……私とお話ししようよ……。



「つかさ~、辞書返しくれないって、つ、つかさっ!?」
部屋の入り口から、急にお姉ちゃんの声が聞こえて、びっくりする。
「ど、どうしたの、お姉ちゃん?」
「どうしたのって……なんで泣いてるのよ!?」
「えっ……?私、泣いてなんか……」
手で顔に触ると、本当に濡れていた。
その液体は、すごく冷たかった。
「あ、あれ、どうしてだろ……どんどん、溢れてくるよ……」
涙が止まらない。
まるで、ダムが壊れたように、溢れ出てくる。

「な、なんか、辛いことでもあったの?」
私の変な様子を見てか、お姉ちゃんは心配そうに聞いてきてくれる。
「うん……」
「何?まさか、イジメ?」
「ううん……」
「じゃぁ、どうしたの?話すだけでも、楽になれるよ?」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん……」
私は流れ続ける涙を拭いながら、なんとか返す。

なんとか涙が止まった後、出来るだけいつも通りに、私はお姉ちゃんに尋ねた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なに、つかさ」
「こなちゃん……どうして、私のこと、お買い物に誘ってくれないのかな……」
何も言わないお姉ちゃん。
でも、その顔は辛そうで。
「こなちゃん……どうして、私には、あんまり話しかけてくれないのかな……」

あれ、おかしいな。
また、ほっぺたが冷たいよ。
息が苦しいよ。
胸が痛いよ。

なんで、なんだろう?
わかんない……わかんないよ。

「……つかさ」
突然、私はお姉ちゃんに抱き締められた。
「お姉ちゃん……?」
「……そうだったのね……。ごめん、気付いてあげられなくて……」
お姉ちゃんの腕の中は、とっても温かった。
「ごめん、ごめんね……私、全然知らないで……」

なんでお姉ちゃんが謝るの?
お姉ちゃんは悪くなんかないよ?

――お姉ちゃんの言葉で、私は自分の中に広がる、よくわからない思いの名前を知る。


「こなたのこと、好きだったのね……。もっと早くわかってあげられれば良かった……」

……ああ、そうだったんだ。

私――――

――――やっと、わかったよ。




「落ち着いた?」
「うん。えへへ、ありがとう、お姉ちゃん」
「いいのよ、私はつかさのお姉ちゃんなんだからね」

結局、私はあの後もずっと泣き続けていた。
でも涙がかれた頃、やっと心が整理出来た。

「でも、そっか……こなたなんだ……」
呟くように言うお姉ちゃん。
「う、うん……そうみたい」
みたい、なんて言っちゃったけど、心の中では、絶対そうだ、って思ってた。

「それで……どうするの?」
お姉ちゃんは、少し聞きづらそうに言う。

どうするのがいいのかな……?
もしかしたら、もうこなちゃんとずっと話せなくてなっちゃうかも知れない。
それを考えると、私の思いは、心の中にしまっておいたほうがいいのかな……?
でも――それでも――――。


「――私、こなちゃんにちゃんと気持ち、伝えるよ」


ほんのちょっとの勇気。
それをまた振り絞ろう。
怖いけどまた頑張りたい。
こなちゃんと友達になれた時みたいに、頑張りたい。

「そっか……」
お姉ちゃんはまた、小さく呟いた。
でもその後すぐに、いつものお姉ちゃんに戻る。
「私が何かしてあげられること、ある?」

お姉ちゃんの協力は、すごく頼もしい。
でも――。

「ううん……私だけで頑張りたいんだ」
そう決めたんだ。
そうじゃないと、いつまでも、私、変われないから。

「そっか、そうだよね。ごめん、私、余計なお世話だったよね」
元気なく言うお姉ちゃん。
「ううん、いつも私を助けてくれて、ありがとう、お姉ちゃん」
私は、できる限りの笑顔で言った。
「つかさ……。うん……。――――頑張ってね!」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん!」

お姉ちゃん、ありがとう――。
こなちゃん、私また頑張るね。

だから――――。






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  • つかさはやるってきめたら、頑張れる娘ですよね(`・ω・´)
    この外人とやりとりは、作者の実体験に少し基づいていたりします。
    実際話しかけると、学校で学んだりしたのってすっと抜けてっちゃうんですよね・・・。 -- 4-406 (2008-12-23 23:28:01)
  • つかさは引っ込み思案だけど心は強い、あとはこなたとの続編か…楽しみにしています。
    しかしこの外国人なかなかわかっていらっしゃる、こう返されたらどうしようもないwww -- 名無しさん (2008-12-23 14:49:28)