第8話 イントッカービレ(acte I)

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2体の石像 ボボッ 霧香「NOIR。 そは 古(いにしえ)よりの定めの名 死を司る2人の乙女 黒き御手は嬰児(みどりご)の 安らかなるを守りたもう」 ブシュッ 男「メキシカンの連中は、もうニューヨークを取った気でいるらしい」 男B「ん?」 男「メキシコからは、尽きることなく兵隊達が密入国してくるだろう。これ以上、黙っている訳にはいかない」 男B「連中は失うものがない。かつて我々の祖先がそうであったように。この世界では植えた者が強い」 男「しかし、ドン・グレオーネ」 男B「分かっている。我々の父や兄が血を流して手に入れた土地を守る。それが名誉ある男の義務だ」 男「おお……では」 男B「メキシカンは叩き潰す!コーザ・ノストラの名の元に」 男「ドン・グレオーネ。それでは」 男B「ん?」 男B「うぉぉ!」 護衛達「うおぁ!」 ミレイユ「マフィアは自分たちのことをマフィアとは呼ばない。シシリア移民の彼らは自らをコーザ・ノストラと呼ぶ。依頼人はアレを握っている。この橋は渡るしかなかった」 霧香「依頼は果たした。でも私達は、まだあれを、約束の契約書を受け取っていない」 ミレイユ「段取りはついているわ。グレオネファミリーの契約書。やっと見つけたソルダの手がかり。何が書かれているのか、楽しみね」 霧香「うん」 男達「ドン・サルバトーレ!」 老人「リカルドは」 男「ハッ」 老人「シシリアから、イントッカービレを呼べ」 男「イントッカービレ」 老人「そうだ」 男「しかし、それは……!」 老人「呼ぶのだ。今すぐにだ!もはや躊躇している時ではない!」 女の子「ねー、お姉ちゃーん!」 ミレイユ「へー、そうなの。うん、で、他には?……え!?」 霧香「うん?」 ミレイユ「ううん、別に。なんでもないわ。ええ、ありがとう。また何かあったら教えてちょうだい」 霧香「どうしたの?」 ミレイユ「なんでもないわ」 ミレイユ(イントッカービレ) シルヴァーナ「私には、恐れはない」 老人B「おお」 老人C「イントッカービレ」 老人「おお!我がイントッカービレ! 5年前、お前は実の父を殺した。お前の父は沈黙の掟、オメルタを破った。お前は当然のことをしたのだ。グレオネ家の血を、最も色濃く受け継ぐ者、おお、我が孫シルヴァーナよ。儂はお前をシシリアに封じ、お前もまた何も言わずそれに従った。時代は変わった。あまりに早く。コーザ・ノストラの名誉を守れる者はにはやお前しかない。ホンミッショーネの名誉ある委員達が見届けてくれよう。グレオネファミリーの全ての力は、今よりお前に委ねられる。 取るがいい。お前が父を刺した探検だ」 老人「うおお……!そうだ、それでいい。お前の自由を奪い、ファミリーの威信をも失墜させた責任は儂にある。愛しているよ、シルヴァーナ」 シルヴァーナ「おじいさま……私も、愛しています」 ミレイユ「フンフーン♪フンフフーン」 霧香「あ、ミレイユ」 ミレイユ「イントッカービレ。聞いたことある?」 霧香「うん。犯すべからず者、イントッカービレ。決して手を出してはならない存在」 ミレイユ「あたしは。あたしはその人を知っている」 ミレイユ「シシリアの有力者とも親交があった父はある時、あたしを連れてシシリアを訪れた。そこへ、ドン・サルバトーレが顔を出した。シルヴァーナ・グレオーネ。世界で最も凶暴な姫君」 シルヴァーナ「ドン・ルッシュを暗殺した者は、明らかにドンの行動予定を知っていた。身内に裏切り者がいる。お前だ!リッツ。お前はメキシカンと手を組み、ドンを売った」 男「殺せー!」 シルヴァーナ「シシリアの格言にある。流された血は、血にて洗うべしと」 キャー! 男「うわー!やめてくれ……ああそうだ。俺だ!俺が頼んだ。NOIRに」 シルヴァーナ「NOIR……」 男B「これを……」 男「役にも立たない、大昔の契約書だ。NOIRはこれを欲しがっている。何故かは知らない。本当だ。だが……やめろ!やめてくれー!」 ミレイユ「パウロ。ドミニスク。フランチェスコ。聖人の名前を持つ3人のマフィオース。シシリアの中では知られた、あの3人が、イントッカービレの前に馳せ参じた」 シルヴァーナ「私には……恐れは……ない!」 フランチェスコ「それは?」 シルヴァーナ「NOIRは、これと引き換えにドン・ルッシュの殺しを請け負ったらしい」 パウロ「NOIRか」 ドミニスク「へっ、リッツめ。流石に一流どころに頼んだな」 シルヴァーナ「ドン・ルッシュの落とし前をつける。それが新たにファミリーを率いる者の、義務だ」 パウロ「フッ」 フランチェスコ「では、こちらから仕掛けますか?」 シルヴァーナ「その必要はない。これを握っている限り、必ず向こうからやって来る」 フランチェスコ「なるほど」 シルヴァーナ「だが、多少は来やすくしてやった方がいいだろう」 パウロ「分かりました」 ピンポーン 霧香「あっ」 ミレイユ「依頼人が、殺られた」 霧香「契約書は、シルヴァーナの手に渡ったのね」 ミレイユ「間違いないわ。シルヴァーナは、あの3人を連れて、ニュージャージーの別荘に移った」 霧香「私達を、誘っているのね」 ミレイユ「誇りにかけてもNOIRを処刑する。それがあの人の生まれ持つ血よ」 霧香「どうするの?」 ミレイユ「犯すべからず者、イントッカービレ。あの人には勝てない……あの人にだけは……」 霧香「ミレイユ」 ミレイユ「分かっている。私達はやるしかない」 パウロ「フッ」 フランチェスコ「主は生きる者全ての慈悲を説かれた。だがイントッカービレに手を出す愚か者だけは、主もお見捨てになるだろう。身の程知らずが!」 霧香「ハッ……えいっ!」 ドミニスク「仕留めたか」 パウロ「NOIR……噂以上の相手だ」 霧香「ハッ、ハア、ハア、ハア」 シルヴァーナ「来たか」 ミレイユ「ハッ!いやああああ!」 パウロ「レディ・シルヴァーナ、 NOIRの顔は見ましたか?」 シルヴァーナ「いや、見えなかった」 ミレイユ「やり損なった。いえ、やれなかったのよ、私は」 霧香「顔は、見られたの?」 ミレイユ「分からない。分からないわ」 シルヴァーナ「私には、恐れはない。あなたはどうなの?ミレイユ」

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