dear -Section1 「掘り返された苗木」


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 dear -Section1 「掘り返された苗木」



「おっはー、みゆきさん」
「あ、泉さん。おはようございます。……あら?つかささんは?御一緒ではないのですか?」
「うん、昨日かがみからメールがきてさ、『用事があるから先に行ってて』って」
するとみゆきさんは不思議そうな顔をした。
「えっ……。ですが、先程お見掛けしましたよ」
「ほえっ!?どこで?」
「丁度職員室に入るところだったので、後ろ姿なのですが……あの髪形はかがみさん以外いらっしゃいませんので、間違いはないかと」
「じゃぁ、あのメールは一体……?よし!」
私は気合いを入れて立ち上がった。
「あ、どちらへ?」
「隣のクラス行って、かがみに直接きいてくる!」


んーと……、居ないなぁ~。
「おーっすちびっこ!どったの?」
「あ、みさきち……峰岸さんも、おは~」
「おはよう、泉ちゃん。柊ちゃんに用事?」
「うん……ちょっと聞きたい事があってね……」
「柊なら、職員室に行ったきりだよ」
「そっか……じゃぁ、また後で聞きに来るよ」
「そうね、そろそろHRの時間だし……じゃぁ、また後でね」
「またな~」
「じゃ~ね~」
……むぅ、空振りか。それにしても……なんでつかさが居ないんだろう……。


「よっしゃー!HR始めるでー。みんなさっさと席につきー」
HRが始まっても、つかさは来なかった。……本当に、どうしたんだろ……。
「えーっと、最初に残念なお知らせがある。柊が暫くの間『休学』することになった」
ふーん……えっ!!!
先生の一言で、クラスは騒然となった。
「ほら、騒がない!」
今、『休学』って言ったよね……。じゃぁ、メールの『用事』ってその事?つかさに何かあったの!?
「せんせー!つかさ……柊さんは何で休学するんですかー?」
「うーん、それがなぁ~、センセも知らされて無いんや……。『一身上の都合で休学する』って、まるで会社にでも提出するような理由しか書いとらんかったからなぁ。……泉は心当たりあるんか?」
「いえ……全く……」
「そかー。んじゃ、何かわかったらセンセに教えてくれな~。ウチの方でも何かわかったら教えるさかい」
「わかりました、お願いします」
「ほんじゃ、次の話なんやけど、今日の午後に……」
HRの最中、私はずっとつかさの事を考えていた。
つかさ……一体何があったの……?


「おーっす!こなた、みゆき」
「いよぉ~、弁当食べようぜ~」
「今日もよろしくね」
「おぉ~!待ってたよぉ~」
「さぁ、皆さん食べましょう」
四時限目が終わって昼食の時間、今日は私達のクラスで食べる日だ。……本当なら、つかさもここにいるはずなのにね……。
「やったー!ミートボールだ!いっただっきまーす!!」
「みさきちは本当にミートボールが好きだねぇ~」
「そーゆーアンタは……珍しくお弁当なのね」
「うん、今日は何故か早起きしちゃってね~。だからゆーちゃんと一緒に作ったのだよ~」
「泉ちゃんのお弁当って、久しぶりに見たかも」
「そんなぁ~、峰岸さ~ん」

「彩りよく詰められてますね、どれを作られたのですか?」
「卵焼きと、野菜の肉巻きフライだよ~」

『こなちゃんのお弁当って、いつ見ても美味しそうだよね~』
……!!

「泉ちゃん、どうしたの?」
「あ、ううん、何でもないよ~。ちょっと味付け濃かったかなぁ~って思っただけ」
「……泉さん、嘘はダメですよ……つかささんの事を考えていたんですね」
「みゆきさん……何でわかったの……?」
「それは……まぁ、一応ですけど、ここにいる皆さんの中では一番長く泉さんを見ていますし……」
そっか……。そうだよね、一年生の時からつかさと三人ずっと一緒だったもんね……。
「ところでかがみさん、なんでつかささんは『休学』されたのですか?」
「おぉ!それ!私も気になってたんだよ!柊ってば理由を全然話してくれないんだもん」
「私も気になるわ。なんで妹ちゃんは『休学』してるの?」
矢継ぎ早な質問に、かがみは押し殺した声で答えた。
「……ごめん……今は、ちょっと……。放課後、屋上に来てもらえるかな。その時、話すから」
その声に、みんな黙って頷いた。
「さ、お弁当食べちゃいましょ。あんまりのんびりしてると午後の授業始まっちゃうわよ」
「あ、そ、そうね」
「みゅー……午後一って英語かぁ~」
「みさきち~、寝ちゃダメだよ」
「あら、それは泉さんも同じですよ」
「み、みゆきさぁ~ん」
『アハハハハハ……』

放課後か……ってことは、他の人がいるここでは話せない理由なのかな……。


「おまたへ~」
「ちびっこ~、遅いぞ~」
「みさちゃん、仕方が無いじゃない。職員室に呼び出されてたんだから……」
「峰岸さん……なんかその言い方だと、私が物凄く『イタイ子』に聞こえるんだけど……」
「それで……黒井先生には何と言われたのですか?HRの時の感じですと、つかささんの事についてだとは思うのですが」
「うん、でも朝と変わらないよ。何かあったら教えてくれってだけで。てか『イタイ子』スルーっすか……」

「さて、みんな揃ったわね……」
その言葉に振り向くと、かがみが立っていた。
「うぉっ!いつの間に!?」
「扉の横に居ただけよ……で、つかさの事なんだけど……やっぱり、知りたい?」
「当たり前だろー」
「うん」
「はい、是非」
「こなた……覚悟は出来てる?」
「覚悟?」
「そう……アンタにとってはかなり辛い話になるけど……それでも……良い?」
辛い話……それってやっぱり昨日の事なのかな……聞きたくないって気持ちはあるけど……でも!
「うん……聞きたい……な」
すると、かがみは「わかった」と言って静かに話しはじめた。


昨日ね、こなたが家に来て両親に『恋人宣言』をしたのよ。もちろんつかさも一緒だったわ
だけどね、認められなかったの。『同性同士が付き合うなんて事自体、馬鹿げている』って
でね、こなたが帰った後に家族会議をしたのよ……一方的にお父さんが自分勝手な論理を振り撒いていたってだけなんだけどね……
暫くそれを聞いていたら、急にチャイムが鳴ったの
それで私が玄関に行ったら、おじさん……こなたのお父さんが居たの
……どうやらお父さんが呼んだらしいんだけどね……
おじさんはやって来るなり居間に入ってお父さんに土下座してたわ

でもね、お父さんは特に責めたりしなかったの……
悪いのはつかさとこなただからって
……その後、お父さん達は部屋を変えて何か相談をしていたわ
どうやら「いかに二人を会わせないようにするか」って事だったみたい
暫く……って言っても多分五分くらいじゃないかなぁ、部屋から出てきたお父さんはこう宣言したの……。


「……『二人の為に、つかさを暫く休学させる』って……」

……ふーん、成る程ねぇ~。だからあんな事を……。
「お?ちびっこ、あんまり驚かないんだなぁ」
「おまぁねー。何と無く予想は出来てたし」
「予想?泉ちゃん、どんな予想をしていたの?」
「ん?どんなって……おとーさんとおじさんが『ぐる』だって事」
「えぇっ!そうなんですか!?」
「うん……。昨日ね、つかさの家を出るときにおじさんが『学校……か……』って呟いてたんだ。夜、おとーさんと話した時も、私が居間を出る時に『学校……ねぇ……』って言っててさ……」
「それでピンときたって訳か。流石というか……相変わらず鋭いわねぇ」
「うんにゃ、かがみが昼に『放課後に話すから』って言ったでしょ。それでだよ」
全く……やってくれるよねぇ~。そこまでして私達を引き離したいのかねぇ。

……でもね、ハードルが高ければ高い程私は本気を出すって事を、忘れてもらっちゃ困るよ……。

「こなた、どうしたの?」
「ん?あぁ、何でもないよー。あ、そうだ。かがみ、これをつかさに渡してもらえる?」
そう言ってポケットから一通の手紙を取り出しかがみに差し出した。
「手紙……?」
「うん。……多分、私の事も心配しているとおもうから……」
「そっか……わかった。渡しておく」
「ありがとね~」
つかさ……私は大丈夫だから、手紙読んで元気出してね……。

「でもさー」
手紙をかがみに渡した所で、不意にみさきちが口を開いた。
「柊、大丈夫なのか?もしその手紙が見つかったら……」
「大丈夫よ、別につかさだって常に見張られてる訳じゃないし。……携帯は取り上げられたけどね……」
「柊ちゃん……本当に大丈夫なの……?」
「もぉ~、日下部も峰岸も心配性だなぁ~。誰も居ない所でコソッと渡せば大丈夫だって」
「そうか~?なら良いけどさ……」
「無茶、しないでね……」
みさきちと峰岸さんが心配するのもわかる。もしこれが見つかったら……。
「ほらほら、こなたもそんな顔しないの。私が大丈夫だって言ってるんだから、心配無用よ」
「うん……でも、別に今日じゃなくても良いからね。渡せそうな時で良いから……」
「わかった。無茶はしないように気をつける。……ところでさ、この手紙って……いつ頃書いたの?まさか昨日の夜って事は無いだろうし……」
「ん?おとーさん達の『企み』に気付いたから、午後の授業中に書いたの」
「泉さん、授業は……?」
「みゆきさん!かがみ!頼んだ!」
「……ちゃんと授業受けろよ、受験生」
苦笑いをするみゆきさん、呆れた顔で答えるかがみ、それをみて笑ってるみさきちと峰岸さん。
ここにつかさが居ないのが少し寂しいけど……。つかさ!待ってて!絶対おとーさん達に私達の事を認めさせるからね!!


「ただいまー。……あれ?ゆーちゃんは?」
家に帰り、居間に入るとそこにはおとーさんしか居なかった。
「おかえり、こなた。ゆーちゃんなら部屋で休んでるぞ、体調が優れないらしい」
「ふーん……そーいや体育の授業で走ってたなぁ~。頑張り過ぎたのかな?」
後で様子見てあげないとね。晩御飯のメニューも決まってないし。
「所で……こなたは俺に何か言いたい事、若しくは聞きたい事があるんじゃないのか?」
「ほぇっ!?別に無いけど……」

「別に無いって……こなた、今日学校で何かあっただろう?」
「……あぁ、つかさが『休学』するって先生が言ってた。理由はわからないって言ってたけどね。……もしかして、その事?てゆーか、それだったら何でおとーさんが知ってるのかな?」
私は口の端を吊り上げてニヤリと笑いながらそう答えた。「全く……その様子じゃかがみちゃんから全部聞いているんだろう?」
「そりゃあもっちのロンだよ~。全部じゃないけどね」
「……聞かないのか?俺と柊さん夫婦の間で何を話したのかって」
「……聞いて何かが変わるんだったら聞くけど……少なくとも、私のとっての『良い情報』が得られないのは百も承知だからねぇ」
「まぁ、そうだな……こなたにとって有益な事は全く無いな」
「じゃぁ、やっぱり聞く必要無いじゃん」
「でも、気になるだろ?」
「そりゃあ……気になるけどさ……。てか何?おとーさんはそれを聞いてもらいたいの?」
「あ、いや、そんなつもりは全く無いぞ。ただ……あ、いや、何でもない」
私が不機嫌そうな顔でおとーさんを見ると、急に黙ってしまった。
「じゃぁ私、ゆーちゃんの様子見てくるからね。晩御飯決めなきゃならないし」
「あ、あぁ、そうだな。じゃぁ、頼んだぞ」
「ほーい」
私は返事を一つ返して居間を出た。
全く……おとーさんの『語りたい病』も大概にしてもらいたいよ……。


晩御飯の時にはゆーちゃんも体調を回復させていた。
だから、いつものようにみんなで一緒に晩御飯を食べた。
そして、いつものようにお風呂に入って、いつものようにお風呂上がりの牛乳を飲んで、いつものようにオヤスミを言って、自分の部屋に戻って……。
「だけど……今日から当分、つかさとメールは出来ないんだよね……」

つかさと恋人になってから、ほぼ毎日していたメール。
内容は本当に他愛もない事ばかりだったんだけど……。

「いざ『出来ない』ってわかると……結構辛いな……」
ベッドに倒れ込みながら、そんな事を呟いてみる。そうすれば少しは気が紛れるかな……なんて思ったんだけど、ダメだった。

余計に……淋しさが……増すだけだった……。


♪~
ベッドでボーッとしていると、不意に携帯が鳴った。
「この着メロは……かがみからだ!」
手紙を渡す事が出来たのかな?つかさの様子はどうなのかな?
はやる気持ちを抑えて、通話ボタンを押した。
「もしも~し?どったのかがみ~」
『……』
「あれ?もーしもぉーし!」
『……ごめん……』
「ん?何が?」
『……明日からは……会えないから……』
「へっ!?」
『……こなた……ごめんね……』
「ちょ、ちょっと!一体どーゆー事なの!?」
私がそう叫ぶと、急に電話の向こうが慌ただしくなった。
『……いいから私に貸しなさい!……あーもしもし、かがみとつかさの父だが』
「あ……はい」
『二度とあんな手紙の受け渡しをさせない為に、明日からかがみも休学させる事にした』
「えっ……」
『お前が余計な事をしなければ、何も問題は無かったんだがな』
「私の……せいで?」
『そうだ、ではもう話すことはないから切るぞ……っとそうだ。二人の携帯は明日解約するので、連絡を取ることは出来なくなる事を伝えておこう』
プツッ……ツー、ツー……

……そんな……かがみまで……手紙を託しただけなのに……どう……して……?



朝、ゆーちゃんを先に行かせて、おとーさんに昨夜の事を話すと、一言「そうか」とだけ言って私を送り出した。
いつもより少し遅い電車に乗り、いつもより少し遅いバスに乗る。
いつもの席に座ると、いつものように車内が陵桜の生徒で賑わってきた。
いつもと同じように他愛のないお喋りが聞こえる『いつもの通学風景』……。

先週末までは、ここにつかさとかがみも居たのに……。

全部……私の……せい……なの……?


「おはようございます、泉さん」
「あ……みゆきさん……おはよ……」
「……大丈夫ですか?随分と気落ちしている感じですが……」
「ん……?まぁ、ちょっとね……」
「そうですか……。あ、そうだ。先程日下部さんと峰岸さんがいらっしゃって、泉さんを探していましたよ。えっと……『ちびっこに用事があるから、放課後屋上に来いって伝えてくれ』って言ってました」
「みゆきさん……別に言ったそのままを伝えなくてもいいから……。ところでさ、その時のみさきちと峰岸さんの様子、どんな感じだった?」
「どんなと言われると……えっと、何となくですけど、切羽詰まる感じでした。……それが何か?」
「あ、いや。大した事じゃないんだけどね。ありがと」
その様子だと……既にかがみから連絡が行ってるんだろうな……。放課後……か。あ、そうだ。
「みゆきさん。みゆきさんも放課後一緒に来ない?屋上に」
「えっ?私もですか?……今日は得に用事が無いはずなので、ご一緒する事は可能ですが……でもどうしてですか?」
「ん……。多分、みゆきさんも一緒の方が、良いと思って……ね」
私の言い方で、みゆきさんも何かを感じたようだ。
「……成る程、わかりました。では、放課後に私もご一緒させていただきますね。あ、HRが始まりますね。では、詳細は放課後に」
「うん。放課後に全部わかると思うよ」
さてさて、取り敢えず今日の授業をちゃんと受けないとね~。


「みさきち、峰岸さん、お待たせ」
「お二人共、お待たせしてしまい、申し訳ありません」
「ん?高良も一緒なのか?」
「うん……多分、一緒の方が良いと思って、私が誘った」
「そうね……高良ちゃんだけのけ者にする訳にはいかないものね」
「……で、勿論用件はわかっているよな」
「うん、かがみの事、だよね」
私は努めて静かに答えた。でもそれはみさきちの感情を逆なでするだけだった。
「あぁそうだよ!ちびっこがあんな事しなけりゃ……!」

あんな事……か。そうだよね……余計な事、しちゃったな……。

「みさきち、峰岸さん、みゆきさん、ごめんなさい……私が余計な事をしたから……」
私がそう言うと、みゆきさんが首を傾げながらこう言った。
「えっと、すみません。詳しい話を聞いていないので大まかな事しか推測出来ないのですが……昨日の『手紙』の件で、かがみさんに何か良くない事があったのですか?」
「……そっか、高良ちゃんにはまだちゃんと言っていないのね」
「うん、ここで話した方が良いと思ったから……」
「まぁ、そうだな……」
私一人だと『自分寄り』になりそうだからね……。

「昨日、私とあやのの携帯にかがみから電話がかかってきたんだ」
「落ち込んだ声で、『明日から休学する』って言ってきたの。理由を聞いたら『手紙を渡す時にヘマをした』って言ってたわ」
「最後に『ごめんね』って言って電話を一方的に切ったんだ。……その後はいくらかけても繋がらなかった」
「……多分、私の所に最後の電話をかけていたからだと思う」
「その時、かがみさんは何と?」
「明日からは会えないから、ごめんねって。……その後、おじさんが割り込んできて二人の携帯を解約するって言ってた……」
「……解……約……?」

「おじさんが……言ってたの……?」
私が無言で頷くと、皆黙り込んでしまった。

いつもなら、ここにつかさとかがみが居て、みんなで他愛のない事を喋って、笑ったり、ふざけたり、そんな事をしていたのに……。

「全部……私の……せい……だよね……」
「決まってるだろ!!全部ちびっこのせいだよ!!あんな事しなけりゃ、柊だって……」
「ちょっと待って下さい!私達は昨日かがみさんに『無茶はしないように』と伝えて、かがみさんも『無茶をしないように気をつける』と言っていたじゃありませんか!」

ありがとう、みゆきさん。……でもね、いくらそう言っても、原因を作ったのは私だから……。

「みゆきさん……もう良いんだよ……みさきち、峰岸さん、ごめんね……」
「謝ったって元には戻らないんだ!!……もぉ……もぉ二度と私達に近付くなよ!!絶交だ!!!……あやの!行くよ!!」
「ちょ、ちょっと、みさちゃん……。そういう訳だから……泉ちゃん、ごめんね」
涙を浮かべたみさきちと峰岸さんは、そう言い残して扉の向こうに消えた。

……絶交……か。そう言われても、仕方ない……よね。

「……みゆきさんは?」
「はい!?」
二人を見て呆気にとられていたみゆきさんは、私の突然の問い掛けに慌てて振り向いた。
「みゆきさんは……いいの?二人の後に続かなくても……」
「……何故、続かなくてはいけないのですか?」
「だって……私のせいで……」
するとため息を一息ついて、こう言った。
「泉さん……私と泉さんの関係は、そんなにも希薄な物なんですか?」
え……?でも……。
「でも……みゆきさんがつかさやかがみと会えなくなる原因を作ったのは……私なんだよ」
「確かに……その一因を担ってはいますが、全てが泉さんの責任ではありません。手紙を渡し損ねたかがみさん、それに昨日、この場所で手紙を託す事を止めなかった峰岸さんや日下部さん、それに私も同じです」
「みゆきさん……」
「ほら……そんな顔をしないで下さい。……私は、いつでも泉さんの味方ですよ」
「うん……ありがと……。よし!少し元気出た!」
「その調子ですよ。カラ元気でも元気と言ってる人も居ますから」
「みゆきさん……それ何処で仕入れた知識……?」
「えっ?お父さんが持っているCDですけど……」
「あ……そうなんだ……まぁ、丁度はまる世代だからねぇ……」
はぁ……偉大なり!山本正之!!

「それで……泉さんは今後どうなさいますか?」
「うーん……取り敢えず考えるよ」
「考える?何をですか?」
「そりゃあ勿論、つかさとかがみの『奪還計画』だよ!」
「『奪還計画』、ですか……」
「うん!私は諦めないよ!絶対に何か方法が有るはずだから!!」
「……では、その『計画』を実行する時には必ず手伝わせて下さいね」
「モッチのロンだよっ!」

……待っててね!つかさ!!……かがみもね♪


『屋上での一件』から十日程経った昼休み。
私はその間ずっと考えていた『奪還計画』を実行するために、みゆきさんにあるお願いをする事にした。

「ねぇねぇ、みゆきさん」
「何ですか?泉さん」
「あのね……」

Section1 「掘り返された苗木」 End






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