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1級文族試験:御題「26万7000tのバナナがあります。ナスカの地上絵を描きなさい。物語で」




『NASAの発表によると、この隕石の衝突による被害は30キロトンの核1000発に匹敵すると・・・・』

『この件に関して、国連は非常事態宣言を発令・・・隕石への核攻撃が・・・』

『軌道を変えない隕石に、各地で暴動・・・・ローマ法王は神の御心の・・・』

・・・・・それから、3週間後

/ * /

「うあ、何でこんなところに居るんですか、室長」
僕のその声に、だらりと両手を垂らして机に突っ伏した、我がSF研の室長(美人)が、顔だけを面倒そうにこちらに向ける。

「キミこそ、なんで今更学校なんかにくるの?」
鈴のような声が西日の差し込む部屋に響く。


 一応、僕も健全な青少年たるからには
「なんとなく、美人で素敵な室長に会えそうな気がして」とか
「最後くらい、一緒に過ごしたくて」とかとか、そんな台詞で甘い甘い展開をと思ったがこの人は言ったら絶対、鼻で笑う。

間違いなく。斜め上からの視線な感じで。

 かといって、本音で「いやぁ、両親がリビングで仲良く***して、天井から揺れてまして(笑)行くとこ無いんですよ~」とは言えないよね。

 よね?

 僕がてきとうに言葉を紡ごうとした、その時

『ザザ・・ロ・ハロー!SFファンの諸君!終末を元気にお過ごしかな?今日は、秒速100キロの空の石コロに負けないホットな情報をお届けするぜぃ!なんとぉ、【農園からバナナの皮消失!】バナナじゃないぜ!皮だけだぜ!ラジオでは伝えられないのが残念だが、中身だけが揺れるプランテーションは正にSFぅ(エコー)、テレビは死んでるから、無駄に想像力豊かな皮の帽子標準装備の青少年諸君!想像力でカヴァしてくれぃ!』


「まだ、やってたんですね・・・この番組」


「ン、そうみたい。家じゃ電波入らなくて・・・もしかしたらなぁって思ったけど」


「にしても、バナナ版キャトルミューティレーションですか。あ、逆ですね。皮だけだから」


 なるほど。いつもの会話だ。最後の終末にしては悪くない。あと1時間で終わるけど。

/ * /


 一方、その頃


(一方的に)青春する少年少女の上空8000キロ。


 青白い噴射炎を吐く、数千数万の小型六角形が舞踏を始めていた。

/ * /


 同時刻、地上。

 僕はというと、割と真剣に困っている。

 どうしよう。話す・・・ネタがない。ここは明るく「最後うでごわす」と九州ジョークで和ませるか。和むか?

 そんな僕を他所に、ラジオだけがしゃべり続ける。暢気だな。ちきしょう。

『なんでも、フィリピン、台湾、インドネシア、などなど推定で26万7千トンのバナナが被害にあってるってディレクターが言ってたよ。あ、彼は妻子と過ごすって帰ったんだけどネ☆まぁ、僕はプロだから、最後まで喋り続けるんだけど♪。うぁ!俺カッコヨクネ?校正無しで喋れるってサイコー!初恋の話とかぶっちゃけちゃおうかな!裕子!好きだー!』

 前言撤回、プロだよ。アンタ。

心の中でるーるーと涙を流す僕に、机と一体化していた室長が声をかけてきた。

「ねぇ、屋上、いってみない?・・・たぶん、これが最後の夕日だから」

そう、もう・・・朝日は昇らないのだ。

 階段を上り、錆付いた重い鉄の扉を開け、夕暮れのグラデーションに染まる空を見上げる。

 月と星、いまやそれよりも大きく見える隕石が写る空。そして、猿。


・・・猿?

「室長」

「なに?」

「空に、猿というか、蜘蛛とか、あのー、いわゆるナスカの地上絵があるんですが」

「あるわねぇ。しかも光ってるわ。でも、クジラが無いわ。お気に入りなのに。」

いやいやいや、違うから。突っ込む所が違うから。

「アレ、なんなんですか?」

「あれは・・・フクロウ人間ね。マイナーキャラだけど」

 だから、違うって。

/ * /

 同時刻、高度8000キロ

 小型六角形は内部からバナナの皮を射出。頭頂部に固定すると、ナスカ図形を保ちつつ隕石に接近を開始した。


/ * /

『NASAは今回の、隕石軌道変化を人為的な物であると発表、同時に初の人類意外との知類との接触に成功したと発表・・・・・』

『国連は、この危機回避に貢献した新たなる友人と、正式に外交をすると発表・・・・』

『隕石軌道を変えた小型ロボットが、いわゆるナスカ図形を形成した事について、彼らの代表メンバーは紀元前時代もコンタクトがあり、それが友好の意をあら・・・・』

『それでは、最後にお聞かせください。軌道変位に何故バナナの皮を使用されたのですか?』

『<我々の受信した貴星の電波にあったのだ。貴星では、【すべる】ときにはバナナの皮だという【お約束】という習慣があると。我々は他の知類の文化を尊重する。足りない分は我々の技術で補わせて貰ったが・・・・まぁ、妥協点としては良い所だろう。>」

/ * /


「しつちょー、しつちょー、まだ荷物まとまりませんかー?」

「ん、ちょっち待ってね。必要な荷物が多くて」

「うげぇ、それ全部僕が持つんですよね」

「当然でしょ。頑張れ、オトコノコ」

「ううう、宇宙にクジラを書きに行くなんて・・・・」

「あら?嫌なの?」

「・・・・・まさか。どうせ行くなら、イヌも加えて貰えるようお願いしようと思っただけですよ」

そう言うと、室長は夏の日差しのなか初めて、僕に笑顔を見せた。


そして僕は今夜も、夜空を見上げる

そこには【ナスカの天空絵】呼ばれる、月と星の横で輝き続ける猿、蜘蛛、フクロウ人間。

そして、遠くない未来、そこにクジラとイヌが加わることになるのだが

それは、また別のお話である。


おわり