☆こなゆき☆『無題1-336レス』


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☆こなゆき☆『無題1-336レス』




休日の午後にしては珍しく私は勉強していた。
普段だったらネトゲだったり積んであるゲームやマンガ、録っておいたアニメなりの消化をする時間。
その他にも友達(といってもほぼかがみたちのこと)と出かけたり(アキバとかネ)談笑したりして遊びに使っている。
世間一般には受験生と、勉学に勤しむ姿が想像されるであろう立場であっても私にとってはそれが普通の過ごし方。
そんな私が殊勝にも勉強をしているのにはわけがある。

「今度の休み何か予定とかある?」

ないならどこか出掛けようよ的なノリでいつものみんなに問いかけたのは三日前。
放課後につかさ、かがみ、みゆきさんと四人でちょっと暗くなるくらいまで教室で笑い合っている、そんな素敵なスローライフ。
ちょっとテンション上げ気味で言ったのは休みの日が楽しみだし、なんだかんだでみんな出かけるの好きだし。
断れることはないかなーなんて、映画にしようかカラオケにしようかとプランを練っていた。

「あ、悪い。その日家族で出かけることになってる」
「ごめんね……?」

柊一家でどこか行くという予定が先に決定していたらしい。
つかさが謝る必要はないし、小学生みたくはしゃぐわけでもないんだから。
なぜか静まり返った場の空気を紛らわすために軽く咳払いでもしておこう。
それから「いいもん、みゆきさんとデートするから」とか冗談を言ってはかがみがつっこんでくれて。

「みゆきさんは予定空いてる」
「はい」
「じゃあみゆきさん家行っていい?」
「あ……泉さんのお宅にお邪魔してもよろしいですか?」
「いいよー」

というやりとりが行われていたそうな。
そうなって、ともかく勢いって言うかいつもの調子でさらりと決まったんだよね。
つかさに珍しいねと言われてそういえばみゆきさんが一人で家に来たことなかったっけと。
というか意外と出かけたりする場合、お互いの家に遊びに行くのも含めてみゆきさんと二人きりはなかったかなぁなんて。
別に私がみゆきさんを嫌いとか、もしかしたらみゆきさんが私のことを見下してるかもしれないとか思っちゃいないんだけど。
単純に家が遠かったり、趣味が(と言うよりも性格?)全くと言っていいほど違うんだし。
親しい間柄であることは確かで、どこかですれ違いにでもなっていたのかもしれない。
その日は結局当日が楽しみだと思いながらネトゲに精を出して三時頃に寝た。

んで現在泉家にて二人だけの勉強会を開催中というわけ。
最初はゲームだったりも考えてはみたもののみゆきさんとゲームはいまいち結びつかなくて。
その辺の本を適当に読んでてよと言っても私はハードカバーなんて持っていないんだし。
自分一人楽しむのも悪いと言うより、遊んでいる子どもとそれを見守る母親みたいなことになるのが許せない。
相変わらずに大人な雰囲気を醸し出すこの人を見ていてなぜか宿題のことが頭をよぎったから。
唐突な申し出なのに持参した手提げから参考書を取り出すのはなんと言うかごめんなさい。
そういえば誰かの家で集まる時にたいてい何かしら勉強道具を用意している気がする。
それほど目指す目標が高いってことなのかな。

「明日って英語のレポート提出だったよね……?」

とかなんとかようやく自分のすべきことを思い出してそれを必死にこなしていた。
すらすらと迷うことなくシャーペンを走らせていくみゆきさんに対してアルファベットとにらめっこ中の私。
時々辞書を引いて紙の擦れる音が迷惑じゃないかななんて思ってしまう。
眼鏡の子は頭が良いとか。眼鏡をかけている人、と思い浮かぶゆい姉さんは素直に頷けないもんだけど。
品行方正、成績優秀。そんでもってスタイルも良くて。
天は二物を与えずって言うけど二つどころじゃないじゃんって嘆いたりはしない。
そんなつまらない嫉妬はしないけど、真剣な表情のみゆきさんをなんとなく眺め続けていると不意に目が合った。

「どうかしましたか?」
「えっ、と……ここ教えてくれないかな?」

自力で解くことを諦めたつもりはないけど怪しいし、タイミング的に悪くないし。
向かい側に座るみゆきさんに見やすいようにと問題のページをそっちに向けた。
問題を把握するのに数秒、それから答えを見出すのに数十秒程度。
一分もかからずに何かを思い出したような表情になるのは本当にすごいと思う。

「ここはこのwhenがですね」
「ごめん、どれかわかんない」

単語のことを言っているんだろうけど、こっちからじゃ英語にすら見えなくなってしまう。
それに気づいたみゆきさんが最初教科書をこっちに傾けようとしたけどどうやらそれでは説明しにくいと思ったらしい。
立ち上がって何事かと思えば私の隣に腰を下ろした。

「みゆきさん……?」
「この方が楽かと思いまして」
「でもさ、これだと自分の分はできないよ?」

学校の机よりもこのテーブルは小さいんだから。
あぅ、と天然っぷりを発揮してくれるのは微笑ましいんだけど、一度決めたら曲げないと言うか。
とりあえず教えてもらう立場の私がどうこう言うわけにもいかず、隣に座って助力をいただくことにする。
指先が単語をなぞるように動いたり、たぶん身長のせいで優しく上から声が降ってきたり。
普段はコントラストのせいもあったのだろう、みゆきさんの傍に位置することはあまりない。
本当はこんなこと友達に対して思っちゃいけないんだろうけど、どうしても想像してしまうことがある。

「あの、泉さん……?」
「あ、ごめん。もう一回説明してくれない?」

今度はちゃんと聞いてるから。
ネイティブに遭遇したことはないけどこれなら会話も普通にできるんだろうって思うような流暢な英語。
一つ一つ丁寧に確認を取って答えを導き出すための過程がしっかりと頭に入って確かな学習となる。
かがみにしろみゆきさんにしろ、単純に成績が良いってだけじゃなくて説明できる理解力。
ただ質問と答えだけを覚えていた私は二人はすごいなと心の中で何度も呟いていた。

「なるほど、そういうことなのか」

マルバツ問題のたまたま正解だったとかとは違う問題を解いたって感じ。
なんだか無性に嬉しくなって、感心したのと感謝の気持ちを伝える。
そしたらなぜか頭を撫でられた。
よくできましたってことだとしたら恥ずかしいし、みゆきさんのおかげで解決したんだけど。
でも頭に乗る重さなんて軽いものでわざわざ振り払う必要なんてない。
むしろ気持ちよく思っていた私は、こつんと上体をみゆきさんの方へと傾けた。

「い、泉さん……!?」
「ちょっとだけこうしてていい?」

「っ」と短く息を漏らしたので慌てて離れようとした。
けど、一瞬にしていつもの優しい笑顔を浮かべて、かすかに肩に体温を感じて。
預けていた体重をそのままに、みゆきさんの腰に手を回した。
なんだか甘えん坊な感じになっているけどまあいい。今はゆーちゃんは出かけててお父さんも了解なしに娘の部屋に入ってきたりしないはずだ。
時計を見ていないけれど経験やらなんやらが今日は頑張ったほうだと言ってくれている。
きゅっと回されたその手。包まれているような、守られているような感覚はとても温かいものだと思った。








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