縁側世界(前編)


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Enter、Enter、Enter、↓、Enter……
キーボード万歳。
やっぱりこっちのが、マウスいじってるより全然楽だって。
……はいはい、Enter、Enter、っと。っと?
「おおぅ」
びっくりした。
でも携帯って、スカートのポケットとかでブルブルしてもらわないと気づかないんだよね。いまヘッドホンだし。

件名:もうすぐ帰ります
本文:こなちゃん、お仕事おわりました。あと十五分くらいで着くと思います

つかさって、こうゆうとこ丁寧でいいな。
私が送ったメールなんて、件名に全部Re:とかついてるよ。ああ、あと『無題』。
「てことで、転送」
マイPCのつかさフォルダがまた1つ成長しました。
つかさメールがスパムに埋もれて消えるなんてあり得ないし。
「んじゃあ、そろそろ切り上げるかな」
ごはんとか、あっためなおさないとね。
最後にぽちんとな。えんたー、っと。
あ。攻略中の女の子だ。顔あかくしてモジモジしてて、うん、大画面(20インチ)だとなかなか、刺激、てき…

……この、カッコ。

基本だ、基本的すぎる。だがそれはいい。
2年間も一緒に住んでるってーのに、私こんな大事なイベントスルーしてた?
むぅ。いっしょーの不覚だっ!


―― 縁側世界 ――


う、ちょっとさむ。
つかさ、どんな顔するかなー。
やっぱ顔なんて真っ赤にして、わ、わとか言ってパニくってさ、それから、
いやちょっとま、もうこれ、ちょ、も、ああああ!

ぴん、ぴんぽーん

つかさリズムだ。インターホン、1秒でゲット。
『はい、ひーらぎです』
『こなちゃん、ただいまー』
『おかー』

我らが2DKも1秒で横断、これは記録更新しちゃったか?
ここでイベント発動です。
玄関のノブに手をかけて、向こう側でつかさが待っていて。
やっぱり、ちょいと緊張するかも。ええい、いざっ!
がちゃり、と。

「つかさ、おまたせー」
「こなちゃん! ただい」
笑顔のままストップするつかさ。可愛すぎるんですけど。
「ま……」
ぱさっとカバンおとしたつかさだけど、なんとかつないだみたい。
「……」
どきどき。つかさのリアクション待ちも楽しいなあ。
「こ、こなちゃん……どしタの、そのカッコ」
「ふっふっふ……よく聞いてくれました」
ふつう聞くだろーけど。
「私としたことが、基本中の基本を忘れてたんだよ!」
同棲とか新婚とか、この手のイベントはやっぱ必須だよ。
こほんっ、

「『おかえりなさい、ア・ナ・タ(はーと)。ご飯にしますか?お風呂にしますか?それともワ・タ・』」
「こなちゃんで」
「シ、なーんて」て、て、て。
あれ?
「……あの、つかささん?」
「こなチゃんで」
つかさ、なんか上半身ゆらゆら揺れてるんだけど。あ、玄関鍵しめるの? うん、最近物騒だし、施錠は大事だよね。
「あれだよホラ、定番ネタっていろいろあるじゃん? 裸エプロンなんてさ、もーギャグだよ、ね?……ね?」
「裸えぷろん。あ、裸にエプロンだから、そーいうんだね。そのまんまなんだ」
しまった。つかさには通じないネタだった。

鍵かけ終えたのか、つかさがこちらに振り向いた。もう目がヤバい。
焦点あってないよ。なんか私の肩ずっーとみてるけど。なんで肩?
「か、からかいすぎちゃった、かな? 着替えてく」
言い終わるより先に、つかさの手のひらが、私の肩に、ふれた。
そこ、かた、むき出しだから。なんだか、あたまがだんだん、くらくらしてきた。
だって、顔ちかいし。つかさ、息かかってるよ。なんか体重かかってきてる、よ?
「まだ、夕方だし、せめて荷物おいてからとか……っ」
「わ、わかってるんだけど……こなちゃんそれ、わたしもういろいろ無理で、その、ご、ごめんね?」
限界早っ!?
「ん、ぅ」
つかさの、小さな唇。
柔らかい。おいしい。きもち、いい。
あー、だめだ。もう足ちから入らない。舌とか反則だか、ら。
かくん、って膝が折れた。おしりに床の感触が、つ、冷た……
あれ、肩紐ほどけてる? つかさ、いつの間に。
そのまま肩から滑り落ちてくるつかさの手、を――なんとか押さえた。
「つ、かさ、ちょいまちっ」
「こ、こなちゃん、ちょっと、ちょっとつまむだけだからっ」
っておつまみじゃないんだから。
でもまあ。もういっか。ここは玄関だし、まだ夕方だね。でっていう。
「いやいやつかさ。せっかくの裸エプロンなんだから。エプロンはそのままっていうのが通なんだよ」
「あぅ、そーなんだ。うん、がんばってみる」

……

ちょっとつまむだけだって。はいレナさんお願いします。
『嘘だッ』


……。玄関の電球、切れかけてるなー。明日あたり、換えの買ってくるかなー
あー、背中、すこし冷たい。冬場の床にぺったりだし、あたりまえか。
うん、もー全然、寒くはないんだけど。
エプロン越しのつかさの体重があんまりに気持ちよすぎて、動く気がしない……
「こなちゃん……」わ。
むねの中でもごもご言われたから、ちょっとびっくりした。
「んー?」
「いいにおい」
「ごはんできてるよー。そろそろたべよっか。お腹すいたっしょ」
つかさのと意味違うんだろーけど、はずかしいし。べつの方向でいこう。
「……うん、おなかすいた」
「……手、洗ってからね」

「それでは」
「うん!」
う、この笑顔とか、すこし赤い頬とかみてると、なんだかぽーっとなってくるなぁ。
ふたりのアパートで、つかさと……いやいや、いい加減なれようよ。もう2年だよ?
でも、こんなちいさな食卓で。
明かりは強すぎないオレンジ色だし。
そんで、ふたりきりとか。もう、ああああ、もう、
「……こなちゃん?」
「あわ、ごめん、では」
だめだ、見つめすぎた。つかさの頬がさっきより赤い気がする。
「い、いただきますっ」「いただきまーす」

本日の献立:
ごはん
鶏肉と野菜の甘辛煮(ピーマン抜き)
ジュンサイ入り冷やしスープ
適当なフルーツポンチ
etc

「こなちゃん、どんどんお料理すごくなってる……」
「まーねー、プロに下手なもの出す気にはなんないよん」
つかさは、お皿の鶏肉をつんつんしはじめた……あ、テレてる?
「あ、あはは、プロっていうか、まだ見習いみたいなものなんだけどね」
「でも、お金もらってるでしょ。じゃ、プロじゃん」
「うーん、そう、なのかな?」
そーなのです。
「しかも今年までなんでしょ? 見習いって」
「そうゆうわけじゃ、ないんだけど……でもちゃんと調理師受かれば、いろいろと違ってくるみたい」
もうすぐ調理師つかさ、かー。
でもつかさの料理、いつも食べてるけど、アレよりおいしい料理作れる人なんてホントにこの世に存在するの?
口の中の甘辛煮をもぐもぐしてみる。うん、結構おいしいよね。けど、ぶっちゃけレベルが全然違う。

「あの、こなちゃん」
「ほむ?」
つかさは、ぱくぱくフルーツポンチを減らしてるけど……
なんだか、目あわせてこない。なんか言いにくいこと、なんだろか。
「日曜日の午後って、時間ある、かな?」
日曜。んーと。たしか大学の友達と遊びにいってから飲み会、だったような。ああそうそう、忘年会だ。
「別になかったと思うけど」
それ以前に、つかさの用事に優先するような予定って想像つかない。
「でもつかさって、日曜仕事だったよね」
「うん、そうなんだけど……」
土曜もね。休みがあわないって私結構耐えられないんだけど、つかさは平気なん?
ってうわ、ウザい女じゃん私。
「午後だけお休みもらったの。その、こなちゃんと居たいなって思って」
それは、そうなのかもしれないけど。
でも大事な、なにか話したいことがあるんだ。つかさ。なんだろ?
「こなちゃん、なんか、うれしそうだね」
「つかさもね」
お腹の奥が、くすぐったくなるような。そんな感じがする。

そっか、つかさ、日曜お休みもらったんだ。
そうだね。つかさの思ってるとおりだよ。
つかさの用事に優先するような予定なんて、私ぜんっぜん想像できないよ。

「とコろで、こなちゃん」
「ん?」
なんでお箸もって立ってるの、つかさ。
「着替えないの?」
ああ、そいえば、裸エプロンのままだった。
「ここストーブ近くて、びみょーに暑いんだもん。まーさっきあれだけ」っと、とと。
「……だし、つかさもさすがにへーきでしょ?」
いかん、顔赤くなる。キャラじゃないって。
「あの、うん、あと5秒くらいなら、なんとか……」
「でしょ、まあどうしてもつかさが困っちゃうってなったら、着替えてくるよ」
明日も仕事学校あるしね。あんまりしすぎるのもね。
5秒て。
「え、それもう詰んでない?」
「そうだね」




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  • こなたww逃げてwww -- 名無しさん (2008-04-04 13:29:46)