☆こなゆき☆『とりかえっこ☆(3話)』


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☆こなゆき☆『とりかえっこ☆(3話)』






とりかえっこ☆3話


ちょうど世界史の授業の真っ最中。
教室は静まりかえり、先生の声、そしてチョークが黒板を擦る音がしていた。
黒井先生が声のボリュームをあげ、黄色いチョークに持ち替えた。
「この革命で帝政ドイツが崩壊、んでこの後に出来た新憲法が……中学ん頃にも習うたと思うが……高良、分かるな?」
即答を待っていたであろう黒井先生。だが返事はない。先生だけでなく教室中が少し戸惑い始めた。
「高良ー?どうしたー?」
もういちどみゆきを呼ぶ黒井先生。一呼吸置いた後、

「……くおぉぉぉ……くかぁぁぁぁ……」

とても心地よさそうな寝息が先生に返事をした。
「た、高…良……?」
先生が絶句するのも無理はない。高良みゆきといえばクラス一の秀才であり、先生がとても頼りにしている生徒である。
そのみゆきが問題に答えないばかりか、まさか自分の授業で居眠りをするなんて。…こんなことをするのはどちらかといえば…。

「ダメだよみゆきさん!寝てないで!ほら起きてください!」
そう言ってみゆきを起こそうとしているのは泉こなた。クラスのムードメーカーであるが勉強はからっきし。居眠りも多い。
そう、どちらかといえば居眠りをするのはこなたの方なのである。
「ほら、あれですよね黒井先生、ヴァイマル憲法!もしくはワイマール憲法!それまでの憲法で自由権を強く重視していた内容から転換、社会権保障の………」
「泉……?なんか、えらい冴えとるな…?」
「………と、みゆきさんは言っているようです…」
みゆきは未だ机に突っ伏したまま、寝息を立てていた。
「…………変やな」
「疲れてるんです!みゆきさんは!」
こなた精一杯にフォローしつつ、『疲れている』事に関しては本気でそう思っていた。
2人の体が入れ替わってから、『みゆき』の苦労は絶えることがなかった。


休憩時間、再びトイレ
「トイレ個室に2人っきりって結構ドキドキするよネ☆」
「しません!」
入れ替わってからもうすぐ午前の授業が終わろうとしていた。結局2人は入れ替わったまま、互いに成りすまして過ごす事を決めたのだが。
「やっぱり無理なんでしょうかね、なりきりなんて」
もとより2人は別人で、性格も正反対。完全になりきるなど不可能なのだ。
「ねえ、いっそみんなに打ち明けたらどうかなあ?みゆきさんしんどそうだよ」
「しかし信じてくれるとは到底思えませんし……というか泉さん、最初から隠す気なくありませんか?」
「い、いやあーはは、眠気には勝てなくて…」
苦笑いをするこなたに苦心しつつ、その意見もありかもしれないとみゆきは思っていた。
無理してストレスを溜め込むよりもあったことを正直にみんなに話した方が精神的に楽かもしれない。
……ただやっぱり信じてもらえなかった時のことを考えると安易にそんな事はできないとも思えた。
「ま、さっきの授業ではゆっくり眠ったし、もう大丈夫!居眠りはしないよ!」
「…そうですか。なら今日はもう少し頑張りましょう!」
「おう、まかしといて!」
こなたの頼もしい返事は、今のみゆきを唯一元気付けることの出来るものだった。


4時限目・生物
「さて、このピラミッドの頂点に肉食獣などに当てはまるわけだが……高良ー」
「くかぁぁぁ……すこぉぉぉ……」
「あん?居眠りか、珍しい」

「…………………」

その時のこなた(中身はみゆき)の様子は後に少年Bによってこう語られた。
「あんな泉は見たことない。なんともいえない表情だった。怒りながら泣いていた、そんな表現がピッタリだった」

飛んで昼食
「おっす、お昼食べよー…ってあら?」
いつもの通り、かがみが弁当を持ってB組みを訪れた。
既にいつもの3人が同じ机につき、弁当を広げていた。それ自体は特におかしくはない。
かがみが目にしたのは、不機嫌そうなこなた。そしてそんなこなたに、掌を合わせて平謝りするみゆきの図であった。
「これまた面白いというか妙な絵ね」
「あ、お姉ちゃん」
つかさが助けを求めるようにかがみに寄ってきた。かがみも状況を把握しきれていなかったため、とりあえずつかさに耳を貸した。
「…実はね…、……………。」
「……みゆきが今日居眠りをしまくって………こなたがそれに怒っている…?」
言われたまま鸚鵡返しに呟くと、つかさは静かに頷いた。
(……それってむしろ逆なんじゃ………)
そう思い、何度かその2人を見てみたが、どうやら嘘ではないようだ。
それにしてもおかしい。おかしすぎる。みゆきが居眠りしたって、それ以前からこなただって何度も居眠りしたことあるって話だ。
(こなたってそんな自分の事棚上げして怒ったりしないわよねえ…)
そもそもみゆきが居眠りをしたというのも考えられない話である。
そうやってしばらく考えてみたところで、ふっと今朝のことが頭をよぎった。
(ふん…よし)
もう一度2人のほうを見やった。みゆきは相変わらず平謝り、土下座すらしそうな勢いである。一方こなたの方はというと、もうどこか諦めたかのようにため息をついていた。
そんな2人の間にかがみは強引に入っていった。
「取り込んでるとこ悪いけど、みゆき、ちょっといい?」
「へ?あぁ…な、なんですか?」
「前借りたゲーム、今、精霊契約イベントの途中でシルフのダンジョンなんだけど、南の森に入り口をどんなに探しても入り口が見つからなくて」
朝、こなたに聞いてみたゲームのヒントと同じ質問である。みゆきに途中まで言いかけたところで、今度は向こうから話を挟んできてくれた。
「あれはねー初心者は嵌りやすいんだよね~。私も3時間くらい悩んだなあ。あえてヒントを言うなら『宿屋』にある………」
ぺらぺらとそのゲームについて喋り捲るみゆき。言ったら悪いが、正直少し気味が悪いとかがみは思った。そばのこなたとつかさも顔が真っ白だ。特にこなたの方はお茶をひっくり返しているのに気付いてないくらいだ。
やがてみゆき自身、大失敗を犯したことに気付いたかのようにみるみるうちに白くなっていった。
「………ト、イズミサンカラキキマシテ」
「…もういいから、どういうことなのか教えて頂戴」


「体が入れ替わったあ!?」
こなたとみゆきの話を聞き、つかさは驚きの声をあげた。
「いきなり勉強が出来るようになったこなた、普段やらないのにゲームの知識にやたら詳しいみゆき……。流石におかしいと思うわよね」
つかさだけでなくみゆき(体はこなた)も驚きを隠せない様子だった。
「あの……信じてくださるんですか…?」
「信じるっていうか…そういうことなら納得できるというか……ってうわ!?」
突然みゆきに手をとられ、かがみは思わず声をあげてしまった。
「あ、ありがとうございます!まさかこんな荒唐無稽な話を聞いてくださるなんて、わ、私…っ」
感極まったのかみゆきは遂に泣き出してしまった。しかし外見はこなたなのでどうにも反応しがたい。
「あー、もうしょうがないなあ、みゆきさんは」
困ったかがみを見かねたのか、こなたがみゆきを引っ張り、自分の腕に抱きしめた。
そのやり取り自体は入れ替わってなくても違和感は無いな、とかがみは思っていた。
「ねえゆきちゃん…あ、いやこなちゃん、何で泣いて……あ、違った。ゆきちゃんが……いや、こなちゃん……あれ?」
「…落ち着きなさいつかさ。……で、なんでみゆき泣いてんの?」
「んー……やっぱり疲れてたんだよ。こんな事、滅多に無いしね」
苦笑しながらこなたはみゆきの頭を優しく撫でていた。その笑顔はいつものみゆきのものとは流石に違っていたが、優しさだけは十分に感じ取れた。
「でもこなちゃんは大丈夫そうだね?」
「いやーあはは……ま、なんとかなるでしょう。ね?みゆきさん、三度目の正直!午後は大丈夫」
「……………はい……」
こなたの胸の中で篭った返事がかすかに聞こえた。




つづく





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