無題05


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ショップめぐりは止めて辿り着いたはつかさの家。
結局買ったスイカバーは溶けてきたのでとりあえず冷蔵庫へ入れられた。
「半分こしようよ」とつかさは言ってきたけど、この前の二の舞にはなりたくないしね。
あれ冷たかったし……つかさは何か残念そうだけど。
今日はゲームはしないで最初から縁側に座る。のんびりするために来た訳だし。
日差しは少し暑いけど、風が吹いているからだるくなるような暑さじゃない。
縁側で足をぶらぶらさせながら私は空を眺めていた。
つかさは……視線を感じるって事は空じゃなくてこっちを見てるんだろう。

「……どうしたの?」

ちょっと反応に困るから空を見上げたまま尋ねた。
まだ話し掛けてくれた方が反応しやすいのに、無言で見つめられるとね……
風が吹いて髪が靡く。目に入りそうだったから手で避けて、その時自然につかさの方を向いた。
やっぱりこっち見てるし。

「こなちゃんの髪は長いよね」
「確かに長い方かな。でもかがみだって長いじゃん」
「ねえ、触ってもいい?」
「ん?いいよ」

特に断る理由もないから、私はぶら下げていた足を上げてペタンと座り、
つかさが髪を触りやすい様につかさに背中を向けようとしたら。

「あ、待って。こっち向いて」

つかさが腕を掴んでストップをかけてきた。
ダメ? と自信なさげに尋ねられると無下に出来ない。

「いいけど、それだと触りにくくない?」
「いいのいいの。ね?」

周りに花が見えるような笑顔ってこんな笑顔のことを言うのかな……と、見惚れてみる。
ここだけ空気が春っぽい。私には出せない空気だよね、と思いながらつい頭を撫でてしまった。
つかさも手を伸ばして私の横の髪に触れてくる。
髪を触る目的だったら正面は触りにくいんじゃないかな?
だからと言って今「やっぱり後ろ向くね」と言ったら、何かダメな気がする。
しょうがないから私もつかさの頭を撫でていた手で髪を撫で下ろして指に絡めた。
柔らかくて、指に引っかからずにするりとすり抜ける。
そんな私の真似をしたかったのか、つかさも同じように指に絡めてきた。
私の髪は長いから引っかかるんじゃないかな。


「やぁ、つかさ。お友達かい?」

急に私達以外の声がして驚いたけど、つかさはまったく驚かずに「あ、お父さん」と返した。
私も慌てて「お邪魔してます」と返す。のほほんとしてて、何だかとっても『つかさのお父さん』らしい。

「いらっしゃい。とても仲が良さそうで何よりだよ」

朗らかな笑みを浮かべながら玄関の方へと歩いていくおじさん。
って……この光景は、仲が良いってだけで説明できるのかな?
あ、あれ? 友達同士で向かい合って髪触りあったりするっけ……?
思わずつかさの髪をいじっていた手が止まる。

「ね、ねぇ、つかさ……」
「ん?」

つかさは未だに私の髪を堪能中。そんなに楽しいのかな?
確かにつかさの髪は触り心地良かったけど。

「こういう事って普通にするかな?」
「……普通だと思うよ?」
「そっか……普通……だよね」

なら、私が過剰反応なだけだね。
お父さんやおじさんに見られても、普通に挨拶すればいいんだよね。

「うん。付き合ってるんだから普通だよ」
「そっ……そういう『普通』かぁ……」

つかさ、不意打ち得意だね。スイカバー味といい。
すべてを純粋に受け入れすぎじゃないかな。自分に正直なのはいい事、だと思うけど。
何で私の方が照れるのか。照れたことが恥ずかしくなる。

「つかさのおじさんは、あんまり私たちの行動気にしてなかったね」
「そうだね。仲良さそうに見えたみたいだからよかったー」

……ものすごい会話にズレがある気がするのは考えすぎかな?
それとも私のお父さんが一般的じゃないのか。
お父さんがこういう光景見たら、萌えがどうとか叫びそうだけどねこのシチュエーション。

「……ふ、ぁ……」
「どうかしたの、こなちゃん」
「いや……ちょっとね」

軽く睡魔を感じた。
つかさと居ると時間がゆっくり流れてる感覚がする。
それに今日はすごしやすくて、縁側に居ると余計に眠たくなってくる。
思わずあくびをかみ殺した。

「……そう言えば、この前はこなちゃんが寝たよね」
「ん……? ああ、あの膝枕ね。数分だけどね」
「だから今度は私が寝てもいい?」
「つまり、枕になってくれってこと?」

うんうん頷くつかさ。
しかも良いよと返事をしてないのに、断られるとは思ってないような笑顔で。
まぁ、断るつもりはないけどさ。膝枕ぐらいならね、大丈夫でしょ。

「いいよ。私の膝でよければ」

ぽんぽんと自分の膝を叩いて示すけど、なぜかつかさが首を傾げた。
寝るんじゃないの?

「……膝?」

なんで膝叩いてるの? と漫画的吹き出しが見えた気がする。
私はそんなつかさに疑問符を投げたい。だって、寝るんじゃないの? と。

「……膝枕じゃないの?」
「えっとね」

まだ私の髪を撫でていた手が、私の頭をつかさの方へ引き寄せた。
正座を崩した状態で座っていた私はその力に従ってつかさの方へ倒れこんだ。
ごろん、とつかさは私を抱きしめて寝転がる。向かい合わせで横になり笑顔のつかさ。
それに対して、驚きで対処できない私。つかさの行動予想しづらいよ!!

「エヘヘー、だきまくらー」

まるで猫型ロボットの様に言って、ぎゅーっと抱きついてくる。
枕は膝枕じゃなくて、抱き枕のことですか。分からないってそんなの!

「い、いや、これは縁側じゃだめじゃない?さすがに」

付き合っている付き合っていないじゃなくて、場所が。
つかさの部屋ならいいの? という思考にはすぐに頷きかねるけど。

「なんで?日向ぼっこしながら寝るのは気持ちいいよ?」
「そ、そういうことだけじゃなくて! 抱き枕って言うのは……」
「こなちゃんって抱き心地いいんだよ?」

そんな言われても知らないよ。
しかも当然のように言われたらリアクションしづらいよ。
私のほうが反応間違ってるのかな……? 自信なくなってくる。
純粋なスキンシップと思えばいいんだろうけど、なんだかイケナイ想像をしてしまうのは私がエロゲ脳だからなのか。
だからと言ってまたおじさんに見られたら今度こそ「仲が良い」ではすまないような……

「それに、学校じゃあんまりこなちゃんに触れないし」
「……つかさは我慢を覚えたほうが良いよ。現実世界にワザマシンがあればいいのに……」
「ざ、沢魔真……?」

誰それ。格闘家?

「で、でも我慢してるから学校じゃこういう事してないよ?」
「そりゃそうだよ! 学校でこれは流石に無理でしょ!! それこそ良くあるギャルゲじゃん」

放課後の学校で~……なんてね。
でも恋人の家の縁側で~……と、どう違うかな?と思ったら大して違いが分からなくなった。
何だろ、背徳感の違い?

「それにこなちゃんも、昼休みに寝てたし……眠いでしょ?」
「いや、寝ることはいいんだよ。この体勢に疑問……って、もういいや」

言っても無駄だしね。それにこういう事は恋人じゃない限りそう無いことだし。
付き合い始めの第一歩と思えば、まぁ、ほら。
恥ずかしくなるけど悪い気はしないと思ったり思ったり。
私もつかさに抱きつくと上機嫌な微笑みが聞こえた。恥ずかしいので目を瞑る。
ちょっと熱すぎるかもしれないけど、何かすごく落ち着く事には変わりなかった。
がくん、と激しく睡魔が圧し掛かる。
折角抱き枕になってるんだから寝ちゃってもいいよね……と目を瞑った。


誰かと誰かの声がして、意識がぼんやりと輪郭を描き出した。
寝てしまってどれだけの時間がたったのかは分からない。
確認し様と目を開けたのに暗かった。
どうやら私はまだつかさに抱きついているらしい。しかも結構強く。
頭を撫でられる感覚がする。もしかしてずっと撫でられてたのかな。

「しかしまぁ、よく寝てるわね」
「えへへ、可愛いよね」

……なんか、かがみの声が聞こえるんですけど。
もしかしてかがみに見られてる? って、つかさもうちょっと慌てなよ!! 私の頭撫でてる場合じゃないよ!!
うあ、起きるタイミング逃した!!
クールになれ、クールになれ泉こなた。今どんな状況なんだろ?
えっと……私はつかさに抱きついて肩ぐらいに顔を埋めている状況、かな。
つかさも私の背中に片腕を回して、もう片方で頭を撫でてくれてる。
……つかさ、かがみに見られてるんだよ? 恥ずかしいって思って……ないから平然としてるんだろうなぁ。

「あんた達は常に空気が春ね」
「そうかな、こなちゃんは夏っぽいよ」
「二人でいる時の『のんびり空気』を客観的に見なさい」

かがみも普通に会話してるけど、疑問に思ってないんですか? 抱きしめあって寝てる私たちを。
なんて思わず倒置法になってしまう。どうしよう。かがみがいると起きるタイミングが掴めない。
やぁ、おはようって軽く言っちゃえばOKかな。
一生懸命考えていると、頭を撫でてくれてるつかさの手が止まった。
ゆびがこめかみに移動して、私の横の髪を耳にかけてきる。
目を瞑ってるから見えたわけでもないけど、耳が露になったらしく風が少し当たった。
どうしたんだろうって思っていたら。

「こなちゃん、起きてるでしょ?」
「っ」

声は意地であげなかった。今声を出したら負けた気がしたから言葉を飲み込んだ。
あとつかさ、耳元でウィスパーは止めて。息が当たってくすぐったいから。
それより……それに何で起きてるばれたんだろう? 勘?
無反応を貫いたからか、再び耳元ウィスパーがやってきた。

「こなちゃん、大好き」
「なっ」

流石に今回無反応は無理だった。
かがみにばれるほど大きなリアクションは取らなかったけど、つかさに抱きついてた腕に無意識に力が入った。
顔を少しだけ俯かせる。赤くなっただろう顔を肩で隠すように。

「……どうしたの?つかさ。ニコニコしてるけど」
「本に書いてあった『良い夢が見れるおまじない』をこなちゃんに試してみたの」
「そう言うのって効果あるの? 眉唾って気がするけど」
「後でこなちゃんに確かめてみたら分かるよ」
「それもそうね」

確かめないで。お願いだから確かめないで。
良い夢というか、良い思いはしてる……かもしれない。
つかさの表情を窺う事は出来ないけど、かがみが言ってるからにはすごくニコニコしてるに違いない。
かがみにばれないように! と寝たふりを続けながら私は考えていた。

今度本屋に行った時に『正しい犬の躾方』みたいな本を買ってみようかな、と。




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