dear -Section7 「支えられる苗木」


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dear -Section7 「支えられる苗木」




みゆきは混乱していた。

突然開かれたドア
母親からの一言

その二つが、無防備となった『心』に直接襲い掛かったのである。

「かん……ちがい……?なに……を……勘……違い?」
「……みゆき」
優しい、それでいて力強い母の声が、静まり返った室内に響く。
「そう、勘違いなのよ……。あなたは、決して『親友』を失ったりしません」
「でも、でも……」
ゆかりは呆然とした娘に駆け寄り、優しく抱きしめた。
「みゆき……落ち着いて、私の話を聞いてちょうだい……。お母さんね、さっきの話、全部聞いていたの……」

dear -Section7 「支えられる苗木」

「さて……と、そろそろ……かしらね……」
こなた達が部屋に向かってからおよそ十五分。
もし、ゆかりの知らない『何か』をみゆきが話すのなら、ちょうど頃合いだろう。
「取り敢えず……お茶とお菓子は用意しておかないとねぇ~」
そう呟き、鼻歌混じりに差し入れセットの準備をし始めた。

―……一体、何なのかしらねぇ……今日来た三人も、何時もと違う雰囲気だし……
思いを巡らせつつ、みゆきの部屋へと向かう。
―面倒な事でなければ良いんだけど……

『……ウウッ……わから……エグッ……なく……グズッ……なって……ヒック……しまった……グスッ……んです……』
部屋のドアをノックしようとしたその時、泣きながら話すみゆきの声が聞こえ、思わず手を止めた。
『あの日、おじさまに駅まで送っていただきました……』

―『あの日』って……金曜日の事?
ゆかりは手に持った差し入れセットを静かに床に置き、ドアに耳を当て中の会話を聞いた。
みゆきはその日、車内で起こった事を話していた。
自らの感情を全く入れずあくまでも静かに、淡々と。

『……信号待ちの時、私に『同性愛』について……どう考えているか、問い掛けてきました』

―『同性愛』について?それって一体……

『私は、間違っていると答えました……『以前の私なら』という言葉を心の中でつけましたけど』

―……『以前の私なら』間違っている?
―……じゃ、じゃぁ、今は肯定しているって意味よね……
―という事は……ええっ!?みゆきが……なの?
驚きのあまり、思わず立ち上がりそうになったが、子供達に気付かれてはいけないので、必死で気持ちを抑え再びドアに耳を当てた。

『……そして、このように言われました』
『もしみゆきちゃんが二人と同じ考えの持ち主だったら、オレはもう一度こなたから『親友』を引き離さなきゃならない……出来れば、それはしたくないんだ』

―えっ?それは、つまり、つかさちゃんとかがみちゃんが……そうだって事……よね……
ゆかりはドアから耳を離し、考え込んだ。
―……でも、だからって引き離す必要は無いわよねぇ……ん?もしかして、こなたちゃん……も?
もう少し情報が必要だと判断し、もう一度ドアに耳を当てた。

『日下部さん、失礼ですが……この『署名』の意味は……理解されていますか?』


―『署名』?

『ん?ちびっこと柊の妹が駆け落ちするのを認めるって意味じゃないの?』

―ええっ!!駆け落ち!?……こなたちゃんとつかさちゃんが?
ゆかりはドアから体を離し、冷静になって考えた。
―今聞いた事から考えると……こなたちゃんとつかさちゃんは……つまり……『恋人』って事……よね……。
さらに考えをまとめるため、立ち上がり腕を組んで壁に寄り掛かった。
―こなたちゃんのお父さんは、二人が付き合わないように引き離した……じゃぁ、つかさちゃんとかがみちゃんが『休学』しているのも……。
ゆかりは事の真相がわかってきた。
だが、腑に落ちない点も幾つか有る。
―直接聞いてみないとね……。
改めてドアをノックしようと近づいた時、再びみゆきの泣き声が聞こえた。

『……私は……『署名』……する事で……『親友』……を……二人……同時に……う……失い……ま……す……』

―……何で?『失う』必要なんてあるの?

『わたっ……グズッ……どう……ウウッ……どうしたら……エグッ……』
『初め……ウグッ……初めて……ヒック……の……ウグゥ……しん……ウウッ……親友……グズッ……いなく……エグゥ……なっちゃ……』

―……そっか……二人共、みゆきにとって初めて出来た本当の『親友』だものね……
本当ならば、今すぐに中に入りみゆきを抱きしめたかった。
でも、それは出来ない。
今入った所で、中の子供達はゆかりに対して盗み聞きをしていた事の非難以外の言葉は何も聞けないだろう。
ゆかりはドアの外で息を潜め、じっと『その時』を待った。

―カチコチカチコチ……

時計の音だけが響く。

室内からは、物音一つ聞こえない。

ゆかりが用意したジュースの氷もすっかり溶けていた。

―新しいジュースを用意しないといけないわね……
そう思い、台所に向かおうとしたその時、気落ちしたみゆきの声が聞こえた。

『……どんなに考えても、どの『選択肢』を選んでも……私は……『親友』を……失うのですね……』

―だから何でそんな風に思うの?そんなことはないじゃない!
ゆかりは居ても立っても居られなくなった。
―あの子、絶対に勘違いしている!早く教えてあげないと!
盗み聞きを咎められる事など、もはや眼中には無かった。
みゆきを抱きしめてあげたい、勘違いを正してあげたい。
その一心だけだった。

バタン!!!!!

目一杯の力を込めて部屋のドアを開け大声で叫んだ。

「みゆき!そんなことはないわよ!!あなた、一つ勘違いをしているわ!!!」


ゆかりは優しく話しつづけた。
「みゆき……さっきのあなたが言っていた通りなら、こなたちゃんのお父さんはあなたに万全の信頼を寄せているはずよ……そうでしょ?」
「……あ、え……」


「ほら、落ち着いて……今はお母さんの質問にだけ答えれば良いから……」
そう言って更に強くみゆきを抱きしめる。
「……」
「どう?落ち着いた?」
「……少しだけ……」
それを聞き、少しだけ腕の力を緩め、みゆきと顔を合わせ、再度質問をした。
「じゃぁ、答えられるかしら?……みゆきは、こなたちゃんのお父さんから、万全の信頼を得ている……そうよね?」
「……はい……十中八九間違いないと……思います……」
するとゆかりは満面の笑みを浮かべ、更に問い掛けた。
「なら、みゆきがこなたちゃん達と『決別』する必要なんて、全く無いと思うんだけどな~」
「……?何故……そう……言い切れるの……ですか?」
みゆきには、母が何故そんな事を断言出来るのか、全くわからなかった。
『署名』をするしないに関わらず、『親友』が離れていくのは紛れも無い事実ではないのだろうか。
「『信頼を得ている』という事は、みゆきに対して『一分の疑いを持つことも無い』という事と同じだというのは……わかるかしら?」
みゆきは静かに頷いた。
「じゃぁ……もしみゆきが陰で誰かと連絡を取っていたとして、こなたちゃんのお父さんはそれに気付くかしらねぇ?」
「……つまり、私が泉さんやつかささんと隠れて連絡を取り合っていても、おじさまはそれに気付く事は無い……ということ……ですか?」
「そーゆーこと」
ゆかりは満足げに頷いた。
「じゃ……じゃぁ……お二人……と……別れ……る……必……要……は……」
「そんな『選択肢』は存在すらしていないわよ~。……全く……みゆきは何時でも『最悪』を考えるから……」
「そうだよ……みゆきさん、言ったじゃん……『私は範囲外』だって……」
ゆかりの言葉を聞き、こなたも思い出したように言った。

「そう……でした……」
みゆきはハッとした。
自分はこなたにそう言っていたのだ。
なのに自分は思い込みで大きな勘違いをしてしまった。

「あらあら……全く……『うっかりさん』も程々にしないとね……」
みゆきはそれ以上、ゆかりの言葉を聞く事は出来なかった。
「……お母さん……私……わたし……」
「……大丈夫……みゆきは何も悪くないのよ……ちょっとだけ、心が悪いほうに傾いただけよ……」
ゆかりはみゆきを優しく抱きしめた。
みゆきは、その胸の中で泣く事しか出来なかった。


「……落ち着いたかしら?」
「……はい……ありがとうございます……お母さん……」
「うん、いつもの『みゆき』に戻ったみたいね~」
時間にして五分位だろうか、母に抱かれ泣きつづけたその顔は酷い状態であったが、精神的にはかなり落ち着いたようだ。
「……皆様、お恥ずかしい場面をお見せしてしまい、申し訳ありません……」
「気にしなくて良いわよ、高良ちゃん……。もし私が同じ状況になったら、もっと不安になって何も手につかなくなっちゃうだろうし……」
「そうだよ、高良はなーんにも悪くない、悪いのはこんな気持ちにさせた『親』なんだからな」
「みさおちゃん……それには『私』も含まれるのかな~?」
意外な反撃に思わずみさおはたじろいだ。
「い、いや、その……『ちびっこのお父さん』と『柊の両親』って事で……決して『ゆかりおば……』」
「『おばさん』!?」
「あ、え、えと……『ゆかりさん』の事を言ったわけじゃ……」
その様子を見て、ゆかりは思わず微笑んだ。
「ふふっ……わかっているわよ~みさおちゃん。もぉ~可愛いんだからぁ~」
「か、可愛いって……」
みさおはその言葉に思わず赤面した。
「お母さん……あまりからかわないで下さいね……」
「はいはい……」
それを聞いていたこなたから、思わず笑い声がこぼれた。
「あははっ、やっぱりゆかりさんには敵わないや~」


あやのもそれに続く。
「うふふっ……本当ね……こんなに真っ赤になったみさちゃんなんて、初めて見たわ~」
「みゅぅ~あやのぉ~そんな事言うなよぉ~」
『アハハハハハ……』


「そういえば……」
ひとしきり笑い合い、すっかり温くなってしまったジュースをゆかりが配っている途中で、あやのが口を開いた。
「ゆかりさんは……泉ちゃんの『計画』の事……どう思っているんですか?」
その言葉に、こなたの表情が固まった。

―ゆかりさんにも知られてしまったんだ……

そう、『計画』を知られた時点で、ゆかりは『部外者』ではなくなってしまった。
つまり、ゆかりがこれを拒否した場合、即座にこの『計画』は『中止』となってしまう。

こなたはゆかりの言葉を待った。

「んーとね、それについてこなたちゃんに聞きたいんだけど……どうして『駆け落ち』をしようって思ったの?」
「それは……」
こなたはそこに至るまでの経緯を詳しく説明した。
特に、今回の『計画』を決意させた父の言葉に対しては、事細かく、感情を込めて。

「そっか……」
一通り聞いて、ゆかりは溜め息を一つついた。
「で……ゆかりさんは……どう、思って、います、か?」
今にも消え入りそうな声で、こなたが聞いた。
その顔は、処刑宣告を受ける直前の罪人のように蒼白だった。
「そうねぇ……」
頬に手を当て、考え込む『ふり』をする。
ゆかりの心は既に決まっていた……が、それを口に出すにはまだ幾つか確認しなければならない事が有る。
「……もう少しだけ良いかしら?こなたちゃんは、『駆け落ち』した後……どうする予定なの?そもそも、どうやって『駆け落ち』するの?つかさちゃんは『監視』されているんでしょう?」
矢継ぎ早に質問が浴びせられた。
「……『駆け落ち』した後は……親の手が届かない場所……まだ未定ですけど……そこで暮らそうと……思っています。……『手段』は……まだ決まっていません……」
こなたは、とても小さく、絞り出すような声で答えた。
「成る程……」
そう言って、今度は本当に考え始めた。

―漠然とした計画は立ててあるのね……、でも……こなたちゃんだけじゃこの先は難しいかもしれないわねぇ……
「あの……ゆかりさん?」
―ううん、こなたちゃんじゃなくても、普通の高校生じゃこの『計画』を実行するなんて不可能に近いわね
「えぇっと……」
―あ、そうか。だったら『大人』が手助けをしてあげれば良いんじゃないの
「ゆーかーりーさぁーん!!!」
「はっ!はいぃぃ!!」
大声に驚いて目の前を見ると、こなたが少しむくれた顔をしていた。
「あ、ご、ごめんね~、ちょっと考え事しちゃった~」
「……もぉ……で、改めて聞きますけど……どう思っているんですかぁ?」
不安な中、随分と待たされたためか、少々棘のある口調で再びゆかりに聞いた。
「その事だけど……『両手を上げて』って訳じゃないけれど『賛成』するわ~」
「……お母さん、何故『両手を上げて』じゃないんですか?」
みゆきは不思議そうに聞いた、他の三人も同様に困惑の表情を浮かべている。
「何故って……完全に独立している訳でもないのに『駆け落ち』を『両手を上げて』認める大人はあまりいないわよ」
それもそうだと皆は思った。
自ら生計を立てている訳でも無い只の学生が『駆け落ち』を宣言するなど、通常では考えられない。
―じゃぁ、どうして『賛成』なんですか
あやのがそう問おうとした時、不意にこなたが口を開いた。

「じ、じゃぁ、なんで『賛成』なんですか?」
その顔は先程以上に困惑していた。

「ん~、だって『個人の自主性』が大切でしょう?特にこういった事は……」
みゆきにはそれで全てがわかったらしい。
「そうですね……確かにそれは、とても大切ですよね」
「……あやのぉ、どーゆー事かわかる?」
「……全然、泉ちゃんは?」
「……同じく、何なんだろ……?」
小声で話す三人に、ゆかりが優しく話しかけた。
「『個人の自主性』ってのはね、我が家の『家訓』なの……」

―さっき外で聞いていた事と、今聞いた事から判断すると、今回の根源は双方の『親』が『子離れ』出来ていない事だと思うの
―高良家ではね、子供が十六歳を迎えた時から『一人の個人』として扱っているのよ
―これは、私がそうだったから、そうしているだけなんだけどね、お父さんもちゃんと了承してくれたわ
―だから、もしみゆきが何か困っていても本人が言い出さない限り、決して口出しはしない事にしているの
―……まぁ、実際には何かしらの『きっかけ』を与えたりするんだけどね

「……話が逸れちゃったわね。ええっと、だからね、こなたちゃんが自分で『決心』した事についてとやかく言うつもりは無いって事よ」
そこまで言って、ゆかりは一息ついた。
「はぁ……そうですか……」
「なんか……スゲーな、高良の家って」
「本当。私の両親なんか、未だにベッタリだもん」
三人共、呆気に取られていた。
それを見て、ゆかりは思わず顔を赤くして言い訳のように言った。
「そ、そんな大それた事じゃ無いのよぉ~、要は『親の意識』の問題なんだから」
「うーん、これは是非ともおとーさんに爪の垢を煎じて飲ませたい位だね」
「全くだ」
「本当ね」
こなたの意見に二人も同意した。
「それでね、こなたちゃん」
ゆかりが真剣な口調で話し掛けた。
「この『計画』を実行するには、子供達だけでは限界があると思うんだけど……どうかしら?」
こなたの体が一瞬震えた。
「そう……かもしれません……でも……これは……これだけは、絶対に実行したいんです!」
強い口調でこなたが宣言した、他の三人も強く頷く。
「そうよね~、だ・か・ら~、おばさんも仲間に入れて貰えないかなぁ~」
『へっっっ???』
一同の思考が思わず停止してしまった。まさかゆかりからそんな事を言われるとは、誰も思っていなかったのである。
「あ、あの、お母さん?それは一体?」
なんとか平静を取り戻したみゆきが、おずおずと聞いた。
「そのまんまの意味よぉ~、だって楽しそうじゃないの、頭の固い大人を懲らしめるのって」
「は、はぁ」
「それにね……さっきも言ったけど、大人の手助けは絶対に必要だと思うの」
「で、でも、ゆかりさんまで巻き込む訳には……」
「もう巻き込まれているわよ」
こなたの言葉を遮り、話を続けた。
「大丈夫、絶対にこなたちゃんの『計画』を成功させてあげる、私は嘘はつかないわ」
「じ、じゃぁ、どうやるんですか?」
あやのが思わず疑問を口にだした。
「……ま、まぁ、それはこれから考えるって事で……」
先程までの表情とは一転して、申し訳なさそうにゆかりが答える。
まさかそのような答えが返ってくるとは誰一人思っていなかったらしく、開いた口が塞がらなかった。
「ゆかりさん……いくらアタシでもさぁ、一応こういった事はちゃんと考えてから喋るようにしてるよ~」
「お母さん、日下部さんの言う通りです。事が事なんですから、ちゃんと計画を立ててから話して下さい」
みさおとみゆきに責められ、ゆかりは思わず体を小さくしてしまった。
―はぁ~、やっちゃったわ~。こなたちゃん、怒っているわよねぇ~
ゆかりが反省の念に駆られていると、こなたが二人をなだめた。

「まぁまぁ、二人とも。私だってちゃんと計画出来てなかったんだから、責めるのはそのくらいにして、これからの事を考えようよ」
「こなたちゃん……」
ゆかりが顔を上げると、こなたは笑顔だった。
「ほら、ゆかりさんも反省しているみたいだし、だから……ね」
そう話すこなたは、とても優しい顔をしている。
思わずゆかりは見惚れてしまった。
―こんな表情も見せるのね……
「ふふっ……つかさちゃんは、こなたちゃんのこういった所に惹かれたのかな~」
「えっ!!あ、えー、あのー、そう、なんです、かねぇ~……あはは……」
「アタシもそう思うな~、ちびっこは誰にでも気を使うしな」
「そうよね~、特に『交際報告会』の時の泉ちゃんったら……」
「も、もう、それはいいから!『作戦会議』始めようよ!ね、ね」
話がとても恥ずかしい方向に行きそうなので、こなたは慌てて軌道修正を図った。
「えぇ~、私も聞きたかったのになぁ~……でもまぁ、そんな暇は無いわね、もうすぐ三時だし」
こなたがこの家に居られるのは、午後四時半まで。
こなたが高良家に行く事を渋るため、仕方なく父と交わした約束である。
「それじゃ、本題に入りましょう。まず、こなたちゃん、この『計画』を『実行』するのは、いつ頃を予定しているのかしら?」
「なるべくなら……早くに。今日、此処で皆が署名して、つかさに『計画』を伝える事が出来ればですけど」
「……あまり時間が無いわね……じゃぁ、『二人が何処へ行くか』は後回しにして、『どうやってつかさちゃんを連れ出すか』を考えましょう」
皆、大きく頷いた。
「私は知らないんだけど、つかさちゃんは今どんな状況なの?」
言われてみれば、ゆかりはつかさの現況を全く知らない。
子供達は事細かに説明した。
「そう……困ったわねぇ……」
ゆかりは腕を組み考え込んだ、そこまで厳重な監視体制だとは完全な予想外だ。
「あ、そうだ」
あやのが何かを閃いたらしく、突然声を上げた。
「たまになんだけどね、『勉強会』の日に両親が留守の時があるの。だから、その時に連れ出しちゃえば良いんじゃないのかなぁ」
「うーん……残念だけど、それは採用出来ないわ」
「え~、なんでぇ~」
ゆかりが厳しい表情で否定すると、みさおが即座に抗議の声を上げた。
「なんでって……それだと二人の予定が合わないと駄目だし……それに」
「それに……もしその案が成功した場合、今度はかがみやお姉さん達に迷惑が掛かっちゃう……これ以上の迷惑は掛けられないよ……」
ゆかりの言葉を引き継ぐ様に、こなたが発言した。
「そっか、ゴメン……」
二人の言葉で、みさおはあっさりと引き下がった。
「でも……本当にどうしたら良いのでしょう?御両親が在宅中に抜け出すなんて、そんなこと出来るんでしょうか?」
みゆきの言葉で再び一同は沈黙してしまった。

「映画とかで良く有るパターンだったら、ハプニング絡みとかかなぁ……」
みさおが何気なく呟いた。
「ハプニングねぇ~」
あやのも同様に呟く。
実際、ハプニングという物は予定して出来る物ではない、偶然が産む物であり決して必然では無いのだ。

「じゃぁさ『暗くなるまで待って作戦』なんてのはどうだい?」
皆が驚いた顔で部屋のドアを見た。
今の発言は室内ではなく室外から聞こえたからである。
「どうかな、結構良い作戦だと思うんだけど」
そこに立っていたのは………。

「お父さん……」



Section7 「支えられる苗木」 End







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