白馬の君


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花莉(あなたは、天使の存在を信じますか?)

「キャー」

花莉「あ……ああ……」

「キャー」

(少女たちのざわめき)

(馬の走る足音)

花莉(私は、笑われても、馬鹿にされても、ずっと信じていました。1年前、聖スピカ女学院に編入したばかりで、独りぼっちだった私は)

天音「はっ!」

花莉(その日、天使を見ました)

タイトル

(聖歌隊の歌声)

渚砂「あ」

玉青「どうしました?」

渚砂「これ……」

玉青「スピカの聖歌隊ですわ」

渚砂「聖歌隊?」

玉青「明日は大事な行事があるので、練習にも熱が入るのでしょう」

渚砂「大事な行事?」

玉青「あら、渚砂ちゃんはまだご存知なかったんですね。明日は」

聖歌隊部長「明日は、鳳天音さま、乗馬部の皆様が凱旋なさる日です」

花莉「……!」

聖歌隊部長「我々に出来ることは、歌をお贈りすることだけです。心を込めて、完璧な歌を歌いましょう。万が一にも、失敗は許されませんよ」

花莉「はい!」

(マリア像の前)

花莉「明日は、ちゃんと歌えますように。天音さまに、ちゃんとお祝いの歌を届けられますように」

夜々「花莉」

花莉「あ……夜々ちゃん」

夜々「緊張してるの?」

花莉「だって」

夜々「無理もないか」

花莉「あ……」

夜々「花莉が聖歌隊に入ってはじめての大舞台。しかも、憧れの人のために歌うんだもんね」

花莉「あ……うん」

夜々「ふ……」

(夜)

花莉「眠れない」

(朝)

(ざわめく校舎前)

女生徒「いらしたわ!」

花莉「あ……」

(近づいてくる蹄の音)

(さらにざわめく女生徒達)

玉青「あの方が、スピカの5大スターの1人、鳳天音さま。5年生ですわ」

渚砂「すごい人気だね」

玉青「エトワールさまの○といっても過言ではないですわね」

渚砂「へー」

(盛り上がりピークな女生徒達)

女生徒「エトワールさまだわ」

渚砂「あれ? エトワールさま」

玉青「おつとめの1つですわ。大会などで活躍された方をお祝いするんです。ちなみに、今度の大会で、天音さまは個人戦団体戦見事二冠に輝きましたのよ」

渚砂「へー。すごいね、玉青ちゃん」

玉青「すごいんです」

渚砂「玉青ちゃんのことだよ」

玉青「はい?」

渚砂「何でも知ってるんだねー」

玉青「はい!」

静馬「おめでとう」

天音「ありがとう、ございます。エトワール。花園先輩」

(体育館)

(優勝旗を受け取る天音)

(拍手)

花莉「あ……は!」

夜々「リラックス」

花莉「ああ!」

夜々「もっと気を楽にしなさい」

花莉「だって、みんなの前で、天音さまの前で歌うんだよ」

夜々「カボチャだよ思えばいいのよ」

花莉「天音様はカボチャじゃない!」

夜々「あー。いちごでも何でも好きに思っていいから。とにかく、最初のワンフレーズを歌えれば楽になるから」

花莉「あ、うん」

夜々「最初が勝負よ?」

花莉「わかった」

聖歌隊部長「みなさん」

花莉「あ」

聖歌隊部長「準備はよろしいですか?」

夜々「は」

花莉「はい!」

夜々「あ」

花莉(ちゃんと歌って、お祝いしなくちゃ)

(パイプオルガン前奏)

(天音と目が合う花莉)

花莉「あ……」

夜々「花莉」

花莉「気高き百合の城のごとく……あ!」

(ざわめく会場)

夜々「花莉」

(天音、立ち上がり後ろを向く)

(静まる会場)

聖歌隊部長「ウン」

『気高き百合の城のごとく』

(夕方、マリア像の前で)

花莉「うっ……うう」

(スピカ生徒会室)

詩音「では、議案25は学院長の采配をあおぐことにいたします。次に、これは議案ではないのですが」

要「ん?」

桃実「ん」

詩音「そろそろエトワール戦のことを考えていた方がよろしいのではなくて?」

要「エトワール戦か」

詩音「今年こそ、聖スピカ女学院から、エトワールを出すという悲願を成就させる時です鳳天音さんならば、きっとエトワールの座をスピカにもたらしてくれるでしょう」

要「それはどうかな? 確かに、人気も実力も兼ね揃えていると言えるが、大きな問題がある」

詩音「問題?」

要「肝心の天音くんが、エトワールの座に興味がないってこと。ねえ、桃実」

桃実「そうね。それに、まだその資格もないわ」

詩音「しかし、彼女が最有力候補であることは、間違いないのです」

(目くばせする要と桃実)

詩音「エトワール戦に出てもらえるように、出ることが可能になるように、手を尽くしましょう」

(夜、シャワーをあびる花莉)

夜々「明日も練習あるから、寝坊しないようにね? 花莉が寝坊しても、王子さまのキスで起こしてあげるけど。

おやすみ」

(しばらくして)

花莉「夜々ちゃん」

夜々「ん?」

花莉「わたし、明日の練習、行かない」

夜々「行かない?」

花莉「……」

夜々「花莉」

花莉「聖歌隊、辞める」

夜々「あ、ああ……辞めるって、聖歌隊を? どうして?」

花莉「とっても、悲しかった。
別に、いいとこ見せようとか、そんなこと思ってなかった。
ただ、天音さまに歌を歌いたかった。それだけが、私に出来るお祝いなのに」

夜々「まだ歌う機会はあるわ。今度ちゃんと歌えばいいじゃない!」

花莉「……」

夜々「花莉」

(花莉が部屋を出る)

夜々「ぁ……。花莉……」

(マリア像の前で)

花莉(1年前、私が見た天使、鳳天音さまは、まさに天使そのもの)

夜々(ねえ花莉、天音さまとお近づきになりたくない?)

花莉(ええ?)

夜々(私が手伝ってあげよっか)

花莉(あ、あ……)

夜々(天音さまは決まったパートナーがいないから、チャンスはあるわよ)

花莉(でもいいの。遠くから見ることができるだけで)

花莉「クシュッ。 あ……眠っちゃってたんだ。

あの時、ここで、天使を見た」

花莉「天音さまにおめでとうございますって、ちゃんと歌いたかったな」

花莉『気高き百合の城のごとく 不思議薔薇のれににごとく
青葉ののべの緑のごとく 天のきさきは麗しく笑む』

花莉「あ、ああ……」

(馬の蹄の音)

花莉「ああ!」

天音「おはよう」

花莉「あ、おはようございます」

天音「確か3年生の」

花莉「花莉です。此花花莉」

天音「そう、花莉ちゃんだ」

花莉「ああ……!」

天音「天使が歌ってるのかと思った」

花莉「う、そんn……あ! こ、こんな格好で……」

天音「早起きなんだね」

花莉「いえ、眠れなくて」

天音「うん」

花莉「鳳さまはこんな朝早く」

天音「天音」

花莉「はい?」

天音「天音でいいよ」

花莉「あまね、さまは」

天音「さまはいらない」

花莉「天音先輩は、こんな朝早くに」

天音「練習してたんだ」

花莉「練習?」

天音「普段はゆっくり練習できなくてね」

花莉「あ……」

(黄色い歓声を受ける天音)

花莉「天音先輩はみんなの憧れですから」

天音「憧れか。注目されるのは、好きじゃないな」

花莉「そうなんですか?」

天音「恥ずかしいじゃないか」

花莉「うふっ。……あ、ごめんなさい」

天音「ようやく笑ったね」

花莉「え?」

天音「なんか、悲しそうだった」

花莉「あ……天音先輩……」

天音「そっか、昨日の。悲しかったんだね」

花莉「うん……。クシュッ」

天音「あ……。まだ冷えるね」

花莉「ああ! だ、大丈夫です。天音先輩が風邪ひいちゃいます」

天音「私も最初の大会の時、緊張したんだよ?」

花莉「天音先輩が?」

天音「ガチガチになって、散々な成績で」

花莉「辞めようとは思わなかったんですか? 二度と同じ思いはしたくないって」

天音「思った」

花莉「!」

天音「今でも思うことはある。でもね、悲しいことも悔しいことも嫌なことも沢山あったし、これからもあるだろうけど、その何倍も、楽しいこといいことがあった」

花莉「楽しいことやいいこと……あ」

天音「どう?」

花莉「あったかい」

天音「だろう? いいことがいっぱいしまってあるからね。君の胸は温かい?」

花莉「私は」

(小鳥のさえずり)

花莉「あの、これ!」

天音「いちご舎まで送ろう」

花莉「え?」

(柵を飛び越える天音)

天音「はっ!」

天音「おいで」

花莉「ああ……」

天音「うん」

花莉「あ……!」

(馬上で)

花莉「あの、先輩?」

天音「ん?」

花莉「昨日、ちゃんと歌えなくて、お祝いできなくてごめんなさい」

天音「お祝いはしてくれたじゃないか」

花莉「え?」

天音「さっき歌ってくれただろう?」

花莉「あ……」

(部屋の中で)

夜々「あ」

花莉「あの、ありがとうございました」

(走り去る天音)

天音「あ、そうだ」

花莉「は、はい?」

天音「また歌を聞かせてくれるかい?」

花莉「え?」

天音「スターブライトも、気に入ったようだからさ。花莉の歌を」

花莉「あ……!」

(いななくスターブライト)

天音「それ!」

(花莉回想)

天音(天使が歌っているのかと思ったよ)

花莉「違います。天使は私じゃなくて……

あたたかい……」

(ドアが開く音)

夜々「おかえり」

花莉「あ! もう起きてたんだ」

夜々「くっ」

花莉「うっ。心配かけて、ごめんね」

夜々「さあ、何があったか話してもらいましょうか?」

花莉「あ……へへ」

夜々「さあ、花莉、ほーら」

渚砂「スピカの聖歌隊だね」

玉青「ええ」

渚砂「素敵だねぇ」

花莉(私は、信じていました。いつか、天使が私に微笑みかけてくれる日が、来ることを)


(次回予告)

玉青「そろそろお部屋の掃除をしましょう」

渚砂「どうしたの? 突然」

玉青「来週から、下級生がこのお部屋にやってくるんです。お部屋番と言って、上級生の部屋のお手伝いをする制度なんですよ」

渚砂「へー。どんな子が来るんだろう」

玉青「それは、来週のお楽しみですわ」

渚砂・玉青「次回、ストロベリーパニック。妹たち」

渚砂「部屋、綺麗に片付いたよ!」

玉青「じゃあ、今度はお掃除しがいのあるよう少し散らかして、と」