第2話 エトワール


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玉青「行き着く先は、悲しみの海か、それとも絶望の地の果てか。それでも私は悔やまない。冷たい冬の光の中で、凍てついたまま死のうとも。ああ、虹よ、虹よ、虹。いとしき虹よ。いとしき虹よ。いとしき虹よ。いとしき虹よ。いとしき虹よ……。うぅ……。あなたと生きる……出来た!」

タイトル:エトワール

玉青「渚砂ちゃん、起きて。渚砂ちゃん、朝ですよ」

渚砂「うーん……」

玉青「あー、かわいい……。な・ぎ・さ・ちゃん。お・き・て?」

渚砂「んー……わー! な、なにー?」

玉青「ふふっ、おはよう」

渚砂「もー玉青ちゃんったらぁ。いたずら止めてって言ったでしょー?」

玉青「あ、怒った顔も素敵ですわー」

渚砂「あ、もう、知らない!」

玉青「ふふふ、注文した制服が届いてますわよ?」

渚砂「う?」

玉青「ふふっ」

渚砂「わー。やっとみんなと同じ制服着られるんだねー」

玉青「早速着替えましょうねー」

渚砂「着替えなら自分でやるから」

玉青「遠慮しなくていいですわ。うちの服、着るの面倒ですから。慣れるまで、私がお手伝いしますわ」

渚砂「あ、あのね玉青ちゃん!」

玉青「動いちゃだめですわ」

渚砂「あ、あ、あー!」

玉青「あ、ごめんなさい……」

渚砂「うう……」

玉青「大丈夫ですか?」

渚砂「うわぁ!」

玉青「んふ」

(渚砂に制服を着せる)

玉青「サイズぴったりですわね」

渚砂「本当だ」

玉青「とてもお似合いですわ」

渚砂「そ、そーお?」

玉青「さ、お座りになって?」

渚砂「うん」

玉青「次は髪ですわね」

(エトワール達が歩いてくる)

生徒「あ、エトワールさま、おはようございます」

生徒「おはようございます」

静馬「おはよう」

渚砂「玉青ちゃん、もー懲りすぎ! 朝食の時間に遅れちゃうじゃない!」

玉青「だって、完璧にしないと気が済まないんですものー」

(走る2人)

玉青「ああ! だめ!」

渚砂「ああ! うわあああ! あ、すいません!

あ、エト……。

すみません。あの、わたし、遅れそうになったので、つい」

静馬「おはよう」

渚砂「あ。

おはようございます」

深雪「蒼井さん、生徒会長として言わせてもらいますけど、どんな理由があるにせよ廊下を走ることは許されなくてよ。二度とこのようなことがないように」

渚砂「すいません。気をつけます」

静馬「お名前、何て言ったかしら」

渚砂「蒼井」

渚砂「渚砂です。蒼井渚砂」

静馬「渚砂、素敵なお名前ね。渚砂ちゃんと呼んでいい?」

渚砂「え?」

静馬「制服、とってもお似合いよ」

渚砂「あ……」

静馬「ネクタイ曲がっているわよ」

渚砂「ありがとうございます」

静馬「今日一日」

(ざわめく食堂入口)

静馬「いい日でありますように」

渚砂(また、動けない……)

玉青「あ……」

渚砂(だめ!)

(時計の鐘の音)

静馬「はっ」

玉青「渚砂ちゃん!」

渚砂「あ……」

玉青「時間ですわ。行きましょう。失礼します、エトワールさま」

静馬「うふ」

深雪「さあ、みなさん中に入ってお席について。食前のお祈りの時間ですわ。

いいかげんにしなさい、静馬。

相手は編入してきたばかりの子なのよ」

静馬「またお説教?」

深雪「……」

静馬「心配いらないわ。誰だってかわいい花を見ると触れてみたくなるでしょう。それだけのこと。深い意味はないわ」

深雪「そう……」

渚砂「あーあ、びっくりしたー。エトワールさまったらいきなりキスしようとするんだもん。心臓が飛び出すかと思った。

やだ、まだドキドキしてる」

玉青「エトワールさまがあんな大胆なことをなさるのは、渚砂ちゃんがかわいすぎるからですわ」

渚砂「かわいすぎるってわたし……」

玉青「だって本当のことですもん」

渚砂「玉青ちゃん」

玉青「さあ、行きましょう?」

渚砂「うん」

(教室、生徒の雑談)

渚砂・玉青「おはよう」

(二人に詰め寄るクラスメイト)

生徒「ねえねえ、エトワールさまにキスされそうになったんですって?」

渚砂「いえ、あの……」

生徒「本当ですのね?」

玉青「どうしてそのことを?」

生徒「いちご舎でも大騒ぎだったんですってね。学校中その噂で大変よ」

生徒「どんなだった、その時の気持ち?」

渚砂「あ、いや、それは……」

生徒「エトワールさまの柔らかい唇、目の前まで迫ってきたんでしょう?」

渚砂「そ、それは、そのー……」

生徒「うらやましい。わたし、一度でいいから声かけてもらいたーい」

生徒「編入したばっかりなのに、すぐエトワールさまのお目にかなうなんて、すごいわー」

渚砂「玉青ちゃん。あと頼むね!

え!?」

生徒「ねえねえ、もっと聞かせてよー。エトワールさまにキスされそうになった時のこと! ねえ、いいじゃないの」

渚砂「あの」

先生「so loved as …」

渚砂「はぁ。聞いてはいたけど、エトワールさまってすごい人気なんだ」

先生「Nomber then ……」

渚砂「でも、なんであんなこと……」

(食堂にて)

渚砂「わー、美味しそう!」

玉青「はい、あーん」

渚砂「あー、はむっ。んー。あ、これいけるー!」

玉青「よかったですわ。ここのデザートは寮生の御用達なんです。自宅通学の方はお家に帰れば好きなものを食べれますけど、いちご舎には制約がありますからね」

渚砂「んー、学校の中にこんな素敵なカフェがあるってのが驚きだよ」

玉青「あ……」

渚砂「ん?」

玉青「よほどお腹が空いてらしたんですね」

渚砂「え。あ、朝、あんなことがあったから、朝ごはん、のどを通らなくって。えへへ」

玉青「そうだったんですか。よかったら私のを半分差し上げますわ」

渚砂「うぇ!? そ、そんなー。悪いよー。

いいの?」

玉青「はい」

渚砂「ありがとう!」

玉青「ところで、部活のことですけど、どこに入るか決めましたか?」

渚砂「ううん、どんな部があるか分からないし」

玉青「だったら、私の入っている文芸部にしません?」

渚砂「文芸部?」

玉青「はい。わたし、詩を書いたり読んだりするの大好きなんです。この後、部の集まりがあるんですけど、一緒にいきましょう?」

渚砂「でもわたし、詩とかそういうのあまり得意じゃないし」

玉青「わたし、新作の詩を発表することになってるんです!」

渚砂「う? 詩を?」

玉青「渚砂ちゃんにも是非聞いてもらいたいの。いいでしょ?」

渚砂「うん。玉青ちゃんの詩が聞けるなら」

玉青「本当? 嬉しいです。……あ。東儀さま、狩野さま」

瞳・水穂「ふふっ」

玉青「あの、エトワールさまは?」

水穂「あの方はミアトル、スピカ、ル・リム3校の昼食会に招かれてますから」

瞳「では」

玉青「3校で何かする時は、必ずエトワールさまが出席することになっているんです」

渚砂「ふーん、エトワールさまって、色々やることがあるんだ」

深雪「どういうこと?」

佐希子「も、申し訳ございません。ついさきほどまではいらしたのですが……」

深雪「また、やられたわ」

千早「六条生徒会長」

深雪「なんです?」

千早「スピカ、ル・リムの生徒会の方々がお見えになりました」

深雪「くっ……」

渚砂「あ、六条さん」

玉青「え?」

渚砂「ほら、東儀さんたちのところに」

瞳「またですか?」

深雪「シッ! ええ、ちょっと目を離した隙に逃げられてしまったの。生徒会役員で探しているけど、あなたたちも探してくださらない? 静馬がいなければ何も始まらないから」

渚砂「何かあったのかな?」

玉青「なんでしょう……」

詩音「遅いですわね。エトワールさまも、ミアトルの人たちも。スピカもル・リムの方も全員そろっているというのに」

千華留「そうですねぇ」

(扉が開く音)

深雪「すみません。私どもの手違いで、ご迷惑をかけています。その……」

詩音「手違い? エトワールさまはどうなさったのかしら?」

深雪「それが……」

千華留「うっふふふふ。また、どこかへ行かれたのかしら?」

詩音「そうなの?」

深雪「手違いです」


(文芸部)

玉青「美しい七色の光を放ち、未知の世界へいざなう虹よ。たおやかなほほえみに魅せられて私は何もかも捨てた。けど虹よ、あなたは幻。永久に距離が縮まることはない。ああ、虹よ。虹よ。気が付けば故郷の町が……」

渚砂「かっこいいー、玉青ちゃん……」

玉青「戻ることさえ許されない。行きつくは悲しみの海か、それとも絶望の地の果てか。それでも私は悔やまない。冷たい冬の光の中で凍てついたまま死のうと。ああ、虹よ、虹よ、いとしき虹よ。あなたと生きる」

(拍手)

生徒「素晴らしいわー」

部長「素晴らしいわ、涼水さん。永久に結ばれない愛と知っていてそれでも求めて行く。切ない気持ちが良く表現できていましてよ。感動しましたわ」

玉青「ありがとうございます、部長。お褒めになって光栄ですわ」

生徒「ねえねえ、今のもう一度やって?」

玉青「え?」

生徒「聞きたい」

生徒「うん、聞きたい聞きたい。もう一回」

部長「私からもお願いするわ」

玉青「あ……はい。

それでは。ああ、虹よ、虹よ」

渚砂「すごいなー玉青ちゃん。将来有名な詩人になれるかもしれないね。

は、木漏れ日……こ、木漏れ日よ、木漏れよ、木漏れ日よ……うーん……だめだー。何も思いつかなーい。やっぱり、私には詩の才能なんてないみたい」

生徒「あ、エトワールさま」

渚砂「うぇ?

あれは……エトワールさまだわ。昼食会に行ってたんじゃなかったの? なんかおもいっきり怪しい雰囲気……これって」

静馬「ふふふ」

生徒「あ」

渚砂「あ……」

(枝が折れる音)

渚砂「あ!」

静馬「ん!」

(走り去る音)

静馬「あ……」

渚砂「なに、なに? なんなのよー!

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。

とんでもないもの見ちゃった。あんなこと……。なんかショック……

ここは……。

素敵なところ……。」

(扉の開く音)

渚砂「ああ……」

(足音)

渚砂「へー、図書館かー」

(昼食会)

詩音「はぁ……いつまで待たせるつもりなのかしらね」

千華留「あの、スピカの冬森会長さま。こうなったら、お食事、お先にいただいちゃいましょうよ」

詩音「え?」

千華留「エトワールさま、いらっしゃるかどうかも分からないし……。もしいらしても時間も時間ですし。それに私たち、もうおなかぺこぺこ。ねぇ?」

詩音「まあ、ル・リムの源会長さまがなんてことを。エトワールさまのお祈りが終わってないんですよ?」

千華留「それはそうですけど」

詩音「規則は規則ですから。それにしても、エトワールさまのわがままには困ったものですわ」

深雪「そう、どこにもいないの」

瞳「ええ」

深雪「仕方ないわ。今日の昼食会は、延期してもらうしかないわね」

佐希子「でも……」

深雪「無理よ。これ以上待たせるわけにはいかないわ。……決定よ」

瞳「それにしても、どこにいるのかしら、エトワールさま」

生徒「そうそう、驚いちゃった、エトワールさま」

生徒「本当よね、図書館に行かれるところだったのかしら」

(図書館)

渚砂「あっ

うー……

あ……

(走る音)

はぁ、はぁ……

はぁ……ああ……

うわー……」

(肩に手を置かれる)

渚砂「えっ!?」

静馬「ふっ、うれしいわ。ここであなたに会えるなんて。柔らかな髪ね」

渚砂「だ、だめ! だめです!」

静馬「ふっ、怖がることはなくてよ? 渚砂ちゃん」

渚砂「あ……」

渚砂(どうしよう……また体が動かない……)

静馬「かわいい瞳をしているわ。

頬もやわらかくてすべすべ」

渚砂「あ……」

(本が落ちる音)

千代「きゃっ」

渚砂「あっ」

千代「たたた……」

渚砂「だ、大丈夫?

ねえ、怪我はなかった?」

千代「ご、ごめんなさい。あ、たし……」

渚砂「本当に大丈夫?」

玉青「渚砂ちゃーん。渚砂ちゃーん」

渚砂「玉青ちゃん」

玉青「渚砂ちゃん!

よかったー、探しましたわ。ここで何してらしたの?」

渚砂「いや、それは……・


……。

それより、玉青ちゃんこそどうしてここに?」

玉青「部活から帰ろうとしたら六条さまがいらしたんです。渚砂ちゃんが図書館で待っているから早く行きなさいって」

渚砂「六条さんが?」

(夜)

深雪「一体いつまでこんなことを続けるつもりなの? 今日もまた、昼食会をすっぽかして。これ以上、こんなことが続くと、私だってあなたをかばいきれなくなるわ。とにかく、エトワールとしての役目をちゃんと果たして欲しいの」

静馬「用件はそれだけ?

おやすみなさい」

深雪「おやすみなさい」

(扉が閉まる音)

玉青「エトワールさまは人を好きになってもひと月と持たないって噂ですわ」

渚砂「へー。そうなんだ」

玉青「でも大丈夫ですよ、渚砂ちゃん。わたしがちゃーんと守ってあげますから」

渚砂(どうしよう。あの人の前に出ると、私、何もできなくなっちゃう)

静馬「あの時からずっと、私は闇の中をさまよっている。いつ終わるともしれない、闇の中を」

次回予告

渚砂「えっと、アストライァ……えっとぉ……」

玉青「私たちの住んでいる住んでいる舎はいちご舎って言うんですよ」

渚砂「どうしてそんな名前なの?」

玉青「3校の生徒達が各棟で別々に暮らせるように出来ていて、その三角形の建物の形がいちごの形に似ているかららしいです」

渚砂「そうなんだー。ねえ、こんどいちご舎の中を案内してくれない?」

玉青「分かりました」

渚砂・玉青「次回、ストロベリーパニック。屋根裏」

渚砂「ねえ玉青ちゃん、ここどこなの!?ねえ!?」

静馬「うっふふふ」