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「第15話 駅向こうの少年」(2015/07/11 (土) 06:50:54) の最新版変更点
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ヤサコ「駅向こうの子供達の噂では、古い空間の最も深い部分には危険なイリーガルが住んでいるそうです」
ヤサコ「京子、どこー?ったく方向音痴なんだから。にしてもこの地図肝心な時は必ず役に立たないわよねー。あ。霧だわ……そういえば地図が使えない時いつも古い空間が近くにあった……。駅向こうは、まだ探してなかったわ。あそこまで行けば古い空間が見つかるかも」
アナウンス「迷子のお呼び出しをいたします。小此木優子ちゃん、お母様がお待ちです。小此木優子ちゃん、大黒小学校6年3組……」
ヤサコ「私のこと!?」
アナウンス「ベージュのお洋服に丸いメガネの小此木優子ちゃん」
ヤサコ「や、やめてーーー!」
ヤサコ「迷子は京子の方でしょー。なんで私をアナウンスで探すのよ」
ヤサコ母「京子ちゃんはすぐ戻ってきたわー。あなたは行ったきりで電話も通じなかったじゃない」
ヤサコ「それはこの街の空間がおかしいせいなの」
ヤサコ母「そんなもののせいにして。あなたは昔から方向音痴なんだからー」
キョウコ「ほうこう、うんちー!」
ヤサコ「京子が言うな!」
ヤサコ母「昔っからよ。金沢でも迷子になって大変だったじゃない。それにほら、おじいちゃんのお葬式の時だって」
ヤサコ「そんな昔のことまでほじくり出さないでよ」
ヤサコ母「どうせまたメガネのことでも考えていたんでしょう?いいかげんにしないと、そのうちメガネグモになっちゃうわよ?」
ヤサコ「なによそれー」
ヤサコ母「どうしたの?ほら、乗りなさい」
ヤサコ「乗らない」
ヤサコ母「なにスネてんのよー。6年にもなって」
ヤサコ「ちょっと探したい場所があるから、後で1人で帰る」
ヤサコ母「ちょっと待ちなさいよ、優子ー?」
ヤサコ「私もう6年生よ?ちゃんと帰れるー」
男の子A「ユウコ?」
ヤサコ母「また道に迷っても知らないわよー」
ヤサコ「絶対に迷わないもん!」
ヤサコ「ま、迷ったわー……。やっぱり方向音痴なのかしら……」
ヤサコ「あら、生犬だわ、めずらしい」
ヤサコ「デンスケー。デンスケ待ってー」
メガばあ「優子、どこ行くんじゃ?」
ヤサコ「うんちー」
ヤサコ「そうだ。あの時デンスケが勝手に走り出して……。その後、あの人と出会ったんだわ。なんだっけ……あの時もっと大事なことがあった気がする……。
ここ、来たことある気がする……。気のせいか」
男の子A「おい、お前!お前ユウコって名前か?」
ヤサコ「な、何?」
男の子A「さっき聞いたぞ。お前、ユウコって言うんだな。わかってるんだぞ。お前、第3小の天沢勇子だな!」
ヤサコ「え?」
男の子A「おいお前ら、出てこい!」
ヤサコ「な、何よあなた達」
男の子A「第1小のもんだ。最近オレ達の縄張りを荒らしているようだな」
ヤサコ「ちょっと待って!あなた達人違いしているわ!確かに私ユウコだけど天沢さんじゃ……」
男の子B「やっぱりユウコか……」
男の子C「例のものを出してもらおうか」
ヤサコ「例のもの……?」
男の子A「キラバグだよ。集めてんのは分かってるんだ。早く出せ!」
男の子B「出さなきゃ力づくで……」
ヤサコ「ああっ……」
「「「ああっ!」」」
男の子A「追いかけろ!」
男の子A「あそこだ!」
ヤサコ「ああ……どうしよう」
タケル「こっちこっち」
ヤサコ「えっ。ええっ!」
タケル「早くこの中に!」
ヤサコ「うわぁ!」
男の子A「どこ行った!」
男の子B「いねーぞ。きっとさっきの道だ」
男の子A「急げ!」
ヤサコ「はあ……」
タケル「あ……、ご、ごめんね!急にこんなことして。あいつら、いっつもよそから来た子をイジメようとするんだ」
ヤサコ「ん、んーん、ありがとう。……にしてもこれって……」
タケル「うん、ここに入るとメガネをかけている人には姿が見えなくなるんだー」
ヤサコ「これは、暗号?あ、あなた暗号屋なの?」
タケル「え?ああ、違うよ。これは誰かが書いて残していったものなんだ」
ヤサコ「それって……」
タケル「うん。あいつらが勘違いした天沢勇子のしわざだよ、きっと。知り合いなの?」
ヤサコ「え?あ、うーん……。や、全然。
実は道に迷っちゃったの。私方向音痴でさー」
タケル「どこまで行きたいの?」
ヤサコ「え、えーとね、大黒駅」
タケル「え……」
ヤサコ「ん?」
タケル「だってほら、駅はあそこに……」
ヤサコ「あー、やだ」
タケル「本当に方向音痴なんだね」
ヤサコ「う、ふふふ」
タケル「ぼく、タケル。第1小の6年」
ヤサコ「私、優子。3小の6年よ。ヤサコって呼ばれてる」
タケル「へー、ヤサコ。ヤサコか。ぼくもそう呼んでいい?」
ヤサコ「もちろん」
タケル「や、ヤサコ。え、駅まで送ってあげるよ」
ヤサコ「あ、ありがとう。
ねえ、ここって昔からこんな風景だった?」
タケル「え。うん、多分。駅の近くはだいぶ変わっちゃってるけど。どうしたの?」
ヤサコ「やっぱり、来たことある」
タケル「ど、どこ行くの?
どうしたの?駅に行くんじゃないの?」
ヤサコ「ここ、見覚えがあるの」
タケル「そうなの?」
ヤサコ「私、変なこと言ってるかもしれないけど、多分小さい頃、この辺で迷子になったの。そして……
何かが、何かがあったの」
タケル「何かが、って何があったの?」
ヤサコ「忘れてる……。小さい頃だったし。思い出したい。でも、思い出せないの」
タケル「それは、大事なことなの?」
ヤサコ「うん、多分」
タケル「一緒に探そう」
ヤサコ「え?」
タケル「この辺は、ぼくの方が詳しいから。一緒に探せば見つかるかもしれない」
ヤサコ「で、でも……」
タケル「ね、どんな場所なの?その、探してる場所」
ヤサコ「石の階段があって、その上に鳥居がずっと続いているの」
タケル「もしかして、あそこかも!ほら、早く!」
ヤサコ「うん」
タケル「ほら、ここ」
ヤサコ「あ……きっとここだわ!」
タケル「……あ!
待ってヤサコ止まって!
危ない!」
ヤサコ「あ……」
タケル「解体中だったんだな、この神社。だけど見つかってよかったね、探してた場所」
ヤサコ「違う場所だわ……似てるけど」
タケル「そうなの?」
ヤサコ「階段は、まっすぐ上まで伸びてた。途中でこんな風に曲がってなかったの」
タケル「そっかー。残念だな」
ヤサコ「私の勘違いなのかなー・蟻でも自分が行く場所、分かってる。でも、私は見つけられない。なんかみじめな気持ちだわー」
タケル「そこで、何があったか知らないけどさ、」
ヤサコ「ん?」
タケル「本当にあったのなら、きっと見つかるよ」
ヤサコ「本当にあったのかどうかも、よく分からなくなってきちゃった」
タケル「いや、きっと本当にあったんだと思うよ?」
ヤサコ「駅向こうの子供達の噂では、古い空間の最も深い部分には危険なイリーガルが住んでいるそうです」
ヤサコ「京子、どこー?ったく方向音痴なんだから。にしてもこの地図肝心な時は必ず役に立たないわよねー。あ。霧だわ……そういえば地図が使えない時いつも古い空間が近くにあった……。駅向こうは、まだ探してなかったわ。あそこまで行けば古い空間が見つかるかも」
アナウンス「迷子のお呼び出しをいたします。小此木優子ちゃん、お母様がお待ちです。小此木優子ちゃん、大黒小学校6年3組……」
ヤサコ「私のこと!?」
アナウンス「ベージュのお洋服に丸いメガネの小此木優子ちゃん」
ヤサコ「や、やめてーーー!」
ヤサコ「迷子は京子の方でしょー。なんで私をアナウンスで探すのよ」
ヤサコ母「京子ちゃんはすぐ戻ってきたわー。あなたは行ったきりで電話も通じなかったじゃない」
ヤサコ「それはこの街の空間がおかしいせいなの」
ヤサコ母「そんなもののせいにして。あなたは昔から方向音痴なんだからー」
キョウコ「ほうこう、うんちー!」
ヤサコ「京子が言うな!」
ヤサコ母「昔っからよ。金沢でも迷子になって大変だったじゃない。それにほら、おじいちゃんのお葬式の時だって」
ヤサコ「そんな昔のことまでほじくり出さないでよ」
ヤサコ母「どうせまたメガネのことでも考えていたんでしょう?いいかげんにしないと、そのうちメガネグモになっちゃうわよ?」
ヤサコ「なによそれー」
ヤサコ母「どうしたの?ほら、乗りなさい」
ヤサコ「乗らない」
ヤサコ母「なにスネてんのよー。6年にもなって」
ヤサコ「ちょっと探したい場所があるから、後で1人で帰る」
ヤサコ母「ちょっと待ちなさいよ、優子ー?」
ヤサコ「私もう6年生よ?ちゃんと帰れるー」
男の子A「ユウコ?」
ヤサコ母「また道に迷っても知らないわよー」
ヤサコ「絶対に迷わないもん!」
ヤサコ「ま、迷ったわー……。やっぱり方向音痴なのかしら……」
ヤサコ「あら、生犬だわ、めずらしい」
ヤサコ「デンスケー。デンスケ待ってー」
メガばあ「優子、どこ行くんじゃ?」
ヤサコ「うんちー」
ヤサコ「そうだ。あの時デンスケが勝手に走り出して……。その後、あの人と出会ったんだわ。なんだっけ……あの時もっと大事なことがあった気がする……。
ここ、来たことある気がする……。気のせいか」
男の子A「おい、お前!お前ユウコって名前か?」
ヤサコ「な、何?」
男の子A「さっき聞いたぞ。お前、ユウコって言うんだな。わかってるんだぞ。お前、第3小の天沢勇子だな!」
ヤサコ「え?」
男の子A「おいお前ら、出てこい!」
ヤサコ「な、何よあなた達」
男の子A「第1小のもんだ。最近オレ達の縄張りを荒らしているようだな」
ヤサコ「ちょっと待って!あなた達人違いしているわ!確かに私ユウコだけど天沢さんじゃ……」
男の子B「やっぱりユウコか……」
男の子C「例のものを出してもらおうか」
ヤサコ「例のもの……?」
男の子A「キラバグだよ。集めてんのは分かってるんだ。早く出せ!」
男の子B「出さなきゃ力づくで……」
ヤサコ「ああっ……」
「「「ああっ!」」」
男の子A「追いかけろ!」
男の子A「あそこだ!」
ヤサコ「ああ……どうしよう」
タケル「こっちこっち」
ヤサコ「えっ。ええっ!」
タケル「早くこの中に!」
ヤサコ「うわぁ!」
男の子A「どこ行った!」
男の子B「いねーぞ。きっとさっきの道だ」
男の子A「急げ!」
ヤサコ「はあ……」
タケル「あ……、ご、ごめんね!急にこんなことして。あいつら、いっつもよそから来た子をイジメようとするんだ」
ヤサコ「ん、んーん、ありがとう。……にしてもこれって……」
タケル「うん、ここに入るとメガネをかけている人には姿が見えなくなるんだー」
ヤサコ「これは、暗号?あ、あなた暗号屋なの?」
タケル「え?ああ、違うよ。これは誰かが書いて残していったものなんだ」
ヤサコ「それって……」
タケル「うん。あいつらが勘違いした天沢勇子のしわざだよ、きっと。知り合いなの?」
ヤサコ「え?あ、うーん……。や、全然。
実は道に迷っちゃったの。私方向音痴でさー」
タケル「どこまで行きたいの?」
ヤサコ「え、えーとね、大黒駅」
タケル「え……」
ヤサコ「ん?」
タケル「だってほら、駅はあそこに……」
ヤサコ「あー、やだ」
タケル「本当に方向音痴なんだね」
ヤサコ「う、ふふふ」
タケル「ぼく、タケル。第1小の6年」
ヤサコ「私、優子。3小の6年よ。ヤサコって呼ばれてる」
タケル「へー、ヤサコ。ヤサコか。ぼくもそう呼んでいい?」
ヤサコ「もちろん」
タケル「や、ヤサコ。え、駅まで送ってあげるよ」
ヤサコ「あ、ありがとう。
ねえ、ここって昔からこんな風景だった?」
タケル「え。うん、多分。駅の近くはだいぶ変わっちゃってるけど。どうしたの?」
ヤサコ「やっぱり、来たことある」
タケル「ど、どこ行くの?
どうしたの?駅に行くんじゃないの?」
ヤサコ「ここ、見覚えがあるの」
タケル「そうなの?」
ヤサコ「私、変なこと言ってるかもしれないけど、多分小さい頃、この辺で迷子になったの。そして……
何かが、何かがあったの」
タケル「何かが、って何があったの?」
ヤサコ「忘れてる……。小さい頃だったし。思い出したい。でも、思い出せないの」
タケル「それは、大事なことなの?」
ヤサコ「うん、多分」
タケル「一緒に探そう」
ヤサコ「え?」
タケル「この辺は、ぼくの方が詳しいから。一緒に探せば見つかるかもしれない」
ヤサコ「で、でも……」
タケル「ね、どんな場所なの?その、探してる場所」
ヤサコ「石の階段があって、その上に鳥居がずっと続いているの」
タケル「もしかして、あそこかも!ほら、早く!」
ヤサコ「うん」
タケル「ほら、ここ」
ヤサコ「あ……きっとここだわ!」
タケル「……あ!
待ってヤサコ止まって!
危ない!」
ヤサコ「あ……」
タケル「解体中だったんだな、この神社。だけど見つかってよかったね、探してた場所」
ヤサコ「違う場所だわ……似てるけど」
タケル「そうなの?」
ヤサコ「階段は、まっすぐ上まで伸びてた。途中でこんな風に曲がってなかったの」
タケル「そっかー。残念だな」
ヤサコ「私の勘違いなのかなー・蟻でも自分が行く場所、分かってる。でも、私は見つけられない。なんかみじめな気持ちだわー」
タケル「そこで、何があったか知らないけどさ、」
ヤサコ「ん?」
タケル「本当にあったのなら、きっと見つかるよ」
ヤサコ「本当にあったのかどうかも、よく分からなくなってきちゃった」
タケル「いや、きっと本当にあったんだと思うよ?」
ヤサコ「え?」
タケル「少なくともこんなに見つけたいって思ってるヤサコの気持ちは本物だろ?だったらその気持ちで探せば、何かきっとみつかると思うよ。本当の何かが」
ヤサコ「あなたいい人ね」
タケル「え!」
ヤサコ「辺な連中から助けてくれたし、鳥居を探すの手伝ってくれるし。男の子がみんなあなたみたいだといいのに」
タケル「そ、そんなことないよ。ほら、行こうよ!」
ヤサコ「うん!」
タケル「ねえ、その場所で何があったの?」
ヤサコ「一言では言えないかなぁ」
タケル「ふ−ん。いいことだったみたいだね」
ヤサコ「いいことだけじゃなかったかもしれない」
タケル「怖いこと、悲しいこと?」
ヤサコ「どうだったかな。その両方だったかも。でもこれだけ探しても無いんじゃ実在しない場所だったのかもねー。夢とか」
タケル「もしかしたら、本当に実在しない場所かもしれない」
ヤサコ「え?」
タケル「でも夢でもなかったかもしれない」
ヤサコ「どういうこと?」
タケル「その時、メガネをかけてなかった?」
ヤサコ「かけてたわ」
タケル「もしかして、それはメガネでしか見えない場所なんじゃ」
ヤサコ「メガネでしか見えない?!そんな場所なんてあるの?」
タケル「古い空間さ」
ヤサコ「古い、空間?」
アイキャッチ
タケル「古い空間にもいろんなバージョンがあるんだ。中には現実世界との差に時差があって本当はとっくになくなったものが見えたりする」
ヤサコ「現実にはない場所ってこと?」
タケル「でも、もしそこが古い空間にあるとしたら、急いで見つけなくちゃいけない」
ヤサコ「どうして?」
タケル「サッチーだ。こっち側には滅多にこなかったけど、この1週間でよく見かけるようになったんだ」
ヤサコ「私たちの方は毎日よ……おかげで3小の近くには古い空間が1つもないの」
タケル「そっかあ。サッチーより早くみつけないと」
ヤサコ「そうね」
タケル「イマーゴが使えるといいんだけどな」
ヤサコ「イマーゴって」
タケル「古い空間を見つける、メガネの超能力なんだ。都市伝説だけどね。メガネをかけると不思議な声や感覚を感じ取って」
ヤサコ「でも、イマーゴは」
ヤサコ&タケル「あっ」
ヤサコ「大黒市はなんであんな古い空間を消そうとするんだろう」
タケル「古い空間にはいろんな噂があるから。電脳ナビを誤作動させたり、去年はそれで子供も死んだって。それにしても、あんなに一度に見たのははじめてだ。これはまずいな……」
ヤサコ「まずいって?」
タケル「本格的に古い空間をつぶしに来たかもしれない。早くみつけないと、今日にも消されてしまうかも。
とは言っても、アテもなく探しても見つかるわけないしなー。ん?どうしたの?ヤサコ?」
ヤサコ「私、聞こえるの」
タケル「聞こえるって、何が?ヤサコー」
ヤサコ(あの後、あの人と別れた後)
ヤサコ「どうしよう……迷っちゃった。ここ、さっきも通ったわ。あ!」
ヤサコ(私は帰り道が分からなくなって何かに出会った。あれは……今から思えば)
ヤサコ「イリーガルだわ」
タケル「そんな昔にイリーガルと?」
ヤサコ「多分。でもうまく思い出せない。あの時、何がおこったか」
イリーガル「ーーーーーーーー」
ヤサコ「え?なんて言ったの?」
イリーガル「ーーーーーーーー探している」
ヤサコ「何かを探してた。何かを探して、私と同じ、迷子になってた。タケルくんの言う通りだわ」
タケル「え?」
ヤサコ「あのイリーガルがいた場所も、あの階段鳥居も。古い空間だわ!あそこで何がおこったの……あ!」
タケル「ヤサコー!」
ヤサコ「あの時と同じ、この先にあるわ!」
タケル「ま、待って!どうしたの?ヤサコー!古い空間だ。一体どうやって?」
ヤサコ「さっきの話し。イマーゴの。多分私、それかもしれない」
タケル「え?イマーゴの超能力?本当に?」
ヤサコ「今までも何度かあったの。ヒソヒソいう声が聞こえて」
タケル「す、すごい。ぼくも何度かためしてみたけど、全然だめだったんだ!ねえ、どんな風に聞こえるの?メガネのスピーカーからなの?それとも……」
ヤサコ「あたし、デンスケを探しに来て、道に迷っちゃったの。おうちに帰る道、知らない?」
イリーガル「知らない」
ヤサコ「あなたは何を探しているの?」
イリーガル「ーーーーーー」
ヤサコ「え?」
タケル「ど、どうしたの?顔色が……」
ヤサコ「そうだ、思い出したわ。あの黒い生き物が探していたもの……!」
イリーガル「4423」
ヤサコ「にーさん?」
イリーガル「4423を探している」
ヤサコ「何故4423を?」
タケル「あ!球ちゃんだ!
もう間に合わない!」
イサコ「思い出せない……あとちょっと……あとちょっとなのに……」
お兄ちゃん「早く逃げるんだ、ヤサコ」
ヤサコ「ああ!」
お兄ちゃん「逃げろ!」
ヤサコ「あ!」
タケル「行くなヤサコー!」
ヤサコ「止めないで!もうじき、あの場所が……!」
タケル「いいからここを出るんだ」
タケル「大丈夫?何か思い出せた?」
ヤサコ「うーん。あんなの、現実なわけがない。きっと小さい時にみた夢だったんだわ。あなたこそ、なんであんなに止めたの?」
タケル「古い空間にいろんなバージョンがあるって話し、したよね」
ヤサコ「ええ」
タケル「これがさっきの場所のバージョンなんだ。5.20以上の古い空間は、霧が出るくらいなんだけど、それ以下のバージョンはヤバいらしいんだ」
ヤサコ「ヤバいってどんな?」
タケル「あくまで都市伝説の話しなんだけど、あんまり深いところまで行くと、戻ってこれなくなるって」
ヤサコ「戻ってこれなくなる……」
タケル「そう。生身の体と電脳の体がズレて、やがて、魂ごとあっちにつれていかれるんだって」
ヤサコ「つれていかれるって。何に?」
タケル「ぼくもよくは知らないけど、もし君が古い空間を見つけられるんなら、1つ教えておいてあげる。これも都市伝説なんだけど、ヤバい空間では、絶対に守らなきゃいけないルールがある」
ヤサコ「何?」
タケル「新しい空間に戻るまで、絶対にメガネを外さないこと。もし電脳の体がズレた時に外すと」
ヤサコ「どうなるの?」
タケル「二度と戻れなくなるって」
ヤサコ「そんなの作り話よ」
タケル「きっとそうだね。でも、都市伝説では、そのまま意識不明になっちゃった子とか、死んだ子もいるって」
ヤサコ「色々助けてくれてありがとう」
タケル「ぼくの方こそ。楽しかったよ。大変だったけど」
ヤサコ「へへ。ごめん。」
タケル「きっと。まだどこかにあるよ。思い出の場所」
ヤサコ「うん。じゃ、また会えるといいね」
ヤサコ「ん?」
タケル「もう迷うなよー!」
ヤサコ「うん!さよーならー!」
ヤサコ「ただいま」
ヤサコ母「やっとお帰りねー。やっぱり迷子になったんでしょ」
ヤサコ「知らない」
ヤサコ母「電話があったわよ」
ヤサコ「誰からー?」
ヤサコ母「金沢で担任だった、石田先生」
ヤサコ「それで何だって?」
ヤサコ母「マユミちゃんって友達いたでしょ?ほら、いつも一緒にメガネ遊びしてた。あの子ね、もうすぐ北海道に引っ越すんだって」
ヤサコ「え?」
ヤサコ母「優子と仲良かったからって、わざわざ連絡くだすったのよー。これ、マユミちゃんの連絡先だって」
ヤサコ「不思議な男の子だったなー。でもおかげちょっとだけ思い出せたわ。あのイリーガル。それに4423。本当に現実だったのかしら」
ヤサコ「これも夢の記憶を書いたのかな……それとも……」
タケル「うん、うん、あの空間にはなかったよ。それより偶然おもしろい子と知り合ったんだー。うん。イマーゴの子供だと思う。その、あのカンナって子と同じに」
ヤサコ「次回、電脳コイル イサコの病室 お楽しみに」