第1話 櫻の丘

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第1話 櫻の丘」(2017/01/04 (水) 13:56:09) の最新版変更点

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静馬「いつからだろう……。立ち並ぶ木々が全て緑を失って見えるようになったのは。 いつからだろう……。生い茂る葉の香りを感じなくなったのは いつからだろう……。」 タイトル:櫻の丘 渚砂「え……。うそ……。アストライアの丘って……あんなに遠いのぉ……。 うああー! 間に合わないよー!」 (鐘の音) 渚砂「はぁ……はぁ……あ! うわぁ……はは! あ! (ミアトルの制服を見て) あーこの洋服素敵! (スピカの制服を見て) あー綺麗~ (ル・リムの制服を見て) この制服も可愛いかも~。 あー……あ。うわああああ! いやあああああ! うわー!」 (茂みから飛び出る) 渚砂「いってて……。 う……あ? う……どうしよう……。とにかく、急がなきゃ!」 (鳥のさえずり) 渚砂「うあー、ここどこなのー……はぁー……ん?」 はぁ……ん? ああ!?」 静馬「あ……」 渚砂「あ……あの……。ああ……」 渚砂(すっごく、綺麗な人……) 渚砂「あ、えと、わたし、こちらに編入することに」 静馬「そうなの」 (キーホルダーを拾い) 静馬「どうぞ」 渚砂「あ……」 静馬「ぁ……」 渚砂「ありがとうございます。 あ、あのぉ……」 静馬「うふふ……」 渚砂「あ……」 渚砂(なんだか、体が動かない……) 渚砂「え?……えー?」 (でこチュー) (渚砂、気を失う) 渚砂「ああ! ……なに、なんだったの? 全部夢だったの? わたし……」 玉青「ふふ」 渚砂「うわあ!」 玉青「あら、ごめんなさい。あんまり寝顔が可愛いから、思わず見惚れてしまいましたわ」 渚砂「あの……ここは……」 玉青「あ……ここは、聖ミアトル女学園の保健室ですわ。はじめまして、わたし、涼水玉青(すずみたまお)です。」 渚砂「あ、わたしは」 玉青「存じております。蒼井渚砂(あおいなぎさ)さんですよね。わたし、渚砂さんと同じ学年、同じクラス、寮でも同室なんです」 渚砂「あ、そうなんだ」 玉青「渚砂さん、具合はいかがですか?」 渚砂「全然平気です! もう、ほら、ね?」 (玉青笑いながら) 渚砂「ええー!? もうこんな時間!?」 玉青「ええ、話によると、朝中庭辺りで倒れてらしたとか。それでこちらに運ばれてからずっと寝てらしたと聞いていますわ。」 渚砂「ゆうべ緊張して、あんまり眠れなかったので」 玉青「それで、わたしが同室ということで、目を覚まされるのをお待ちしていたんです」 渚砂「授業が終わって今までずっと?」 玉青「ええ、大したことありませんわ。渚砂さんの、可愛い寝顔を眺めていたら、あっという間でしたもの」 渚砂「あ、ははは……」 玉青「とにかく、お元気で何よりですわ。編入の手続きは終わってますから、これから学校の中を少し回って、一緒に寮に参りましょう」 渚砂「はい、よろしくお願いします」 (玉青ドアをロックする) 玉青「ああ、その前に……」 渚砂「え、何?」 玉青「ちょっとお時間をいただきますわ」 渚砂「あ、え、え……ふええ!? あ、うう、何で身体測定が必要なの?」 玉青「制服を注文するためですわ はい、次はアンダーです。」 渚砂「はい」 玉青「制服が揃ってないなんて、よほど急な編入だったのですね。 はい、足を揃えてください?」 渚砂「あ……くすぐったいです」 玉青「動かないでくださいね?」 渚砂「はいぃ」 購買部店員「冬服夏服一式ね? えっとお名前は……蒼井渚砂、と。で、サイズは」 玉青「7号のARでお願いします 渚砂「え?」 購買部店員「はい、かしこまりました」 渚砂「あの、涼水さん、あの、サイズ……」 玉青「そんな呼び方水臭いですわ。名前で呼んでください」 渚砂「え、じゃあ、玉青ちゃん?」 玉青「はい? なんでしょう、渚砂ちゃん」 渚砂「あの制服のサイズって号数だけじゃない。さっき全身測った意味は?」 玉青「ああ、あれですか?」 渚砂「そうそう、体重とか股下とかアンダーバストとか。わざわざ測った意味が」 玉青「意味はありますわ! 渚砂ちゃんの全てのデータはわたしの大切な宝物なのですから……」 渚砂「う……」 玉青「ご両親が海外に転勤されたんですか」 渚砂「うん。わたし1人こっちに残ることになっちゃって。うちのおばさんがミアトル出身で、紹介するからって、すぐここに編入することが決まっちゃったの」 玉青「そうだったんですか。普段4年生で入ってくる方はいらっしゃらないので、不思議に思っていました」 渚砂「4年生?」 玉青「はい。ミアトルは中高一貫ですから。私たち高校1年生は、ここでは4年生と呼ぶのです」 渚砂「あ、そうなんだ……あ」 玉青「え?」 渚砂「ここからも見えるんだ」 玉青「ああ、お御堂ですね。アストライアのシンボルと言える建物ですわ。お御堂の西には聖スピカ女学院、東には聖ル・リム女学校がありますわ」 渚砂「ああ。それで今朝女の子の制服が3種類あったのね?」 玉青「ええ。白い制服がスピカ、チェックのスカートがル・リムですわ。 はい。こちらが教室です。席は明日、先生が指定してくださると思いますわ」 渚砂「わ―、落ち着いた感じ」 玉青「そろそろ、寮に行きましょう。渚砂ちゃんのお荷物が届いているかもしれませんし」 渚砂「うん」 玉青「それに、6時の門限に間に合うようにしないといけませんから」 渚砂「門限……そんなのあるんだ」 玉青「ええ、絶対厳守、遅れたら大変なことになりますわ」 渚砂「うわー……すごーい」 (マリア像に向かい) 渚砂(これから、よろしくお願いします) 玉青「お祈りしている渚砂ちゃんも、素敵ですわ」 渚砂「あ、ああ……」 女生徒A「あ、涼水さん」 女生徒B「部長がお探しでしたよ」 玉青「ああ」 (渚砂1人で歩きながら) 玉青「残念ですわ! ご一緒できなくなってしまいました。こんなことになるなんて、お詫びのしようもありませんわ」 渚砂「大げさだなぁ、玉青ちゃん」 玉青「いいえ、渚砂ちゃんに何かあったら、私は……」 渚砂「ありがとう。でも寮に行くだけだし」 玉青「とにかく、くれぐれも気をつけてくださいね」 渚砂(なんか、圧倒されちゃうんだよね) 渚砂「あ…… あ!」 あの人……。 待って! はぁ、はぁ…… どこまで行くのかな。 あの! くっ はぁ、はぁ あ! ……あれ? 消えちゃった。 あ」 玉青「門限は6時。遅れたら大変なことになりますわ」 渚砂「いっけなーい」 玉青「ギリギリになってしまいましたわ」 (ドアを開ける音) 渚砂ちゃん! すみません! ……あれ? まさか、まだ……」 (鐘の音) 玉青「あ……」 渚砂「はあ、はあ、はあ、はあ」 (門が閉まる音) 玉青「あ、待って! 渚砂ちゃんが、まだ……!」 渚砂「玉青ちゃーん!」 玉青「渚砂ちゃん!」 渚砂「はあ、はあ!」 (門が完全に閉じる) 渚砂「玉青ちゃん、開けられないの!?」 玉青「すみません」 渚砂「じゃあ、わたしもう入れないの?」 玉青「いいえ。舎監のシスターだけがこの門の鍵をお持ちなのです」 渚砂「シスター?」 玉青「はい。いらっしゃいました」 シスター「どなたですか?」 渚砂「あ……」 シスター「門限を破るような人は、このアストライア寮にはいないはずですが?」 (教鞭で机を叩く音) シスター「残念です。いかに編入生とはいえ、初日から門限を破るとは恥ずかしくないのですか?」 渚砂「すみません!」 シスター「ではもう一度」 渚砂「はい!」の規則を詠唱いたしましょう。はい、1条から」 渚砂「第1条、アストライア生は」 玉青「あ……」 渚砂「当寮生での誇りを持ち、寮生として、」 玉青「あ」 渚砂「学生の本分に則り」 玉青「六条生徒会長」 渚砂「第10条、携帯電話、ポケットベルの所持は、これをすべ……」 (ノックの音) シスター「どなたですか?」 深雪「六条です」 シスター「入りなさい」 深雪「失礼します。この度は、シスター浜坂にお手数をおかけして、申し訳ありませんでした」 シスター「まあいいでしょう。せっかく生徒会長がお迎えにいらしたのですから。今回のことはこれまでにいたしましょう」 深雪「ありがとうございます」 渚砂「あ……」 深雪「行きましょう」 深雪「あなたもついてないわね」 渚砂「え?」 深雪「編入初日にシスターに呼び出されるなんて」 渚砂「あ、はい。その」 玉青「こちら、6年の六条深雪さま。ミアトルの生徒会長ですわ」 渚砂「あの……」 深雪「ん?」 渚砂「すみませんでした」 深雪「蒼井渚砂さんだったかしら。次から気をつけてくれればいいのよ?」 渚砂「だってだって生徒会長さんにお迎えまでさせちゃって」 深雪「気にしないで。私の仕事なんだから。それに、私なんかでそんなに緊張していたら、エトワールと会ったらどうなるの?」 渚砂「エト、ワールって何? 先生なの?」 玉青「うふふ。生徒ですわ。ミアトル、スピカ、ル・リムの3校を代表なさる方のこと」 渚砂「3校の代表って、あのシスターより怖い?」 玉青「あ……」 玉緒・深雪「ふふふっ」 深雪「別に、怖くなんかないわ」 玉青「3校で最も愛され、尊敬されている方」 深雪「一応そういうことになるわね。少なくとも、一番愛されているのだけは間違いないわね」 渚砂「なんかすごい学校かも……。舎監の怖いシスターに、生徒会長、そして生徒会長の上にエトなんとか」 玉青「渚砂ちゃん? 食堂へ行きましょう?」 渚砂「あ、うん」 (生徒の話し声) 絆奈「ねえねえ、編入生ってどんな子だと思う?」 檸檬「すっごく綺麗な子だったりして」 絆奈「えー、期待しちゃうなー」 籠女「パーシバルはー、編入生って、知ってる?」 (グラスが倒れそうになる) 檸檬「あ、すみません」 千華留「大丈夫、気を付けてね」 ミアトル生徒「編入生のお噂、お聞きになりました? 月舘さま」 千代「いえ、み、あっと……」 スピカ女生徒「編入生の噂、もう聞いた?」 蕾「私、ミアトルの編入生なんて、興味ないわ」 夜々「花莉、ダメよ、私以外の人を好きになっちゃ」 花莉「夜々ちゃん、それ誤解されちゃうよ」 天音「編入生か……」 深雪「ここが食堂よ。まず食事の前にエトワールにご挨拶した方がいいわね」 渚砂「はい! 渚砂「あ……なんかみんなの視線、厳しいような……わ!」 深雪「編入生です。エトワールにご挨拶に参りました」 ミアトル生徒「あ……」 水穂「あ、今ちょっと席を」 渚砂「あの! はじめまして、エトワールさま! 今日から編入することになりました、1年生……あ、違った、4年生の蒼井渚砂です! あの、その……よろしくお願いします!」 玉青「渚砂ちゃん、違う……」 渚砂「ふう」 静馬「またお会いしましたわね」 渚砂「え、うわ、あー! けけけ、今朝の!」 静馬「あら、覚えてくださったのね。光栄だわ」 渚砂「忘れるわけないでしょ! いきなりひとのそばに寄ってきて、そして、そして……。はぁ、だめよ、ここをどこだと思っているの! エトワールさまの前なのよ!」 静馬「エトワール?」 渚砂「そうよ、分かってる? とっても偉い人なのよ! 生徒会長より偉いのよ! だから、だからこんなところで、偉い人の前で、こんな、 だ、だめよ!」 静馬「だめじゃないわ」 (ざわめき) 渚砂「な、なんなの。なんでこの人、どうして、なんで……」 深雪「静馬、そこまで」 静馬「何故止めるの?」 深雪「時間よ」 (時計の音) 玉青「渚砂ちゃん! 渚砂ちゃん!」 深雪「みなさん、お席について」 渚砂「はぁ……」 深雪「それでは、食前のお祈りを、エトワール、花園静馬さま」 渚砂「えっ え、えと、えと、そんな」 玉青「渚砂ちゃん」 渚砂「あ」 静馬「主よ、今いただくこの食事を感謝いたします。どうぞ、これを祝福し、私たちの体と魂を養い」 渚砂「あの人が、エトワール?」 静馬「御心に叶う良い働きが出来ますよう」 渚砂「3校の代表の、誰からも愛されてる人なの?」 静馬「精霊とのみ名に寄りて、アーメン うふっ」 渚砂(し、し、し、し、信じられない!) 玉青「すごいデビューでしたわ。いきなりエトワールの静馬さまにあんなに迫られるだなんて」 渚砂「デビューって」 玉青「やっぱり、わたしの渚砂ちゃんがかわいすぎるのですね」 渚砂「あの、別にわたし、玉青ちゃんのものじゃ……」 玉青「動いちゃだめ」 渚砂「は、はい」 玉青「本当に綺麗な髪。これから毎日、お手入れをしっかりしないと」 渚砂「ふー」 渚砂(私、なんかすっごい学校に来ちゃったのかも……。これから、どうなるのかなぁ……) 次回予告 渚砂「ねえ玉青ちゃん、エトワール様って」 玉青「エトワール、それはフランス語で星を意味する言葉ですわ。そして、このアストライアでは3校全ての生徒達の頂点に立つお方をエトワールとお呼びするのです」 渚砂「へー」 玉青「気をつけて、渚砂ちゃん。エトワールの静馬さまに見込まれた下級生は……」 渚砂「下級生は、どうなるの?」 渚砂・玉青「次回、ストロベリーパニック。エトワール」 玉青「ああ、これ以上は言えませんわ」
静馬「いつからだろう……。立ち並ぶ木々が全て緑を失って見えるようになったのは。 いつからだろう……。生い茂る葉の香りを感じなくなったのは いつからだろう……。」 タイトル:櫻の丘 渚砂「え……。うそ……。アストライアの丘って……あんなに遠いのぉ……。 うああー! 間に合わないよー!」 (鐘の音) 渚砂「はぁ……はぁ……あ! うわぁ……はは! あ! (ミアトルの制服を見て) あーこの洋服素敵! (スピカの制服を見て) あー綺麗~ (ル・リムの制服を見て) この制服も可愛いかも~。 あー……あ。うわああああ! いやあああああ! うわー!」 (茂みから飛び出る) 渚砂「いってて……。 う……あ? う……どうしよう……。とにかく、急がなきゃ!」 (鳥のさえずり) 渚砂「うあー、ここどこなのー……はぁー……ん?」 はぁ……ん? ああ!?」 静馬「あ……」 渚砂「あ……あの……。ああ……」 渚砂(すっごく、綺麗な人……) 渚砂「あ、えと、わたし、こちらに編入することに」 静馬「そうなの」 (キーホルダーを拾い) 静馬「どうぞ」 渚砂「あ……」 静馬「ぁ……」 渚砂「ありがとうございます。 あ、あのぉ……」 静馬「うふふ……」 渚砂「あ……」 渚砂(なんだか、体が動かない……) 渚砂「え?……えー?」 (でこチュー) (渚砂、気を失う) 渚砂「ああ! ……なに、なんだったの? 全部夢だったの? わたし……」 玉青「ふふ」 渚砂「うわあ!」 玉青「あら、ごめんなさい。あんまり寝顔が可愛いから、思わず見惚れてしまいましたわ」 渚砂「あの……ここは……」 玉青「あ……ここは、聖ミアトル女学園の保健室ですわ。はじめまして、わたし、涼水玉青(すずみたまお)です。」 渚砂「あ、わたしは」 玉青「存じております。蒼井渚砂(あおいなぎさ)さんですよね。わたし、渚砂さんと同じ学年、同じクラス、寮でも同室なんです」 渚砂「あ、そうなんだ」 玉青「渚砂さん、具合はいかがですか?」 渚砂「全然平気です! もう、ほら、ね?」 (玉青笑いながら) 渚砂「ええー!? もうこんな時間!?」 玉青「ええ、話によると、朝中庭辺りで倒れてらしたとか。それでこちらに運ばれてからずっと寝てらしたと聞いていますわ。」 渚砂「ゆうべ緊張して、あんまり眠れなかったので」 玉青「それで、わたしが同室ということで、目を覚まされるのをお待ちしていたんです」 渚砂「授業が終わって今までずっと?」 玉青「ええ、大したことありませんわ。渚砂さんの、可愛い寝顔を眺めていたら、あっという間でしたもの」 渚砂「あ、ははは……」 玉青「とにかく、お元気で何よりですわ。編入の手続きは終わってますから、これから学校の中を少し回って、一緒に寮に参りましょう」 渚砂「はい、よろしくお願いします」 (玉青ドアをロックする) 玉青「ああ、その前に……」 渚砂「え、何?」 玉青「ちょっとお時間をいただきますわ」 渚砂「あ、え、え……ふええ!? あ、うう、何で身体測定が必要なの?」 玉青「制服を注文するためですわ はい、次はアンダーです。」 渚砂「はい」 玉青「制服が揃ってないなんて、よほど急な編入だったのですね。 はい、足を揃えてください?」 渚砂「あ……くすぐったいです」 玉青「動かないでくださいね?」 渚砂「はいぃ」 購買部店員「冬服夏服一式ね? えっとお名前は……蒼井渚砂、と。で、サイズは」 玉青「7号のARでお願いします 渚砂「え?」 購買部店員「はい、かしこまりました」 渚砂「あの、涼水さん、あの、サイズ……」 玉青「そんな呼び方水臭いですわ。名前で呼んでください」 渚砂「え、じゃあ、玉青ちゃん?」 玉青「はい? なんでしょう、渚砂ちゃん」 渚砂「あの制服のサイズって号数だけじゃない。さっき全身測った意味は?」 玉青「ああ、あれですか?」 渚砂「そうそう、体重とか股下とかアンダーバストとか。わざわざ測った意味が」 玉青「意味はありますわ! 渚砂ちゃんの全てのデータはわたしの大切な宝物なのですから……」 渚砂「う……」 玉青「ご両親が海外に転勤されたんですか」 渚砂「うん。わたし1人こっちに残ることになっちゃって。うちのおばさんがミアトル出身で、紹介するからって、すぐここに編入することが決まっちゃったの」 玉青「そうだったんですか。普段4年生で入ってくる方はいらっしゃらないので、不思議に思っていました」 渚砂「4年生?」 玉青「はい。ミアトルは中高一貫ですから。私たち高校1年生は、ここでは4年生と呼ぶのです」 渚砂「あ、そうなんだ……あ」 玉青「え?」 渚砂「ここからも見えるんだ」 玉青「ああ、お御堂ですね。アストライアのシンボルと言える建物ですわ。お御堂の西には聖スピカ女学院、東には聖ル・リム女学校がありますわ」 渚砂「ああ。それで今朝女の子の制服が3種類あったのね?」 玉青「ええ。白い制服がスピカ、チェックのスカートがル・リムですわ。 はい。こちらが教室です。席は明日、先生が指定してくださると思いますわ」 渚砂「わ―、落ち着いた感じ」 玉青「そろそろ、寮に行きましょう。渚砂ちゃんのお荷物が届いているかもしれませんし」 渚砂「うん」 玉青「それに、6時の門限に間に合うようにしないといけませんから」 渚砂「門限……そんなのあるんだ」 玉青「ええ、絶対厳守、遅れたら大変なことになりますわ」 渚砂「うわー……すごーい」 (マリア像に向かい) 渚砂(これから、よろしくお願いします) 玉青「お祈りしている渚砂ちゃんも、素敵ですわ」 渚砂「あ、ああ……」 女生徒A「あ、涼水さん」 女生徒B「部長がお探しでしたよ」 玉青「ああ」 (渚砂1人で歩きながら) 玉青「残念ですわ! ご一緒できなくなってしまいました。こんなことになるなんて、お詫びのしようもありませんわ」 渚砂「大げさだなぁ、玉青ちゃん」 玉青「いいえ、渚砂ちゃんに何かあったら、私は……」 渚砂「ありがとう。でも寮に行くだけだし」 玉青「とにかく、くれぐれも気をつけてくださいね」 渚砂(なんか、圧倒されちゃうんだよね) 渚砂「あ…… あ!」 あの人……。 待って! はぁ、はぁ…… どこまで行くのかな。 あの! くっ はぁ、はぁ あ! ……あれ? 消えちゃった。 あ」 玉青「門限は6時。遅れたら大変なことになりますわ」 渚砂「いっけなーい」 玉青「ギリギリになってしまいましたわ」 (ドアを開ける音) 渚砂ちゃん! すみません! ……あれ? まさか、まだ……」 (鐘の音) 玉青「あ……」 渚砂「はあ、はあ、はあ、はあ」 (門が閉まる音) 玉青「あ、待って! 渚砂ちゃんが、まだ……!」 渚砂「玉青ちゃーん!」 玉青「渚砂ちゃん!」 渚砂「はあ、はあ!」 (門が完全に閉じる) 渚砂「玉青ちゃん、開けられないの!?」 玉青「すみません」 渚砂「じゃあ、わたしもう入れないの?」 玉青「いいえ。舎監のシスターだけがこの門の鍵をお持ちなのです」 渚砂「シスター?」 玉青「はい。いらっしゃいました」 シスター「どなたですか?」 渚砂「あ……」 シスター「門限を破るような人は、このアストライア寮にはいないはずですが?」 (教鞭で机を叩く音) シスター「残念です。いかに編入生とはいえ、初日から門限を破るとは、恥ずかしくはないのですか?」 渚砂「すみません!」 シスター「ではもう一度」 渚砂「はい!」 シスター「当寮の規則を詠唱いたしましょう。はい、1条から」 渚砂「第1条、アストライア生は……」 玉青「あ……」 渚砂「当寮生での誇りを持ち、寮生として、」 玉青「あ」 渚砂「学生の本分に則り」 玉青「六条生徒会長」 渚砂「第10条、携帯電話、ポケットベルの所持は、これをすべ……」 (ノックの音) シスター「どなたですか?」 深雪「六条です」 シスター「入りなさい」 深雪「失礼します。この度は、シスター浜坂にお手数をおかけして、申し訳ありませんでした」 シスター「まあいいでしょう。せっかく生徒会長がお迎えにいらしたのですから。今回のことはこれまでにいたしましょう」 深雪「ありがとうございます」 渚砂「あ……」 深雪「行きましょう」 深雪「あなたもついてないわね」 渚砂「え?」 深雪「編入初日にシスターに呼び出されるなんて」 渚砂「あ、はい。その」 玉青「こちら、6年の六条深雪さま。ミアトルの生徒会長ですわ」 渚砂「あの……」 深雪「ん?」 渚砂「すみませんでした」 深雪「蒼井渚砂さんだったかしら。次から気をつけてくれればいいのよ?」 渚砂「だってだって生徒会長さんにお迎えまでさせちゃって」 深雪「気にしないで。私の仕事なんだから。それに、私なんかでそんなに緊張していたら、エトワールと会ったらどうなるの?」 渚砂「エト、ワールって何? 先生なの?」 玉青「うふふ。生徒ですわ。ミアトル、スピカ、ル・リムの3校を代表なさる方のこと」 渚砂「3校の代表って、あのシスターより怖い?」 玉青「あ……」 玉緒・深雪「ふふふっ」 深雪「別に、怖くなんかないわ」 玉青「3校で最も愛され、尊敬されている方」 深雪「一応そういうことになるわね。少なくとも、一番愛されているのだけは間違いないわね」 渚砂「なんかすごい学校かも……。舎監の怖いシスターに、生徒会長、そして生徒会長の上にエトなんとか」 玉青「渚砂ちゃん? 食堂へ行きましょう?」 渚砂「あ、うん」 (生徒の話し声) 絆奈「ねえねえ、編入生ってどんな子だと思う?」 檸檬「すっごく綺麗な子だったりして」 絆奈「えー、期待しちゃうなー」 籠女「パーシバルはー、編入生って、知ってる?」 (グラスが倒れそうになる) 檸檬「あ、すみません」 千華留「大丈夫、気を付けてね」 ミアトル生徒「編入生のお噂、お聞きになりました? 月舘さま」 千代「いえ、み、あっと……」 スピカ女生徒「編入生の噂、もう聞いた?」 蕾「私、ミアトルの編入生なんて、興味ないわ」 夜々「花莉、ダメよ、私以外の人を好きになっちゃ」 花莉「夜々ちゃん、それ誤解されちゃうよ」 天音「編入生か……」 深雪「ここが食堂よ。まず食事の前にエトワールにご挨拶した方がいいわね」 渚砂「はい! 渚砂「あ……なんかみんなの視線、厳しいような……わ!」 深雪「編入生です。エトワールにご挨拶に参りました」 ミアトル生徒「あ……」 水穂「あ、今ちょっと席を」 渚砂「あの! はじめまして、エトワールさま! 今日から編入することになりました、1年生……あ、違った、4年生の蒼井渚砂です! あの、その……よろしくお願いします!」 玉青「渚砂ちゃん、違う……」 渚砂「ふう」 静馬「またお会いしましたわね」 渚砂「え、うわ、あー! けけけ、今朝の!」 静馬「あら、覚えてくださったのね。光栄だわ」 渚砂「忘れるわけないでしょ! いきなりひとのそばに寄ってきて、そして、そして……。はぁ、だめよ、ここをどこだと思っているの! エトワールさまの前なのよ!」 静馬「エトワール?」 渚砂「そうよ、分かってる? とっても偉い人なのよ! 生徒会長より偉いのよ! だから、だからこんなところで、偉い人の前で、こんな、 だ、だめよ!」 静馬「だめじゃないわ」 (ざわめき) 渚砂「な、なんなの。なんでこの人、どうして、なんで……」 深雪「静馬、そこまで」 静馬「何故止めるの?」 深雪「時間よ」 (時計の音) 玉青「渚砂ちゃん! 渚砂ちゃん!」 深雪「みなさん、お席について」 渚砂「はぁ……」 深雪「それでは、食前のお祈りを、エトワール、花園静馬さま」 渚砂「えっ え、えと、えと、そんな」 玉青「渚砂ちゃん」 渚砂「あ」 静馬「主よ、今いただくこの食事を感謝いたします。どうぞ、これを祝福し、私たちの体と魂を養い」 渚砂「あの人が、エトワール?」 静馬「御心に叶う良い働きが出来ますよう」 渚砂「3校の代表の、誰からも愛されてる人なの?」 静馬「精霊とのみ名に寄りて、アーメン うふっ」 渚砂(し、し、し、し、信じられない!) 玉青「すごいデビューでしたわ。いきなりエトワールの静馬さまにあんなに迫られるだなんて」 渚砂「デビューって」 玉青「やっぱり、わたしの渚砂ちゃんがかわいすぎるのですね」 渚砂「あの、別にわたし、玉青ちゃんのものじゃ……」 玉青「動いちゃだめ」 渚砂「は、はい」 玉青「本当に綺麗な髪。これから毎日、お手入れをしっかりしないと」 渚砂「ふー」 渚砂(私、なんかすっごい学校に来ちゃったのかも……。これから、どうなるのかなぁ……) 次回予告 渚砂「ねえ玉青ちゃん、エトワール様って」 玉青「エトワール、それはフランス語で星を意味する言葉ですわ。そして、このアストライアでは3校全ての生徒達の頂点に立つお方をエトワールとお呼びするのです」 渚砂「へー」 玉青「気をつけて、渚砂ちゃん。エトワールの静馬さまに見込まれた下級生は……」 渚砂「下級生は、どうなるの?」 渚砂・玉青「次回、ストロベリーパニック。エトワール」 玉青「ああ、これ以上は言えませんわ」

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