卒業式の前に


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「はい、こなちゃん。ハッピーバレンタインデー♪」
そう言って、つかさは綺麗に包装されたチョコレートをこなたに手渡した。
「今年もくれるんだーありがとー」
「大きめに作ったから、家でゆっくり食べてね。
あ、でも溶けちゃいけないから早めに」
「そだねー帰ったらすぐに食べるよー」
こなたは、去年よりも、若干豪華な包装を施された、魅惑のお菓子を
嬉しそうにカバンにしまいこむ。
「今年は受験だから無しかと思ってた」
「私はもう受験終わってるから。」
「そっかー」
つかさは、すでに都内の料理系専門学校に入学を決めていた。
こなたはこなたで、特に明確な目標もないため、適当な風である。
本来合格者は出席自由だが、クラスの多くの者が
残された瞬間を共有したいと登校してきている。
2月14日。
みんなで一緒にいられる時間は、残り少ない。
だからこそ、つかさには、どうしても伝えたい思いがあった。

(こなちゃんが気付いてくれますように・・・)

胸に潜ませた思いを、手紙に綴り
チョコレートと共に箱の中へとひそませた。
今まで蓋をしてきた思いを、出来上がったチョコレートを取り出すように
胸から取り出し、彼女に伝えたい。

(・・・ちゃんと、言えるかな)

ドキドキする胸の鼓動を感じながら、彼女は胸に秘めていた言葉を
頭の中で反芻していた。

夕暮れの公園
遊んでいた子供たちも、犬を散歩させている人もいない。
ただひとり、ベンチに腰かけた、つかさの影が長く伸びている。
(こなちゃん来てくれるかな・・・)

――この手紙に気づいたら、公園まで来てください

きっと不思議に思うだろう。だけど、ほかに思いつかなかった。
この方法しか・・・もしかしたら来てくれないかもしれない。
そう思いながら、彼女は待っている。だんだんと期待が不安を侵食し始めたころ
彼女を呼ぶ声がした。
「つかさーお待たへー」
聞きなれた声だ。
顔をあげた先には、小柄な姿に、不釣り合いなほど長い青髪をした少女が立っていた。
「こなちゃん。ありがとう。」
「どうしたのー話って何?わざわざ公園指定って」
「それはね・・・あの・・・」
「?」
こなたが首をかしげる。
そのしぐさが、益々司の言葉を詰まらせる。
「ほら・・・もうすぐ卒業でしょ?だから二人で話したいなーって思って。」

 ・・・私の馬鹿
自分のふがいなさに、落胆する。
(ここまできて、なんで言えないのかな・・・)
昨日イメージした時は、もっと上手に切り出せたのに・・・

「そっかー。かがみんがいると
ノンビリ話せないもんねー。突っ込みキャラだからー」
胸の中の残念な気持ちが、こなたの笑顔を見ていると晴れていくような気もちがした。
(そうだ・・・せっかく二人で話できるんだから。)
前向きに考えなおし、こなたと一緒にベンチに腰を掛ける。伸びる影が二つになる。
目の前で、思い出話や、これからの話を楽しげにする
こなたの姿を見ながら、つかさは言えなかった言葉を
瞳でそっと伝えてみる


大好きだよ、こなちゃん

「あ、もうこんな時間」
気づくと、話し始めてから、1時間半ほどが経っていた。
「そろそろ夕飯の時間だから帰らないと。」
「そうだね。」
ベンチから立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。
冬の公園は、葉が落ちた木々が多く
どこかさみしい印象を受ける。
春には満開になる桜も、今はまだ蕾すらつけていない。

去年までは待ち遠しかった春が
今年は、来てほしくない・・・ずっと四人で一緒にいたい

公園の入口についた。つかさは左、こなたは右へ曲がる。
積もり積もった思いが、言葉となって現れる。
「こなちゃん・・・私、こなちゃんのこと大好きだよ。」
それは、思い出に押し出されるように、静かに零れおちた。
こなたは、虚をつかれ、一瞬キョトンとした表情を浮かべる。
「あの・・・そのね・・・」
つかさの方でも言ったはいいが、その後が続かないで、
しどろもどろになってしまっている。
その様子を見ながら、こなたがニヤニヤ笑う。
「いやぁ、アニメやドラマでは卒業を前に友情を確かめ合うって
よく見るけど、実際に見るのは初めてだよー」
「え?・・・あの、そうじゃなくて・・・」
「いやぁ、つかさはロマンチストだねー
流れ星にお願いするだけのことはある。うんうん」
つかさの言葉に、自らの言葉をかぶせ、一人納得している。
(ちがうんだけどなー・・・あーあ。
でも、こなちゃんらしい)
「そうかなー」
ニヤニヤ笑うこなたにつられ、つかさもクスクス笑ってしまう。
今度は、つかさにつられてこなたが笑い出す。
その姿を見て、つかさなんとなく安心した。
もし離れることになっても、こなたとはいつまでも友達でいられる
そんな気持ちになった。

「じゃねーつかさー。私も大好きだよー」
冗談半分にそう言って、こなたは大きく手を振った。
つかさも、負けじと大きく手を振りかえす。
こなたは、それをみてにっこり笑うと、つかさに背を向けて歩き出した。
ただでさえ小さな背中が、だんだんと、さらに小さくなっていく。
その姿が見えなくなるまで、つかさはその場で見送っていた。

大好きだよ、こなちゃん

もう一度、小さくつぶやき
つかさは、回れ右をして歩き始めた。

                              ~終わり~





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