夏祭りが終わった後、私達は静寂を取り戻した夜道をゆっくりと歩いていく。
空を見上げると、夏の明るい星達が、自己の存在を強烈に主張している。
「こなちゃん。花火、とても綺麗だったね」
夜空に大輪の花を咲かせた、打ち上げ花火の美しさと迫力が、脳裏に鮮明に残っている。
「うん。そだね」
こなちゃんは頷いた。傍を歩くこなちゃんと繋がった手が、私の鼓動を速めていく。
「こなちゃん…… 」
「なに? つかさ」
こなちゃんと付き合い始めて、もうすぐひと月が経つ。親友だったこなちゃんと、恋人になった時の
こなちゃんとの距離は、学校ではあまり変わらないけれど、二人きりになった時は別だ。
「こなちゃんは、どうして私と付き合いたいと思ったの? 」
言った瞬間から、恥ずかしくて顔が真っ赤になる。どうして、こんな変なことを口走ってしまったのだろう。
それでも、恐る恐る隣を歩く恋人を覗いてみると、こなちゃんは人差し指に手を当てながら
真剣な表情で考えこんでいた。
「そだね…… 」
こなちゃんは一息いれてから、私の不躾な問いに対する答えをくれる。
「つかさと一緒にいると、心がほんわりと温まって…… 幸せな気持ちになれるからかな」
「そ、そうなの? 」
私は、少しだけ首を傾げた。自分にそんな魅力があるなんて思ったことはない。
「そだよ。つかさっていつも笑顔だよね。辛いこともあると思うんだけど、それでも純粋な笑顔を
みせられるとね。なんだか嬉しくなるよ」
こなちゃんはうちわで顔を仰ぎながら、少し照れくさそうな表情をみせて話してくれた。
「ありがと、こなちゃん」
私の笑顔を喜んでくれて、更に好きでいてくれるなんて……
「でも、こなちゃん…… 私、怖いよ」
「どうして? 」
こなちゃんは、不思議そうな表情を浮かべている。
「幸せすぎて怖いの」
あまりにも幸せ過ぎる日々は、長くは続かないのではないか?
こなちゃんの心は、いつか私から離れてしまうのではないか?
「大丈夫だよ。つかさ」
こなちゃんは、私の不安を真正面から受け止めて、ゆっくりと溶かしていく。
「つかさは、自分の持っている魅力に気が付いていないだけだよ。もっと、自信を持っていいから」
こなちゃんは、私の掌を強く握りしめて言った。嬉しすぎて、視界がにじんでしまう。
「ありがと、こなちゃん」
私は立ち止まって、ほんの少しだけ腰をかがめて瞼を閉じた。
満天の星空の下、こなちゃんは期待通りに私の肩に両手を添えてから、とても柔らかい唇を重ねてくれた。
このSS作品のタイトルは「帰り道」ですが、1スレ目に投稿された162氏による同名のSS作品が保管されていますので、同じページ名を作成できないwikiの制約により、作品ページ名は「帰り道(4-34氏作品)」とさせていただきました。
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- いい話や… -- 名無しさん (2008-11-23 22:42:27)
最終更新:2009年01月24日 00:01