Happy Merry Christmas,Sweet Lovers


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期末テストも終わって、私とつかさはいつものように二人で一緒に帰ってるところ。
かがみもみゆきさんもそれぞれ用事があるので私たちだけになったんだけど。
話題はクリスマスの予定になって。

「こなちゃんはクリスマスに何か予定あるの?」
「あー…ごめん、つかさ。私ちょうどその日バイトなんだよー」
「あう…そうなんだ」
「この日は特によくお客さんくるし、私だけ休むわけにはいかないんだ。本当ごめん」

そう。
商売柄、特にこういう時期にはお客さんがたくさんやってくる。
私ももうあの店で働いて長いし、結構それなりの役職に就かせてもらってるから、この肝
心なときに休むわけには行かないんだ。

…本当つかさには悪い、って思ってるよ。

「じゃあさ」

落ち込んでるかな、と思って隣のつかさを見上げたのと同時に。

「こなちゃんのお店、私も行っていい?」



Happy Merry Christmas,Sweet Lovers



大丈夫なのかな。
コミケの時のがトラウマになってるっぽいから、似たような人たちが集まる秋葉のコスプ
レ喫茶なんかに、つかさ一人で行けるのかな。
まぁ、人口密度的にはあの時ほど酷くないけどね。
それに。
前にかがみとつかさとみゆきさんとでお店に来てくれた時も、いきなりカメコに写真撮ら
れたらしいし。
しかも、今度はつかさ一人。
…心配だよ。果てしなく心配だよ。
でも。
「いつかみたいにかがみもみゆきさんも一緒に?」
と言おうと思ったけど。
大事なイヴの日に、恋人を置いてバイトするっていう負い目が先に立ってしまって。
いいよね、いいよね?なんて目キラキラさせながら見つめられたら。
結局言うに言えなくなっちゃったんだ。

つかさはいつもは天然でぽやぽやでお人よしなんだけど。
いざ、こうする、って決めた時は本当に押しが強い。
…毎度毎度押し負けてしまう私も私なんだけどさ。決して嫌じゃないけどね。

なんてうだうだ考えてる今この時は、これからお店に入る直前。
いけないいけない。
つかさが家のパーティ終わらせて店に来るまでは、きちんと働かないとね。

「…コナタ?」
「な、何?パティ」
「キョウはツカサとのDateはイイのですカ?」
「ん…つかさが来てくれるって」
「Oh!だからキョウのコナタはキもソゾロなのですネ?」
どこでそんな日本語覚えてくるのさパティ。
にしても、そんなに集中できてないのかな?私。
「キョウのコナタはヘンでス」
「ど、どうしてさ?」
「だって、Sweet loverにアエルというのに、ゼンゼンウレシソーじゃありまセン」
やっぱり、顔に出ていたんだろうか。ってか、その部分だけネイティヴ・イングリッシュ
で言われるとものすごく恥ずかしいんだけど。
「Dance timeだって、コマカいところマチガエてました。そう…Anxietyでもあるのデス
カ?」
「あ、あんざいえてー?」
「ソーリー、シンパイゴト、っていうイミでス。キユー、ともいいますネ」
「パティは鋭いね」
隠し事しててもしょうがないので、素直にうなずいておいた。
さすが、日本(のオタク)文化に惚れて来日しただけのことはあるよ。日本語が上手なこと
も含めてね。
「ワタシとコナタのナカじゃありませんカ!ソーダンゴトがあるなら、イってクダサ
イ!」
「わ…ちょ、ちょっとパティ?」
いつになく真剣な眼差しで、長身をかがめて私に視線を合わせて。
ってか…力になってくれるっぽいのはありがたいんだけど、聞く人が聞いたら誤解される
発言はやめてよ。
「コナタがMerancoryだと、ワタシも、ミンナもエイキョーされまス!シンパイゴトはサ
キにカタヅけておくのが、Professionalとイウモノじゃないですカ!」
「わ、わかったよ…じゃあパティ?一つ頼まれてくれるかな?」
「オーケーデス!Titanicにノッたつもりでマカセなさイ!」
The Queen Elizabethでもイイですヨ、なんて付け加えてくれたけど。
パティ…
両方とも航海初日に沈んだ船だよそれ。

で。
私がパティに頼んだことは、単純なもの。
私がつかさを迎えに行く間、穴埋めして欲しい、ってこと。
つかさが来るのは、どう頑張っても閉店1時間前程度。
家でパーティを終えて、秋葉まで電車乗り継いだら、どうしてもそのくらいになってしま
う。
私は、そのちょっとした間に抜けさせてもらう。
その間の店のことをパティと長門さんにお願いしておいたのだ。
勿論、仕事は休憩時間もそこそこに目一杯やったよ。


Interlude(つかさ視点)

「つかさ?本当についていかなくていいの?」
「大丈夫だよ~お姉ちゃん。前に一度行ってるから道はわかるし」
「あんたが一度で道覚えてるって言うのが信じられないわ」
「あう…それはちょっと酷い…」
だって、こなちゃんが勤めているお店だもん。
まっすぐたどり着きたいから、一生懸命に覚えたんだよ。
多少ゆきちゃんに助けてもらったりもしたけども…
ちなみに、今日の事お姉ちゃん達に言ったら。
「こなたちゃんと一緒なら心配ないわよね。遠慮しないで楽しんできなさい」
「年頃の女の子が、こんな夜遅くに出るのは心配だが…気をつけて行ってくるんだよ」
と、お母さん、お父さん。
「つかさもやるわねぇ。イヴの晩にこなたちゃんと一緒なんて」
「あんまり夜中までやりすぎるんじゃないわよー。こなたちゃんもお仕事でお疲れなんだ
からね」
「こら!まつり!下世話な事言わないの!」
何を期待してるんだろうお姉ちゃんたち。…想像つかないわけでもなく…いや、寧ろあわ
よくば…なんて…あああー、想像しちゃったら凄いことになっちゃったよぉ!

で。
理解ある家族に見送られて、最後はお姉ちゃん。
「頑張ってくるのよ」
「うん!」
何をだろう、なんて深く考えないで返事しちゃったけど。
行ってきまーす、って家を出る間際に。
妙にニヤニヤしてたお姉ちゃんが見えて。
…慌てて走って。
駅に着く頃には汗かいちゃったよ。…走ったから、というだけじゃない汗もだけど。

こなちゃん、今どうしてるのかな…お店、忙しいよね…
でも、やっぱりイヴの夜だし会いたいよ。

Interlude out

さて。
そろそろつかさが着く頃合かな。
お客さんの入りは…閉店間際だけどやっぱりこの日だからか、まだまだ盛り上がってる。
次のショータイムまでには戻らないとね。
「パティ」
接客から戻ってきたパティに、小声で呼びかける。
「オーケー。マカせといてくださイ」
何も言わないうちから、親指をぐっ、と立てて。
本当に頼もしい友人を持ったなぁ。私。
すぐ戻るよ、と言って店を出る間際。
何かパティが長門さんと話してるのが見えた。
「ワカってますネ?ナガト」
「…問題ない。私もその試みは非常に面白いと思う」
試み?
何を企んでるんだろう、パティ?
まぁいいや。今迎えに行くからね。つかさ。

お店を出て、通りを一直線。
駅まで歩いても10分とかからない距離だ。
それを私は。
お店のサンタ衣装のまま、通りを走っていた。

「…こなちゃん?」
程なくして、あっさりとつかさを見つけた。
私の格好を見て、目を丸く見開いて。
「お仕事は?」
「ちょっとだけ、抜け出してきちゃった。つかさを迎えに行きたかったから」
「こなちゃん…」
「ふふ、ここでロマンティックに抱き合うのもいいけど…もう最後のショーまで時間がな
いんだ。ドタバタして悪いけど、すぐ店に戻らなきゃ」
と、つかさに手を差し出して。
「うんっ」
つかさは、いつもの笑顔で、その手をしっかりと握ってくれた。

店に戻るまで、ずっとその手は離さなかった。
そして。
店の前に立つ。
「んじゃ、私は控えで準備してくるから、パティが出迎えてくれるはずだからそれまでゆ
っくりしててよ」
と、ドアを開けた。


その瞬間。



パンッ!パパパンッ!

「うわわっ!」
きっと両手で数えても指が足りないほどの破裂音に出迎えられた。
面食らってる私とつかさに、

「Happy merry Christmas!Sweet Lovers! Surprise!!」

このネイティヴな英語…そんな流暢に英語を話す人間は、少なくともこの場には一人しか
ありえない。

「「「「「「「「サプラーイズっ!!!」」」」」」」」

しかも。
いつの間にか、どうやって懐柔したのか、お店のお客さん全員がパティに習ってサプライ
ズの大合唱だよ。
私、パティにそこまでしてくれって頼んだ覚えないんだけどな…って私が最後に聞いたア
レか。

合点はいったが、言葉が出ない。
それはつかさも同じらしく、驚きのあまり固まってる。
そこへ。
「パトリシア・マーティンは、貴女のためにこのサプライズを短時間でお客全員に提案し
た。…正しくは、貴女達のために。今夜、最後のショータイムは貴女達のためのもの。気
に掛ける必要はない」
長門さんの、端的な、それでいて詳細な説明に。
「ありがとう。長門さん」
先に言葉を返したのはつかさだった。
「…礼を言われるほどの事ではない。先ほども言った通り、これは貴女達へのお祝いであ
り、日頃お世話になっている泉こなたへの思いも込められている」
つかさの無邪気そのものの笑顔に、長門さんもちょっとだけ赤くなってる。でもつかさは
私のだよ。
…ってか、私の方が物凄く赤面モノだよ。
パティめ~…こういう事だったのか…
「What's happened?コナタ?いつまでもスミっこにいたら、ハナシがススみません
ヨ?」
こう言う時だけわざとらしく英語使わないのパティ。
「こなちゃん真っ赤だよ?」
「あう…じゃ、入ろうか、つかさ」
「うんっ」

店の中では、
「くぅ…こなたちゃん…」
「こんな可愛い子が恋人だって言うなら、いいさ…俺は潔く諦めるさ…」
なんて、お客さんの声が聞こえてきて。
あそこまで大々的にしなくってもよかったのに。嗚咽まで聞こえてきてるよ。

「Hi!ミナサン!このセーなるヨルにシメっぽいハナシはヤボというものデスヨ!キョウ
はようこそ、ツカサ。ヘイテンまであとちょっとデスけど、タノしんでクダサイ。コナ
ター!Let's show timeネ!」
勢いというか、パティの人徳というか。
さっきの余韻が覚めやらないまま、私はパティに最後のショータイムに出るべく、裏へ引
っ張られた。

閉店後。
お客さんがみんな帰って、後始末と掃除を終えて。
その間つかさを外で待たせてしまってて。
外寒いから店の中で待ってていいよ、と言ったんだけど。
「こなちゃん達の邪魔しちゃ悪いから」
って言われて店の階段で待っててもらってた。

「いかがでシタカ?ワタシのサプライズ・プレゼント」
「…まさかパティがそこまで策略家だったなんて知らなかったよ。私、パティの見方変わ
ったかも」
「ツレナイですネ?おキにメしませんでしたカ?」
「…そんな事ないよ。つかさも喜んでくれたし」
「コナタはどうでしたカ?」
「…」
嬉しくない、なんて絶対にない。
でもお客さんまで巻き込まなくても、もうちょっとやり様があったんじゃないのか、なん
てのは。
「ワタシ、コナタのコト、スキデス。でも、それはLoveではナく、Friendshipですヨ。だ
から、コナタにヨロコんでホしくて、シュクフクしたかったのデス。ツカサと、コナタ
を」
ちょっとやり方がアレだったけども。
それもパティなりに私達を応援してくれてるんだ、ってのがわかったから。
「…ありがと、パティ」
「Mm、そのコトバでワタシ、ムクワれましタ」
そんな満面の笑みで言われたら、もう返す言葉もないよね。

「お疲れ様ー」
「コナター、コンヤはおタノしみですネ?」
「パティ!…もう…」
店を出ると、すぐつかさが出迎えてくれた。
「お楽しみ?」
なんて小首傾げながら。
直後に思い当たる節でもあるのか、真っ赤になっちゃったけど。ってしっかりつかさに聞
こえちゃってるじゃないか。

「今夜は、来てくれてありがと、つかさ」
「ううん。私が無理言ってお邪魔しちゃったんだし」
「でもね」
最初はとっても心配だったけど。
つかさに会えて、とっても安心したんだ。
「嬉しかったよ」
「こなちゃん…」
安心したと同時に、終わってから何かしんみりきちゃって。
「私、ダメな彼女だよね。イヴだってのにつかさの事置いてバイトなんて」
「そんな事ない!仕事放り出さなかったこなちゃん、すっごい偉いと思うよ!それに…こ
ういう仕事だ、っての知ってるから」
「ん…でもね。私パティ達にも世話かけちゃったんだよ。なのに、皆暖かくさっきみたい
に祝福してくれてさ」
「こなちゃん」
私がさっきの反省してるところに。
急に暖かい何かに包まれた。
「みんな、こなちゃんのことが好きなんだよ」
だから。
あそこまでの事をしてくれたんだ、と。
さっきパティに言われた台詞をそっくりそのままのし付けられて。
「だから、そんな皆に祝福された私は、すっごい幸せ者だよ」
なんて。
つかさに抱きしめられてる、と気付いたのは、その言葉から数秒経ってからだなんて。
だから。
遅ればせながら、私もつかさの腰に腕を回して、ぎゅ、と抱きしめてやる。
「だから、湿っぽいお話はこれで終わり。パティちゃんも言ってたよね?そんなのは野暮
だって」

だって、今日はクリスマス・イヴなんだから。
恋人同士が、聖なる夜を祝福しあう日なんだから。
夜はこれから。
とことん楽しまないと、もったいないじゃない。

その認識は、私も同じ。
だから。
「あのね、つかさ」
「何?」
「今日、うちに泊まっていきなよ」

そう。
夜はまだまだ、終わらない―――






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