第4話 光さす庭・プレリュード


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ウテナ「結局、こういうことになるんだね、ミッキー」

幹「ええ、僕はあの音楽を取り戻さなきゃならない。だから、どうしても花嫁が必要なんだ」

ウテナ「君は、ピアノの前に座っている方が、似合っているのに」

樹璃「全くだな」

幹「薔薇の花嫁は、僕のものにしますから!例え、あなたを傷つけても!」

ビュウウウウ

(ピアノの音)

カツカツカツ

パチパチパチ

七実「素晴らしいわ。幹のピアノ。この学園の誇りね〜。先日のパーティーもあなたの演奏のおかげで随分花を添えられたわ。でも、どうしてコンクールの出場をやめちゃったの?先生たちがっかりしてたわよ?」

ポーン

幹「このピアノ、少し音がずれているようだけど」

七実「そお?先週、調律させたばかりよ?」

ポーン

幹「なら、調律が必要なのは僕の方かもしれない」

(ピアノの音)

七実「1人の時はいつもその曲を弾くのね」

幹「僕は本当はこの曲しかピアノを弾く理由はないんだ。僕がピアノを続けているのは、ある人にこの曲を聴いてもらいたいからなんだ」

七実「ある人?」

幹「でも、僕はまだこの曲を思うように弾けない。ふぅ。どうしても求める音にならないんだ」

七実「そんなぁ。わたくしはこれでOKよ?幹の気持ちは十分に伝わってくるわ〜……ああ?」

幹「これはね、自分の中に永遠の美しさを持ってないと弾けない曲なんだ」

七実「その曲の名前は?」

幹「光さす庭」


若葉「参った〜。これまでで最悪の点数だわ」

ウテナ「うーん、大変だねそりゃ」

若葉「だいたいさー、数学なんて九九が言えればそれでいいのよ」

ウテナ「論理的な思考力を育てろってことだろ?」

若葉「でもママが言ってたわよー。論理的なことは、全て男に押し付けるのがいい女だ」

ウテナ「あっそ」

若葉「はぁ。いいわよねー、あんた数学得意だもんねー」

若葉「嘘ー!あんた数学いつもこんなに悪くないでしょー?」

ウテナ「ちょっと油断した」

若葉「ダメよー、論理的な思考力を育てなきゃー」

ウテナ「おい……。ともかく、こんな点数ならルンルンしてられないよなー」

若葉「大変ねー」


アンシー「ルールン♪ルールン♪」

ジャーーーーーー

アンシー「フンフンフン♪」

バシッ!

ガシャッ

女子生徒「私たちがどれほどミッキーのこと好きか知ってるわよね」

女子生徒「聞いたわよ。あんたのせいで、私たちのミッキー、コンクールに出るの止めたって言うじゃないの!」

アンシー「私、知りません」

女子生徒「嘘、ミッキーに余計なこと言って自信なくさせたんでしょー」

女子生徒「そうよ」

アンシー「私、そんなこと言ってません」

バサッ

カチッ

幹「君たち!何をしている!」

女子生徒「ああ……!」

カツカツ

幹「なんだか、僕のことで誤解されて、言いがかりをつけられていたみたいですねー。本当に、申し訳ございませんでした」

アンシー「ありがとう」

パララ(ピアノの音)

幹「いえ……」

ウテナ「んー?あれー」

若葉「ん?なあに?」

ウテナ「姫宮と一緒にいる男の子、誰?」

若葉「あら、ミッキーじゃない」

ウテナ「ミッキー?」

若葉「え、知らないの?1年生の薫幹君。ピアノとフェンシングの腕は全国レベルの美少年でー、まだ中1なのに、大学のカリキュラムをいくつか受けている超秀才よ」

ウテナ「へー」

若葉「でもってねえ?上級生の女子に、すっごい人気で、ミツコ達なんか大騒ぎよー」

ウテナ「ふーん」

若葉「でも」

ウテナ「ん?」

若葉「なんで姫宮アンシーとミッキーが一緒にいるのかしら」

ウテナ「うん」

カタカタ

カチッ

ポン

樹璃「や」

幹「樹璃先輩!」

樹璃「部室にも生徒会室にもいないと思ったら、図書館でお勉強とはねー。誰かの答案、添削をしているのか?」

幹「ええ、ちょっと」

樹璃「へー。他人とは距離を置きたがる君が珍しいじゃないか」

幹「ねえ、樹璃先輩」

樹璃「ん?」

幹「幸せっていうのは、案外身近にあるものなのかもしれませんね」

樹璃「は?それにしても、すごい答案用紙だなー。一体誰のだ?」

リーリーリー(虫の音)

幹「一応直してみました」

アンシー「あ……」

幹「その先生は、いつもそういうひっかけ問題を出すんですよねー。以後注意してみてください」

ウテナ「いいよなー、添削してもらえて。やっぱ持つべきものは論理的なボーイフレンドか?」

幹「天上先輩!」

ウテナ「ん?」

幹「薫幹です。宜しくお願いします」

ウテナ「僕のことしってるの?」

幹「もちろんです。あなたは今、僕たちの間では有名人ですから」

ウテナ「僕たち?」

幹「これですよ」

キラリーン

ウテナ「あ!君も奴らの、生徒会の一味なのか?」

幹「えっ」

ウテナ「やっぱ君も薔薇の花嫁を狙っているわけ?」

幹「え、え。誤解しないでください。僕は生徒会メンバーではありますが、姫宮さんを決闘で花嫁にしようとは思っていません。本当です。これは、今度の追試に出そうな問題のヤマです。このノートに書いた公式さえ覚えていれば、だいたいクリア出来ると思います」

アンシー「ありがとう」

パラララ(ピアノの音)

幹「いえ」

ウテナ「ふ。でも、かなり彼女のことを気にしているように見えるけど?」

チュチュ「ちゅ……」

幹「彼女は、姫宮さんは、僕の知っている子に少し似ているんです。それだけです!天上先輩と決闘するつもりなんか、ありませんから」

ウテナ「当たり前だよ。君たち生徒会のおかげで、僕たちがどれだけ迷惑を受けているか分かる?なんだか知らないけど、君たちが決闘だのなんだのってくだらないことに巻き込むから、僕たちはこうして追試まで受ける羽目になっちゃったんだ」

幹「僕たちって、先輩も追試なんですか?」

ウテナ「う……う……いやあ、うー、そうなんです」

アイキャッチ

(ピアノの音)

桐生「いいね、今日のは。テクニックでねじ伏せるようないつもの迫力じゃなくて、なんだか音に潤いを感じるよ。前に言ってた、輝く者でもみつけたのかな?」

幹「ええ。そうかもしれません。僕は、ずっと亡くしていたものを、ついに取り戻せるかもしれないんです」


桐生「それは羨ましいな。その輝く者が取り戻せたら、是非、俺にも教えて欲しいね」

七実「何が輝く者よ!」


A子「かしらかしら、ご存知かしら」

B子「小学校の時、初めて付き合った子は、クラスで1番算数の出来る子でしたー」

A子「あらー初耳。その頃にもう彼氏がいたの?」

B子「ギロ。あたしがあたしがプロレスとぉー、にんにくラーメン大盛り!」

A子「〜〜〜」

A子「君がどういう子か分かったよ」

B子「って言ってそれっきりになっちゃったのにー」

A子「おー、恋する者よ、夢見る恋のワンコードよ」

B子「本当の彼女の正体を」

A子「果たしてあなたはご存知かしら?」

A子・B子「かしらかしら、ご存知かしら〜」

キンコーン

ウテナ「はーい」

ガチャ

ウテナ「ああ」

幹「遅くなってすいません」

ウテナ「や、待ってたよ。どうぞ」

幹「あの。実は……」

ウテナ「ん?」

七実「わたくしもご一緒してよろしいでしょうかー?」

ウテナ「あれー、君は確か」

七実「七実ですぅー」

ウテナ「幹君の彼女?」

幹「ち、違いますよ!」

七実「む」

ウテナ「ま、入ってよ。姫宮も中で待っているからさー」

幹「お邪魔しまーす」

七実「お邪魔しまーすぅ」

キィ、ガチャン

幹「へー。この寮ってお化け屋敷って呼ばれてるけど、中は綺麗なんですねー」

七実「いい部屋ですよねぇ」

ウテナ「ああ。姫宮が毎日、マメに掃除してくれるからねー」

幹「姫宮さんて、綺麗好きなんですねー」

七実「凄いわ、わたくし関心しちゃう」

七実(フン、見てなさい。姫宮アンシーを可愛いなんて思うのも今のうちよ)

幹「いいなー、天上先輩は。こんな女性らしい人と住めて」

ウテナ「嫌味かー?」

(七実妄想)

七実「姫宮先輩?消しゴム貸してくださいね〜。ああ〜ん、でんでん虫よー、でんでん虫がいるわー」

ウテナ・幹「ええ!」

七実「この人筆箱にでんでん虫なんか入れてるわ!」

ウテナ「姫宮!見損なったよ!」

幹「僕幻滅しちゃいました!」

七実「おーほっほっほっほ。これまでねえ、姫宮アンシー」

七実「なーんてことになるのよ。名付けて、まあ姫宮アンシー筆箱にでんでん虫入れてる作戦!」

(妄想終了)

幹「なんか言いました?」

七実「いえ何も?」

幹「じゃあ、一般公式から始めましょう」

ウテナ「うわ〜」

幹「大丈夫ですよ、やり方さえ覚えれば、パズルみたいなものです」

七実「姫宮先輩?消しゴム貸してくださいね〜?」

七実(ふふふ、姫宮アンシー、覚悟なさい!)

パカッ

七実「キャーーーーーーーーー」

七実「ででででで、でんでん虫よ!でんでん虫がいるわー!」

アンシー「あら、これかたつむりさん達のお家なんですよー」

ウテナ「そんなとこで飼うのはやめろって言ってるんだけどね〜」

幹「でも可愛いですよー。なんだか、姫宮さんらしいな〜」

七実「で、でんでん虫よ!可愛いでんでん虫なのよー!?」

アンシー「キャサリン、ジュリエット、マルセリーナ、また後でね?」

カチャ、カタ

七実「ああ……ああ」

カチッ

幹「分かりました?天上先輩。ここで引っかかっているんですよ」

ウテナ「えー、どこぉ?」

幹「この場合は、」

七実(そういうことなら仕方ないわね)

(七実妄想)

七実「まあ、なんて可愛らしい机?わたくしもこういうのが欲しいわ」

七実「アアアーーーーーン」

七実「青大将よ、青大将がいるわ!」

ウテナ・幹「えー!?」

七実「この人引き出しに青大将なんか入れてるわー!」

ウテナ「姫宮!見損なったよ!」

幹「僕、幻滅しちゃいました!」

七実「オーッホッホッホ、ついにこれまでね姫宮アンシー!」

七実「なーんてことになるのよ!名付けて、まあ姫宮アンシーって机の中に青大将飼ってる変な子だわ作戦」

(妄想終了)

幹「なんか言いました?」

七実「ハッ、いえ、何も?」

ウテナ「三角形ACPで、線BXと並行な線がCPだからー」

七実「まあ、なーんて可愛らしい机!わたくしもこういうの欲しいわー」

ピカーン

七実「うっ……!」

七実「青大将が。昨夜徹夜で捕まえたわたくしの青大将が〜」

アンシー「ああ、そこはマングースくんのお家になってるんですよー」

ウテナ「そんなとこで飼うのはやめろって言ってんだけどね〜」

幹「でも可愛いですよ。なんだか姫宮さんらしいなー」

七実「マングースよマングース!あんた達変だと思わないの!」

アンシー「今お勉強中だから、また後でね〜。そう、蛇さんおいちかったの〜。そう」

七実「はぁぁ……」

カチッ

ウテナ「うーん、ここはどうなるわけ?」

幹「ここはこう」

ウテナ「へー」

幹「できましたか?」

ウテナ「そうねー」

七実「そう、そういうことなの。これだけはやりたくなかったけど、そういうことなら仕方がないわね」

ジャーン(タコ)

(七実妄想)

七実「ああーん!生タコよ、生タコがいるわ!」

ウテナ・幹「ええー!」

七実「この人クローゼットに、生タコなんか入れてるわー!」

ウテナ「姫宮、見損なったよ!」

幹「ぼく幻滅しちゃいました!」

七実「オーホッホッホ!ドカーンとこれまでね、姫宮アンシー!」

七実「なーんてことになるのよ、絶対!名付けて、何と姫宮アンシークローゼットの中に生タコ飼ってる変な子だわ作戦」

(妄想終了)

幹「なんか言いました?」

七実「いいえ、何にも」

七実(フッフフフフ。今度こそは……この生タコで……!ギャフンと言わせてやるわ!姫宮アンシー!)

七実「ギャフンというのよ!この生タコで!オーッホッホッホ!、いざ!」

ウテナ「あ?」

ガチャ

七実「あ、ああーーーーーーーーー!生タコ生タコ生タコ生タコ!あ〜あ〜!」

ウテナ「そこ、勝手に開けると危ないよ」

七実「嘘よ。いくらなんでもこれは夢よ。こんな巨大な生タコが、生タコの足が〜〜〜〜〜」

幹「それ、去年の学祭で使ったアドバルーンですよね〜」

アンシー「捨てられたのがかわいそうだったから、ここに匿っているんです」

ウテナ「いいかげん捨てるように、君からも言ってくれない?」

幹「でも可愛いですよ〜。なんだか姫宮さんらしいな〜」

カン

七実「あああ……」


幹「これでX=3になるんですよ。あとはこれで代入して、この一次方程式を解けば……あ」

ウテナ「あー、なるほどー。3+Yが、うーんと」

幹「だから」

ウテナ「ああ、出来た!これでどう?」

幹「当たりです!」

ウテナ「なるほど。流石超秀才、授業より分かりやすいやー」

幹「えっ、いや、そんな」

アンシー「キャハハッ」

ウテナ・幹「ん?」

パラパラパラパラ

アンシー「うふふふ。あっはっはっは」

ウテナ「真面目にやろうよ、追試は来週なんだからさ〜」

アンシー「はい、ウテナ様……くっ、ふふ」

カーン、カーン、カーン、カーン、カーン

ウテナ「もうこんな時間かー。幹くん!」

幹「はい」

ウテナ「何か軽く食べようか。七実くんもさ!」

七実「……」

幹「七実くん?」

七実「あっ、は、はいお夜食ですね。実はわたくし、今日お弁当作ってきたんですー。みなさんのお口に合うといいけどー」

ウテナ・幹「あー」

サクッサクッサクッ

七実「ふふっ、ふふふっまた動物……。これも姫宮先輩のお友達なんですよねー」

アンシー「チュチュ、ダメよ勝手に!」

シーシー

チュチュ「げぷう」

七実「この動物……」

アンシー「ごめんなさい。私が代わりにお料理作ってきます」

アンシー「レモンといちごを一緒に食べると美味しいんですよ?」

ウテナ「あーそう」

幹「ホントだ、美味しいなー」

アンシー「私の得意料理なんです!」

幹「そうなんですかー!メモしとかなきゃ」

ウテナ「シロップもうちょっと欲しいなー」

アンシー「七実さん?溶けないうちに、召し上がって?」

七実「冗談じゃないわ……」

アンシー「え?」

幹「先輩に向かって、その言葉遣いはないだろう?」

七実「筆箱にでんでん虫入れて引き出しにマングース飼ってクローゼットに生タコ風船隠して……」

チュチュ「ぢゅー!ぢゅー!」

七実「おまけに夕食がかき氷なんて!お腹壊すでしょう?わたくしは、お腹が弱いのよ!?」

幹「かき氷って好きだけどな〜」

ウテナ「お腹が弱いとは残念だったなー」

ドンッ!

七実「かき氷とお腹の話してんじゃないわよ!なーんでみんなこの人に関心を持つのよ!」

幹「君だって、姫宮さんと友達になりたいんじゃなかったのか?」

七実「何のこと?幹こそ彼女が好きなんでしょ?白状なさい!」

幹「そのお……」

ウテナ「あっ、あれー?姫宮がいなーい」

幹「ホントだ」

ウテナ「強引に勉強会なんかやったのがまずかったのかなあ」


アンシー「夕食は、たこ焼きの方がよかったかしら」

チュチュ「ちゅー?」

ウテナ「僕、ちょっと見てくるよー」

幹「僕も行きます」

ウテナ「あ」

幹「えっ」

(ピアノの音)

幹「ピアノだ」

七実「あなたがいつも弾いてる曲だわ」


チュチュ「チュチュッチュ、チュチュ、チュ」

ウテナ「へー。姫宮ってピアノ弾けるんだー」

幹「は……!
妹の音色と、同じだ。あの光さす庭だ」

幹(ああ……見つけた。輝く者を!)


次回予告

ウテナ「姫宮ー。ミッキーのためにピアノを弾いてあげなよ。なんだか彼、きみのピアノに思い入れがあるようだし」

アンシー「ウテナがそうしろとおっしゃるのなら」

ウテナ「いや、僕が言ったからじゃなくて、ミッキーのためにさ」

アンシー「私は薔薇の花嫁。エンゲージした方の思うがままです」

ウテナ「目を覚ませよミッキー、そんなやり方で姫宮のピアノを手に入れようとするなんて、間違ってる!」

ウテナ「次回、少女革命ウテナ、光さす庭・フィナーレ」

アンシー「絶対運命黙示録」