☆こなゆき☆『とりかえっこ☆』


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☆こなゆき☆『とりかえっこ☆』





窓から差し込んでくる太陽光を体に浴び、みゆきは目が覚めた。ベッドから降りて思い切り体を伸ばす。
が、伸びきった直後に軽くめまいを起こし、倒れそうになった。
(おっと…)
みゆきはここで、未だ強い睡魔に襲われていることに気付いた。
(おかしいですね…昨日もいつも通りの時間に眠ったはずなのに…)
ベッドに腰掛け、目を擦る。ようやく視界がハッキリしだすと、妙な光景がそこに広がっていた。
部屋の壁にはアニメのものと思われるポスターがいくつも貼られており、テレビの上にはフィギュアという人形が所狭しと並んでいる。
そして本棚には、普段良く読む文学書やノベライズは全て消え失せ、漫画ばかりがぎっしり揃えられていた。
そもそもこの部屋の構造自体が自分の寝ていた部屋と全く変わっていた。
みゆきは困惑しながらもまだ冷静であった。この特徴的な部屋が一体誰の部屋なのかも大体予想がついていた為だ。
「ここは…泉さんの部屋、ですよね」
呟いてすぐ、みゆきは口元を押さえた。
(あら……?喉がおかしい…?)
自分の声に微妙な違和感を感じる。数回喉を鳴らしてみたが、やっぱりおかしい。風邪を引いたのとはちょっと違う気もする。
しかしみゆきの違和感は声だけにとどまらなかった。
(そういえばなんだか普段よりも体が軽いような………目もよく見えますし、それに……泉さんの部屋、こんなに天井高かったでしょうか…?)
疑問を胸に何気なく部屋を見回すと、ある人物と目が合った。この部屋の主、泉こなたの姿だ。
しかし彼女は言葉を発することはないだろう。何故か?答えは簡単。彼女は…



『鏡』の中に居るのだから―――



「な、な、な………」
足取りもおぼつかず、四つん這いで鏡に近寄るみゆき。鏡の中に居るこなたも、みゆきと全く同じ動作をしていた。
その表情も見る見るうちに青ざめていく。
「いやああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
朝の泉家に響いたその悲鳴は、『高良みゆき』の声では、なかった……。



とりかえっこ☆

「まさか…どうしてこんなことに……」
あの悲鳴を上げた後、おじさんと小早川さんが部屋に押しかけてきたものの、何とか誤魔化しはしました。
速やかに制服に着替え、半ば逃げるように私は泉家を飛び出したのです。
そして何度確かめたところで、この体はやっぱり泉さんそのままです。
(まず落ち着きましょう……泉さんの体の中に私の意識がある。…ということは、私の体には泉さんの意識があるかもしれない)
まるで根拠はありませんが今はそれに掛けるしかありません。

みゆきは無意識に歩く速度が早くなった。その時だ。

「あ、こなちゃーん!」
「おっす、おはようこなた」

「あら、おはようございます。つかささん、かがみさん」


当然現れた友人に話しかけられ、みゆきはつい普段どおりに返してしまった。
2人の表情が固まり、その時になってようやく自分のミスに気付く。

(やってしまいました……今の私は泉さんでした………)
「あ…え、と………」

「なあに?またアニメの真似かなんか?」
「あはは、びっくりしちゃったよ~」

どうやら都合のいいほうに受け取ってくれたみたいです。
「え、う、うん。まあ、ね……」
どうにか泉さんの口真似を試みましたが、どことなくぎこちなくなってしまうのが自分でも分かります。
それでも2人はあまり不審には思っていないようです。
(これならなんとか凌げるかもしれません)

みゆきはそう思ったが、そんなに上手く事が運ぶことはなかった。

「ところでこなた」
「はい……あいえ、何?」
「前借りたゲームなんだけどさ」
「ゲーム?」
「今、精霊契約イベントの途中でさー、3人目のシルフのダンジョンなんだけど、ヒュータウンの南の森に入り口があるのよね?どんなに探してもダンジョンの入り口が見当たらなくてねー。
一応、そこの村人全員に話しかけてはみたんだけどヒントらしいヒントもなくて…なんか必要イベントとかアイテムとかがあるのか教えて欲しいんだけど」
「え………」(どうしましょう……かがみさんが何を言っているのか、 全 く 分かりません…)
答えられないものは、答えようがありません。本当の泉さんなら知っているのでしょうが…。
「ごめん、ちょっと分からない、かな……」
「分からない?分からないって…あんた確かあのゲーム何週もプレイしたって言ってたじゃない」
「そ、そんなこと言われましても……ちょっと忘れてて」
「……?…ふ~ん」
怪しんでる…とまではいわなくてもどこか変に感じられたのでしょうか。かがみさんは覗き込むように目を見つめてきます。
不自然に目を逸らすことも出来ず困り果てていると、つかささんが口を開きました。
「お姉ちゃん、早く行かないと学校遅れちゃうよ?」
「おっとそうね。じゃ、行こっか」
(…助かりました)

みゆきは心の中でつかさに礼を言い、2人の後に駆け足で続いた。


学校の正門の前では多くの生徒たちが歩きかい、各々が友人たちを見つけて雑談しあう姿があった。特に珍しくも無く普段から見慣れた光景である。
そんな中、みゆきは生徒一人一人を食い入るように見つめていた。自分の体がここに居ないか、確認していたのだ。

(どこにもいませんね、私の体……)
後ろから見ただけでは分からないかもしれません。顔を確かめないことには……でも、凄い人数ですね。全員の顔を確かめるのは骨が折れそうです…。
……と、目に留まったのは背の高いショートヘアの女生徒。髪が短いので私の体ではありませんが、家の近所に住んでいる彼女からなら何らかの話を聞けるはずです。
「え……と、……み、みなみ、ちゃーん…」
や、やっぱり恥ずかしいです…。いつもと呼び名を変えるだけでこんなに勝手が違うとは…。
ただみなみさんのほうはこちらの姿を認めてくれたようで、手を振って答えてくださいました。
「おはようございます、泉先輩」
「おはよう。みなみ…ちゃん、確かみなみちゃんはいつも…みゆきさん…と一緒に学校来てるよね?今日は…?」
「それが……」
「?」
困惑したような表情のみなみさん。…まさか私の体に何かあったのでしょうか?
「…寝坊したみたいでして」
「寝坊……?」
みなみさんは今日もいつもどおり、みゆきさん…つまり私の家を訪ねたらしいのですが、玄関から出てきたのは出てきたのは私の母らしいです。
そして母は「みゆきは一向に目が覚めない」…と言ったようです。結局みなみさんは一人で学校に来たけれど、私のことが心配でずっと待ってくれていた、ということです。
「みゆきさん、まだ来ないんですよ…ケータイも繋がらなくて。まさか変な病気にでも…?」
「そうですか…あ、いえ。そうなんだ…心配だね」
寝たきりになってる。ということでしょうか?まさか私の体には誰の意識も入っていない……?…え、となるとこの体の…泉さんの意識は一体……。

「ほれほれ!お前ら教室に急げよ!!もう門を閉めるぞー!」
生活指導の先生の声が響き渡り、私は考えを止められました。ふと時計を見ると、もう確かにそんな時間です。あれだけたくさん居た生徒もすっかり居なくなってました。
「……来ませんでしたね、みゆきさん」
みなみさんは小さく肩を落としました。もちろん私としても残念です。一体私たちの身に何が起こっているのでしょう……
また考えを巡らせつつ、校舎へ向かおうとした、正にその時………

ついに、『彼女』が現れました。

「待ったあああああ!先生待って!!まだいますぅぅぅ!!」
「あのな…もう遅刻だぞ!」
「そんな!見逃してくださいよ先生~、ほらセーフセーフ」
「あ、こら危ないぞ!上るな!」

「あ、あの…泉先輩…あれは……」
ええ、いました。『彼女』が。出来れば思い切り目を逸らしたい光景でした。門の上によじ登ろうとしている……『私』
難しく考えることはありませんでした。
目が覚めない私の体――そういえば彼女は普段からよく寝坊して遅刻をします。そして滑り込みで教室に到着。
おそらくこれもまたいつもの光景なのでしょう。……私の体である以外は。
泉さんの体に私が入っているように……私の体には、やはり泉さんがいたのです…。

「よっと」
門から危なげない動きで飛び降りた私in泉さん。先生の忠告などいざ知らず、さっそくこちらを見つけたようです。
「あの…みゆき……さん?」
「お?みなみちゃんおはよー!」
「!!?」
まるで頭を殴られたかのような衝撃です。私は泉さんになりきるよう苦労しているのに、泉さんは自分の個性をフルオープンさせてます…。
一体私の苦労は……。
「…んー?」
ここに来て泉さんは私の方へと視線を向けてきました。疑わしげな眼差し。そして発された言葉。
「こっちの小さい子…どっかで見たような……?」
あなたの体ですよ。

いったいどうしてこうなってしまったか。私と泉さんの、奇妙な学校生活がここに始まりました……



つづく…





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