dear -Section5 「風に揺れる苗木」


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dear -Section5 「風に揺れる苗木」





「……みさきち達、ちゃんと受け取ったかな……」
「はい?……あぁ、『手紙』の返事ですか?」
今私達が居るのは泉さんの部屋。
今日は金曜日なので、泉さんの部屋で勉強会をしているところです。
「時間的には丁度『勉強会』をしているところですね……」

dear -Section5 「風に揺れる苗木」

峰岸さんは、水曜日の『勉強会』の途中で『手紙』を渡すことが出来たと言っていました。
泉さんはその時の反応をしきりと聞きたがっていましたが、お二人共にそれを頑として拒否されていました。
多分、泉さんの不安感も、それからきている物だと思われます。
「内容が内容ですからね……、かがみさんがそれを読んでどう思われるか……」
「だよねぇ……」

駆け落ち

それがどんな意味を持つか。
それは誰もが知っている事でしょう。

「……やっぱり、こんなコトしちゃいけなかったのかなぁ……」
……私は、何も言えませんでした。
なぜなら、今回の『計画』を聞かされた時、私は明確に反対したからです。


―私やつかさに対して何らかの罰を下すのなら、まだ許せる。
―だけど、かがみを休学させて、みさきちや峰岸さん、それにみゆきさんまで苦しめた。
―それだけは、絶対に、許せない。

……泉さん。
―何?
……そこまでの決意を聞かせていただいた上での無礼を承知で言わせていただきますが……。
―……。
その選択は『間違っている』と思います。
―……みゆきさんは、そう言うと思っていたよ。
……?では、何故私にお話しされたのですか?
―……今みゆきさんが言ったでしょ?二人に説明するには『理由』が必要だって。
それは……そうですが……。
―それにね、いずれはわかる事でしょ……それだったら、早いうちに言っておいたほうが良いかな、と思って。
そうですか……ですが、私の考えは変わりませんよ。
―……『間違っている』って事はわかっているよ。でもね、これ以外に方法が浮かばなかったんだよ……。
……本当に、『それ以外』が浮かばなかったのですか?
―……流石はみゆきさんだね……。
―わかっているんだ……ホントは。もっと他の『選択肢』が有るって事。
では……何故?
―他の『選択肢』をかんがえると……どれだけ頑張ってもハッピーエンドにならないんだよ……。
……ハッピーエンド……ですか。
でもそれは、泉さん『だけ』のハッピーエンドではないのですか?
この『選択』の結果、他の方々は『アンハッピーエンド』を迎えてしまうと思うのですが……。
―うん……そうかも知れないよね……特に互いの『家族』にとっては……。
それでしたら……。
―でもね、ダメなんだよ。どんな『選択肢』を選んでも、みんなが『ハッピーエンド』なんてモノは無いんだよ……。
それは……そうですが……だからといって
―それにね、これ以外の『選択肢』は、私が一番許せない互いの『親』が、必ず『ハッピーエンド』になるんだよ……。



あの時、私は泉さんがそこまで『親』を憎んでいるとは思いませんでした。
特に、泉さんにとってのおじさまは唯一の『肉親』であり、趣味や行動を共にする『親友』でもあります。
泉さんがおじさまの事を話される時、とても輝いた表情で話されていました。

その『父親』に対して、泉さんは『嫌悪』を剥き出しにした表情で語ったのです。


―『親』が『子』に対して、色々と言ってくるのはわかるよ。
―でもね
―いくら『親』でも、踏み込んではいけない部分が有ると思うんだ。
―言いたい事はわかるよ、確かに『親』にしてみれば『娘』は『結婚』をして『出産』をして『母親』になる事が『幸せ』なんだろうから。
―だけど
―それって『親』の『幸せ』なだけで、必ずしも『子』の『幸せ』じゃないよね。
確かに……言われてみれば、そうかもしれませんが……。
―そう考えたらさ、一体『私』の『幸せ』って何なんだろうって思ったんだよね。
泉さんの……『幸せ』……。
―私が思うに、自分自身の『幸せ』を得る為には『エゴイズム』が必要だと思うんだ。
そうですね……確かに、自らが『幸せ』を得る為には、そこに誰かの『不幸せ』が生じますね……。
―だから、私はそうしようと思って、今回の『計画』を考えたんだ。
―決して、単純な『思いつき』なんかじゃない。
―私なりに目一杯考えた『結果』なんだ。
―みゆきさん……出来れば、それだけはわかってほしいんだ……。


私は、何も言えませんでした。
大変失礼なのですが、泉さんの話を聞くまで、この『計画』は『思いつき』で言った物だとばかり思っていたのです。


そうですか……では、わかりました。
―?
泉さんが、それだけの考えを持ってこの『計画』を立てたのでしたら、私はもう何も言いません。
―じゃぁ!
ですが、私は『賛成』も『反対』もいたしません。
―ど、どうゆう事?
私自身『駆け落ち』という行為に対する見識は『間違っている』と思っています。この事実は変えられません。
ですが、私は泉さんやつかささん、かがみさんや峰岸さんや日下部さんの『友人』です……自分自身では『親友』のつもりですが……。
―みゆきさんは、今言ったみんなの『親友』だよ。
……ありがとうございます。
なので、あくまでも『一人の友人』として、この『計画』の『手伝い』をさせていただきます。
―……ありがとう……みゆきさん……。
……泉さん、一つだけ、約束していただけますか?
―……どんなコトかな?
『計画』の通りに事が進んだ場合、とても多くの人を巻き込む事になります。
―そう……なる……かな……。
ですから……必ず……『幸せ』……に……なって……下さい。
決して……泉さん……の……『おじさま』と……つかさ……さんの……『ご両親』……が……『幸せ』……に……なる……結末……だけ……は……迎……えな……いで……くだ……さ……い。
―……みゆきさん……泣かないで……ごめんね……
あや……あやまら……ないで……くださ……い……こ……これは……わた……わたし……が……かって……に……ない……ている……だけ……です……から……。
―でも!
……泉さん!!……この……けいか……計画……を……じっこ……実行……する……には!
……こ……このよう……なこと……事が……この先……なんど……何度も……あ……ある……有るん……ですよ!
いず……泉さん……は……これを……のり……乗り越え……なければ……いけ……いけない……んで……す!!

ですか……ですから……ですから………です……か……ら……。


私の涙は止まることを知りませんでした。
『計画』を打ち明けられたことで、私自身かなりのショックを受けていたからだと、今になって思います。
泉さんにも、かなり酷いことを言ってしまいました。


―わかったよ、みゆきさん。
……そう……です……のり……乗り越え……て……くだ……下さい……。
―でもね、私一人で乗り越えようとか、私とつかさの二人でとかは思わないよ。
……なん……なんで……ですか……これ……これは……。
―さっき言った通りだよ、私は『エゴイスト』になったんだからね。
―だから、『親』以外のみんなには出来るかぎり『幸せ』になってもらいたいんだ。
……いずみ……さん……
―悲しみを『取り除く』なんで事は無理だってわかっているけど、それを『和らげる』事なら出来るかもしれないからね。
……泉さん……
―だから……さ
―辛い時は何時でも言って
―決して一人で抱え込まないで
―悩んだ時はみんなで一緒に考えようよ
―悲しい時はみんなで一緒に泣こうよ。


とても重い言葉でした。
そして、気付かされました。

泉さんは、今回の『事件』からずっと
その辛さを、一人で抱え込み
その悩みを、一人で考え
その悲しみを抑えるため、一人で泣いていた

その時になってやっと、自分が成すべき事に気付きました。


……泉さん。
―ん?……落ち着いた?
はい……それと……ごめんなさい!!
―ほえっ!?な、なんで謝られなきゃいけないの?だって、酷いことを言ったのは私だよ?
いえ……今の泉さんの『言葉』を聞いて、自分の……不甲斐無さに……気付きました。
―?
泉さんは……私の事を『親友』と……言ってくださいました。
―う、うん……そうだけど……。
ですが!私は!泉さんが一人悩んでいるのにも!辛く悲しんでいる事にも!何一つ気付きませんでした!
―……ま、わからないように振る舞っていたからね……。
でも!それでも!気付くのが『親友』では……ないので……すか……。
……そんな……わたし……が……ヒック……しん……ヒック……親友……なんて……ウグッ……名乗る……しか……エグッ……資格……ウウッ……なんか……グズッ……
ウ……ウワァァァーーーー……
―……
……エグゥ……グズッ……ウゥッ……
―……
……ウグッ……エゥッ……ヒック……

―……みぃ~ゆ~きさん。
……ヒクッ……ウウッ……エグゥ……
―なんで、私がみゆきさんを抱きしめているかわかる?
……わかり……グズッ……ません……ヒック……
―私はみゆきさんの事を『親友』だと思っているからだよ……
―それに、みゆきさんは今『親友を名乗る資格は無い』って言ったけど……
―今のみゆきさんの様な姿を見せられるのって、『家族』や『親友』位だよね……
―そう考えると、みゆきさんは私の『親友』になるんじゃないじかな?
―私は、そう思うんだけど、みゆきさんはどう?
……グズッ……ありが……とう……ヒック……あり……が……と……ウグッ……う……ごめ……ヒクッ……ごめんな……さい……
―謝るのは、私のほうだよ……ごめんね……。
……ヒック……?
―私、みゆきさんの事を試してた。
……!?
―私が、この『計画』を『考えている』って事が、みゆきさんに気付かれなければ、誰にも気付かれないはずだから……
……そう……だったん……です……か……。
―だから、本当に酷いのは私、みゆきさんは……何一つ……悪くない……んだよ。
―……ごめ……ごめん……なさ……ご……ごめ……ん……な……さい……


「……みゆきさん?どうしたの?」
「え……あ、ああ……すみません、少々考え事をしていました……」
不意に声をかけられ見上げると、泉さんの心配そうな顔がそこにありました。
「……もしかして、この間の事?」
「……はい……」
相変わらず、鋭いですね……。
「……あの時は、みゆきさんを泣かせちゃったからね~」
「あ、いえ、それは、構わないのですが……。実際、私自身の問題であのようになってしまった訳ですし……」
「うん、私もみゆきさんがあんな風になっちゃうなんて、思ってもいなかったよ~」
……普段の『私』を見ていれば、そう思うのも当然の事でしょうね。
「でも、泣きじゃくるみゆきさんは『萌え~』だったなぁ~」
「はぁ、『萌え~』ですか……」
「そだよ~、あれは間違いなく『萌え』だね~」
「それを言われるのでしたら、その後に『泣きじゃくった』泉さんも『萌え~』ですね」
ウフフッ……我ながら良い切り返しを閃きました。予想通り、泉さんは顔を真っ赤にしています。
「……ず、ずるいよぉ~、そんな『声真似』までしなくたっていいじゃん……」
「あ、すみません……つい……」
「もぉ、笑いながら謝ってるし……」

クスッ……フフッ……アハッ……ウフフッ……
アハハハハハハハハハ……!!

「……いや~……ププッ……久しぶりに大声で笑ったね~」
「……本当……クスッ……久しぶりですね~」
「おとーさんが出掛けてて良かったよ……」
「……そうですね……」

泉さんの家で最初に勉強会をした時、『つかささんやかがみさんとの関係が全く無い』話題に花を咲かせていました。
何を話していたのかは定かではないのですが、話が盛り上がって先程の様に二人で笑い声を上げたその時、不意にノックの音がしておじさまの声がしました。

「二人共、『勉強会』なんだから、『勉強』だけに集中しなさい……こなた!返事は?」
「はい……わかりました……」

泉さんの声は落ち着いていましたが、その顔はまさに『苦虫を噛みつぶしたよう』でした。
そして、それ以降泉さんの家で勉強会を行うときは、おじさまが在宅か否かによって私達の振る舞いが変わるようになったのです。



その後も、和気藹々としながら勉強を進め、気が付くと私の帰宅時間が迫っていました。
「では、泉さん。私はそろそろ帰りますね」
「あー、もうそんな時間かぁ~……今日はなんだかあっという間だったなぁ~」
「私も、そんな気がします……それに、今日は久しぶりに楽しく勉強できました……」
「……そだね……」
電車の時間があるので、二人で手早く勉強道具を纏め、玄関へと向かいました。

「……そういえば……」
靴を履きながら、ふと思い出した『疑問』を泉さんに問い掛けました。
「先日、峰岸さんや日下部さんと一緒に私の家で勉強会をした時、泉さんは峰岸さんや日下部さんと共に私にまで『謝意』を述べていらっしゃいましたよね……」
「あ……うん……」
「私、泉さんから何もされていませんが……何故ですか?」
なにかしらの『酷い事』や『損害』を受けていれば、それを理解出来るのですが、私には思い当たる節が全くありません。
「……みゆきさん……私に何か隠してない?」
「……いえ……何も隠してはいません……」
「ホントに~?嘘はダメだよ~。この間、みゆきさんを泣かせちゃった時、何か考えていたでしょ~」
「……気付いていましたか……」

あの時、私が気付いた『自らが成すべき事』
それは、誰にも話さずに実行すべき事

……やはり、泉さんに『隠し事』は通用しませんね……。
「で、何を考えていたのかな?」
「……『これから先、どのような事があろうとも、泉さんとつかささんのサポートをする』という事を考えていました」
「……そっか……ありがとう……でもね……」
「?」
「『どのような事』って言ったけど……辛かったら何時でも逃げて良いん……」
「そんな事はいたしません!!」
弱気な泉さんの言葉を遮り、私は大声で叫びました。
「泉さんは、私に教えて下さいました!『決して一人で抱え込まないで。悩んだ時は一緒に考えよう』と!」
「……そんな事も……言ったね……」
「それに、泉さんは私の事を『親友』と言ってくださいました。ならば私は『親友』として、出来る事は全てするつもりです!」
「……」
「……泉さん……安心して下さい。幸いな事に、私は『範囲外』なんですよ……」
「……はえっ?どうゆうこと?」
「泉さんのおじさま、それにつかささんのご両親共々、私に対しては完全なる『無関心』です」
「……つかさの所はわからないけど、少なくともおとーさんは……そう……かもね……」
「ならば!『範囲外』の私が色々と動き回った所で、私自身だけではなくお二人にも『悪影響』が出る可能性は、全く有りません!」
「……でも……そんなに上手くいくかなぁ……」

……どうやら、『弱気の虫』が出てきたみたいですね……。
……ならば!!

「こなた!そんなに『親友』の言うことが信じられないの!」
「!」
「ちびっこぉ~、『親友』の言うことはちゃんと聞いたほうが良いぜぇ~」
「み、みさきちまで……みゆきさん……何気に腕をあげたねぇ……」
「ふふっ……どうですか?これでも信用出来ませんか?」
「……ううん……プッ……だ……大丈夫……クスッ……ハハッ……アハハハハハ……」
……やはり、泉さんにはこの手が一番のようですね……。

「それでは、失礼いたします」
「今日もありがとね~」

「どういたしまして……では、次は日曜日に」
「そだね~、じゃあ……またね~」
「はい……それでは『バイニ~!!』」
「み、みゆきさん……手振りまでするとは……」
思わず固まってしまった泉さんを残し、私は泉家を後にしました。
家の中から「キャラじゃないよぉ~」と声が聞こえましたが……。

ふふっ……
泉さんが知らない『私』も居るんですよ……。


「おぉーい、みゆきちゃーん」
家を離れ、暫く歩いていると後ろから声をかけられました。
「あら、泉さんのおじさま、……まだ一応『こんにちは』の時間ですね」
振り向くと、おじさまが車の中から手を振っていました。
「今帰る所かい?何時も悪いねぇ、良かったら送って行くよ、もう遅いし」
「そうですか?……では、お言葉に甘えてお願いいたします」
「さぁ、乗った乗った」
おじさまは助手席のドアを開けて、私を迎え入れました。

「駅までで良いかい?」
「はい、ありがとうございます」
車がゆっくりと動き出します。
「いやー、みゆきちゃんのお陰でこなたの態度も成績も随分と変わってきたよー」
「そうなんですか?」
「うん、……何と言えば良いのかなぁー、うーん……『吹っ切れた』……違うなぁ……『生まれ変わった』とでも言うのかなぁー」
「『生まれ変わった』……ですか……」
「そう……アイツは……『生まれ変わった』……だな……」
おじさまの顔に陰が差しました。
「今回の事で、色々と考える所が有ったんだろうが、それ以上につかさちゃんと離れた事が大きいんだろうな……」
おじさまは淡々と話し始めました。

つかさちゃん、かがみちゃん、みゆきちゃんは、こなたにとっては初めての心からの『親友』なんだ
高校に入るまで、家で学校の『友人』の話しなんか一度もしたことが無かった
でも、高校に入ってすぐ、家での会話につかさちゃんの話題が出てきたんだ
よっぽど嬉しかったんだろうな……その時の喜びようは今でも覚えているよ
それから程なくして、かがみちゃんとみゆきちゃんの話しもしてくれたよ
本当に……大切な……『親友』って言っていたな……

おじさまはそこまで話して、「ふぅ」と一息つきました。
「あ……ごめんね、こんな話し聞かせちゃって」
「いえ……お気になさらずに……続けて頂いて結構ですよ」
「そう?……ありがとう。それでね」
丁度信号待ちだったので、私に顔を向けて聞いてきました。

「みゆきちゃんは、『同性愛』について……どう考えてる?」

その眼差しは、とても真剣な物でした。
もし回答を間違ってしまったら……多分、二度と泉さんに会うことは出来なくなるでしょう。
私は、慎重に回答を選びました。

「私は……『間違っている』と思います」
『以前の私なら』という言葉を心に仕舞い、そう答えました。

信号が変わり、再び車が動き始めました。


「そうか……良かった……」
おじさまは安堵の声を漏らし、話しを続けました。

さっきも言ったように、こなたにとって三人は『親友』なんだ
だけど、自分自身のせいでそのうちの二人を失ってしまった
そして、もしみゆきちゃんが二人と同じ考えの持ち主だったら
オレはもう一度こなたから『親友』を引き離さなきゃならない
……出来れば、それはしたくないんだ
だから
みゆきちゃんが二人と違う考えの持ち主で本当に良かった……

おじさまは、安心しきった表情で話していました。
……やはり、一人娘である泉さんの事が心配なのですね……。

気が付くと、車は駅のロータリー近くまで来ていました。
「今日はごめんね、こっちばっかり話して、その上変な事まで聞いちゃって……」
「気になさらないで下さい、『親』からすれば『子』の行動や環境は人一倍気になる事でしょうし……」
「そう言ってもらえると、助かるよー」
どうやら、普段のおじさまに戻られたようですね。
「私でよろしければ、いくらでも聞きますので本当に気になさらないで下さいね」
「もし、また何か有ったらそうさせてもらうよ。今日は本当にありがとう」
車が駅前に着きました。
「じゃ、これからもこなたの事を頼むね」
「はい。それでは、失礼いたします」

私を下ろすと、車は静かに走り去って行きました。
それを見送りながら、私は心の中で呟きました。

泉さん……おじさまは、私が『範囲外』であると認識されました……
ですが、おじさまは、こんなにも泉さんの事を思っていらっしゃいます……
それでも、泉さんは『計画』を実行されるのですか……

先程の『決心』が揺らぎそうになります。

誰も居なくなったロータリーで、私は一人呟きました。

「泉さん……本当に……これで……良いのですか……?」



Section5 「風に揺れる苗木」 End








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