dear -Section9 「ひだまりの中の苗木」


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dear -Section9 「ひだまりの中の苗木」




えーっと、今日はから揚げだから……んしょ……あれ?確かここら辺に本が……あった!これこれ。
まずはモモ肉をぶつ切りにして、調味液の中に漬け込むっと……。んーと、お醤油……お酒……、後は生姜をすりおろして……。
「生姜~生姜~生姜が無いとしょうがないよ~」
「……ゆーちゃん……その歌はどうかと……」
「へっ!はぇっ!!」
驚いて振り返ると、いつの間にかこなたお姉ちゃんがそこに立っていました。
「お、お姉ちゃん、お帰りなさい……いつから居たの?」
「ついさっき……ゆーちゃんが『生姜~生姜~』って歌い始めた所からだよ~」
あぅっ!!まさか、こんな場面を目撃されるなんて……うぅ~。
「あの……お姉ちゃん、この事は……」
「だいじょーぶ、誰にも言わないよ~。……ところで、おとーさんは?」
ほっ……良かったぁ~。
「おじさんなら『ゆーちゃんのから揚げ食べたかったよぉ~』って泣きながら、担当の人と一緒に出かけたよ。社長さん就任何年目だかのパーティーに出るんだって」
「ふぅ~ん……て事は、今日は帰りが遅いんだね……」
「多分そうだと思うけど……お姉ちゃん、どうしたの?帰ってきてからずっと難しい顔してるよ」
「うん……。ゆーちゃん、晩御飯の後に大切な話があるから……ちょっとだけ時間を貰えるかな?」
「あ、うん。良いけど……」
「ありがと。じゃぁ、部屋に居るからご飯出来たら呼んでね~」
「は~い」

大切な話……何だろ?
「ま、いっか~。えっと……あぁ!生姜!……確かこの奥に……生姜~生姜~生姜が無いとしょうがな……ハッ!!」
思わずまた歌ってしまった私が恐る恐る振り向くと……。
お姉ちゃんがニヤニヤしながら見つめていました……トホホ……。

dear -Section9 「ひだまりの中の苗木」

「「ごちそーさまでした!!」」
ふぅ、今日は上手に出来たなぁ~。おじさんの分も残してあるから、明日の朝になんて言って貰えるか楽しみだな~。
あ、おじさんといえば……。
「そういえばさぁ、お姉ちゃん最近おじさんとあまり話してないけど……何かあったの?」
「えっ!あ……まぁ……ね」
「……もしかして『大切な話』って、……それ?」
「それも含めて、かな。まぁ、取り敢えず後片付けしちゃおうよ、そのあとにコーヒーでも飲みながら話すからさ」

ここ最近のおじさんとお姉ちゃんはとても変だった。
どちらも何となくピリピリしていて、会話も少なくて、一緒にゲームすることも無くて。
何かがあったのはわかるんだけど……二人共何も話してくれないし……。
……少しは話してくれてもいいのにな……。


「はい、お姉ちゃん」
「ありがとー。……で、話なんだけど……」
「う、うん」
私は唾を飲み込んだ。
どんな話……なんだろう……。
「その前に一つ、多分ゆーちゃんにとってはとてもショッキングな話になるから……、心構えだけはちゃんとしてね」
「そうなの!?わ、わかったよ!どんな辛い話だとしても、ちゃんと最後までき、聞くよ!」
「ありがと。……じゃぁ先ず最初に、私とつかさが『恋人同士』だって言うのは知ってるよね……」


それは、確かに衝撃的な話だった。
つかさ先輩とかがみ先輩二人が休学している理由、お姉ちゃん達がやろうとしている事、そして……その『計画』に私が必要とされている事に。

「……で、どうかな?もし、ゆーちゃんが計画に同意してくれるのなら……」
そう言って、お姉ちゃんは紙を二枚差し出した。
「アドレス……と……『誓約書』?」
「うん。そこに書いてある通りなんだけどね、……同意してくれるのなら名前を書いて欲しいんだ……」
確かに……名前を書き入れる欄が……三つ!?
「お姉ちゃん、これ……なんで名前を書く所が三つも有るの?」
「……みなみちゃんとその両親、あとはみゆきさんの両親にも書いてもらいたいからね」
「あ、そうか……うん!わかった!」
「ゆーちゃん、ありがとね」
「そんな……お礼を言われる程じゃないよぉ……」
お姉ちゃんにとっては大切なことだもんね……あ、でもこれだけは言っておかなくちゃ。
「でもね、お姉ちゃん」
「ん?なーに?」
「これからは、ちゃんと私にも何があったか話してね。……とっても……不安……だったんだから……グスッ……」
「……ゴメン、変な不安を与えないように考えてたからなんだけど……余計不安にさせちゃったね……本当にごめんね……」
「もぅ……秘密は……やだよぉ……ヒック……」

私が泣いている間、お姉ちゃんはずっと私を抱きしめてくれました。
それはとても優しくて、暖かくて、まるでお母さんが抱きしめているみたいでした。

「お姉ちゃんありがとう、もう大丈夫だよ」
「ホントに?」
「うん。……いっぱい泣いたし、お姉ちゃんにギュッってしてもらってたから……」
「……私もさ、もうゆーちゃんに隠し事とかしないから、ゆーちゃんも言いたいことがあったらちゃんと言ってね」
「うん、わかったよ。……ところでさ、このアドレスにメールして、その後はどうするの?」
「うーん、それはわからないんだよね~。……私はもう関われなくなっちゃったし……」
あ、そうか……。
「ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「あぁ、別に気にしてないから大丈夫だよ~。……まぁ、『気にならない』って言ったら嘘にはなるけど、私はみんなを信頼しているからね」
お姉ちゃんはウィンクをしてそう答えた。
「じゃぁ、後でメールしておくね」
「頼んだよ~。……そろそろおとーさんが帰ってくるかな?」
時計を見ると、結構な時間になっていた。
「そうかも……じゃぁ、これを部屋に持って行かないとね」
「ゆーちゃん」
私がそんな事を呟くと、お姉ちゃんが急に真剣な顔で話しはじめた。
「絶対に、おとーさんには見つからないでね。これ以上無用な被害者は出したくないから……。だから、お願い。絶対だよ」
「う、うん。わかったよ!じゃぁ、部屋に行ってるから。おじさんが帰ってきたら……」
「うん、上手くあしらっておくよ。それじゃ、おやすみ~」
「おやすみなさーい」



「えっと……『はじめまして、小早川ゆたかと言います』……んっと……『こなたお姉ちゃんからおおまかな話しを聞きました』」
うーん……目上の人に送るメールって、緊張しちゃうなぁ~。
「『私なんかで構わないのでしたら、喜んでお手伝いさせていただきます』……こんな感じ……かな?……あ、忘れてるよ~『それでは、失礼いたします』……よし!送信!」
チューリップのイラストが左右に揺れる画面が表示され、数秒後には『送信完了!』の画面が表れた。
ふぅ……これでオッケー。

……駆け落ちかぁ……少し、寂しくなるなぁ……。
……だめだめ!ちゃんとお姉ちゃんの手伝いをしなきゃいけないんだから!寂しがってるヒマなんか無いんだよ!!

♪~♪~

あ、メールだ。
「……高良先輩のお父さんからだ……えっと……そうなんだ……じゃぁ……」
私は「わかりました。では次の連絡を待っています」とだけ書いてメールを返信した。

……日時が決まったら、みなみちゃんの家に集合か……あ、そうだ!
私はふと思い付いた重要な事をみなみちゃんにメールした。
暫くしてメールが返ってきた。どうやらみなみちゃんも同じ考えを持ってくれたみたい。
「明日の朝……お姉ちゃんにちゃんと話しておかないとね……」
そう呟いて私はベッドに入る。

……私の役目……一体何なのかなぁ……。


「ねぇねぇ、お姉ちゃん」
翌朝、二人で学校に行く途中に私は昨日思い付いた『重要な事』をお姉ちゃんに話した。
「お姉ちゃんの『計画』に田村さんも加えるね。みなみちゃんにも昨日メールしたら、その方が良いって返事もらってるから……」
「へっ!?ひよりんを?」
「うん……だってさ、このままじゃ田村さんだけが『のけ者』になっちゃうから……」
「でも……」
「だって、お姉ちゃんと田村さんは共通の趣味で話しが合うし、もしお姉ちゃんが黙っていなくなっちゃったら田村さんも寂しいと思うんだ……だから」
「そっか……。うん、わかったよ」
私の言葉で、お姉ちゃんも納得してくれたみたい……良かった……。
「それでね、今日の昼休みに説明してもらいたいんだ。みなみちゃんと田村さんに」
「……そうだよね、ちゃんと説明しておいた方が良いよね。うん、じゃぁゆーちゃんお願いね」
「うん!」



「んー!!気持ち良いっすねー!」
昼休み、私はお姉ちゃんに約束した通り、田村さんとみなみちゃんを誘って屋上でお弁当を食べていた。
勿論、お姉ちゃんも一緒に。
「……で、話しってなんなんすか?」
「まぁまぁ、それは皆がお弁当を食べ終わるまで待ちたまへ~。……落ち着いてからの方が良いからね~」
「はぁ……そうっすか。わかったっす。んじゃ食べるとしますかね~。お!サンドイッチにオムライスっすか~、美味しそうっすね~」
「田村さんのお弁当も美味しそうだよ~」
「ひよりん……」
「なんすか?」
「筑前煮の蓮根頂きっ!!」
「あぁっ!何という事を……じゃぁお返しに……タコさんウインナーゲットっす!!」
「のぉぉぉっ!!そ、それをさらっていくとは……うぅっ、なんて極悪非道な……」
「ふふっ……いかなる時でも油断は禁物っすよー」
「お姉ちゃん達、楽しそうだね~」
「……そうだね……」
出来る事なら、ずっとこうやってみんなと楽しくお弁当を食べていたいけど……。

……お姉ちゃんは、いなくなっちゃうんだよね……


「……そうだったんすか……」
「うん……ごめんね、ひよりん、みなみちゃん。言うのが遅くなっちゃって」
お弁当の後、お姉ちゃんから事の詳細を知らされたみなみちゃんと田村さんはとても驚いていた。
「いえ……私は……昨日、お母さんから少し聞いていたので……でも、詳しくは知らなかったので……ちょっと、驚きました」
「あ、別に気にしなくっていいっすよ~。これでハブられてたらかなり恨むっすけど、ハブられなかったからオッケーっす」
「二人とも……ありがとう」
「そんな、お礼なんていらないっすよ~。……ところで、さっきの話しだと協力者が『あと二人』必要なんすよね」
「うん……。みゆきさんのおじさんはそう言ってたね」
「岩崎さんは……」
「うん……手伝うつもり……」
「てぇことは、あと一人っすね。……よっしゃ!ここで逃げたら男……じゃないや女がすたる!私も手伝わせていただくっすよ!」
た、田村さん……。そんな、拳を突き上げる程気合いを入れなくても……。
「ひよりん……そんな簡単に決めちゃって良いの?もしかしたらとんでもなく大変な役を担当するかもしれないんだよ?」
「うっ……、でも、大丈夫っす!気合いで何とかするっすよ!」
「気合いで何とかなるかどうかもわからないんだけど?」
「それでもっす!……それに、私一人だけ何も知らずに先輩がいなくなるのなんて……嫌っすよ……」
「ひよりん……」
……そうだよね、何も知らされずに急にいなくなるなんて……嫌じゃない人なんて、いないよね……。
「……じゃぁ、ひよりんにお願いしよ」
「まぁ……良いネタにも……へっ!?あ、り、了解っす!」
「……ひ~よりん。ちょ~っと一緒にあっちに行こうね~」
田村さん……小声で何か呟いてると思ったら、お姉ちゃんが向こうに連れていっちゃった……。
「みなみちゃん……、田村さんさっきなんて行ってたのかなぁ」
思わずみなみちゃんと顔を見合わせたけど、みなみちゃんも首を傾げるだけで聞き取れなかったみたい……。あ、帰ってきた。
「ゆーちゃ~ん、みなみちゃ~ん。ひよりんが『一番大変な仕事をやってあげるよ』って言ってくれたよ~。うぅっ、こんな先輩想いの後輩を持って、わたしゃ幸せだよ……」
「た、田村さん……本当なの?」
「あ、えと、うん。が、頑張るっすよぉー!!」
そう宣言した田村さんを見つめるお姉ちゃんが、とても不敵な笑みを浮かべているような気がするけど……気のせいだよね……多分。



「……ふぅ……今日は何だか疲れたな……」
夜、ベッドに寝転がった私はそんな事を呟いた。
ここ最近身体の調子が良いとは言え、今日は色々とありすぎたみたい。
ボーッとしていると段々と瞼が重くなってくる。
……今日の『勉強会』で、高良先輩は「今日か明日には連絡が入るわ」って言ってたけど……私なんかが出来る事、あるのかなぁ……。

~♪~♪

「あ!」
ゆっくりと体を起こし、机の上に置いた携帯を手にとる。
予想通り、高良先輩のお父さんからのメールだ。
そこには短く「日曜日、岩崎家に集合されたし」と書いてあった。
「……高良先輩のお父さんって、古風な人なのかなぁ?……日曜日……か」
私は確認のメールを返送すると、カレンダーにお出かけ用のハートのシールを貼ってベッドに潜り込んだ。

目を瞑ると色んな事が浮かんでくる。
……お姉ちゃんと一緒のお弁当……楽しかったな……
……田村さん……あの時何て言ってたのかなぁ……
……明後日……どうなるのかな……
……ちょっと……不安だな……

でも……決めたもんね……。

……お姉ちゃん……私……頑張るよ……だから……絶対……幸せに……なって……ね……。


Section9 「ひだまりの中の苗木」 End








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