こたつとみかんとお父さん


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このSSは、当1-770レスに投稿下さいました イクシデズタル(元594)氏 のイラストに、
ID:oEEiWmFH氏が文章を寄せられた作品です。



「こたつの場所取りって大事だよね。
 出来るなら首を曲げないで真正面から見たいよね。
 折角のんびり出来る場所なのに首が痛くなったら勿体無いもん。だから」

私から見てこたつの右側座って、笑えるぐらいに子供っぽい言い訳を力説するつかさに、
テレビ正面に座っている私はみかんを剥きながら聞き返した。

「つまり、私の位置に座りたいと?」
「うん!」

『分かってくれた!』と言いたいのか、ぱぁっとつかさの表情が明るくなる。
可愛いけど、少しだけからかいたくなるその表情。
剥いたみかんを一房口に放り投げ、
人差し指で私とつかさを交互に差して分かってない振りをした。

「じゃあ、位置交代しよっか」
「だ、だめ。こなちゃんは動かなくていいの!」

両手を突きつけてストップをかけてくるつかさに思わず笑う。
何か食べてる時に笑うとあごが痛いね。
口元とあごを押さえていると不思議そうに台に身を乗り出したつかさが顔を覗き込んできた。
なんでもないよと手を振って、座椅子から半分ずれてポンポンと叩いて示す。

「ここに来て。一緒にテレビ見よ」

つかさは頷きながら、いそいそと元の場所から私の隣へと移動してきた。
お揃いのちゃんちゃんこ着てると完全に休日モードになってしまうのか、
あまり周りを気にしないで抱き締めてくれるけど、
まぁ今日はお父さんも買い物に出掛けてるし、
ゆーちゃんはみんなと遊びに行ってるし、問題はない。
私は座椅子よりつかさに寄りかかってテレビを見つめた。
なにかないかとチャンネルを数秒おきに変えて一周させて見る。
時間が微妙だからか、流れるのはニュースやテレビショッピングばかりだ。

「んー……この時間帯は面白いのなにもないね。あ、つかさ、みかん食べる?」

後ろにいるつかさの口にみかんを一房近づけると、当然のごとく雛鳥の様に食べてくれる。
もぐもぐと食べるつかさを見ていると、どうやら酸っぱいのに当たったらしく眉をひそめた。
私が食べたのは結構甘かったのに。

「つかさって運がないよね」
「……こなちゃんが選んだのに」
「それはそうなんだけどさ。ちょっと小さかったからかな。今度は甘いやつ……」

剥いたみかんの中でもみずみずしそうな一つを選び、少しかじる。
これなら甘いし大丈夫かな。

「はい、さっきのよりは多分あま」

再びつかさにさっきと同じようにみかんを食べさせようと振り向いたけど、
予想よりもつかさの顔が近くて声が出なかった。
近いと言うか唇の距離はゼロだったから、声は出せるはずもなく。
テレビの音量が小さくなったように感じる。
ちょんちょんと控え目に舌で下唇を突かれ、薄く口を開けた。
まだそこまで粘着質じゃない柑橘の味を含んだ唾液と、小さな粒を感じて飲み込む。
ん、確かに私が食べてたみかんより酸っぱいかもしれない、けど。

「……そこまで酸っぱくはないよ」
「本当だ、こうやって食べたら少し甘くなるね」

満足気なつかさの笑顔に、思わず残りのみかんの房がいくつかを確認した。
剥いたばかりで食べたのは二房だけ。まだまだ残っている。

「……キリがないから、この食べ方は後コレだけで終わり」

手に持っている、甘いのを確認したみかんをつかさに差し出す。
つかさがそれを二回ほど噛んだ時、私からしてもよかったじゃんと思ったけど
次の瞬間にはみかんの味が流れこんで来たから意味のない思い付きだった。
果汁、歯で潰された粒、塊と小さい順に流し込まれる。
合間合間に腰に回された手に力を入れられて呼吸が乱れてきた。
完全に形が残っているみかんの一部が私の舌の上に乗せられ、それがつかさの舌に押し潰される。
潰れたみかんから溢れた果汁を飲み込んだ時、変なところに入ったらしく
『苦しい』とつかさのちゃんちゃんこを引っ張って知らせた。
すぐに察してくれて口を離してくれたけど、
私が一呼吸すると間髪入れずに再び舌が入ってくる。
さっきまでのみかんを味わう動きとは違う、思考回路が鈍くなる様な舌の動き。
みかんの味が分からなくなる。
私がよく知ってる、つかさの味がする。
こたつの電源を切ろうかなと思ってしまうほどに体が熱い。

「……ふ、ぁ……こなちゃん」
「ん、んー……?なに、つかさ……」

見てる人まで幸せにするような微笑みのまま、ぎゅーっと肩を抱き寄せてきた。
ますますつかさに寄り掛かる。

「……今日は静かだよね」
「ん、そうだね」

私の家でこんなにのんびりするって珍しいかも。
大抵お父さんがいるし。
初秋頃まではつかさの家の縁側がお決まりの場所だったけど、今は寒いし。
こたつの中でつかさと単純な爪先バトルを笑いながら繰り広げたりしつつ
手ではリモコンをいじるけど、
未だいいテレビ番組がなさそうだったから適当にビデオの電源を入れた。
入っていたのはるろ剣。何でだっけ?
……あー、フタエのキワミとか見て久しぶりに見直したくなったんだった。
中途半端にEDから始まったけどいいや。

「昔のアニメ?」
「そこまで昔じゃないけどね」

『I love youさえ言えないでいる』と懐かしい歌が流れる。
つかさが私に告白しなかったら、この歌詞のような感情を持っていたんだろうか。
なんて、付き合っている今となっては想像できない未来を考えてみた。

「……つかさ。I love youって言ってみて」
「え? あいらーびゅー?」
「アハハ、つかさ英語似合わないねー」

予想は出来ていたけど、カタコト以前に英語に聞こえない。
つかさらしいって言えばつかさらしいし、可愛い。

「いーの! こなちゃんには日本語できちっと好きって言ってるもん!」

おわ、直球が来た。
笑いが止まり、照れなのか口元がむずむずする。

「そ、そうだね。うん。……私も好き、だよ」

同じく直球で返してやろうと思ったら、非常にスローボールになってしまった。
それでもつかさは頬擦りしてきてくれて、
伝わったみたいだからからいいかなとみかんを一つ手にとって。
そこで、黒画面になった際に画面に反射して見えた、私達の後ろにいる人物に固まった。
あれ、えっと。そうだ。お父さんは確か買い物に行ってたんだよね。
買い物に出かけてもう一時間ぐらいだし、帰ってきてもおかしくは無いけど。
ギッギと軋む首を何とか後ろに向ける。油をさしても意味はないだろう。

「……よ、よう。なんか、ご馳走様って場面だったぞ」

視線をやった先には、部屋の入り口で買い物袋を持ったまま
仁王立ちしているお父さんが手を振ってきた。
ここでつかさも気づいたらしく私と同様後ろを向く。
だけど体重移動を間違ったらしくて、私を巻き込んで座椅子ごと倒れた。


「お、おじゃましてます! おじさん、えっと、これは……」
「ほら、こたつはテレビの真正面に座るのが一番いいじゃん!?
 首を痛めたらこたつじゃないもん!」

慌てて起き上がり、正座をしてさっきつかさが言っていた、子供っぽい言い訳を叫ぶ。
真っ赤になっている私達を見て耐え切れなくなったのか、アッハッハとお父さんが笑い出した。

「今更じゃないか、俺『あいらーびゅー』のくだりからここにいたし」

誰かタイムマシンを。もしくはお父さんにわすれろ草を。ハンマーでもいい。
もっと周りに気を配ってればよかった。

「ゆいちゃんじゃないけど、おじさんビックリだ。眼福だ。邪魔して悪かった。続きをどうぞ」

フォローしてくれてるのか余計に恥ずかしがらせようとしているのか
分からないけど全て早口で言いながら、こっちを向いたまま後退して部屋を出て行くお父さん。
後に残された私とつかさは顔を見合わせて恥ずかしげに笑った後、
座椅子を立て直してついさっきと同じ様に座った。
なんだか疲れを感じ、頭をつかさの肩に乗せる。

「……ああもう、心臓に悪いなぁ」
「でも慌てて離れる必要なかったかもね」

確かに私とお揃いであるつかさのちゃんちゃんこを買ってくれたのはお父さんだし、
関係も知られているし。
そう分かっちゃいるけどつかさに甘えてる所を見られたくはない。
だけどつかさの笑顔が、聞こえてくる歌同様『まぶしくて』否定できずに頷いた。



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