nanatan @Wiki ss@8スレ(その3)


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552 名前:土曜日夜 高遠家リビング[sage] 投稿日:05/02/27(日) 00:59:04 ID:???
ママン 「ナナちゃん、明日も浪馬君とデートよね?」
七瀬「答える必要はないわね」
ママン 「あのね、母さんも付いて行っていい?」
七瀬「は、はあ? ダメに決まってるじゃない!」
ママン 「ナナちゃんのケチ」
七瀬「ケチじゃないでしょ? どこの世界に娘のデートについてくる母親がいるのよ!」
ママン 「やっぱり将来のことを考えると、母さんと浪馬君も互いによく知り合うべきだと思うの」
七瀬「どうして母さんが織屋君のことをよく知らないといけないわけ?」
ママン 「だっていずれは義理の息子になる人ですもの」
七瀬「えっ?」
ママン 「ナナちゃんだって母さんと浪馬君がうまくやっていけないと困らない?それとも浪馬君と結婚する気ないの?」
七瀬「う・・・」
ママン 「ね? いいでしょ? 明日母さんも連れてって」
七瀬「やっぱりダメ。絶対ダメ。きっと織屋君が嫌がるわ」
ママン 「クスン・・・・じゃあ、せめてこれを持っていって」
七瀬「何これ? 男物の下着じゃない」
ママン 「今日ねデパートでカッコいいパンツ見つけたから、浪馬君のために買っちゃった♪」
七瀬「お、織屋君に履かせる気なの?」
ママン 「そうよ、未来の義理のお母さんからのプレゼント、うふふ」
七瀬「た、たとえ母さんだろうと、私以外の女が織屋君にぱんつプレゼントするなんて許せるわけないでしょ!」
ママン 「あらあら、ナナちゃんって、すごいヤキモチ焼きなのね」
七瀬「ヤキモチなんかじゃないったら! と、とにかく明日はついて来たらダメ。ぱんつも父さんにあげなさいよ」
ママン 「このぱんつ、浪馬君に似合うと思ったのに・・・残念だわ」
七瀬「何が残念なのよ! それと、織屋君を気安く『浪馬君』なんて呼ばないで欲しいわっ! ふんっ!」

七瀬はぷんぷんと怒って自分の部屋に戻っていった。それを見送るママンの顔に嬉しそうな笑顔が浮かぶ。
ママン 「ナナちゃんを恋人のことでからかえる日が来るなんて、夢みたいだわ、うふふふふ」
七瀬が赤くなったり、膨れっ面するのが面白くて、近頃毎晩の様に彼女をおちょくってるママンであった





658 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:05/03/04(金) 15:53:54 ID:???
「よっこらせっ・・・と、まったくヒヤヒヤさせるぜ。親父さんとお袋さんの前だってのに」
ノコノコやってきた浪馬相手に散々絡み酒を発揮した七瀬は、その後見事に酔いつぶれ、
浪馬の手で自室のベッドへ運ばれた。
「ふうん、ここが七瀬の部屋か」
(思ったより子供っぽい部屋だな。可愛い小物が一杯だぜ。枕もとにあるのは、俺がやったぬいぐるみか?)
「ナナちゃん、毎晩そのぬいぐるみ抱いて寝てるみたいよ、うふふ」 七瀬の母がやってきた。

「ナナちゃんを運んでくれてありがとう、織屋君。居間に戻って飲み直して頂戴。うちのお父さんが待ってるわ」
「あ、いえ、俺もう帰りますから」
「その間に、ここにお布団敷いておくから、今夜は泊まっていってね」
「はあっ? ここって、七瀬の部屋ですか?」
「そうよ」
「む、む、無茶言わないで下さいっ!」
「うふふふ、冗談よ」
「はあ・・・ビックリした」
「ここに布団なんて敷いたらナナちゃんに怒られちゃうわ」
「あ、当たり前ですよ」
「だからベッドで一緒に寝てあげてね♪」

その夜、浪馬がどうしたかは不明である。





689 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:05/03/06(日) 21:55:13 ID:???
パパン「七瀬、この部屋なんてどうかな?」
七瀬 「そうね、悪くないと思うけど・・・・・あ、やっぱりダメ」
パパン「ダメ? どうしてだ?」
七瀬 「建物全体が女性専用よ」
パパン「何か問題でもあるのか? 物騒なご時世だし、父さんはその方が安心なんだが・・・」
七瀬 「だって、おり・・・・・・」
パパン「お?」
七瀬 「お、お、お、お父さんが来たとき泊まれないわ。それじゃ困るでしょ?」
パパン「なるほどなあ。しかし七瀬が父さんのことまで考えてくれてるとは思わなかったよ」
七瀬 「あ、当たり前じゃない。だから別のところにしましょうよ、ね?」
パパン「そうだな。女性専用でなくてもセキュリティのしっかりした部屋を探そう」
七瀬 「そうして」
パパン「どうせなら母さんと父さんが一緒に泊まれるくらい広い部屋を考えてみるか」
七瀬 「う、うん。できたらキッチンもしっかりした部屋がいいわ」
パパン「父さんに手料理を作ってくれるのか? 楽しみだな」
七瀬 「え? ええ、もちろん父さんにも作るわ」
パパン「父さんに『も』?」
七瀬 「あ、う、ううん、なんでもないの」
パパン「?」

七瀬は、四月から始まる一人暮らしの準備を着々と進めていた。彼女は何事も計画的なのだ。
もっとも一人暮らしという表現は、厳密には間違っているかもしれなかったが。





342 名前:教えて織屋君[sage] 投稿日:05/02/02(水) 20:53:40 ID:???
3C教室 休憩時間

休憩時間でざわめくクラスメイトをよそに、一人机に座ったまま何度もため息を
つく七瀬の姿があった。
(織屋君に会いたい・・でも休み時間の度に会いに行ったら迷惑よね)
いつも姿勢正しい彼女が珍しく机につっぷす。また溜息が出た。

ふと横を見れば女生徒二人が盛んにおしゃべりの花を咲かせている。お題は
定番の男女関係らしい。きゃあきゃあと黄色い声があがる。
(何があんなに楽しいのかしら?)

浪馬に会えない寂しさに、七瀬の心は少しささくれていた。
(休み時間は次の授業の準備のために有効に使うべきなのよ)
(それをあんな風に無駄話で浪費するなんて非合理的だわ)

机につっぷしたまま骨抜きになっている自分を棚にあげ、七瀬は一人頬を
膨らませた。
(でも織屋君が同じクラスだったら、私もああやっておしゃべりできるのに)

「そういえばB組の例の子、彼氏に振られたってさ」
「うっそ! まだくっついて一月もたってないじゃん」
「よほど相性悪かったんじゃない?」
「でもさあ、彼氏に嫌われるパターンってワリと決まってない?」

(彼氏に嫌われる・・・・?)
以前の七瀬ならば気にも止めないはずのフレーズが、今は心に響いた。
彼女は思わず耳をそばだてていた。



360 名前:教えて織屋君 その2[sage] 投稿日:05/02/04(金) 11:20:58 ID:???
「マグロだったりして?」
「マグロ! うんうん! マグロ女。アレはダメだよねえ~」
「ガッカリって感じ? ふふふふ」

(マグロ女? 何のことかしら? ガッカリ?)
七瀬は思わず身を起こした。

いくらお堅い七瀬でもある程度の性知識は持っていた。が、下世話なゴシップ女性誌などに興味
がなく、もちろん生まれながらの風紀委員の様な彼女に周囲の人間が下世話なエロ話を聞かせる
わけもなく、そう言った情報からは一種の隔離状態に身をおいていた。ある意味、無垢でウブな
心と体のまま王子さまを待つ、眠りの森のお姫さまだったのだ。

浪馬のキスで永い眠りから目覚めたものの、彼女は、要するにヨチヨチ歩きの赤ちゃんで、王子
様を喜ばせようとあれこれ勉強を始めてはいるが、まだまだその知識は穴だらけ。とりわけこう
いった俗語の類はチンプンカンプンなのだ。

(今の私にはとても大切なことよね。少し話を聞いてみよう)
彼女は立ち上がるとツカツカと二人に近づいた。

「あなた達、ちょっといいかしら?」
「た、高遠さん!?・・・・何?」
「今あなた達の話していたマグロ女について聞きたいの」
七瀬のよく通るハキハキとした声が教室に広がった瞬間、ざわめきがピタリと止んだ。



364 名前:教えて織屋君3[sage] 投稿日:05/02/04(金) 22:56:48 ID:???
「ええっ!? マグロ女?」
「そう。マグロ女って何なのかしら? 教えて欲しいわ」
風紀の乱れに厳しいことで名を馳せる副会長に、いきなり真顔で話し掛けられて、
二人はたちまち顔色を変えた。おしゃべりの内容を詰問されると勘違いしたようだ。

「マ、マグロ? し、知らない。そ、そんなこと言ってないよ」
「言ってたじゃないの」
「た、高遠さんの空耳じゃないかな? あは、ははははははははっ」
「そ、そうそう、私たちそんな話してないよ?」
「そうだったかしら?」
「うんうん」
「してないしてない」

あくまでシラを切ろうとするする二人を七瀬は訝しく思ったが、これ以上聞いても無駄のなのは
確かだった。公衆の面前で意味を尋ねる様な言葉でないことすら、彼女はわかっていない。
(何か悪いこと聞いたかしら? 意味を知りたいだけなのに)
(答えたくないのを無理に問いただすのも気の毒ね)

「そう、私の勘違いだったみたいね。お邪魔したわ」
七瀬はクルリと踵を返し教室を見回した。固唾を呑んで見守っていたクラスメイトたちが慌てて
目をそらす。彼らも、やはり七瀬の言動を誤解していた。
(誰かに聞ける雰囲気でもなさそうね)

七瀬は自分の席に戻ると、誰もがうらやむ長く美しい髪をいじり始める。考え事をする時の
彼女の癖だ。

(マグロみたいに寸胴? 肌が脂性? マグロって高級魚よね? どうして嫌われるのかしら?)
(マグロ女は彼氏に嫌われる・・・もし私がマグロ女だったら・・・・)
(とにかくこれは放置できないわ。織屋君に嫌われたら困るもの)
七瀬は眉をひそめた。同時に授業開始を告げるチャイムが鳴った。



385 名前:教えて織屋君4[sage] 投稿日:05/02/06(日) 22:45:22 ID:???
昼休み、七瀬と浪馬は二人仲良く並んで学食のテーブルに着いた。

最近の二人はどこに行っても注目の的だった。学園一の品行方正少女と学園一の問題
児、いわば水と油の急接近は、確かにちょっとした事件だった。頬を染めた七瀬が嬉しそ
うに浪馬と話す姿に、誰もが自分の目を疑った。浪馬が、今まで例の幼馴染との仲を半ば
公認されていた事も、ますます人々の興味をかきたてる要因になっていた。

テーブルに着くなり周囲からの集まる好奇の目に、浪馬は少々居心地を悪そうな顔をした
が、七瀬の方は全く気にする様子はない。自治会の仕事で人前に立つことの多い彼女は、
他人の視線を浴びることに慣れているのかもしれない。あるいは横にいる浪馬のことで頭
が一杯なのか。

(そうだ。織屋君に直接聞いた方が早いわよね)
浪馬と昼食を楽しみながら、七瀬はふと例の件を思い出した。

「織屋君、教えて欲しいことがあるの」
「ん? なんだよ?」
ズルズルと豪快にラーメンをすすりながら浪馬が答える。
「俺にわかることなら何でも答えるぞ」
「ありがと。あのね、織屋君」
「ん?」
「私ってマグロ女かしら?」
「ぶっ?!」
浪馬が激しくむせこんで、テーブルに見事なラーメン汁の花が開いた。



401 名前:教えて織屋君5[sage] 投稿日:05/02/08(火) 00:06:45 ID:???
「ゴホっゴホッ・・・ゴホゴホゴホッ・・・ごほっゴホっ!」
「お、織屋君、大丈夫?」
七瀬は慌ててハンカチで浪馬の口を拭い、背中を優しくさすった。
「う・・コホっ・・・ああ・・・もう・・・大丈夫・・・だ・・」
「ビックリしたわ。いきになりむせるんですもの」
「い、いきなりって、七瀬のせいだぜ」
「私の? あ、マグロ女のこと?」
「わっ!? だからよせって」
浪馬は慌てて七瀬を止めた。
「場所考えろよ。こんな大勢いる前で・・・げっ?」
そこで初めて浪馬は辺りを見回して、顔を引きつらせた。

あちこちのテーブルに広がる味噌汁、米粒、ウインナー、レタスにコロッケ、肉団子。口を
おさえうつむく者がいる。激しく咳き込む者もいる。極めつけは、顔中にキャベツの千切り
を貼り付けて泣きそうになっている女生徒だった。浪馬だけではない。昼食を摂りながら
二人の様子を興味津々窺っていた生徒達も、やっぱり全員むせた。

「織屋君・・・ひょっとして・・・これも・・・?」
浪馬に続いて周囲の様子に気がついた七瀬がおずおずと尋ねてきた。
「ちょっと刺激が強すぎたよな。ま、人の話盗み聞きしてる方も悪いけどさ」
「し、刺激が強い?」
「七瀬、まさかとは思うけど、マグロ女の意味わかってないのか?」
「う、うん」
「なるほどね。じゃあしょうがねえな、はっはっはっはっはっ」
「そんなに変な言葉なの?」
「ん、まあ、意味は後で教えるとしてだ。今はこの混乱に乗じて」
浪馬はひとしきり笑った後、急に真面目な顔になって七瀬の腕を掴んだ。
「逃げるぞっ! 七瀬」



429 名前:教えて織屋君6[sage] 投稿日:05/02/11(金) 10:25:10 ID:???
浪馬がロッカーの中をゴソゴソと漁っている。
「買い置きのおやつもなしと・・・購買でパンでも買うか?」浪馬が背中を振り返ると
「見ないで、織屋君。今私変な顔してるから」七瀬は小さな声で答えると、視線から逃げるように
浪馬の背中に顔を埋めた。彼女は浪馬に後ろからヒシとしがみ付いていた。
「そろそろ顔見せろよ。おんぶお化けみたいな真似してないでさ。な?」
「ダメ。振り向いちゃダメ」
「困ったヤツだなあ」
「ど、どうせ私は困った女よ。マグロ女の意味も知らなかったんだから」
「知らなくても別に困る言葉でもねえよ」
「でもさっきはみんなすごく迷惑したわ。あなただってお昼ごはん食べられなくなったし」
浪馬の腰に回された七瀬の腕にぎゅっと力が篭もった。

学食から逃げ出した二人は人目を避けて部室に来ていた。そこで七瀬はマグロ女の意味を聞かされた。
「エッチの時に冷凍マグロみたいにゴロンと寝てるだけの女・・・抱いてもつまらない女・・・」
「だからマグロ女。上品な言葉じゃないけどな。ま、使っちゃいけないってこともないけど、あんな場所
で、しかもよりによって七瀬が言ったりしたら」
「し、したら?」
「さっき見た通りだよ」

七瀬は首まで赤くなってうつむいた。恥ずかしくて浪馬の顔を見られなくなった。(私、なんてことを) 
彼女は自分の無知と迂闊さを呪い、また同時に浪馬にとてもすまなく思った。
(織屋君お昼ご飯食べられなくなっちゃった。私のせいで・・・・)
「しかしスゲェ破壊力だったぜ、はっはっはっはっ」  
(お、怒ってないかしら?)
「しかし昼飯を喰いっぱぐれたのが痛いぜ。部室のどこかに菓子でも残ってねえかな」
(き、嫌われたらどうしよう・・・・)
七瀬は、羞恥と罪悪感で居ても立ってもいられなくなり、とうとう浪馬の視線の届かぬ場所に逃げ込んだ。
浪馬の背中に縋り付いて、それっきり離れなくなった。
「お、おい、何やってんだよ?」
浪馬は少し驚いたようだったが、やがて「知らなかったんだから気にするなよ」と言った。



464 名前:教えて織屋君7[sage] 投稿日:05/02/18(金) 19:51:54 ID:???
「七瀬のことだから、副会長の自分が騒ぎの原因になったのが許せないとか考えちまうのかな」
「人に迷惑をかけたら、反省するのは当たり前でしょ?」
「迷惑っつても、勝手に人の話を盗み聞きして勝手に自爆したあいつらも悪いと思うぜ?」
「そ、それはそうかもしれないけど、騒ぎになったのは事実よ。それに・・」後の言葉を七瀬は飲み込んだ。
(あ、あなたは? 盗み聞きしたわけでもないのに、酷い目に合わされて腹が立たないの?)
確かに七瀬は周りに居た生徒たちに責任を感じている。プライドも少なからず傷ついた。が、彼女が一番心配して
いるのは浪馬の気持ちだった。

「あい変らず責任感の強いヤツだ。でもこれからの方が重要だと思うぞ」
「これから・・?」
「散々噂されるよ。俺たちが一線越えてるのがバレバレになっちまったから」
「あ・・」
「今でも結構注目浴びてるのに、明日からはスポットライトまでつきそうだぜ」
七瀬は浪馬の言葉を聞いて青くなった。彼女自身は噂されるのは構わない。むしろ望むところかもしれない。
しかし浪馬はこう言ったことで耳目を集めるのは、少々苦手な男だった。七瀬はそれをよく知っている。
(こんなことになっちゃって、もう明日から学校で会うのはよそうって言われたらどうしよう・・・)
「そこでだ七瀬。頼みがあるんだ」
(やっぱり学校では会わない様にしようって言うの? そ、それともまさか私とはもう終わりに・・・)
「知らん顔して、今まで通りにしてくれ」
「え?」七瀬は一瞬浪馬の言葉の意味がわからなかった。
「陰口や噂なんて無視するのが一番だ。そのうちみんな噂するのも飽きちまうよ」
「・・・・」
「イヤか? まあ、こう言う噂は女の子の方が辛いと思う・・・・」
浪馬が最後まで言う前に、部室に七瀬の悲鳴に似た叫び声が響いた。
「じゃあ、じゃあ、明日からもあなたに話し掛けていいのねっ!? お昼誘ってもいいのねっ?!」
「あ、ああ」
「休み時間の度に会いに行っても構わないのっ!? ここに差し入れ持ってきてもっ!?」
「だから、そうしてくれと頼んでるんだよ」
「よ、よかった・・・・」
七瀬は安堵で膝から力が抜けた。慌てた浪馬が後ろに手を回して腰を支えてくれなければへたり込んだかもしれない。



465 名前:教えて織屋君8[sage] 投稿日:05/02/18(金) 19:54:44 ID:???
「昼休みもそろそろ終わる。もう行こうぜ」「予鈴までまだ五分もあるわ。それともこうしてるのが嫌なの?」
浪馬が怒っていないこと知り、ようやく七瀬は背中から離れた。もっとも今度は浪馬を椅子に掛けさせると
その膝の上にちょこんと横座りしたのだから、ベッタリ張り付いていることに変わりはなかったが。
「嫌だなんて言ってねえよ。ホント、おまえって心配性なんだな。今日のことでつくづく思い知った」
膝の上に座ったとたん「あなたに捨てられるかと思った」と告げた七瀬に、浪馬はよほど仰天したらしい。
「物事をいい方にいい方に考えられるほど私は楽天的じゃないわ」
そう言うと、七瀬は頭を浪馬の肩に持たせ掛けた。

「さっきも言ったけど、今までの通りにやればいいから。他人の目なんて気にしたら負けだぜ?」
「大丈夫。あなたさえ居てくれるなら、私は平気よ」
「そっか。それとさ、今度意味のわからない言葉にぶつかったら、俺にそっと聞け。博学のお前が知らない
 なんて、あっち方面のロクでもない言葉に決まってるから」
「あなたはそっちの方は得意ですものね。あ、そうだ織屋君、まだ答えを教えてもらってないわ」
「答え? 何の?」
「忘れないでよ。私がマグロ女かどうか」
「ち、違うって! だいたい俺は一度も七瀬とのエッチがツマンナイなんて言ってないだろ?」
「そ、そうなんだ・・・よかった・・・」
「取り越し苦労にも程があるぜ。まだエッチ覚えたばかりなのに、七瀬全然じっとしてねえじゃん。
 色んな事覚えてくるし、俺の上には乗っかるし、七瀬がマグロだったら世の中の女全員がそうだぜ」
「よかった。これで安心よ」
「さっきの説明聞いてまだ不安に思うなんて心配のしすぎだ。大体あんなことしてくれなくても・・・ま、いいか」
「ねえ、あんなことしてくれなくてもってどいう事なの?」
「な、なんでもないって」
「あ、もしかして私やっぱりマグロ女なのかしら?」
「だから違うって言ってるじゃないか」
「ねえ、正直に教えて織屋君。私本当はマグロ女なんでしょ? 私に気を使ってさっきは嘘言ったんでしょ?」
「う、嘘じゃねえって。そんなおっかない顔で教えて織屋君って言われてもさ」
困り顔の浪馬にそれでも七瀬が「お願い教えて」と繰り返したとたん、彼女は浪馬の胸に抱きすくめられていた。
「全く筋金入りだな、七瀬の心配性も。まあ、あんまり気が乗らないけど、そんなに知りたいなら教えてやる」
「いいか? よく聞けよ?」 耳にささやかれる浪馬の声が、七瀬にはやけに熱く感じられた。



513 名前:教えて織屋君9[sage] 投稿日:05/02/23(水) 14:50:40 ID:???
「あったわ。こんなところに転がってたのね。やっと見つけ・・・・きゃんっ」
ゴチンと盛大な音がした。うっかり落としたペンを探して机の下に潜り込んでいた七瀬が、立ち上がろう
として机の角に頭をぶつけたのだ。「もう! なんなのこの机はっ!」七瀬はジロリと机を睨みつけた。

昼休みが終わってからの七瀬は、周囲が息を呑むほどの奇態っぷりを見せていた。彼女らしからぬ腑抜けた
表情をしているかと思えば、いきなりクスクス思い出し笑いをし、時には一人赤くなってクネクネと身を揉んだ。
授業中手に持ったペンを何度も床に落とし、廊下では何もない場所で滑って転んだ。そして今机で頭を打った。
「怪我でもしたらどうするのよ? 私の体は織屋君のモノなんだから、気安くぶつからないで!」
意味不明の文句を垂れると、七瀬は椅子に座り執行部の決済印を書類に押し始めた。居並ぶ執行部員達は
みな顔を伏せていた。彼らにしてみれば「とても見ちゃいられない」ということなのだろう。

「好きだよ、七瀬」
「えっ・・・!?」
「好きなんだ。俺はお前が好きだ。誰よりも好きだ。好きなんだよ。七瀬、好きだよ・・・」
いきなりの浪馬の囁きに、七瀬の心と体は一瞬にして溶け崩れた。声も出なくなった。
「おまえあの時に、よくこうやって耳元で好き好き言ってくるだろ? あれすっげぇ効くんだぜ」
「たぶん自然にやってるんだと思うけど、俺は頭が真っ白になる。嬉しくてな」
「七瀬は色んな事を覚えて俺を喜ばせてくれる」
「でも、もしそうでなかったとしても俺は七瀬とのエッチがツマンナイなんて思わないさ」
「白状しちまうと、七瀬が可愛い声出してくれるだけで、俺は死ぬほど満足してるんだ。だから」
自分がマグロ女かもしれないなんて不安がるのは止めろと浪馬は言い、最後にもう一度好きだぜと囁いた。

(いきなりあんなこと言うなんて・・・あんなことするなんて・・・織屋君ったら・・・・・)
書類にハンコを押す手がハタと止まり、七瀬の顔が見る見る赤くなってゆく。
(思い出す度に頭がどうにかなりそうだわ。授業は全然集中できないし、執行部の仕事も全然進まないし)
(が、学校であんなことしちゃダメでしょ? もうバカっ! エッチっ! 変態っ!)
(で、でも嬉しい。私が好きって言うのをそんなに喜んでくれてたなんて)
(あぁぁん・・織屋君・・織屋クン・・・織屋くん・・・織屋君くぅぅぅぅぅぅん・・・)
激しくトリップしてゆく七瀬。執行部にやってきてもう三回目である。授業中も含めれば両手で足りない回数だろう。



514 名前:教えて織屋君 END[sage] 投稿日:05/02/23(水) 14:51:53 ID:???
「心配性を直せなんて言わないけどさ、せめて俺の気持ちを心配するのだけはよせって」
「七瀬、三年になるまで俺を叱り付けた回数覚えてるか? 何回俺のデートの誘いを跳ね付けたっけ?」
たぶん浪馬は、これから好奇の目に晒されることになる七瀬を少しでも勇気付けたかったのだろう。心配性の
彼女が心を痛める種を一つでも消しておきたかったのだろう。自分の囁きにヘナヘナになってしまった七瀬を
教室に送り届ける途中も、珍しく浪馬はずっと饒舌だった。

(そ、そうなのよ。私ってキツイことばかり言うし、すぐ怒るし、とにかく可愛くない女なのよ)
(その私に何度も叱られて、嫌味言われて、それなのに織屋君は私に興味を持ってくれた)
(散々冷たくデートを断られても、懲りずに誘い続けてくれた)
(憎まれて当たり前のはずの私を、この可愛くない私を、織屋は好きだって言ってくれる・・・)
「うふふふふふ」 机に顔を伏せたままの七瀬の口から、押さえ切れない喜びの忍び笑いが漏れ出した。

「あんだけやっても俺に好かれちまったのに、今更どうやって嫌われるつもりだ? よく考えてみろよ」
(も、もう、ホント口が上手いんだから。それじゃあなた一生私を好きでいてくれるの?)
(卒業しても私と離れたりしない?)(も、もしかして一人暮らしで大学へ通う私の部屋に住もうと思ってる?)
(夫婦みたいに?)(あ・・・・)(ひょ、ひょっとして結婚してくれるの? さっき好きとは言ってくれたけど)
(私、ハッキリした言葉で聞かせて欲しい)(織屋君、私をお嫁さんにしてくれるの? ねえ? どうなの?)

「おーい、七瀬、いるか?」 
まさにドンピシャのタイミングで浪馬が執行部にやってきた。
「あ? 織屋君っ!」
「やっぱりここか。教室へ送った時おまえフラフラしてたけど、仕事して大丈夫なのか?」
「そ、それより織屋君、教えてほしいことがあるのよっ!」 七瀬が浪馬の元へ駆け寄った。  
「ん? 今度はなんだよ?」 
「あなた、あなた私と結婚してくれるのっ!?」
「は? け、結婚?」
「お願い。教えて織屋君っ!」

七瀬と浪馬が一線を越えたという段階を軽く飛び越え、結婚の約束をしたという噂が広まったのは、
翌日のことである。





594 名前:プロット横取りSSその1[sage] 投稿日:05/03/01(火) 00:54:56 ID:???
ドカッ! ボスッ!

「は~い、終了~」
「おうっ」

部室の前でサンドバッグへの打ち込みをしていた浪馬。
時間を測っているたまきと、浪馬をじっと見つめる夕璃。
キックボクシング同好会のメンバーが珍しく全員揃った
とある土曜日の放課後のなんの変哲も無い練習風景だった。だが……

「織屋君」
「よう、七瀬」
「ちょっと部室を調べさせてもらうわね」
「調べる?」

一休みしていた3人のもとに、執行部員数名を引き連れた七瀬がやって来る。

「さぁ、調べてちょうだい」
「ちょ、ちょっと待てよ。急になんなんだよいきなり」
「急にもなにも、あなたにいろいろ聞きたいのはこっちの方だわ」

凄い剣幕で浪馬を睨みながら話す七瀬にたまきが割ってはいる。

「浪馬君が何かしたの?」
「盗難事件よ」
「はい?」
「ここ数日の間で、5件もの盗難事件が起きているの」
「何が盗まれたの?」
「女子の体操着やらブルマーやらよ」

驚くたまき。
いや、それ以上に驚いているのは浪馬の方だ。

「おいおい、俺がそれを盗んだっていうのか?」
「あら、あなた以外に誰がするというの?」
「ちょっと待ってよ高遠さん。浪馬君は───」

─その時

「ありましたっ!」

「なにっ!?」
「ええっ!?」
「はぁ……やっぱり……」

執行部員が部室から見つけてきたバッグを七瀬のところに持ってきて、
中身を見せた。



595 名前:プロット横取りSSその2[sage] 投稿日:05/03/01(火) 00:55:39 ID:???
「これをどう説明するのかしら?」
「どう説明するって、オレはそんなバッグ知らねーよ」
「しらばっくれないでちょうだい。これだけ証拠が揃っていて
 まだ言い訳をするつもり?」
「オレが盗んだ証拠にはならないだろうが」
「……とりあえず、これは持ち主に返しておいてちょうだい」

浪馬の言葉に耳も貸さずに、執行部員に指示をする七瀬。
そして腑に落ちない浪馬に、もう一度冷やかな目を向ける。

「今までの行いは目をつぶるとしても、さすがにこれは許しがたいわね」
「だから、オレじゃねぇって言ってるだろっ!」
「この件は生徒指導の先生に報告しておきます。あとでみっちり説教してもらうことね」
「人の話を聞けっ!」

浪馬の叫びもどこ吹く風と、その場を立ち去ろうとする七瀬に
たまきが声をかける。

「高遠さん」
「なにかしら、柴門さん」
「浪馬君は人のものを盗ったりするような人じゃないよ」
「柴門さん」
「は、はい」
「彼の世話を焼くなら、もっとしっかりとしつけしてちょうだいね」
「………」
「幼馴染みだからといって、こんなに迷惑をかけられるあなたに同情するわ。
 だいたい、人のものを、しかも体操着を盗む人なんて、見限りをつけた方が
 いいのかもしれないわよ」
「そんな……信じてあげてよ……」

たまきの切なげな言葉を最後に聞いて、七瀬は無言でその場を去った。
そして3人は黙り込む。

「くそがっ……誰だよ、全く……」
「浪馬君……」

悔しがる浪馬にかけてやる言葉が見つからないたまき。
そんな様子を見て、夕璃がにこやかに声をかける。

「わたし、浪馬先輩を信じていますから安心して下さい」
「夕璃チャン……」
「……そうだよ、わたしも信じてるから」
「タマ……」
「生徒指導って言っても、どうせ志藤先生でしょ?
 浪馬君がこういう悪さをしないってことはきっとわかってくれるってば」
「……そうだといいんだけどな」
「気を取り直して、練習を始めませんか?」
「……そうだな」

それから間もなくして、サンドバッグを叩く音が
再び部室周辺に響き始めた。



596 名前:プロット横取りSSその3[sage] 投稿日:05/03/01(火) 00:56:23 ID:???
二日後の月曜日の休み時間

たまきの読みは当たり、志藤はあまり浪馬を咎めずに話を終える。
しかし腑に落ちない浪馬は、七瀬のもとへとやって来た。

「七瀬」
「泥棒に呼び捨てに呼ばれる筋合いは無いけど」
「この間盗まれたのは、どこの部のものなんだよ?」
「はぁ? 自分で盗んでおいて誰の物かわかっていないの?」
「わかんねえから聞いてるんだろうが」
「女子バレー部よ」
「そうか、バレー部だな」
「あやまりに行く必要はないわよ。今さら行っても。火に油を注ぐことになりかねないから」
「盗んでいないのに、謝る必要なんてねーだろ?」
「ほんと、往生際が悪い人ね」
「まあ、信じようと信じまいとオレのことはどうでもいいさ。
 だがな、タマや夕璃チャンはオレを信じてくれてるんだ。
 真犯人を捕まえてやらなきゃ、二人に申し訳ないからな」
「………」
「とりあえずバレー部だな。サンキュー」
「あっ、ちょっと……」

七瀬に構わずにその場から走って去っていく浪馬。
七瀬はそれを黙って見つめていた。



597 名前:プロット横取りSSその4[sage] 投稿日:05/03/01(火) 00:57:20 ID:???
その日の放課後

授業が終わるやいなや、教室を飛び出していく浪馬。
そして七瀬も授業を終えてすぐに、飛び出していった浪馬を追いかけていく。
浪馬に見つからないようにその後ろをついていくと、
浪馬は部室と体育館の間の通路にやって来た。

「あの窓から落として、ここに……」

あれこれ建物の様子を見て呟く浪馬。
それを物陰からじっと見つめる七瀬。
そしていろいろと何かを考えながら浪馬が部室の裏に向かって歩き出す。
その後を七瀬がついていく。
そして部室の裏に着いた時に、浪馬が何かを見つける。

「お前、これしか持ってないのか?」
「す、すみませんっ」
「俺は1万持ってこいって言ったよな」
「で、でも……」
「なんで3000円しかもってこねーんだよっ!」

二人組の不良にメガネの男子生徒が胸ぐらをつかまれていて、
今にも殴られそうな雰囲気である。
そこに平然と入って行く浪馬。

「はい、そこまで」
「げっ、織屋っ」
「お前ら、カツアゲしようとしてるわけじゃないよな?」
「ちっ、違うよ。なぁ?」
「あぁ……」
「オレは今非常に機嫌が悪いんだよ。しかもなぁ、人のものを盗るというのは
 NGワードなんだが」
「そ、そんなことはしないってば」
「そ、そうだよ、織屋」
「じゃあもうそこのメガネ君には用事はないよな?」
「あ、ああ」
「じゃあ、俺たちはそろそろ……」
「気をつけて帰れよ」
「お、おう」
「カツアゲに気をつけろよー」

そそくさと立ち去っていく二人組に皮肉を浴びせる浪馬。



598 名前:プロット横取りSSその5[sage] 投稿日:05/03/01(火) 00:58:01 ID:???
「さ、安心しろ、メガネ君」
「ありがとうございますっ」
「またあいつらに何かされそうになったらオレに言え」
「わかりましたっ」
「じゃあな」
「はいっ」

嬉しそうにお辞儀をして去っていくメガネ君。
浪馬はそれを満足そうに見送ると、再び考え込んだ。

「織屋君……」

物陰からじっとその様子を見ていた七瀬。
そこに大慌てで執行部員がやってくる。

「高遠先輩」
「わっ! えっ!?」
「どうかしたんですか?」
「い、いえ、急に声を掛けられたから驚いてしまって…」
「すみません……あっ! それより、また盗難事件が起きたんですよ!」
「えっ!?」
「しかもたった今なんですよっ!」
「たった…今?」
「すぐに織屋先輩のところに行って確かめてみなきゃいけないんじゃないですか?」
「………」
「高遠先輩?」
「と、とりあえず、物が盗まれた場所に連れて行ってちょうだい」
「はいっ。こっちです」



599 名前:プロット横取りSSその6[sage] 投稿日:05/03/01(火) 00:58:46 ID:???
「やっぱりありました」
「またかよ……」
「そう……」

またもや部室から見つかった盗難品を見つめる七瀬。
しかし今回は浪馬を責める事はない。
しばらくじっと考えて執行部員に指示を促す。

「これは私が返しておきます。それから、生徒指導の先生の方にも
 私から全て話しておくから、後は全部任せてちょうだい」
「わかりました」

前回の件はわからないが、少なくとも今回は浪馬ではない。
それは七瀬にもわかっていた。
そして執行部員が立ち去ると、二人きりになる浪馬と七瀬。

「疑わないのか?」
「え?」
「オレに何か言いたいんじゃないのか?」
「何かって?」
「泥棒だのなんだの」
「………」

浪馬に突っ込まれて黙り込む七瀬。

「なぁ七瀬。明日の放課後、オレに付き合え」
「えっ?」
「ちょっと考えがある」
「考えって何よ」
「いいから。明日の授業が終わったら、すぐにここに来てくれ」
「………わかったわ」
「頼んだぜ」
「ええ……」



600 名前:プロット横取りSSその7[sage] 投稿日:05/03/01(火) 00:59:28 ID:???
次の日の放課後

「ちょっと、あまりくっつかないでちょうだい」
「仕方ないだろ? ロッカーしか隠れる場所がないんだから」

部室内の狭いロッカーの中に、浪馬と七瀬が隠れている。

「もうちょっと離れてよ」
「それができる広さかどうかはお前なら充分理解できるだろ?」
「それはそうだけど……」

ここまで男とくっついた事がない七瀬は、目と鼻の先にある浪馬の体に
微妙に照れていた。

「それにしてもお前、いい香りがするな」
「ちょっとっ、何を言ってるのよっ!」
「しっ!」

七瀬の喋りを浪馬が制止する。
二人がじっと黙って耳を凝らすと、部室で何かガサゴソ音が聞こえた。
そして一気に飛び出す浪馬。

「おらあっ!」
「わわっ!」

突然飛び出した浪馬に驚く男子生徒。
慌てて逃げようとするが、浪馬に乗っかられて観念する。



601 名前:プロット横取りSSその8[sage] 投稿日:05/03/01(火) 01:00:24 ID:???
───

「はっはは。オレとタマはなんもねーよ。ただの幼馴染みだ」
「………」
「やきもちを妬くのは解るが、こういうのは勘弁してくれ」
「……すみません」

男子生徒、ひそかにたまきに想いを寄せていたことを白状した。
浪馬とたまきが仲良くしているのが気に入らなかったらしい。

「それで織屋君に罪を着せようとしたっていうの?」
「……ほんと、すみませんっ」
「もうしないか?」
「絶対にもうしませんっ!」
「んじゃ許す」
「えっ?」「えっ!?」

驚く男子生徒。それよりもっと驚く七瀬。


「タマが好きならアタックしてみろ。何度も言うが、オレはただの幼馴染みってだけだ。
 心配するな。なんなら協力してやったっていいぞ?」
「本当ですか?」
「ああ。あいつの性格とか好きなものとか、知ってる限り全部教えてやる」
「ありがとうございます」
「だからほんと、こういうのはもうやめろ。いいな?」
「はいっ」
「うむ。じゃ行ってよし」

お辞儀をして出て行く男子生徒を笑顔で見送る浪馬。

「どうして説教しないのよ」
「するかよ、そんなの」
「わからないわ……」
「恋敵を貶める。別に考えられない事じゃないだろ?
 ま、それが正しいかどうかは別としてだけどな」
「それはわかるけれど……」
「あいつも本気でタマのことが好きだったから、オレに妬いたんだろうが」
「それもわかるけど……」
「もうしないって約束したんだ。これでいいじゃねーか」
「………」
「七瀬。そんなに規律だ秩序だってかしこまってて学園生活が面白いか?」
「それは……」
「お前も恋をしたら、あいつの気持ちは多少なりとも理解できると思うぜ」
「恋なんて」
「それに、一番の被害者はオレだぞ? そのオレがもういいって言ってるんだ。
 これで解決でいいだろ?」
「……ええ、わかったわ」


602 名前:プロット横取りSSその9[sage] 投稿日:05/03/01(火) 01:01:07 ID:???
「それにしてもお前、最初は散々オレを疑ってくれたよな」
「それはあなたが……」
「酷いなぁ……」
「……」
「七瀬」
「はい」
「こういう時は言う言葉があるだろ?」
「……ごめんなさい……」
「ちゃんと心を込めて言ってるか?」
「ちゃんと思ってるわよ……」
「じゃあお詫びにオレとデートしろよ」
「えっ!?」
「嫌なのか?」
「それとこれとは話が……」
「あ~あ、みんなの前で辱められたんだけどなぁ……」
「……」
「結構傷ついたんだぜ、オレ」
「わかったわよ…」
「お、じゃあデートするのか?」
「ええ」
「よっしゃっ!」

浪馬の必要以上のガッツポーズにきょとんとする七瀬。

603 名前:プロット横取りSSその10[sage] 投稿日:05/03/01(火) 01:03:50 ID:???
「いろいろ連れまわすからな。覚悟しろよ?」
「ねえ織屋君」
「なんだ?」
「そんなに私とデートするのが…嬉しい?」
「当たり前だ。お前みたいな美人を連れて歩けるんだぞ?
 こんな嬉しい事は滅多に無い。すれ違うやつらに散々自慢してやれるぜ」
「私が……美人?」
「ああ。執行部副会長で怖いっていうイメージがなければ、お前は凄まじくモテると思うぞ」
「………」
「みんな振り向くだろうな。ククク、楽しみだぜ」
「………」
「お、そうだ。今回のことはタマや夕璃チャンには内緒にしといてくれよ?」
「え? ……ええ」
「お前とのデートも内緒にしといてやっからよ」
「…別にいいわよ」
「おいおい、デートだぞ? 恋人同士に見られるかもしれないんだぞ?
 オレはそれでも全然かまわないけど、お前が困るだろ?」
「織屋君は……かまわないの?」
「なんでオレが嫌がるんだよ」
「だって、私に散々疑われて嫌味を言われたのに…」
「今はオレを疑ってるか? オレに嫌味を言いたいか?」
「いや、それは違うけど」
「じゃあいいじゃねえか」
「ええ…」
「よしっ、問題解決だっ。ひゃ~、なんか安心したら腹が減ってきたぜ。
 何か食いにでも行ってくるか」

そう言って颯爽と部室を出て行く浪馬。

「織屋君……」

浪馬が自分をそんな風に見ていたなんて信じられないという感じの七瀬。
そしてクスリと笑う。

「今なら、柴門さん達が彼をかばう気持ちが理解できるわ……」


終わり