縁側世界(後編)


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こなちゃんは、4年生で。来年卒業しちゃう。
そしたら、そしたら。
どこに行っちゃうんだろう。

ちょっと、あいたいなって思っただけだったんだよ。
たまにね、こなちゃんの家に行ったり。
わたしの家で、こなちゃんとのんびりしたり。
そんなことが、こなちゃんとふたりきりで、できたらなって思っただけだったんだよ。

こなちゃんが悪いんだよ。
わたしの部屋に泊まったりするから。
我慢してたんだよ。
でも、こなちゃん。
わたしといっしょに寝たいって、言ったよね。
わたしにさわりたいって、言ったよね。
なんで、わたしにあんなことしたの?

もうだめだよ。

たった2年間だったのに、わたしのこなちゃんの時間があと4ヶ月でおわっちゃう。

やだ。やだ……



こなちゃん……まだ寝てるのかな。
音たてないように、ゆっくり、キッチンのドアをしめる。
こなちゃん、ときどき机の上とかソファとか、あと絨毯とかで寝ちゃうときあるんだけど……
リビングの中を、そっと見回してみる。
……この8畳間。
右の寝室6畳、後ろの6畳。
だいじょうぶ。だいじょうぶだよ、いま月に
カチ。
「っ?」
どきっとした。
……時計、だよね。なんだか大きな音だったな。
まだ2時すぎなんだ。
なんだか、夕方になっちゃったみたい。
今日、ちょっと曇ってるもんね。
リビングにそっと入る……絨毯あるし、そんなに大きな音はたたないと思うけど。
こなちゃんは、いないみたい。寝室だね。
「あれ?」
なんだろうこの音。ひくい、なにかエアコンみたいな。うちはストーブだけど……
んー、ベランダ? いや、その手前、あ、パソコンだ。まだついてる。
メール、見てたんだね。いくつか、開いたままだけ、ど、その地名、

聞いたことない。地名。地名。社員寮。住所、ねえそれ県ちがう、よ?

「――っ!」

ブツッ

……なにやってるんだろう。わたし。
真っ黒になった画面に映ってる、わたしの顔。
ほんとに、ばかみたい……

こんなの。
ぜんぶ、きえちゃえばいいのに。

「こなちゃん……」
こなちゃんの寝顔。寝顔……
いま、何時くらいになったのかなぁ。
ベッドの、すぐ側。ここでこなちゃんの寝顔みてると、何時間くらいたったかすぐ忘れちゃうんだよね。
前は、気がついたら3時間……じゃあ、もう5時くらいなのかも。
だめ、だめだよ。今日こそ言うんだから。

ずっと、いっしょにいて欲しい。
就職だって、もう、やめてもらうんだ。
わたしが帰ってきたとき……おかえりって言ってもらうんだ。ずっと。ずっと。
……いいよね?

「こなちゃん」
「んぁ……」
寝言……
……
起こさないと、いけないんだけど。
ちょ、ちょっとだけ。さわってから、でも、いいかな。
ゆっくり、こなちゃんの顔に手を伸ばす。
くちびる……やっぱり、やわらかいな。しめってて、ふにふにしてて。
……もう、ちょっと。
くちびるのあいだに、指をさしこんでみる。
歯茎、かな。つるつるしてて気持ちいい。
舌……どこかな。おくの方……あった。
ざらざら……ってほどでもないかな。つるつる、との間くらい。ふしぎな感じ。
この感覚、しってる。
こなちゃんが、いつも教えてくれてるもんね。

「んみゅぅ」
あ、くすぐったかったかな?
くちびるを、ムニムニすりあわせて、きて、あぅ。
わたしの指いれたまま、そいうこと、され、ると、くすぐったいって、いうか。
胸かな、おなかかな、そのあたりの奥の方から、なんか、変な感じが、こう、

「ちゅかさぁ」

むにむに。
「……」
こ、
こなちゃん、こなちゃん……!
「ん、ふぁ」
わたしの口のなかで、こなちゃんの息が響いてる。

あぁ……キスしちゃったんだ。やっぱり。

我慢、できないよ。だってあんなの、ムリに決まってる……!
「んぅ……? ん、んむぁあ……!?」
ちっちゃな口が、わたしの中で動いてる。
あ、わたしの名前、かなぁ。
なんでもいいや、こなちゃん。こなちゃん、
舌……どこかな。おくの方……あった。
「んぁ? ん……ぅ」
ざらざら……ってほどでもないかな。つるつる、との間くらい。ふしぎな感じ。
この感覚、しってるんだよ。
「んぅ……つ、つか、さ」
「きゃ……」
あぁ、あったかかったのに。くちびるの感覚が……
「はぁ、はぁ。……はぁ……」
わたしの両肩を押さえたまま、息をついているこなちゃん。
顔、まっかだ。かわいい……って。

え、あ、あれ? わ、たし?
「……つかさ」
「……はひ」
肩の手に、ぎゅーって力がはいってきたのがわかった。
「正座」
「え?」
「いいから、そこに正座しなさい」
「うぅ……はい」
ていうか、わたしいつの間にベッドに乗っかってたんだろ……
のろのろベッドから降りて、正座する。しか、ないよね。
「ふ、わたしも最近、固有結界とかマスターした気がするからね。対つかさ専用。魅せてあげよう」
なんか、元ネタあるんだろうな……わかんないけど。
「さてまず。……女の子の寝込みを襲うってことについて、どー思いますか?」
「……とっても、いけないコトだと思います……」

 「つかさの待ち受けさ、人に見られたら私氏ぬしかないと思うんだけど、どーかな」
  「背中はともかく、前は自分で洗えるんだよ」
「お箸は食べ物食べるための道具です。わたしを食べるためのじゃありません」
 「5秒wwww」
……
  ……

なんとなくわかった。こゆーけっかいって、一回つかまっちゃったら逃げられなくなる必殺技かなにかなんだ。
「反省したかね」
「はい……もうしないように、がんばります」
でもムリです。ごめんなさい……
「よし。それで……なにか、話があったんだよね?」
「……うん」
何度も、練習してきた。
大丈夫、こなちゃんは、『ダメ』なんていわない。
でも。たくさんの言葉で、同じようなこと、いわれないかな。
こなちゃんやさしいし。『やさしいから』、ことわらなかったり、
「……」
はやく、はやく言わないと。こんなだから、あと4ヶ月なんてなっちゃったのに!

「……そうだ、つかさ」
え?
「私もね、大事な話があったんだ」
「そう、なんだ。じゃあ」
こなちゃんのお話聞いてからでも……
「そろそろ、ね。返事、だそうかなって」
返事。返
   ……
 ?
「    」
「ホントはね、だんだんメール減ってきてるんだ。手当たり次第に内定とっただけなのに、今まで待ってく」
気が付いたら。
ベッドでこなちゃんのこと、押し倒してた。
「つかさ……」
「それ。ここから、でて、いっちゃうって、いってるの?」
「……わかんない」
わかんない。なんで?
なんで、わかんないのに平気なの?
こなちゃんのせいなのに。

「こなちゃんのせいなのに!」
「つか、さ?」
「こなちゃんのせいなのに! 勝手にうちに来て、勝手にでていっちゃうなんて、」

「つかさ。なに、言ってるの?」

「だから、っ?」
こなちゃんに、きゅって肩掴まれた……な、なに?
わぁっ…
目の前がくるん、て回って背中に軽い衝撃、
「きゃ、」
あ、れ? こなちゃん、わたしに乗っかって、る。
わたしが上だったよね、なにがどうなって、
う、肩、押さえられてて、うごけない……
「つかさ。服、ぬいで」
え?
「こな、ちゃん?」
「いーから早く」
「な、なに言って……」
「えーはずかしいとか? いまさらじゃん?」
笑顔。
あの、こなちゃん。それ、笑ってる……の?
「そ、そんなんじゃないけど、今そんな話してるんじゃ」
「ま、いいや」
こなちゃんの手が伸びてきて。胸元がひっぱられて。やっ、
耳元でシュって音がして、首すじに熱い痛みが走る。
「や、やめ……て」
「ね、つかさ」
こなちゃんが、抜き取ったリボンを床に捨てる。
ゆっくり、ゆっくり、こなちゃんの顔が、近づいてくる。
キス、かな……胸が、勝手にドキドキしてきた。
いま何がどうなってるのかもよく分かってないくせに。
ホ、ホント、わたしってもう、どうしようもない……っ
あと、少し。3……2センチ……?
「こなちゃん……? ……あ」
おなかのうえ。なにか、動いてる。
こなちゃんに服ぬがされてるんだろうけど。
これじゃ、うごけない……よ
「ま……って、まって、こなちゃん」
「ダメ」
こなちゃん、怒ってるの? 喜んでるの? わかんない。
こなちゃんのことなのに……!
「つっ!」
背中、なにか引っかかれた。
「こ、こなちゃん」
ソレも、抜き取られて、捨てられた。
はだかのむねに、こなちゃんの手。
2センチ先の、こなちゃんのにおい。
なんだか、なにがなんだか、ぜんぜん、わからない、なんで……?
「つかさ。就職するときさ、なんでこっちに越してきたんだっけ」
なんでって……そんなのもう、
「わ、わかってるよね?」
「わかんない」
うそだよ、ぜったい、わかってる。わかってるくせに。
「こなちゃんに、会いたかったからに決まって……あつっ!?」
「つかさの胸、やーらかいよね。まだのびるかな?」
い、いた……
「こなちゃん、こなちゃん……」

「私が住んでたの、このあたりじゃないよ?」

え、
「ここから、電車で3駅。そうだったよね」
それは、そう、だけど、
「こなちゃんのことだけでも、なくって。このあたりいいところで気に入って」
「うん、ここいいトコだよね。私も、最初はね、このあたりに住むつもりだったんだ。……大学の、すぐ近くだから」
「こ、なちゃん、手、て……」
だんだん、下がってきてる……っ
「そ、こ、ちが……」
「ま、もう部屋なかったんだけどね。やっぱ学生に大人気だったんだろーね」
「そ、そうなん、だ? わたし結構すぐ見つかっ」
う、ぁ、
「こなちゃ、ん、ちょっ、と、つよ、ぃ……」
「そりゃ、そーだね。ていうか、もうこんくらいの部屋しかなかったでしょ? 2DKなんて、なかなか学生には手が出ないもんね」
い……いだ、いたい……よ、
「でもさー、前私がいたトコ、悪くもなかったよ。こんくらいの部屋でも月」

……のみかい。

「飲み、かい」
「……つかさ?」
う……っく……こなちゃんの、いじわる……
「飲み会とかっ、学校のすぐ近くでやるからっ」
でも、そんなの。
「夜遅くなったときとか、わたしのとこに、泊まっていってくれるかもって……思ってた、よ」
夢みたいなものだったんだよ。
「つかさ……」
押さえられてた力が、すこし、ゆるくなった。
「ずっと、そんな夢ばっかりみてたの。ひょっと、ひょっと。こなちゃんといっしょになれたら……」

学校近いから、便利だろうな、とか。
あさごはん頑張って作って。
帰ってきたら、こなちゃんのごはん食べられたらうれしいな。
DVD観れるの買おっかな。こなちゃんといっしょに寝るために、その一。

星が流れてるあいだに、三回も言えなくて。ガッカリしたんだ。
「みんな、叶っちゃうんだもん……」
夢だよ。もう絶対、ぜったい、覚めたくない。

「つかさのごはん、おいしいし。そばにいると、ほっとするし」
こなちゃんが、ゆっくり頭なでてくれる。ごめんね……こなちゃん。
「そんなことしなくっても、となりくらいに住んでたら、四六時中入り浸ってたのに」
「こなちゃん、面倒くさがりだから」
笑って……
「電車で少し離れてたら、わたしのところから、帰りたくなくなるでしょ?」
わたしヤな顔してるんだろうな。だったら、せめて笑いたいな。笑ってるよね、こなちゃん…!
ああ、こなちゃん、ちょっと泣きそうな顔してる。わたしは、そっと手を伸ばして、こなちゃんの頬にふれた。

ばか。小さな、こなちゃんのこえ。
そのとおりだから、なんにもいえないよ……

「わたし面倒くさがりだから、つかさのそばからだったら、一歩だって動きたくないんだよ?」
いまは、そうだよね。
でも、あのときこなちゃん、ひとりで大学いっちゃったんだよ。
わたし、結構頑張ったんだよ?
こなちゃんが、わたしのところから、帰りたくなくなるように。
「つかさのせいだよ」
そうだね。
こなちゃんのくちびるが、軽くわたしにふれた。
「私、もうつかさがいないとダメなんだよ。つかさ。私に、何か話があるんだよね?」
こなちゃん……

「わたしと、ずっとここにいてほしいな。就職なんてしてほしくない、わたしと、ずっとここにいて、いつでもおかえりって、いってほしいの」
「うん……わかった」

……?
「あの、こなちゃん、意味分かって、る?」
「ん、プロポーズでしょ?」
!!
こなちゃんが、えすぱーに?
「な、なんで?」
「なんでって。すっごい滑らかーに言うんだもん。何度練習したのかね、ん?」
「は、はうぅ」
すりすり頬ずりされ……あああ……
「し、死ぬほど練習しました……」
「そーかそーか、ういやつういやつ」
いつの時代のひと……

あ、そーだ。
「ね、こなちゃん」
「んー?」
と、とりあえず頬ずりは一時すとっぷしてくれないかな、あたまと舌がぜんぜん回らなくなっちゃう。

「大学って、どうしても行かなきゃダメ?」
「……そういえば。どーしてもってわけじゃ、ないよね」



「てなわたしらの結婚生活開始の顛末をお聞かせしたときのかがみの顔。いやー、まさに鬼の形相だったね」
「あたりまえでしょーが。働け」
「あはは……」
いや、わたしだって、別にニートする気はなかったってば。
「見てよこのビシッと決まった仕事姿! 昔とった杵柄、まだまだ若い子らには負けんね」
「コスプレだけどね」
「こなちゃんは、高校の頃からぜんぜん変わってないし……」
かがみはビールで、つかさにはスクリュードライバーっと。
おおっと、なんかかがみにジト目で見られてますよ?
「い、いや別にヘンな下心があるわけじゃ」
「今更いいんだけど……あんた仕事じゃないの? ずっとこの席にへばりついてるけど」
「いやいや、今日は私お休みだよ。店員割引あるから、ごしょーたい」
ていうか、つかさ休みの時にシフト入れるわけないじゃん。
「ならいいんだけど」
ぐびーってジョッキをあおるかがみ……びっくりするくらい似合うね、そうゆうの。
「だいたいねープロポーズだ結婚だ言ってるけど、べつに籍入れてるわけじゃないんだからね? ちゃんとつかさを支えて家計も考えて、でないとホントに自己満足に」
「おー小姑発見」
「よし殺す」
「お、お姉ちゃん、抑えて抑えて」

なんか気分いいな。よしわたしもなんか飲むぞっと。
「ごめんキューちゃん、テキーラのアレ、もってきてーでっかいの」
「はーい」
同僚の女の子が元気よくお返事。基本だねっ
「それからストロー2本」
「……はーい」
ああ、呆れ顔に。うん、これも基本かな。
「コ・ナ・タ・サ・ン、ソレはマジデスカ?」
マジです。

「で、大学は?」
「ちゃんと出たよ……かがみがうるさいから」
「ったく、あと4ヶ月だってのに辞めるだなんてアホか」
「だって……」
つかさが、じとーって感じでかがみを見てる。
つかさって、どんな顔しても可愛いよね。
「はいー、そんな目してもダメー。あんたらは昔っから計画性ないっていうかその場主義っていうか」
「でもさ、コスプレ喫茶だよ。大学なんて出ようがどーしようが関係ないじゃん」
ぶつぶつ。
「関係ないんなら出てたっていいでしょ……たった4ヶ月我慢できないってんならあんたらの将来も見えてるわね」
「うう、お姉ちゃん、キビしい」
まあ、でもなんか。
「なーんとなく、私たちにはまだかがみが必要なんだろーなぁ」
「あう、確かに」
「……なんか、幻覚がみえるわ」
おー、かがみが私らを半眼でみておる。いつものことか。
「幻覚。だいじょうぶ?」
「夏休み……宿題、まっしろなノート。縁側ででっかい猫が2匹寝ててね。そこからステレオで聞こえてくるの。『宿題みせてー』」
ああ、耳が、ちぎれるよーに痛いっ
「すみません、これからもよろしくお願いします」
「ご、ごめんね、お姉ちゃん」
「成長しろって言ってんのよ……」

でもねぇ、おばーちゃんになるまでこんな感じだよ、たぶん。






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