「ねぇ?こんな高級そうなところ、大丈夫なの?」
「何言ってんだよ、これでも立派な社会人だぜ?それに、今日はお前の
誕生日だろ?」
「それはそうだけど・・・。無理しなくても、家でよかったんじゃない?」
「まぁ、そう言うなって。お前には、いろいろと世話になってるんだし、たま
にはいいだろ?」
「本当に無理していない?」
「してないって!」
「わかった・・・。」
そんな会話をしていると、食前酒が運ばれてくる
「お♪きたきた♪」
「お待たせいたしました。○○○、19XX年でございます。」
テイスティングも終わり、二人のグラスに、ワインが注がれる。
ソムリエが一礼し、その場から立ち去ると、二人は会話を再開した。
「ねぇ、19XX年って、私達が生まれた年よね?」
「ん?そうだぞ?」
「ひょっとして、これが今年のプレゼント?」
「ん~、そんなトコだけど、ちょっと違う。」
「それじゃあ、あなたなりの演出?」
「何だ?嫌だったか?こういうの。」
「あなたが私の事を考えてくれたんでしょう?なら、嫌なわけないでしょ?」
「そう言って貰えると、考えた甲斐があったよ。んでも、メインディッシュは
まだだけどな。」
「そうなの?」
「あぁ。とりあえず、乾杯しようぜ。」
「えぇ。」
「んじゃ、改めて。誕生日おめでとう。七瀬。」
「ありがとう。織屋君。」
「で、これ、プレゼントな。」
「ありがとう。」
浪馬から、ラッピングされた袋を受け取る。
七瀬が手渡された袋を開けると、そこには、小さな熊のぬいぐるみが2つ、
寄り添うように入っていた。
「うふふ。毎年ありがとう。」
「い~え、どういたしまして。んでも、毎年毎年、同じのばっかで、飽き
ないか?なんなら、もっと別のを・・・」
「この子達がいいの!」
「そ、そうか?まぁ、お前がそう言うなら・・・。」
「♪~」
ご機嫌な様子の七瀬。
うれしそうに、グラスを傾けると、慌てたように浪馬が言った。
「な、七瀬!あまり飲みすぎるなよ?!」
「あら?どうして?お祝いしてくれるんでしょ?」
「い、いや・・・、その・・・、つ、つまり・・・!ま、まだ、り、料理が出
て来るんだから、飲みすぎて、食べれなくなったら、もったいないだろ?!」
「それもそうね。」
なんとなくだが、納得した七瀬。
「そう!そう!」
こちらは、七瀬の絡み酒を阻止できて、ホッとした浪馬。
そうこうしているうちに、前菜からメインディッシュなどが順に運ばれ、
最後のデザートを食べ終えた時に、七瀬が不意に浪馬に尋ねた。
「ご馳走様でした。そういえば、メインディッシュって何だったの?」
「何言ってんだよ?俺は肉で、お前は魚を頼んでたじゃないか?」
「何を言ってるのよ!料理じゃなくて、あなたが言ってたのよ?」
「・・・!おっと!そうだった!これだ。これ。」
と言うと、上着のポケットから、何かを取り出し、テーブルの上に置く。
「これって、指輪・・・?」
「そうだ。」
「指輪だったら、前にもらったのがあるじゃない?」
「まあ、そう言わずに開けてみろよ。」
「え、えぇ・・・。」
何か腑に落ちないような七瀬。
ケースを開けると、そこには、小さなダイヤがはめ込まれた
指輪が輝いていた。
「ちょ、ちょっと!これって、ダイヤじゃないの?!」
「そうだ」
「『そうだ』じゃないわよ!こんな高いもの、もらえないわよ!」
「そう言うなよ・・・。」
「でも・・・。」
「ついでに言うと、そいつは、まだメインじゃないぞ。」
「え?」
「ちょっとだけ、聞いて欲しい事がある。いいか?」
「え、えぇ・・・。」
真剣な表情で、フゥと一呼吸する浪馬。
そして、少してれたように、頭をかく。
「な、七瀬、お、俺と・・・(いや、違うな)」
「(そうだ!)・・・一生、俺と一緒に歩いていってくれないか?」
その言葉の意味が、イマイチ理解できないような様子の七瀬。
不思議そうな顔をした七瀬を見つめ、浪馬が言葉を続ける。
「俺、お前と一緒に・・・じいさん、ばあさんになって行きたい。」
「・・・。」
「このセリフと、その指輪のセットが俺からのメインディッシュだ。」
「・・・えっ?」
目をパチクリする七瀬。
「だから、これからもずっと、お前の隣で、お前と一緒に年をとっていきた
いんだ。ちなみに期限は、死ぬまでな。」
「・・・それ・・・って・・・。」
「嫌か?」
そして、時間にして10秒も経たないうちに、その瞳に涙が溢れ出す。
「ゃ・・・ぃ・・・」
「ん?なんて言ったんだ?」
「・・・ない」
「え?」
「いや・・・じゃ・・・ない。」
「そ、それじゃあ?!」
浪馬の言葉に、指で涙をぬぐいながら、心の底から嬉しそうに微笑みかける。
「OKに決まってる・・・。」
「ふぅ~。その言葉を聞いて、緊張が解けたぜ。」
浪馬はつぶやく様にそう言うと、テーブルに置かれたグラスの
中身を一気に飲み干した。
「ふぅ~、同棲する時に行った挨拶より、緊張したぞ。」
「もう!またそんなことを言って・・・。」
「いや、ホントだって!証拠をみせてやるよ!」
そう言って、七瀬の目の前に差し出された、浪馬の手。
その掌は、べっとりと汗に濡れていた。
「フフッ、お疲れ様。ねぇ?」
「ん?」
「はめてくれないの?」
「えっ?こ、こんなところでか?それは、ちょっと・・・」
「もう!何を言ってるのよ!指輪よ!ゆ・び・わ!」
「お、おうっ!」
その言葉を聞き、左手を浪馬に差し出す七瀬。
掌の汗を拭き、指輪をケースから出し、その手をとる浪馬。
二人の間に沈黙が流れる。
「き、緊張するな・・・。」
七瀬の薬指に、ゆっくりと指輪がはめられていく。
「これでいいか?」
指輪をはめ終えた浪馬が聞く。
「ええ。ありがとう。」
浪馬に聞かれた七瀬が答える。
「んじゃ、あらためて。」
「・・・」
「七瀬・・・、俺の嫁さんになってくれ。」
「・・・ハイ・・・。」
「一緒に、じいさん、ばあさんになろうな。」
「ハイ・・・!」
一度止まった涙が、再び七瀬の瞳を濡らす。
「泣くなよ・・・。」
「嬉しいんだもの、いいじゃない。」
「まぁ、そこまで喜んでもらえたら、俺も嬉しいけどな。」
「あなたからもらったプレゼントの中で、今の言葉が一番嬉しい・・・。だから
・・・泣いても、いいでしょう?」
「そりゃそうだけどな・・・。」
「何?」
「いや、そろそろ出ないか?」
「どうして?」
「お前、気付いてないのか?」
「何に?」
「・・・店中の注目の的だぞ?俺たち・・・。」
「えっ?!」
周囲の視線に気付き、途端に真っ赤になる。
「お、織屋君!早く出ましょう!」
「いや、出るのはいいけど、涙ぐらい拭いたほうがいいんじゃないか?」
七瀬は、慌ててハンカチを取り出し、涙を拭いた。
「何言ってんだよ、これでも立派な社会人だぜ?それに、今日はお前の
誕生日だろ?」
「それはそうだけど・・・。無理しなくても、家でよかったんじゃない?」
「まぁ、そう言うなって。お前には、いろいろと世話になってるんだし、たま
にはいいだろ?」
「本当に無理していない?」
「してないって!」
「わかった・・・。」
そんな会話をしていると、食前酒が運ばれてくる
「お♪きたきた♪」
「お待たせいたしました。○○○、19XX年でございます。」
テイスティングも終わり、二人のグラスに、ワインが注がれる。
ソムリエが一礼し、その場から立ち去ると、二人は会話を再開した。
「ねぇ、19XX年って、私達が生まれた年よね?」
「ん?そうだぞ?」
「ひょっとして、これが今年のプレゼント?」
「ん~、そんなトコだけど、ちょっと違う。」
「それじゃあ、あなたなりの演出?」
「何だ?嫌だったか?こういうの。」
「あなたが私の事を考えてくれたんでしょう?なら、嫌なわけないでしょ?」
「そう言って貰えると、考えた甲斐があったよ。んでも、メインディッシュは
まだだけどな。」
「そうなの?」
「あぁ。とりあえず、乾杯しようぜ。」
「えぇ。」
「んじゃ、改めて。誕生日おめでとう。七瀬。」
「ありがとう。織屋君。」
「で、これ、プレゼントな。」
「ありがとう。」
浪馬から、ラッピングされた袋を受け取る。
七瀬が手渡された袋を開けると、そこには、小さな熊のぬいぐるみが2つ、
寄り添うように入っていた。
「うふふ。毎年ありがとう。」
「い~え、どういたしまして。んでも、毎年毎年、同じのばっかで、飽き
ないか?なんなら、もっと別のを・・・」
「この子達がいいの!」
「そ、そうか?まぁ、お前がそう言うなら・・・。」
「♪~」
ご機嫌な様子の七瀬。
うれしそうに、グラスを傾けると、慌てたように浪馬が言った。
「な、七瀬!あまり飲みすぎるなよ?!」
「あら?どうして?お祝いしてくれるんでしょ?」
「い、いや・・・、その・・・、つ、つまり・・・!ま、まだ、り、料理が出
て来るんだから、飲みすぎて、食べれなくなったら、もったいないだろ?!」
「それもそうね。」
なんとなくだが、納得した七瀬。
「そう!そう!」
こちらは、七瀬の絡み酒を阻止できて、ホッとした浪馬。
そうこうしているうちに、前菜からメインディッシュなどが順に運ばれ、
最後のデザートを食べ終えた時に、七瀬が不意に浪馬に尋ねた。
「ご馳走様でした。そういえば、メインディッシュって何だったの?」
「何言ってんだよ?俺は肉で、お前は魚を頼んでたじゃないか?」
「何を言ってるのよ!料理じゃなくて、あなたが言ってたのよ?」
「・・・!おっと!そうだった!これだ。これ。」
と言うと、上着のポケットから、何かを取り出し、テーブルの上に置く。
「これって、指輪・・・?」
「そうだ。」
「指輪だったら、前にもらったのがあるじゃない?」
「まあ、そう言わずに開けてみろよ。」
「え、えぇ・・・。」
何か腑に落ちないような七瀬。
ケースを開けると、そこには、小さなダイヤがはめ込まれた
指輪が輝いていた。
「ちょ、ちょっと!これって、ダイヤじゃないの?!」
「そうだ」
「『そうだ』じゃないわよ!こんな高いもの、もらえないわよ!」
「そう言うなよ・・・。」
「でも・・・。」
「ついでに言うと、そいつは、まだメインじゃないぞ。」
「え?」
「ちょっとだけ、聞いて欲しい事がある。いいか?」
「え、えぇ・・・。」
真剣な表情で、フゥと一呼吸する浪馬。
そして、少してれたように、頭をかく。
「な、七瀬、お、俺と・・・(いや、違うな)」
「(そうだ!)・・・一生、俺と一緒に歩いていってくれないか?」
その言葉の意味が、イマイチ理解できないような様子の七瀬。
不思議そうな顔をした七瀬を見つめ、浪馬が言葉を続ける。
「俺、お前と一緒に・・・じいさん、ばあさんになって行きたい。」
「・・・。」
「このセリフと、その指輪のセットが俺からのメインディッシュだ。」
「・・・えっ?」
目をパチクリする七瀬。
「だから、これからもずっと、お前の隣で、お前と一緒に年をとっていきた
いんだ。ちなみに期限は、死ぬまでな。」
「・・・それ・・・って・・・。」
「嫌か?」
そして、時間にして10秒も経たないうちに、その瞳に涙が溢れ出す。
「ゃ・・・ぃ・・・」
「ん?なんて言ったんだ?」
「・・・ない」
「え?」
「いや・・・じゃ・・・ない。」
「そ、それじゃあ?!」
浪馬の言葉に、指で涙をぬぐいながら、心の底から嬉しそうに微笑みかける。
「OKに決まってる・・・。」
「ふぅ~。その言葉を聞いて、緊張が解けたぜ。」
浪馬はつぶやく様にそう言うと、テーブルに置かれたグラスの
中身を一気に飲み干した。
「ふぅ~、同棲する時に行った挨拶より、緊張したぞ。」
「もう!またそんなことを言って・・・。」
「いや、ホントだって!証拠をみせてやるよ!」
そう言って、七瀬の目の前に差し出された、浪馬の手。
その掌は、べっとりと汗に濡れていた。
「フフッ、お疲れ様。ねぇ?」
「ん?」
「はめてくれないの?」
「えっ?こ、こんなところでか?それは、ちょっと・・・」
「もう!何を言ってるのよ!指輪よ!ゆ・び・わ!」
「お、おうっ!」
その言葉を聞き、左手を浪馬に差し出す七瀬。
掌の汗を拭き、指輪をケースから出し、その手をとる浪馬。
二人の間に沈黙が流れる。
「き、緊張するな・・・。」
七瀬の薬指に、ゆっくりと指輪がはめられていく。
「これでいいか?」
指輪をはめ終えた浪馬が聞く。
「ええ。ありがとう。」
浪馬に聞かれた七瀬が答える。
「んじゃ、あらためて。」
「・・・」
「七瀬・・・、俺の嫁さんになってくれ。」
「・・・ハイ・・・。」
「一緒に、じいさん、ばあさんになろうな。」
「ハイ・・・!」
一度止まった涙が、再び七瀬の瞳を濡らす。
「泣くなよ・・・。」
「嬉しいんだもの、いいじゃない。」
「まぁ、そこまで喜んでもらえたら、俺も嬉しいけどな。」
「あなたからもらったプレゼントの中で、今の言葉が一番嬉しい・・・。だから
・・・泣いても、いいでしょう?」
「そりゃそうだけどな・・・。」
「何?」
「いや、そろそろ出ないか?」
「どうして?」
「お前、気付いてないのか?」
「何に?」
「・・・店中の注目の的だぞ?俺たち・・・。」
「えっ?!」
周囲の視線に気付き、途端に真っ赤になる。
「お、織屋君!早く出ましょう!」
「いや、出るのはいいけど、涙ぐらい拭いたほうがいいんじゃないか?」
七瀬は、慌ててハンカチを取り出し、涙を拭いた。
二人の部屋
ソファーに座る浪馬と寄り添うようにして七瀬が並んで座っている。
テーブルの上には、七瀬が淹れた紅茶が湯気を立てている。
七瀬の視線も先には、左手に光る指輪。
「まだ見てるのか?」
「だって・・・。」
「あんまり見つめてたら、穴が開いちまうぞ?」
「それは、困るわね。」
七瀬が浪馬の冗談に、笑顔で答える。
「あっ・・・」
続けて七瀬が何か言おうとした瞬間、浪馬が七瀬の肩を抱き、自らの方へと
引き寄せた。
「・・・」
しばらくの沈黙。
沈黙を破るように、七瀬が口を開いた。
「・・・ねぇ?」
「ん?」
浪馬の肩口にもたれながら、七瀬が呟いた。
「私達、結婚、するのよね?」
「ああ。」
「浮気、しないでね?」
「ああ。」
「ずっと一緒よね?」
「ああ。死ぬまで一緒だ。」
「いいえ、それは違うわ。」
「ん?」
「死んでしまったら、生まれ変わって、私はあなたに恋をするの。そして、
また結婚して、一生を送るの。」
「七瀬・・・」
「ずっとこれの繰り返し。・・・ダメ?」
「・・・いいアイデアだな。それ。」
「ウフフ、ありがとう。それから・・・」
「なんだ?まだあるのか?」
何か言おうとする七瀬を浪馬が遮る。
「じゃあ、最後にひとつだけ聞いて?」
「・・・」
「あのね、幸せに・・・なりましょうね・・・。」
「ああ。『これでもか!』ってくらい、幸せにするよ。」
「私も・・・同じ。」
「えっ?」
「あなたが私を『これでもか!』ってぐらい、幸せにしてくれるのなら、
私もあなたを同じぐらい、幸せにしてあげたい。だから、二人で幸せにな
りましょう。」
「おいおい、それじゃあ、世界一幸せになっちまうぞ?」
「それでいいじゃない?」
「そうだな。」
「そうよ。」
どちらからともなく笑い出す二人。
時間が穏やかに流れて行く。
「そうだ!もうひとつ・・・。」
「えっ?なに?」
「いや、お前の実家にも挨拶に行かなきゃいけないんだろ?」
「ああ、そうね。」
「近いうちに行きたいから、都合を聞いておいてくれないか?」
「わかった。明日にでも聞いておくわ。」
「何なら、今すぐでもいいぞ?」
「えっ?」
「ホラ、『善は急げ』って言うだろ?」
「いいの?」
「正直言うとな、早く終わらせたいんだ。」
「どういうこと?」
少し不機嫌になったように、尋ねる七瀬。
「あ、別に変な意味じゃないぞ!」
こちらは、あわてて自分を弁護する浪馬。
「早く、この緊張から開放されたいだけなんだよ。」
「何だ。そういうこと。」
「そうだ。」
「それじゃあ、協力してあげる。少し待ってて。」
そういい残し、七瀬は、電話の方へと向かった。
テーブルの上には、七瀬が淹れた紅茶が湯気を立てている。
七瀬の視線も先には、左手に光る指輪。
「まだ見てるのか?」
「だって・・・。」
「あんまり見つめてたら、穴が開いちまうぞ?」
「それは、困るわね。」
七瀬が浪馬の冗談に、笑顔で答える。
「あっ・・・」
続けて七瀬が何か言おうとした瞬間、浪馬が七瀬の肩を抱き、自らの方へと
引き寄せた。
「・・・」
しばらくの沈黙。
沈黙を破るように、七瀬が口を開いた。
「・・・ねぇ?」
「ん?」
浪馬の肩口にもたれながら、七瀬が呟いた。
「私達、結婚、するのよね?」
「ああ。」
「浮気、しないでね?」
「ああ。」
「ずっと一緒よね?」
「ああ。死ぬまで一緒だ。」
「いいえ、それは違うわ。」
「ん?」
「死んでしまったら、生まれ変わって、私はあなたに恋をするの。そして、
また結婚して、一生を送るの。」
「七瀬・・・」
「ずっとこれの繰り返し。・・・ダメ?」
「・・・いいアイデアだな。それ。」
「ウフフ、ありがとう。それから・・・」
「なんだ?まだあるのか?」
何か言おうとする七瀬を浪馬が遮る。
「じゃあ、最後にひとつだけ聞いて?」
「・・・」
「あのね、幸せに・・・なりましょうね・・・。」
「ああ。『これでもか!』ってくらい、幸せにするよ。」
「私も・・・同じ。」
「えっ?」
「あなたが私を『これでもか!』ってぐらい、幸せにしてくれるのなら、
私もあなたを同じぐらい、幸せにしてあげたい。だから、二人で幸せにな
りましょう。」
「おいおい、それじゃあ、世界一幸せになっちまうぞ?」
「それでいいじゃない?」
「そうだな。」
「そうよ。」
どちらからともなく笑い出す二人。
時間が穏やかに流れて行く。
「そうだ!もうひとつ・・・。」
「えっ?なに?」
「いや、お前の実家にも挨拶に行かなきゃいけないんだろ?」
「ああ、そうね。」
「近いうちに行きたいから、都合を聞いておいてくれないか?」
「わかった。明日にでも聞いておくわ。」
「何なら、今すぐでもいいぞ?」
「えっ?」
「ホラ、『善は急げ』って言うだろ?」
「いいの?」
「正直言うとな、早く終わらせたいんだ。」
「どういうこと?」
少し不機嫌になったように、尋ねる七瀬。
「あ、別に変な意味じゃないぞ!」
こちらは、あわてて自分を弁護する浪馬。
「早く、この緊張から開放されたいだけなんだよ。」
「何だ。そういうこと。」
「そうだ。」
「それじゃあ、協力してあげる。少し待ってて。」
そういい残し、七瀬は、電話の方へと向かった。
「えっ?!だ、大丈夫だとは思うけど・・・。それじゃあ、彼に聞いてみて、
後でまた電話するから。」
困ったような顔をした七瀬が浪馬のいる部屋に戻ってくる。
「どうだった?」
「え、えっとね・・・。」
「なんだ?留守だったのか?」
「違うのよ・・・。」
「じゃあ、一体どうしたんだ?」
「あ、あの・・・。」
「?」
「・・・明日のデートの場所、変更しない?」
「?」
「あなたにプロポーズされた事、話したのよ。」
「うん。」
「それで、あなたが挨拶しに行きたいって言ったことも言ったら、
母さんが『それなら、早いうちがいいわね。』って。」
「・・・」
「それで、明日でどうかって。」
「えっ?!」
「・・・ダメ?」
「・・・」
「い、いくらなんでも、急すぎるわよね!」
「・・・」
「私、断ってくるから。」
寂しそうにそう言うと、電話に向かおうとする。
そんな七瀬を引き止めるように、浪馬が口を開いた。
「行こう。」
「えっ?」
「明日、挨拶に行くぞ。」
「いいの?」
「ああ。明日のデートは、高遠家に変更だな。」
「フフッ、そうね。ちょっと・・・残念だけど。」
七瀬が複雑そうな笑顔で答えると、浪馬が意地悪そうに笑いながら言う。
「ちょっとだけなのか?俺は、すっげぇ残念なんだけどな~?」
浪馬がニヤニヤしながら言うと
「う・・・、もう!またそんな事言うんだから!」
少し怒ったように、七瀬が返す。
「はははっ。怒るなよ。」
「・・・・・・意地悪。」
少し膨れる。七瀬。
「ほら、それよりも、電話、電話。」
「ええ。」
「時間の方は、お前に任せるからな。」
「わかったわ。それじゃあ、電話してくるから、待っててね。」
そう言い残し、再び電話に向かう。
後でまた電話するから。」
困ったような顔をした七瀬が浪馬のいる部屋に戻ってくる。
「どうだった?」
「え、えっとね・・・。」
「なんだ?留守だったのか?」
「違うのよ・・・。」
「じゃあ、一体どうしたんだ?」
「あ、あの・・・。」
「?」
「・・・明日のデートの場所、変更しない?」
「?」
「あなたにプロポーズされた事、話したのよ。」
「うん。」
「それで、あなたが挨拶しに行きたいって言ったことも言ったら、
母さんが『それなら、早いうちがいいわね。』って。」
「・・・」
「それで、明日でどうかって。」
「えっ?!」
「・・・ダメ?」
「・・・」
「い、いくらなんでも、急すぎるわよね!」
「・・・」
「私、断ってくるから。」
寂しそうにそう言うと、電話に向かおうとする。
そんな七瀬を引き止めるように、浪馬が口を開いた。
「行こう。」
「えっ?」
「明日、挨拶に行くぞ。」
「いいの?」
「ああ。明日のデートは、高遠家に変更だな。」
「フフッ、そうね。ちょっと・・・残念だけど。」
七瀬が複雑そうな笑顔で答えると、浪馬が意地悪そうに笑いながら言う。
「ちょっとだけなのか?俺は、すっげぇ残念なんだけどな~?」
浪馬がニヤニヤしながら言うと
「う・・・、もう!またそんな事言うんだから!」
少し怒ったように、七瀬が返す。
「はははっ。怒るなよ。」
「・・・・・・意地悪。」
少し膨れる。七瀬。
「ほら、それよりも、電話、電話。」
「ええ。」
「時間の方は、お前に任せるからな。」
「わかったわ。それじゃあ、電話してくるから、待っててね。」
そう言い残し、再び電話に向かう。
「じゃあ、そのぐらいの時間に帰るから。えっ?・・・な、何言ってるのよ!
・・・ええ、それじゃあ、おやすみなさい。」
そう言って、受話器を置くと、七瀬は、“フゥッ”とため息をつきながら、
浪馬の隣に戻ってきた。
「どうしたんだ?ため息なんかついて?」
「あっ、なんでもないのよ。からかわれたから、それで・・・。」
「はははっ、相変わらず、仲がいいな。」
「私をからかって、楽しんでるのよ。困った親だわ。」
「ハハハ。っと、俺、そろそろ寝るわ。」
「えっ?!もう寝ちゃうの?」
「へっ?」
「そ、そうよね・・・、ら、頼津まで行くのなら、少し早めに出発しなければ
いけないものね・・・。」
「そうだな。」
「・・・」
「それで?」
「だ、だから・・・。」
真っ赤になって、下を向いてしまう七瀬。
「プッ・・・!」
そんな七瀬の様子を見て、浪馬が吹き出す。
「な、なぜ笑うのよ?!」
「いや、なんでもないって。」
「・・・あっ・・・!ひどい!!あなたまで、からかったのね?!」
真っ赤になりながら、今度はふくれる七瀬。
「ハハハッ!ふくれるなよ、綺麗な顔が台無しだぞ?」
「知らない!」
「機嫌直してくれよ~。」
「・・・。」
「七瀬ぇ~、・・・。」
「・・・。」
「からかって悪かったって!緊張して寝れないんだよな?」
「・・・。」
「付き合うって!だから、機嫌直せよ~!」
「・・・。」
「何でも、言うこと聞くからさ!機嫌直してくれよ~!なっ?!」
両手を合わせて、七瀬を拝む浪馬。
そんな浪馬を前にして、うつむいたままの七瀬が答えた。
「・・・本当?」
「おうっ!男に二言はない!」
浪馬が言い放った瞬間、七瀬が顔を上げる。
顔には、満面の笑み。
「グッ・・・。」
七瀬の表情を見て、唖然とする浪馬。
「だ、騙したのか?!」
「あら、騙したなんて、人聞きの悪い事言わないでよ。」
「いや、実際、騙してるぞ・・・。」
「違います!私もからかっただけです!」
「ひ、ひっでぇ~!」
「あら?最初に私をからかったのは、どこの誰かしら?」
ニコニコしながら、勝ち誇ったように答える七瀬。
「うっ・・・。」
七瀬の反撃に、絶句する浪馬。
「思いがけないプレゼントもあったし、今日は、許してあげる。」
「へっ?思いがけないプレゼントって・・・?」
「あら?私の言う事、何でも聞いてくれるんじゃなかったの?」
「あ、あれはだな・・・」
「『男に二言はない』じゃなかったのかしら?」
「お、お前な・・・」
「それとも、またからかったのかしら?」
「グッ・・・」
またもや、絶句してしまう浪馬。
「大丈夫よ。そんなに無茶な事は言わないから。」
そんな浪馬を見て、七瀬が満面の笑みで答える。
「わ、わかったよ。」
しぶしぶと言った感じで、浪馬が答える。
一方の七瀬は、何かを考えている。
「・・・ねぇ?」
「ん?」
「本当に、どんな事でもいいの?」
「う~ん、常識の範囲内でって、事ならな。」
「じゃあ、こういうのはダメ?」
「ん?言ってみろよ?」
「あ、あのね・・・。」
そう言ったものの、七瀬は黙り込んでしまった。
「いいから、言ってみろよ?」
「え、ええ・・・。それじゃあ・・・。」
「・・・」
「今日が終わるまで、私のお願いを聞いて欲しい・・・。」
「へっ?」
「だから、今日が終わるまで、私のお願いを聞いて欲しいの!」
「それでいいのか?」
「ええ。」
「もっと他にないのか?」
不思議そうに浪馬が尋ねる。
「ええ。ないわ。だって、一番欲しかった物は、さっき貰ったもの。」
優しい微笑を浮かべながら、本当に嬉しそうに答える。
「・・・よし!わかった!んでも、あんまり無茶なのは、無しな?」
「フフッ、わかってるわよ。」
「よし!契約成立だな?」
そう言って、指切りをする二人。
「ウフフ、それじゃあ、早速だけど・・・。」
「なんだ?もうか?」
「ええ。いいかしら?」
少しの間の沈黙。
沈黙を破り、最初の願いを七瀬が口にした。
「・・・キス。」
「へっ?」
「キスしてほしい・・・。それが最初のお願い。」
「それでいいのか?」
「ええ。」
目を閉じた七瀬が、浪馬に顔を向ける。
浪馬の両手が、七瀬の両肩を優しくつかみ、自分の方へと引き寄せる。
そっと重なる、二人の唇。
長くもなく短くもない時間が二人の間に流れ、どちらからともなく、唇を離す。
「・・・。」
「・・・。」
黙り込んでしまう二人。
「・・・なんか、緊張しちまったぞ。」
「そ、そうね。」
「数え切れないぐらいしてるのにな?キス。」
「ええ。でも、新鮮だったわ。」
「そ、そうだな。」
「恋人から婚約者になったからかしら?まるで、あなたに初めてキスされた時み
たい・・・。」
少し頬を染めながら、七瀬が答える。
「・・・。」
「・・・。」
またも黙り込んでしまう二人。
「お、お風呂の用意してくるわね!」
七瀬は、そういい残し、浴室の方に姿を消した。
・・・ええ、それじゃあ、おやすみなさい。」
そう言って、受話器を置くと、七瀬は、“フゥッ”とため息をつきながら、
浪馬の隣に戻ってきた。
「どうしたんだ?ため息なんかついて?」
「あっ、なんでもないのよ。からかわれたから、それで・・・。」
「はははっ、相変わらず、仲がいいな。」
「私をからかって、楽しんでるのよ。困った親だわ。」
「ハハハ。っと、俺、そろそろ寝るわ。」
「えっ?!もう寝ちゃうの?」
「へっ?」
「そ、そうよね・・・、ら、頼津まで行くのなら、少し早めに出発しなければ
いけないものね・・・。」
「そうだな。」
「・・・」
「それで?」
「だ、だから・・・。」
真っ赤になって、下を向いてしまう七瀬。
「プッ・・・!」
そんな七瀬の様子を見て、浪馬が吹き出す。
「な、なぜ笑うのよ?!」
「いや、なんでもないって。」
「・・・あっ・・・!ひどい!!あなたまで、からかったのね?!」
真っ赤になりながら、今度はふくれる七瀬。
「ハハハッ!ふくれるなよ、綺麗な顔が台無しだぞ?」
「知らない!」
「機嫌直してくれよ~。」
「・・・。」
「七瀬ぇ~、・・・。」
「・・・。」
「からかって悪かったって!緊張して寝れないんだよな?」
「・・・。」
「付き合うって!だから、機嫌直せよ~!」
「・・・。」
「何でも、言うこと聞くからさ!機嫌直してくれよ~!なっ?!」
両手を合わせて、七瀬を拝む浪馬。
そんな浪馬を前にして、うつむいたままの七瀬が答えた。
「・・・本当?」
「おうっ!男に二言はない!」
浪馬が言い放った瞬間、七瀬が顔を上げる。
顔には、満面の笑み。
「グッ・・・。」
七瀬の表情を見て、唖然とする浪馬。
「だ、騙したのか?!」
「あら、騙したなんて、人聞きの悪い事言わないでよ。」
「いや、実際、騙してるぞ・・・。」
「違います!私もからかっただけです!」
「ひ、ひっでぇ~!」
「あら?最初に私をからかったのは、どこの誰かしら?」
ニコニコしながら、勝ち誇ったように答える七瀬。
「うっ・・・。」
七瀬の反撃に、絶句する浪馬。
「思いがけないプレゼントもあったし、今日は、許してあげる。」
「へっ?思いがけないプレゼントって・・・?」
「あら?私の言う事、何でも聞いてくれるんじゃなかったの?」
「あ、あれはだな・・・」
「『男に二言はない』じゃなかったのかしら?」
「お、お前な・・・」
「それとも、またからかったのかしら?」
「グッ・・・」
またもや、絶句してしまう浪馬。
「大丈夫よ。そんなに無茶な事は言わないから。」
そんな浪馬を見て、七瀬が満面の笑みで答える。
「わ、わかったよ。」
しぶしぶと言った感じで、浪馬が答える。
一方の七瀬は、何かを考えている。
「・・・ねぇ?」
「ん?」
「本当に、どんな事でもいいの?」
「う~ん、常識の範囲内でって、事ならな。」
「じゃあ、こういうのはダメ?」
「ん?言ってみろよ?」
「あ、あのね・・・。」
そう言ったものの、七瀬は黙り込んでしまった。
「いいから、言ってみろよ?」
「え、ええ・・・。それじゃあ・・・。」
「・・・」
「今日が終わるまで、私のお願いを聞いて欲しい・・・。」
「へっ?」
「だから、今日が終わるまで、私のお願いを聞いて欲しいの!」
「それでいいのか?」
「ええ。」
「もっと他にないのか?」
不思議そうに浪馬が尋ねる。
「ええ。ないわ。だって、一番欲しかった物は、さっき貰ったもの。」
優しい微笑を浮かべながら、本当に嬉しそうに答える。
「・・・よし!わかった!んでも、あんまり無茶なのは、無しな?」
「フフッ、わかってるわよ。」
「よし!契約成立だな?」
そう言って、指切りをする二人。
「ウフフ、それじゃあ、早速だけど・・・。」
「なんだ?もうか?」
「ええ。いいかしら?」
少しの間の沈黙。
沈黙を破り、最初の願いを七瀬が口にした。
「・・・キス。」
「へっ?」
「キスしてほしい・・・。それが最初のお願い。」
「それでいいのか?」
「ええ。」
目を閉じた七瀬が、浪馬に顔を向ける。
浪馬の両手が、七瀬の両肩を優しくつかみ、自分の方へと引き寄せる。
そっと重なる、二人の唇。
長くもなく短くもない時間が二人の間に流れ、どちらからともなく、唇を離す。
「・・・。」
「・・・。」
黙り込んでしまう二人。
「・・・なんか、緊張しちまったぞ。」
「そ、そうね。」
「数え切れないぐらいしてるのにな?キス。」
「ええ。でも、新鮮だったわ。」
「そ、そうだな。」
「恋人から婚約者になったからかしら?まるで、あなたに初めてキスされた時み
たい・・・。」
少し頬を染めながら、七瀬が答える。
「・・・。」
「・・・。」
またも黙り込んでしまう二人。
「お、お風呂の用意してくるわね!」
七瀬は、そういい残し、浴室の方に姿を消した。
少し時間が経ち、二人は浴室に居た。
当然、これも、七瀬のお願いである。
「ほら、洗ってあげるってば!」
「いいって!ガキじゃあるまいし、自分で洗えるよ!」
「ダ~メッ!ホラ、座って!お・ね・が・い!」
「ウッ・・・、ココで使うか?」
「フフッ。」
しぶしぶと言った感じで、浪馬が観念する。
液体ソープを染み込ませたスポンジで、浪馬の背中を洗い出す七瀬。
「どう?」
「ああ。いい感じだ。」
浪馬の背中を強くもなく、弱くもない力でこする。
「ねえ?」
「ん?なんだ?」
「あなたの背中、大きいわね。」
「そうか?こんなもんじゃないか?」
「大きいって言うか、広いわ。」
「どういう意味だ?それ?」
「う~ん、そうね・・・。やっぱり、男性なんだなって事かしら。」
「よくわからん答えだな、それ。」
「フフッ。そうね。・・・っと、ハイ!終了!」
そう言って、七瀬が、ポンと浪馬の背中を軽く叩いた。
「サンキュー。気持ちよかったぞ?」
「フフッ、どういたしまして。頭も洗う?」
「いや、そっちは洗いにくいだろうから、自分でするよ。それよりも・・・。」
浪馬が不気味な笑みを浮かべつつ、七瀬に話し掛ける。
「今度は、俺が七瀬を綺麗にしてやるよ。」
両手で何かを揉む様な仕草をしつつ、七瀬の方を見る。
「・・・その手は・・・何・・・?」
「気にするな。」
「気にするわよっ!」
七瀬が言い終わらないうちに、浪馬の両手が七瀬の胸に伸び、揉みだす。
「コ、コラッ!やめ・・・アッ!」
七瀬の訴えを無視するかのように、浪馬は手の動きを止めないどころか、
微妙に強弱をつけだした。
「ダ、ダメだってば!」
「おいおい、俺は、七瀬の体を洗ってるだけだぞ?」
「あ、洗う、時・・・に、そ、そ・・・ん・・・な、いやらし・・・い、動きは・・・し・・・な
い・・・!」
「ほらほら!明日は、挨拶に行くんだから、綺麗にしないとな~!」
七瀬の言葉には、一切耳を貸さず、浪馬は次々と七瀬の弱いところを責め出す。
「さて、いよいよ、ココを・・・。」
と浪馬が次の行動に移ろうとした瞬間、浴室の中に、“パコーン”と、いう音が
響き渡った。
「いってぇ~!何するんだよ!七瀬!」
そう言いながら、浪馬が見上げると、そこには、片手に洗面器を持った七瀬が
鬼の形相で立っていた。
「何するんだじゃないわよ!」
浪馬の気のせいか、角と牙まで見える。
「ダメって言ってるのに、やめないあなたが悪いんでしょう!」
「い、いや、それは・・・」
完全に七瀬に気おされている様子。
「言い訳は聞きません!体は自分で洗うから、頭洗って、さっさと、湯船につ
かりなさい!!」
「・・・ハイ・・・。」
そう言って、しぶしぶ頭を洗い、体育座りで湯船につかる浪馬。
「・・・なぁ~七瀬ぇ~。」
湯船の中から浪馬が七瀬に話し掛ける。
「・・・とでね。」
聞き取れないような声で、七瀬が口を開く。
「ん?何て言ったんだ?」
聞き取れなかたっため、浪馬が七瀬に聞き返した。
「後でって言ったの!」
「何がだ?」
「そ、それは・・・」
七瀬が真っ赤になって、体を洗っていた手を止める。
「はははっ、あんまりからかったら、墓穴掘るから、この辺でやめとくよ。」
「もうっ!知らないっ!!」
そう言うと、止まっていた手を再び動かし、体を洗い始める。
「俺、そろそろ上がるわ。」
浪馬がそう言うと、
「あら?ちゃんと温まった?」
まるで小さな子供に言うように、七瀬が聞く。
「おいおい、まるで、お袋みたいじゃないか。」
「気にしない、気にしない。フフッ。」
浪馬の言葉に、笑顔で答える。
「私、髪も洗うから、もう少しかかるから。」
「わかった。」
そういい残すと、浪馬は浴室から出て行った。
当然、これも、七瀬のお願いである。
「ほら、洗ってあげるってば!」
「いいって!ガキじゃあるまいし、自分で洗えるよ!」
「ダ~メッ!ホラ、座って!お・ね・が・い!」
「ウッ・・・、ココで使うか?」
「フフッ。」
しぶしぶと言った感じで、浪馬が観念する。
液体ソープを染み込ませたスポンジで、浪馬の背中を洗い出す七瀬。
「どう?」
「ああ。いい感じだ。」
浪馬の背中を強くもなく、弱くもない力でこする。
「ねえ?」
「ん?なんだ?」
「あなたの背中、大きいわね。」
「そうか?こんなもんじゃないか?」
「大きいって言うか、広いわ。」
「どういう意味だ?それ?」
「う~ん、そうね・・・。やっぱり、男性なんだなって事かしら。」
「よくわからん答えだな、それ。」
「フフッ。そうね。・・・っと、ハイ!終了!」
そう言って、七瀬が、ポンと浪馬の背中を軽く叩いた。
「サンキュー。気持ちよかったぞ?」
「フフッ、どういたしまして。頭も洗う?」
「いや、そっちは洗いにくいだろうから、自分でするよ。それよりも・・・。」
浪馬が不気味な笑みを浮かべつつ、七瀬に話し掛ける。
「今度は、俺が七瀬を綺麗にしてやるよ。」
両手で何かを揉む様な仕草をしつつ、七瀬の方を見る。
「・・・その手は・・・何・・・?」
「気にするな。」
「気にするわよっ!」
七瀬が言い終わらないうちに、浪馬の両手が七瀬の胸に伸び、揉みだす。
「コ、コラッ!やめ・・・アッ!」
七瀬の訴えを無視するかのように、浪馬は手の動きを止めないどころか、
微妙に強弱をつけだした。
「ダ、ダメだってば!」
「おいおい、俺は、七瀬の体を洗ってるだけだぞ?」
「あ、洗う、時・・・に、そ、そ・・・ん・・・な、いやらし・・・い、動きは・・・し・・・な
い・・・!」
「ほらほら!明日は、挨拶に行くんだから、綺麗にしないとな~!」
七瀬の言葉には、一切耳を貸さず、浪馬は次々と七瀬の弱いところを責め出す。
「さて、いよいよ、ココを・・・。」
と浪馬が次の行動に移ろうとした瞬間、浴室の中に、“パコーン”と、いう音が
響き渡った。
「いってぇ~!何するんだよ!七瀬!」
そう言いながら、浪馬が見上げると、そこには、片手に洗面器を持った七瀬が
鬼の形相で立っていた。
「何するんだじゃないわよ!」
浪馬の気のせいか、角と牙まで見える。
「ダメって言ってるのに、やめないあなたが悪いんでしょう!」
「い、いや、それは・・・」
完全に七瀬に気おされている様子。
「言い訳は聞きません!体は自分で洗うから、頭洗って、さっさと、湯船につ
かりなさい!!」
「・・・ハイ・・・。」
そう言って、しぶしぶ頭を洗い、体育座りで湯船につかる浪馬。
「・・・なぁ~七瀬ぇ~。」
湯船の中から浪馬が七瀬に話し掛ける。
「・・・とでね。」
聞き取れないような声で、七瀬が口を開く。
「ん?何て言ったんだ?」
聞き取れなかたっため、浪馬が七瀬に聞き返した。
「後でって言ったの!」
「何がだ?」
「そ、それは・・・」
七瀬が真っ赤になって、体を洗っていた手を止める。
「はははっ、あんまりからかったら、墓穴掘るから、この辺でやめとくよ。」
「もうっ!知らないっ!!」
そう言うと、止まっていた手を再び動かし、体を洗い始める。
「俺、そろそろ上がるわ。」
浪馬がそう言うと、
「あら?ちゃんと温まった?」
まるで小さな子供に言うように、七瀬が聞く。
「おいおい、まるで、お袋みたいじゃないか。」
「気にしない、気にしない。フフッ。」
浪馬の言葉に、笑顔で答える。
「私、髪も洗うから、もう少しかかるから。」
「わかった。」
そういい残すと、浪馬は浴室から出て行った。
「なぁ?」
二人で抱きあった後のベッドの中、浪馬が不意に口を開いた。
「ん・・・?何?」
浪馬の腕に抱かれながら、気だるそうに七瀬が返事をする。
「もうすぐ、今日が終わるぞ?」
「えっ?」
「ホラ、あの約束・・・。」
「ああ、あれね。」
「そうだ。もうないのか?俺にして欲しい事。」
七瀬の髪を優しく撫でながら、浪馬が聞く。
「フフッ、気になる?」
浪馬の問いに、悪戯っぽく微笑みながら、七瀬が答える。
「・・・やっぱり、あるのか?」
少し不安そうに、浪馬が聞く。
「そうね。いくつかあるわ・・・。」
「やっぱりか・・・。で、どんなことだ?それ。」
「簡単な事よ。すごくね・・・。」
「簡単なのか?」
「簡単だけど、あなたには、難しい事かもね。」
「何だそれ?なぞなぞか?」
不思議そうに、浪馬が七瀬に聞く。
「フフッ、違うわよ。」
「ん~、まぁ、いいか。言ってみろよ?」
「いいの?」
「だから、男に二言はないって!」
「フフッ、それじゃあ、遠慮なく。」
七瀬の髪を撫でていた手がとめると同時に、七瀬が言葉を発した。
「・・・・・・私の事・・・愛してる?」
「へっ?」
突然の事に、唖然とする浪馬。
「だから、私の事、愛してる?」
再び同じ質問をする七瀬。
「あ、ああ。」
「『ああ。』じゃダメ。ちゃんと答えて。」
「何を今更。」
「ちゃんと答えて。」
「そんなの、今更、言葉にしなくても、わかるだろ?」
「いいえ、わからないわ。だから、答えて。お願い。」
「グッ・・・!」
七瀬の言葉に、絶句してしまう。
「ホラ、答えなさいよ。」
照れる浪馬に、七瀬が催促する。
その時、浪馬がやけっぱち気味に口を開いた。
「ったく、愛してるよ!これでいいか?」
「ダメッ!心がこもってない!そんな言い方されても、嬉しくないっ!」
すぐに七瀬がダメ出しをする。
この後、実に18回も七瀬からダメ出しを食らい、浪馬は黙り込んでしまった。
「あなた自身の言葉で聞きたいのよ。」
黙り込む浪馬に、七瀬が優しく囁く。
「・・・・・・。」
少し考えた後、決心したように、浪馬が口を開く。
「七瀬・・・。」
「・・・。」
「愛してる。」
「・・・。」
「この世で一番。」
「・・・ありがとう。」
七瀬の瞳から、また涙が溢れ出す。
「また泣く。」
「だって・・・嬉しいんだもの。」
「泣いたり、怒ったり、笑ったり、忙しいやつだな。」
微笑みながら、浪馬が話しかける。
「・・・嫌いになった?」
不安そうに浪馬に問いかける七瀬。
その言葉を聞いた浪馬の腕が、七瀬を抱いていた力を強める。
「あっ・・・。」
強まった力に、七瀬が少しだけ驚く。
「そんな事で、お前を嫌いになるかよ。そういうところも全部ひっくるめて、
お前を好きなんだぞ?」
「・・・織屋君。」
浪馬の言葉を聞き、さらに溢れる涙。
更に七瀬が続ける。
「愛してるわ・・・狂おしいぐらい・・・。」
「愛してるぞ、七瀬。この世界の誰よりもな・・・。」
そう言うと、浪馬は、七瀬に優しくキスをした。
二人で抱きあった後のベッドの中、浪馬が不意に口を開いた。
「ん・・・?何?」
浪馬の腕に抱かれながら、気だるそうに七瀬が返事をする。
「もうすぐ、今日が終わるぞ?」
「えっ?」
「ホラ、あの約束・・・。」
「ああ、あれね。」
「そうだ。もうないのか?俺にして欲しい事。」
七瀬の髪を優しく撫でながら、浪馬が聞く。
「フフッ、気になる?」
浪馬の問いに、悪戯っぽく微笑みながら、七瀬が答える。
「・・・やっぱり、あるのか?」
少し不安そうに、浪馬が聞く。
「そうね。いくつかあるわ・・・。」
「やっぱりか・・・。で、どんなことだ?それ。」
「簡単な事よ。すごくね・・・。」
「簡単なのか?」
「簡単だけど、あなたには、難しい事かもね。」
「何だそれ?なぞなぞか?」
不思議そうに、浪馬が七瀬に聞く。
「フフッ、違うわよ。」
「ん~、まぁ、いいか。言ってみろよ?」
「いいの?」
「だから、男に二言はないって!」
「フフッ、それじゃあ、遠慮なく。」
七瀬の髪を撫でていた手がとめると同時に、七瀬が言葉を発した。
「・・・・・・私の事・・・愛してる?」
「へっ?」
突然の事に、唖然とする浪馬。
「だから、私の事、愛してる?」
再び同じ質問をする七瀬。
「あ、ああ。」
「『ああ。』じゃダメ。ちゃんと答えて。」
「何を今更。」
「ちゃんと答えて。」
「そんなの、今更、言葉にしなくても、わかるだろ?」
「いいえ、わからないわ。だから、答えて。お願い。」
「グッ・・・!」
七瀬の言葉に、絶句してしまう。
「ホラ、答えなさいよ。」
照れる浪馬に、七瀬が催促する。
その時、浪馬がやけっぱち気味に口を開いた。
「ったく、愛してるよ!これでいいか?」
「ダメッ!心がこもってない!そんな言い方されても、嬉しくないっ!」
すぐに七瀬がダメ出しをする。
この後、実に18回も七瀬からダメ出しを食らい、浪馬は黙り込んでしまった。
「あなた自身の言葉で聞きたいのよ。」
黙り込む浪馬に、七瀬が優しく囁く。
「・・・・・・。」
少し考えた後、決心したように、浪馬が口を開く。
「七瀬・・・。」
「・・・。」
「愛してる。」
「・・・。」
「この世で一番。」
「・・・ありがとう。」
七瀬の瞳から、また涙が溢れ出す。
「また泣く。」
「だって・・・嬉しいんだもの。」
「泣いたり、怒ったり、笑ったり、忙しいやつだな。」
微笑みながら、浪馬が話しかける。
「・・・嫌いになった?」
不安そうに浪馬に問いかける七瀬。
その言葉を聞いた浪馬の腕が、七瀬を抱いていた力を強める。
「あっ・・・。」
強まった力に、七瀬が少しだけ驚く。
「そんな事で、お前を嫌いになるかよ。そういうところも全部ひっくるめて、
お前を好きなんだぞ?」
「・・・織屋君。」
浪馬の言葉を聞き、さらに溢れる涙。
更に七瀬が続ける。
「愛してるわ・・・狂おしいぐらい・・・。」
「愛してるぞ、七瀬。この世界の誰よりもな・・・。」
そう言うと、浪馬は、七瀬に優しくキスをした。
「ふう~、言葉にすると、照れるな!」
「お疲れ様。フフッ。」
「いやぁ、ホントに疲れたぞ。精神的にな。やっぱ、慣れない事は、言うもん
じゃないな。」
などと言っている浪馬に、七瀬が聞いた。
「ねえ?織屋君?」
「ん?なんだ?まだお願いか?」
「いいえ、違うわ。」
「じゃあ、何だ?」
「あのね、あなたは、私にしてもらいたいこと、ないのかしら?」
「お前にしてもらいたいこと?」
少し考え込む浪馬。
そんな浪馬に念を押すように、七瀬が言った。
「そう。あっ!エッチなのは無しよ!」
「チェッ・・・!」
残念そうに浪馬が舌打ちをする。
「やっぱり・・・。」
やれやれと言った感じで、七瀬が浪馬の方を見る。
「ハハハ・・・。んでも、どうしたんだ?急に。」
浪馬は、笑ってごまかし、話題を振り替えようとした。
「私のお願いばかり聞いてもらって、何だか悪いから・・・。それで。」
七瀬の方は、まんまと策略に乗ってしまった様子。
「な~んだ、気にするなよ。そんな事。」
「でも・・・。」
「気にするなよ。俺は、お前が傍に居てくれりゃいいんだからさ。」
ガラにもないことを言ってしまい、照れくさそうに、鼻の頭をかく。
「・・・織屋君・・・。」
七瀬は、そんな浪馬を愛しげに見つめる。
「あっ!一つだけあった!」
何か思い立ったように、浪馬が言った。
「何?言ってみて?」
七瀬が嬉しそうに聞く。
「あのな、俺たち、一応は、婚約者なわけだろ?」
少し照れくさそうな浪馬。
「そうね。」
同じく照れくさそうな七瀬。
そんな七瀬に向かって、浪馬が自分の願いを口にした。
「だからってわけじゃないけど、その『織屋君』ってのは、やめにしないか?」
「えっ?じゃあ、何て呼べばいいのよ?」
ほんの一瞬ではあるが、言葉の意味が理解できなかった様子の七瀬。
「ん~、そうだな、苗字じゃなく、名前・・・かな?」
「えっ?!」
「これが、俺からのお願いだな。」
「でも、今更、恥ずかしいわよ・・・。」
「ふ~ん?そんなに恥ずかしいか?」
「ええ。」
「じゃあ、その恥ずかしい事を言わせたのは、どこの誰かな?」
「うぅっ・・・、い、意地悪・・・。」
「ハハハッ、まぁ、お前の言いたいように言ってみな?気に入らなけりゃ
ダメ出しはするけどな。」
「それじゃあ、・・・・・・えっと、織屋君?」
「だから、それはダメだって。」
「じゃ、じゃあ・・・、あ、あなた・・・。」
「まだ入籍前だし、それもちょっとなぁ。やっぱ、名前で頼む。」
「う、うぅ~・・・・・・。」
「ほれ、さくっと、言ってみろよ?言い方は任せるから。」
「・・・ろ・・・、浪・・・馬・・・クン?」
「ん~、タマに呼ばれてるみたいだし、それは却下だ。」
「ろ、浪馬・・・さん?」
「何で、今更、そんなに他人行儀なんだ?却下!」
「ううぅ~・・・。じゃあ、どう呼べって言うのよ!」
「怒るなよ・・・。」
「だって・・・!」
「ん~、俺もお前を呼び捨てにしてるんだから、それでどうだ?」
「えっ?!そんなの・・・、無理よ・・・。」
「なんでだ?」
「何でもよ!」
「理由もないんじゃ、ダメだな。お前に拒否権はないんだよ。」
「そ、それ、私のセリフ・・・。」
「ハハハッ、一度言ってみたかったんだ。で、ホレ?言ってみ?」
「・・・。」
「ほ~ら~!」
「・・・」
「あ~っ!俺の事、愛してないんだな?!」
「ち、違う!!愛してますっ!!それとこれとは、別問題でしょう?!」
「んじゃ、言ってみな?」
「うぅ~・・・。」
「さぁ!」
「・・・・・・ぅ・・・ま。」
「ん~?何か言ったか?聞こえないぞ~?」
「ろ・・・馬!」
「まだダメだな。」
「浪・・・馬。」
「おしい!もうちょっとだ!」
「・・・浪馬。」
「もう少し、大きな声で!」
「浪馬。」
「もう少しだ。」
「浪馬!」
「・・・OK。ま、最初はこんなもんか。」
「・・・意地悪・・・、緊張、したんだから・・・。」
「さて、明日は、早起きしないといけないし、寝るとするか?」
「そうね。・・・あ、もうひとつだけ、お願い・・・いい?」
「わがままなお姫様だな。なんだ?」
「あのね、おやすみのキスと、おはようのキス。・・・ダメ?」
「なんだ、そんなことか。OKだよ。」
「よかった。・・・それじゃあ、おやすみなさい。・・・浪馬。」
「おやすみ。七瀬。」
「お疲れ様。フフッ。」
「いやぁ、ホントに疲れたぞ。精神的にな。やっぱ、慣れない事は、言うもん
じゃないな。」
などと言っている浪馬に、七瀬が聞いた。
「ねえ?織屋君?」
「ん?なんだ?まだお願いか?」
「いいえ、違うわ。」
「じゃあ、何だ?」
「あのね、あなたは、私にしてもらいたいこと、ないのかしら?」
「お前にしてもらいたいこと?」
少し考え込む浪馬。
そんな浪馬に念を押すように、七瀬が言った。
「そう。あっ!エッチなのは無しよ!」
「チェッ・・・!」
残念そうに浪馬が舌打ちをする。
「やっぱり・・・。」
やれやれと言った感じで、七瀬が浪馬の方を見る。
「ハハハ・・・。んでも、どうしたんだ?急に。」
浪馬は、笑ってごまかし、話題を振り替えようとした。
「私のお願いばかり聞いてもらって、何だか悪いから・・・。それで。」
七瀬の方は、まんまと策略に乗ってしまった様子。
「な~んだ、気にするなよ。そんな事。」
「でも・・・。」
「気にするなよ。俺は、お前が傍に居てくれりゃいいんだからさ。」
ガラにもないことを言ってしまい、照れくさそうに、鼻の頭をかく。
「・・・織屋君・・・。」
七瀬は、そんな浪馬を愛しげに見つめる。
「あっ!一つだけあった!」
何か思い立ったように、浪馬が言った。
「何?言ってみて?」
七瀬が嬉しそうに聞く。
「あのな、俺たち、一応は、婚約者なわけだろ?」
少し照れくさそうな浪馬。
「そうね。」
同じく照れくさそうな七瀬。
そんな七瀬に向かって、浪馬が自分の願いを口にした。
「だからってわけじゃないけど、その『織屋君』ってのは、やめにしないか?」
「えっ?じゃあ、何て呼べばいいのよ?」
ほんの一瞬ではあるが、言葉の意味が理解できなかった様子の七瀬。
「ん~、そうだな、苗字じゃなく、名前・・・かな?」
「えっ?!」
「これが、俺からのお願いだな。」
「でも、今更、恥ずかしいわよ・・・。」
「ふ~ん?そんなに恥ずかしいか?」
「ええ。」
「じゃあ、その恥ずかしい事を言わせたのは、どこの誰かな?」
「うぅっ・・・、い、意地悪・・・。」
「ハハハッ、まぁ、お前の言いたいように言ってみな?気に入らなけりゃ
ダメ出しはするけどな。」
「それじゃあ、・・・・・・えっと、織屋君?」
「だから、それはダメだって。」
「じゃ、じゃあ・・・、あ、あなた・・・。」
「まだ入籍前だし、それもちょっとなぁ。やっぱ、名前で頼む。」
「う、うぅ~・・・・・・。」
「ほれ、さくっと、言ってみろよ?言い方は任せるから。」
「・・・ろ・・・、浪・・・馬・・・クン?」
「ん~、タマに呼ばれてるみたいだし、それは却下だ。」
「ろ、浪馬・・・さん?」
「何で、今更、そんなに他人行儀なんだ?却下!」
「ううぅ~・・・。じゃあ、どう呼べって言うのよ!」
「怒るなよ・・・。」
「だって・・・!」
「ん~、俺もお前を呼び捨てにしてるんだから、それでどうだ?」
「えっ?!そんなの・・・、無理よ・・・。」
「なんでだ?」
「何でもよ!」
「理由もないんじゃ、ダメだな。お前に拒否権はないんだよ。」
「そ、それ、私のセリフ・・・。」
「ハハハッ、一度言ってみたかったんだ。で、ホレ?言ってみ?」
「・・・。」
「ほ~ら~!」
「・・・」
「あ~っ!俺の事、愛してないんだな?!」
「ち、違う!!愛してますっ!!それとこれとは、別問題でしょう?!」
「んじゃ、言ってみな?」
「うぅ~・・・。」
「さぁ!」
「・・・・・・ぅ・・・ま。」
「ん~?何か言ったか?聞こえないぞ~?」
「ろ・・・馬!」
「まだダメだな。」
「浪・・・馬。」
「おしい!もうちょっとだ!」
「・・・浪馬。」
「もう少し、大きな声で!」
「浪馬。」
「もう少しだ。」
「浪馬!」
「・・・OK。ま、最初はこんなもんか。」
「・・・意地悪・・・、緊張、したんだから・・・。」
「さて、明日は、早起きしないといけないし、寝るとするか?」
「そうね。・・・あ、もうひとつだけ、お願い・・・いい?」
「わがままなお姫様だな。なんだ?」
「あのね、おやすみのキスと、おはようのキス。・・・ダメ?」
「なんだ、そんなことか。OKだよ。」
「よかった。・・・それじゃあ、おやすみなさい。・・・浪馬。」
「おやすみ。七瀬。」
夜の帳が二人を包んでいった
「織屋君に高遠さんじゃない!久しぶり!」
電車から降りてきた二人にかけられた、懐かしい声。
「みさき先生!久しぶり!」
浪馬が親しそうに挨拶を返す。
「お久しぶりです、若井先生」
続いて、七瀬が軽く会釈をしながら、丁寧に挨拶を返した。
「ふ~ん?その様子だと、愛し合う二人には、倦怠期なんて、ないみたい
ねぇ~?」
少し意地悪に言いながら、二人が握り合っている手を微笑んで見ている。
「・・・」
「・・・」
視線に気付いて、繋いでいた手を離し、真っ赤になる二人。
「あ~!アツいアツい!・・・って!高遠さん、その指輪、もしかして・・・?」
二人をからかっていた、みさきが七瀬の左手の指輪に気付いた様子。
「・・・多分、先生の想像している通りです・・・。」
みさきの質問に、軽くほほを染めて七瀬が答える。
「へぇ?で、もう何年ぐらいになるの?結婚してから。」
予想外の言葉に、一瞬、唖然とする二人。
「へっ?ち、違うって!俺達はまだ・・・なぁ?」
あわてて、みさきの言葉を否定する浪馬。
「そ、そうです!昨日、プロポーズされたばかりです!」
こちらは、あっさりと墓穴を掘る七瀬。
「ふ~ん、昨日ね・・・」
みさきがニヤニヤしながら、二人を見つめる。
「こんな美人がフィアンセなんて、憎いわねぇ~、この~!
で、これから、高遠さんの実家にご挨拶ってわけ?」
肘で浪馬を突付きながら、からかい続けるみさき。
「そ、その通りだけど・・・」
最早、観念した様子の浪馬。
「あ、あの、若井先生?」
まだ何か言いたそうなみさきに、七瀬が済まなそうに声をかける。
「ん?何?」
「私達そろそろ・・・」
「あぁっ!そっか!ごめんなさい!引き止めちゃって」
「いえ・・・」
「それじゃぁ、織屋君、がんばってきなさい!」
そう言いながら、“バシッ”と浪馬の背中を叩く。
「わかってるって!」
力強く、答える浪馬。
「高遠さん」
「は、はい」
「おめでとう。思いっきり、幸せにしてもらいなさいね」
みさきは、先程までの意地悪そうな微笑の代わりに、慈愛に満ちた笑顔を向け
ながら、祝福の言葉を七瀬に投げかけた。
「はいっ!」
その言葉に、幸せ一杯の笑顔で答える七瀬。
「織屋君!」
「ん?」
「高遠さんを泣かしたら、承知しないわよ!?」
浪馬に対しては、真剣な視線を向けながら、言葉を投げかける。
「わかってるって!嬉し泣き以外で、こいつを泣かせたりしないさ!」
七瀬のほうを見ながら、浪馬が答える。
「それから、式には呼んでね?」
「了解!」
「それじゃ、またね」
みさきは、軽く手を振ると、ホームに入ってきた電車に乗り込んで行った。
「いきなり知り合いに会うなんて、予想外だったな・・・」
みさきが乗った電車を見送りながら、浪馬が七瀬に話しかける。
「そうね。でも、祝福して貰えたし、私は嬉しかったわよ?」
ニッコリと微笑みながら、七瀬が言う。
「そうだな。」
七瀬に微笑み返しながら、浪馬も肯く。
「んじゃ、みさき先生に気合も入れられたし、行くか!?」
七瀬に右手を差し出しながら言う。
「そうね」
差し出された手を握り、七瀬が答える。
二人は、お互いの手を取って、頼津の街に続く階段を降りて行った。
電車から降りてきた二人にかけられた、懐かしい声。
「みさき先生!久しぶり!」
浪馬が親しそうに挨拶を返す。
「お久しぶりです、若井先生」
続いて、七瀬が軽く会釈をしながら、丁寧に挨拶を返した。
「ふ~ん?その様子だと、愛し合う二人には、倦怠期なんて、ないみたい
ねぇ~?」
少し意地悪に言いながら、二人が握り合っている手を微笑んで見ている。
「・・・」
「・・・」
視線に気付いて、繋いでいた手を離し、真っ赤になる二人。
「あ~!アツいアツい!・・・って!高遠さん、その指輪、もしかして・・・?」
二人をからかっていた、みさきが七瀬の左手の指輪に気付いた様子。
「・・・多分、先生の想像している通りです・・・。」
みさきの質問に、軽くほほを染めて七瀬が答える。
「へぇ?で、もう何年ぐらいになるの?結婚してから。」
予想外の言葉に、一瞬、唖然とする二人。
「へっ?ち、違うって!俺達はまだ・・・なぁ?」
あわてて、みさきの言葉を否定する浪馬。
「そ、そうです!昨日、プロポーズされたばかりです!」
こちらは、あっさりと墓穴を掘る七瀬。
「ふ~ん、昨日ね・・・」
みさきがニヤニヤしながら、二人を見つめる。
「こんな美人がフィアンセなんて、憎いわねぇ~、この~!
で、これから、高遠さんの実家にご挨拶ってわけ?」
肘で浪馬を突付きながら、からかい続けるみさき。
「そ、その通りだけど・・・」
最早、観念した様子の浪馬。
「あ、あの、若井先生?」
まだ何か言いたそうなみさきに、七瀬が済まなそうに声をかける。
「ん?何?」
「私達そろそろ・・・」
「あぁっ!そっか!ごめんなさい!引き止めちゃって」
「いえ・・・」
「それじゃぁ、織屋君、がんばってきなさい!」
そう言いながら、“バシッ”と浪馬の背中を叩く。
「わかってるって!」
力強く、答える浪馬。
「高遠さん」
「は、はい」
「おめでとう。思いっきり、幸せにしてもらいなさいね」
みさきは、先程までの意地悪そうな微笑の代わりに、慈愛に満ちた笑顔を向け
ながら、祝福の言葉を七瀬に投げかけた。
「はいっ!」
その言葉に、幸せ一杯の笑顔で答える七瀬。
「織屋君!」
「ん?」
「高遠さんを泣かしたら、承知しないわよ!?」
浪馬に対しては、真剣な視線を向けながら、言葉を投げかける。
「わかってるって!嬉し泣き以外で、こいつを泣かせたりしないさ!」
七瀬のほうを見ながら、浪馬が答える。
「それから、式には呼んでね?」
「了解!」
「それじゃ、またね」
みさきは、軽く手を振ると、ホームに入ってきた電車に乗り込んで行った。
「いきなり知り合いに会うなんて、予想外だったな・・・」
みさきが乗った電車を見送りながら、浪馬が七瀬に話しかける。
「そうね。でも、祝福して貰えたし、私は嬉しかったわよ?」
ニッコリと微笑みながら、七瀬が言う。
「そうだな。」
七瀬に微笑み返しながら、浪馬も肯く。
「んじゃ、みさき先生に気合も入れられたし、行くか!?」
七瀬に右手を差し出しながら言う。
「そうね」
差し出された手を握り、七瀬が答える。
二人は、お互いの手を取って、頼津の街に続く階段を降りて行った。
高遠家
高遠家の玄関前に手を繋ぎ、二人の並ぶ男女が立っている。
一人は、高遠家の一人娘、高遠七瀬。
男の方は、昨日、七瀬にプロポーズし、恋人から婚約者になった、織屋浪馬。
「き、緊張するな・・・」
本当に緊張している様子の浪馬。
「もうっ!いつまで、固まってるの!?チャイム、押すわよ!?」
七瀬は、そう言うと、玄関先の門柱に取り付けられたチャイムを鳴らした。
少し待つと、インターホンからおっとりとした女性の声が聞こえてきた。
「は~い、どちら様ですか?」
「あ、お、お久しぶりです。織屋ですが・・・」
「あら~、織屋君。鍵なら開いてるから、どうぞ、あがってくださいな」
「は、はい!し、失礼します」
そう言ったものの、緊張の為、固まったままの浪馬。
そんな浪馬の様子を見かねてか、七瀬が口を開いた。
「何してる?早く行きましょう?」
「い、いや、そう言うけどな・・・」
「もう!あなたが開けないんなら、私が開けてあげる!」
「あ・・・」
そう言いいながら、七瀬が玄関のドアが開いた瞬間、中からけたたましい音が
何回も鳴り響いた。
“パーン!”
“パーン!”
「・・・」
「・・・」
そこにいたのは、満面の笑みでクラッカーを持った高遠夫人。
言わずと知れた、七瀬の実の母親だった。
「いらっしゃい、織屋君。お帰りなさい、ナナちゃん。」
いつものように、ニコニコとした顔で、二人を出迎える。
「・・・」
予想外の出来事に放心状態になる浪馬。
「・・・一体、これは、何の騒ぎなの!?・・・って、何よ!その横断幕は!!」
一瞬、放心状態になったものの、すぐに気を取り直した七瀬が、目に入った
横断幕を指差し、叫んだ。
七瀬の指差す先には、“熱烈歓迎織屋御夫妻”と赤地の布に金色の文字が書か
れた横断幕が掲げられていた。
「あら~、気に入らなかった?私は、いいと思うんだけど・・・」
不思議そうに娘の反応に応える母。
「どこの世界に、娘の婚約者が挨拶に来るだけで、クラッカーを鳴らして、
“熱烈歓迎織屋御夫妻”なんて横断幕を掛ける親がいるのよ!?」
のん気な母の答えに、心からのツッコミを入れる娘。
「せっかく、作ったのに・・・」
「わざわざ、作らなくってもいいんです!」
「もう~、ナナちゃんったら、そんなに怒ってたら、美人が台無しよ~」
「好きで怒ってるんじゃありませんっっ!!」
「そうだぜ?嬢ちゃん?そんなにビッグに怒んなよ」
「・・・って、おっちゃん!?なんでここに!?」
「がっはっはっ!お前が、ここん家の嬢ちゃんをモノにしたって、聞いたから
よ!なっ?姐さん!」
と、豪快に笑いながら、高遠夫人に話しかけると、
「モノにしたのは、ずっと前ですよ~。あれは確か、頼津学園の三年生のクリ
スマス・イブだったかしら・・・」
などど、トンでもない答えをサラッと返す。
「ちょ、ちょっと母さん!何を・・・!・・・って、なんで知ってるのよ!?」
母親の爆弾発言に、顔を真っ赤にしながら、抗議する七瀬。
「ウフフ~♪ママは何でもお見通しなのよ~♪」
しかし、こちらは、七瀬の抗議など、どこ吹く風。
「そうか!毎週浪馬の部屋から聞こえてた声は、嬢ちゃんだったのか!二人
とも、若いな!がっはっはっ!!」
更に追い討ちをかけるかのような、ビッグのおっちゃん。
「ず、頭痛がしてきたわ・・・。浪馬、あなたもなんとか・・・」
こめかみに手を当てながら、浪馬に助け舟を求める。
「・・・(ポカーン)」
「こんなところで、放心しないで!浪馬ってば!!」
半泣き状態の七瀬が、浪馬の肩をつかみ、力強く揺するが、浪馬の放心状態
は、一向に解ける様子がない。
「あらら~、織屋君どうしたの~?あまりの歓迎ぶりに感動しちゃったのかしら?」
「そんなわけないでしょう!!どこをどう解釈したら、感動するのよ!」
「・・・(ポカーン)」
「ちょっと!!浪馬!!しっかりして!気を強く持って!!」
七瀬が更に強く、浪馬を揺すり、頬をペチペチと叩く。
「あら~?ナナちゃんってば、織屋君の事を“浪馬”ですって」
「中々やるな!浪馬!それでこそ、俺の甥だぜ!がっはっはっ!」
半狂乱の七瀬の事は眼中になく、限りなくマイペースでのん気な会話を交わす
、のん気な二人。
「あ~ん!!浪馬~!帰ってきて~!」
七瀬の悲しい叫びだけが、高遠家の玄関に響き渡った・・・。
・・・合掌・・・。
一人は、高遠家の一人娘、高遠七瀬。
男の方は、昨日、七瀬にプロポーズし、恋人から婚約者になった、織屋浪馬。
「き、緊張するな・・・」
本当に緊張している様子の浪馬。
「もうっ!いつまで、固まってるの!?チャイム、押すわよ!?」
七瀬は、そう言うと、玄関先の門柱に取り付けられたチャイムを鳴らした。
少し待つと、インターホンからおっとりとした女性の声が聞こえてきた。
「は~い、どちら様ですか?」
「あ、お、お久しぶりです。織屋ですが・・・」
「あら~、織屋君。鍵なら開いてるから、どうぞ、あがってくださいな」
「は、はい!し、失礼します」
そう言ったものの、緊張の為、固まったままの浪馬。
そんな浪馬の様子を見かねてか、七瀬が口を開いた。
「何してる?早く行きましょう?」
「い、いや、そう言うけどな・・・」
「もう!あなたが開けないんなら、私が開けてあげる!」
「あ・・・」
そう言いいながら、七瀬が玄関のドアが開いた瞬間、中からけたたましい音が
何回も鳴り響いた。
“パーン!”
“パーン!”
「・・・」
「・・・」
そこにいたのは、満面の笑みでクラッカーを持った高遠夫人。
言わずと知れた、七瀬の実の母親だった。
「いらっしゃい、織屋君。お帰りなさい、ナナちゃん。」
いつものように、ニコニコとした顔で、二人を出迎える。
「・・・」
予想外の出来事に放心状態になる浪馬。
「・・・一体、これは、何の騒ぎなの!?・・・って、何よ!その横断幕は!!」
一瞬、放心状態になったものの、すぐに気を取り直した七瀬が、目に入った
横断幕を指差し、叫んだ。
七瀬の指差す先には、“熱烈歓迎織屋御夫妻”と赤地の布に金色の文字が書か
れた横断幕が掲げられていた。
「あら~、気に入らなかった?私は、いいと思うんだけど・・・」
不思議そうに娘の反応に応える母。
「どこの世界に、娘の婚約者が挨拶に来るだけで、クラッカーを鳴らして、
“熱烈歓迎織屋御夫妻”なんて横断幕を掛ける親がいるのよ!?」
のん気な母の答えに、心からのツッコミを入れる娘。
「せっかく、作ったのに・・・」
「わざわざ、作らなくってもいいんです!」
「もう~、ナナちゃんったら、そんなに怒ってたら、美人が台無しよ~」
「好きで怒ってるんじゃありませんっっ!!」
「そうだぜ?嬢ちゃん?そんなにビッグに怒んなよ」
「・・・って、おっちゃん!?なんでここに!?」
「がっはっはっ!お前が、ここん家の嬢ちゃんをモノにしたって、聞いたから
よ!なっ?姐さん!」
と、豪快に笑いながら、高遠夫人に話しかけると、
「モノにしたのは、ずっと前ですよ~。あれは確か、頼津学園の三年生のクリ
スマス・イブだったかしら・・・」
などど、トンでもない答えをサラッと返す。
「ちょ、ちょっと母さん!何を・・・!・・・って、なんで知ってるのよ!?」
母親の爆弾発言に、顔を真っ赤にしながら、抗議する七瀬。
「ウフフ~♪ママは何でもお見通しなのよ~♪」
しかし、こちらは、七瀬の抗議など、どこ吹く風。
「そうか!毎週浪馬の部屋から聞こえてた声は、嬢ちゃんだったのか!二人
とも、若いな!がっはっはっ!!」
更に追い討ちをかけるかのような、ビッグのおっちゃん。
「ず、頭痛がしてきたわ・・・。浪馬、あなたもなんとか・・・」
こめかみに手を当てながら、浪馬に助け舟を求める。
「・・・(ポカーン)」
「こんなところで、放心しないで!浪馬ってば!!」
半泣き状態の七瀬が、浪馬の肩をつかみ、力強く揺するが、浪馬の放心状態
は、一向に解ける様子がない。
「あらら~、織屋君どうしたの~?あまりの歓迎ぶりに感動しちゃったのかしら?」
「そんなわけないでしょう!!どこをどう解釈したら、感動するのよ!」
「・・・(ポカーン)」
「ちょっと!!浪馬!!しっかりして!気を強く持って!!」
七瀬が更に強く、浪馬を揺すり、頬をペチペチと叩く。
「あら~?ナナちゃんってば、織屋君の事を“浪馬”ですって」
「中々やるな!浪馬!それでこそ、俺の甥だぜ!がっはっはっ!」
半狂乱の七瀬の事は眼中になく、限りなくマイペースでのん気な会話を交わす
、のん気な二人。
「あ~ん!!浪馬~!帰ってきて~!」
七瀬の悲しい叫びだけが、高遠家の玄関に響き渡った・・・。
・・・合掌・・・。
応接間
「私がタバコを買いに言っている間に、母さんが暴走したようで・・・、申し訳
ない!」
本当に申し訳なさそうに、浪馬に対して深々と頭を下げる、七瀬の父。
「い、いえ・・・」
どう対応していいか分からず、困惑気味の浪馬。
「織屋君、ごめんなさいいね♪」
反省してるのか、していないのか、判断しかねる、七瀬の母。
「母さん!」
そんな母に対して、怒る七瀬。
「きゃぁ!ナナちゃんったら、怖い!」
そう言いながら、隣に座っている、夫にすがり付く。
「まぁまぁ、七瀬、落ち着きなさい。母さんも、七瀬をからかい過ぎないよう
に。」
「は~い」
「ハイ・・・」
「で、織屋君?」
「ハ、ハイ!」
「母さんから、大体の事は聞いているよ。今日は、その事なんだね?」
「ハイ!そ、そうです!」
浪馬は緊張のため、ガチガチになっているようだ。
そんな浪馬に、隣で座っている七瀬が、軽く肘でつつきながら囁く。
「(なに、ガチガチになってるのよ!あなたらしくないわよ!)」
「(んな事言っても、緊張するなってのが無理なんだって!大体・・・)」
「織屋君?」
「ハイっ!?」
二人のヒソヒソ話は、父の一言で中断された。
「いや、大体の事は、母さんから聞いてるんだが、君の口から説明を
してくれないか?」
「ハイ・・・と、言っても、どこから話せばいいのか・・・」
まだ緊張が解けず、その上、困惑気味の浪馬。
「ハハッ、そんなに緊張しなくも、大丈夫。二人の事は、私達も公認している
わけなんだからね」
あくまで優しく、落ち着いた口調で、浪馬に話しかける、七瀬の父。
そんな七瀬の父の態度を見て、浪馬が安心したように、話しだした。
「えっと、それじゃあ、そうですね・・・、昨日のなな・・・お嬢さんの誕生日に、
二人で食事しようと言って、レストランに行ったんです」
「・・・」
「行ったと言うか、誘ったんですが・・・。そこで、俺・・・いや、僕の方から・・・」
「織屋君・・・」
「ハイッ?」
「そんなに緊張せずに、いつもどおりの口調でいいんだよ?」
「それじゃあ・・・、えっと、そこで、俺からのプレゼントと言って、指輪を渡
しました。」
「今、七瀬がつけている指輪だね?」
七瀬がつけている指輪を見て、浪馬に聞く。
「ハイ。で、指輪をを渡す時にプロポーズしました・・・」
「それで、七瀬はOKしたわけだね?」
指輪を見ていた視線を娘の顔に向け、娘に聞く。
「ええ・・・」
七瀬は父の目を見て応える。
「で、織屋君は、その事の報告と、挨拶に来た。という事でいいのかな?」
今度は、浪馬の方に顔を向け、浪馬に聞く。
「ハイ」
七瀬と同じように浪馬も、相手の目を見つめ、はっきりとした口調で応えた。
「それじゃあ、報告は今聞いたし、次は挨拶だね」
うんうんと、納得したように頷き、浪馬に話しかける。
「そ、そうですね・・・、それじゃあ・・・」
浪馬は、少し後ろに下がり、深々と頭を下げ、一呼吸おいてから、口を開いた。
「・・・月並みですが・・・お義父さん、お義母さん、娘さんを・・・七瀬さんを俺に下
さい!!」
しばらくの沈黙の後、七瀬の父が応える。
「・・・わかった・・・。ところで、織屋君?」
「ハイ?」
「どうして、七瀬なんだい?」
「えっ?」
さらに質問が投げかけられる。
「君は・・・、どうして七瀬と結婚したいのかな?」
「・・・それは・・・」
少し考えている様子の浪馬。
「それは?」
「・・・ずっと・・・ずっと七瀬と居たいからです!」
そう強く言い切ると、更に言葉を続けようとするが、新たな質問が遮った。
「それならば、結婚なんてしなくても、今のまま、恋人としてでもいいんじゃ
ないのかな?」
父の質問に、七瀬が浪馬の方を見ながら、彼の名前を呟く。
「・・・浪馬・・・」
お互いを見つめる、七瀬と浪馬。
少し見つめ合った後、浪馬が語りだした。
「そうかも・・・、知れません・・・。でも・・・でも、俺は・・・俺は・・・俺は、七瀬を
俺だけの七瀬にしたいんです!!」
「こんな事を言ったら、エゴだって言われるかも知れません。それでも、かま
わない!!七瀬の笑顔も、七瀬の泣き顔も、何もかも、俺だけのものにしたい
んです!!それだけじゃない!七瀬の人生も何もかもひっくるめて、俺だけの
ものにしたいんです!!」
力強く語る浪馬。
「・・・浪馬・・・」
“七瀬の全てを自分だけのものにしたい”その言葉に、七瀬が反応する。
そんな七瀬の方を見ながら、浪馬は軽く微笑みかけ、更に続ける。
「俺と七瀬の思い出は、七瀬がご両親と過ごした時間と比べると、まだまだで
す・・・。でも・・・、だからこそ!お二人との思い出に負けない・・・いや、それ以上
の思い出を二人・・・いや、家族で作って行きたいんです!」
そこまで言い切ると、“ふうっ”と一息つく。
「・・・思い出を作りたいから、七瀬が欲しい・・・か?」
質問は更に続いた。
「それだけじゃありません!七瀬が・・・七瀬が隣に居てくれる事が、俺の幸せだか
です!」
今までと同じか、それ以上に強く、浪馬が言い切る。
「七瀬が隣に居る事が君の幸せか・・・。七瀬・・・お前はどうなんだい?」
今度は、娘の方に質問を投げかける父。
「私は・・・いいえ、私も!私の隣に浪馬が居てくれる・・・。それが私の幸せです!
私も浪馬の何もかもが欲しいの!!」
七瀬の方も、強く言った。
「お義父さん!だから・・・、だから!俺達の事、認めて下さい!お願いします!」
「父さん!私からも、お願いします!!私たちの事・・・」
二人揃って、深々と頭を下げる。
「・・・」
そんな二人を無言でジッと見つめる。
しばらくし、二人に向かって、優しく微笑みながら、こう言った。
「・・・認めるも何も、二人の事は、公認だって言ってるじゃないか?」
「じゃあ・・・」
両手を口に当て、今にも泣き出しそうな七瀬。
「まぁ、何を今更って感じもしないでもないが・・・。織屋君・・・娘を・・・
七瀬をお願いします・・・。頑固でキツイ娘だが、優しい娘だからね・・・。」
そう言うと、浪馬に向かい、頭を下げた。
「お義父さん・・・」
「父さん・・・」
その言葉に、ホッとしたように言葉を漏らす二人。
そんな二人を嬉しそうに見ながら、ここまで沈黙を守っていた、七瀬の母が
口を開く。
「さあ、お話は終わったし、お昼にしましょう。ナナちゃん、支度するから、
手伝ってね。」
そう言い残すと、すっと立ち上がり、キッチンに向かって行った。
七瀬は、慌てて立ち上がると、母の後を追い、キッチンに向かった。
ない!」
本当に申し訳なさそうに、浪馬に対して深々と頭を下げる、七瀬の父。
「い、いえ・・・」
どう対応していいか分からず、困惑気味の浪馬。
「織屋君、ごめんなさいいね♪」
反省してるのか、していないのか、判断しかねる、七瀬の母。
「母さん!」
そんな母に対して、怒る七瀬。
「きゃぁ!ナナちゃんったら、怖い!」
そう言いながら、隣に座っている、夫にすがり付く。
「まぁまぁ、七瀬、落ち着きなさい。母さんも、七瀬をからかい過ぎないよう
に。」
「は~い」
「ハイ・・・」
「で、織屋君?」
「ハ、ハイ!」
「母さんから、大体の事は聞いているよ。今日は、その事なんだね?」
「ハイ!そ、そうです!」
浪馬は緊張のため、ガチガチになっているようだ。
そんな浪馬に、隣で座っている七瀬が、軽く肘でつつきながら囁く。
「(なに、ガチガチになってるのよ!あなたらしくないわよ!)」
「(んな事言っても、緊張するなってのが無理なんだって!大体・・・)」
「織屋君?」
「ハイっ!?」
二人のヒソヒソ話は、父の一言で中断された。
「いや、大体の事は、母さんから聞いてるんだが、君の口から説明を
してくれないか?」
「ハイ・・・と、言っても、どこから話せばいいのか・・・」
まだ緊張が解けず、その上、困惑気味の浪馬。
「ハハッ、そんなに緊張しなくも、大丈夫。二人の事は、私達も公認している
わけなんだからね」
あくまで優しく、落ち着いた口調で、浪馬に話しかける、七瀬の父。
そんな七瀬の父の態度を見て、浪馬が安心したように、話しだした。
「えっと、それじゃあ、そうですね・・・、昨日のなな・・・お嬢さんの誕生日に、
二人で食事しようと言って、レストランに行ったんです」
「・・・」
「行ったと言うか、誘ったんですが・・・。そこで、俺・・・いや、僕の方から・・・」
「織屋君・・・」
「ハイッ?」
「そんなに緊張せずに、いつもどおりの口調でいいんだよ?」
「それじゃあ・・・、えっと、そこで、俺からのプレゼントと言って、指輪を渡
しました。」
「今、七瀬がつけている指輪だね?」
七瀬がつけている指輪を見て、浪馬に聞く。
「ハイ。で、指輪をを渡す時にプロポーズしました・・・」
「それで、七瀬はOKしたわけだね?」
指輪を見ていた視線を娘の顔に向け、娘に聞く。
「ええ・・・」
七瀬は父の目を見て応える。
「で、織屋君は、その事の報告と、挨拶に来た。という事でいいのかな?」
今度は、浪馬の方に顔を向け、浪馬に聞く。
「ハイ」
七瀬と同じように浪馬も、相手の目を見つめ、はっきりとした口調で応えた。
「それじゃあ、報告は今聞いたし、次は挨拶だね」
うんうんと、納得したように頷き、浪馬に話しかける。
「そ、そうですね・・・、それじゃあ・・・」
浪馬は、少し後ろに下がり、深々と頭を下げ、一呼吸おいてから、口を開いた。
「・・・月並みですが・・・お義父さん、お義母さん、娘さんを・・・七瀬さんを俺に下
さい!!」
しばらくの沈黙の後、七瀬の父が応える。
「・・・わかった・・・。ところで、織屋君?」
「ハイ?」
「どうして、七瀬なんだい?」
「えっ?」
さらに質問が投げかけられる。
「君は・・・、どうして七瀬と結婚したいのかな?」
「・・・それは・・・」
少し考えている様子の浪馬。
「それは?」
「・・・ずっと・・・ずっと七瀬と居たいからです!」
そう強く言い切ると、更に言葉を続けようとするが、新たな質問が遮った。
「それならば、結婚なんてしなくても、今のまま、恋人としてでもいいんじゃ
ないのかな?」
父の質問に、七瀬が浪馬の方を見ながら、彼の名前を呟く。
「・・・浪馬・・・」
お互いを見つめる、七瀬と浪馬。
少し見つめ合った後、浪馬が語りだした。
「そうかも・・・、知れません・・・。でも・・・でも、俺は・・・俺は・・・俺は、七瀬を
俺だけの七瀬にしたいんです!!」
「こんな事を言ったら、エゴだって言われるかも知れません。それでも、かま
わない!!七瀬の笑顔も、七瀬の泣き顔も、何もかも、俺だけのものにしたい
んです!!それだけじゃない!七瀬の人生も何もかもひっくるめて、俺だけの
ものにしたいんです!!」
力強く語る浪馬。
「・・・浪馬・・・」
“七瀬の全てを自分だけのものにしたい”その言葉に、七瀬が反応する。
そんな七瀬の方を見ながら、浪馬は軽く微笑みかけ、更に続ける。
「俺と七瀬の思い出は、七瀬がご両親と過ごした時間と比べると、まだまだで
す・・・。でも・・・、だからこそ!お二人との思い出に負けない・・・いや、それ以上
の思い出を二人・・・いや、家族で作って行きたいんです!」
そこまで言い切ると、“ふうっ”と一息つく。
「・・・思い出を作りたいから、七瀬が欲しい・・・か?」
質問は更に続いた。
「それだけじゃありません!七瀬が・・・七瀬が隣に居てくれる事が、俺の幸せだか
です!」
今までと同じか、それ以上に強く、浪馬が言い切る。
「七瀬が隣に居る事が君の幸せか・・・。七瀬・・・お前はどうなんだい?」
今度は、娘の方に質問を投げかける父。
「私は・・・いいえ、私も!私の隣に浪馬が居てくれる・・・。それが私の幸せです!
私も浪馬の何もかもが欲しいの!!」
七瀬の方も、強く言った。
「お義父さん!だから・・・、だから!俺達の事、認めて下さい!お願いします!」
「父さん!私からも、お願いします!!私たちの事・・・」
二人揃って、深々と頭を下げる。
「・・・」
そんな二人を無言でジッと見つめる。
しばらくし、二人に向かって、優しく微笑みながら、こう言った。
「・・・認めるも何も、二人の事は、公認だって言ってるじゃないか?」
「じゃあ・・・」
両手を口に当て、今にも泣き出しそうな七瀬。
「まぁ、何を今更って感じもしないでもないが・・・。織屋君・・・娘を・・・
七瀬をお願いします・・・。頑固でキツイ娘だが、優しい娘だからね・・・。」
そう言うと、浪馬に向かい、頭を下げた。
「お義父さん・・・」
「父さん・・・」
その言葉に、ホッとしたように言葉を漏らす二人。
そんな二人を嬉しそうに見ながら、ここまで沈黙を守っていた、七瀬の母が
口を開く。
「さあ、お話は終わったし、お昼にしましょう。ナナちゃん、支度するから、
手伝ってね。」
そう言い残すと、すっと立ち上がり、キッチンに向かって行った。
七瀬は、慌てて立ち上がると、母の後を追い、キッチンに向かった。
キッチン
居間の方では、七瀬の父がアルバムを引っ張り出し、浪馬を相手に何か話して
いるようだ。
そんな様子を耳にしながら、七瀬は母に話しかけた。
「何を作るの?母さん?」
「実はね、お寿司を頼んでいたのよね~。お昼。」
七瀬の問いに、いつもの調子で答える。
「ちょ、ちょっと、それじゃあ、料理なんか、必要ないんじゃ・・・」
七瀬が言い終わる前に、ポンと手を叩き
「そうだわ!お吸い物を作らなきゃ!ね?ナナちゃん?」
そう言いながら、七瀬にエプロンを手渡す。
「お吸い物なら、母さん一人で・・・」
「いいじゃないの。ナナちゃんが結婚したら、二人でお料理するなんて、滅多
に出来なくなるんだし・・・。ねっ?」
「それもそうね。よし!二人で作りましょう!母さん!」
母からのお願いに、七瀬が快諾する。
いるようだ。
そんな様子を耳にしながら、七瀬は母に話しかけた。
「何を作るの?母さん?」
「実はね、お寿司を頼んでいたのよね~。お昼。」
七瀬の問いに、いつもの調子で答える。
「ちょ、ちょっと、それじゃあ、料理なんか、必要ないんじゃ・・・」
七瀬が言い終わる前に、ポンと手を叩き
「そうだわ!お吸い物を作らなきゃ!ね?ナナちゃん?」
そう言いながら、七瀬にエプロンを手渡す。
「お吸い物なら、母さん一人で・・・」
「いいじゃないの。ナナちゃんが結婚したら、二人でお料理するなんて、滅多
に出来なくなるんだし・・・。ねっ?」
「それもそうね。よし!二人で作りましょう!母さん!」
母からのお願いに、七瀬が快諾する。
「ねぇ?ナナちゃ・・・いえ、七瀬?」
「えっ?」
いつになく真面目な口調の母の声に、七瀬が顔を向ける。
「結婚したらね、幸せな事だけじゃないのよ。怒りたい時や泣きたい時、それに、
ひょっとしたら、織屋君の事を嫌いになる時があるかもしれない」
「母さん・・・」
「そんな時は、どうする?」
少し小首をかしげながら、七瀬に問いかける。
「・・・」
どう答えていいか分からない七瀬。
「うふふ、わからない?」
母の言葉に、無言で頷く。
「怒りたい時はね、思い切って、全部ぶちまけちゃいなさい」
神妙な顔をして、コクンと頷く。
「泣きたい時も同じ。彼にすがり付いてでも、泣きなさい」
先程と同じ反応をする。
「嫌いになったときは・・・、ケンカしちゃいなさい」
今度は“えっ”という風に、キョトンと母を見つめる。
「徹底的にケンカして、そして、七瀬の方から謝っちゃいなさい」
「で、でも、浪馬の方が悪かったら?」
不思議そうに七瀬が問いかける。
「その時も、あなたから謝るの。でも、そんな時は、織屋君の事だから、“俺の
方こそ悪かったよ”とか言うわよ」
クスッと笑いながら七瀬に微笑む。
「う~ん、よくわからないけど、わかった」
母の微笑みに釣られる様に、七瀬も微笑む。
「そして、これが一番大事な事」
「何?」
「織屋君の事を信じなさい。そして、いつも素直でいなさい」
母は、いつもの様に、ニッコリと笑うとこう言った。
「ハイッ!」
七瀬は力強く頷いた。
「きっと大丈夫よ。あなた達二人なら」
「どうして?」
七瀬が聞く。
「私の自慢の娘と、自慢の娘が選んだ相手ですもの」
ニコニコと笑い、七瀬の頬を撫でながら答える母。
「ありがとう・・・母さん・・・」
少し頬を染めながら、七瀬が言った。
「そう言えば・・・さっきから、母さん、私の事“七瀬”って・・・」
隣でお吸い物の味見をしている母に、七瀬が問いかける。
「だって、あなたは、もう私の娘を卒業するんだもの」
味がよかったのか、頷きながら続けて話す。
「だから、ナナちゃんも卒業。ねっ?」
言い終わると、七瀬の方を向き、スッと抱きしめる。
「ナナちゃん・・・、幸せになりなさい」
「うん」
「織屋君なら・・・ナナちゃんを・・・絶対に幸せに・・・してくれるから」
「うん・・・」
「だから・・・ナナちゃんも・・・織屋君を・・・幸せにしてあげなさいね」
「・・・うん、うん・・・。私・・・絶対に・・・幸せになる・・・私・・・だけ・・・じゃない・・・
浪馬も・・・幸せに・・・」
いつの間にか、親子は二人とも涙を流しながら、会話をしていた。
しばらくの抱擁の後、どちらともなく離れる二人。
少し照れ臭いのか、無言の時間。
ちょうどその時、チャイムが鳴る。
「あら~、お寿司がきたみたいね。私が取りに行くから、お吸い物、お願いね
。織屋さんのお・く・さ・ま♪」
いつもの調子で、そう言い残すと、パタパタと玄関の方に走って行った。
“もう”と軽くため息をついた七瀬は、玄関に向かう母の背中にお辞儀をし、
呟いた。
「ありがとう、母さん。私、父さんと母さんの子供に生まれて、本当によかった・・・」
「えっ?」
いつになく真面目な口調の母の声に、七瀬が顔を向ける。
「結婚したらね、幸せな事だけじゃないのよ。怒りたい時や泣きたい時、それに、
ひょっとしたら、織屋君の事を嫌いになる時があるかもしれない」
「母さん・・・」
「そんな時は、どうする?」
少し小首をかしげながら、七瀬に問いかける。
「・・・」
どう答えていいか分からない七瀬。
「うふふ、わからない?」
母の言葉に、無言で頷く。
「怒りたい時はね、思い切って、全部ぶちまけちゃいなさい」
神妙な顔をして、コクンと頷く。
「泣きたい時も同じ。彼にすがり付いてでも、泣きなさい」
先程と同じ反応をする。
「嫌いになったときは・・・、ケンカしちゃいなさい」
今度は“えっ”という風に、キョトンと母を見つめる。
「徹底的にケンカして、そして、七瀬の方から謝っちゃいなさい」
「で、でも、浪馬の方が悪かったら?」
不思議そうに七瀬が問いかける。
「その時も、あなたから謝るの。でも、そんな時は、織屋君の事だから、“俺の
方こそ悪かったよ”とか言うわよ」
クスッと笑いながら七瀬に微笑む。
「う~ん、よくわからないけど、わかった」
母の微笑みに釣られる様に、七瀬も微笑む。
「そして、これが一番大事な事」
「何?」
「織屋君の事を信じなさい。そして、いつも素直でいなさい」
母は、いつもの様に、ニッコリと笑うとこう言った。
「ハイッ!」
七瀬は力強く頷いた。
「きっと大丈夫よ。あなた達二人なら」
「どうして?」
七瀬が聞く。
「私の自慢の娘と、自慢の娘が選んだ相手ですもの」
ニコニコと笑い、七瀬の頬を撫でながら答える母。
「ありがとう・・・母さん・・・」
少し頬を染めながら、七瀬が言った。
「そう言えば・・・さっきから、母さん、私の事“七瀬”って・・・」
隣でお吸い物の味見をしている母に、七瀬が問いかける。
「だって、あなたは、もう私の娘を卒業するんだもの」
味がよかったのか、頷きながら続けて話す。
「だから、ナナちゃんも卒業。ねっ?」
言い終わると、七瀬の方を向き、スッと抱きしめる。
「ナナちゃん・・・、幸せになりなさい」
「うん」
「織屋君なら・・・ナナちゃんを・・・絶対に幸せに・・・してくれるから」
「うん・・・」
「だから・・・ナナちゃんも・・・織屋君を・・・幸せにしてあげなさいね」
「・・・うん、うん・・・。私・・・絶対に・・・幸せになる・・・私・・・だけ・・・じゃない・・・
浪馬も・・・幸せに・・・」
いつの間にか、親子は二人とも涙を流しながら、会話をしていた。
しばらくの抱擁の後、どちらともなく離れる二人。
少し照れ臭いのか、無言の時間。
ちょうどその時、チャイムが鳴る。
「あら~、お寿司がきたみたいね。私が取りに行くから、お吸い物、お願いね
。織屋さんのお・く・さ・ま♪」
いつもの調子で、そう言い残すと、パタパタと玄関の方に走って行った。
“もう”と軽くため息をついた七瀬は、玄関に向かう母の背中にお辞儀をし、
呟いた。
「ありがとう、母さん。私、父さんと母さんの子供に生まれて、本当によかった・・・」
ビッグボデー
「え、えっと、浪馬さんと結婚する事になりました、高遠七瀬といいます。
よろしく・・・お願い・・・します・・・おじさま・・・」
七瀬はそう言うと、ぺこりとお辞儀をした。
「がっはっはっ!嬢ちゃん、そんなに硬くならなくていいぜ!」
おっちゃんが豪快に笑いながら、七瀬に話しかける。
「そうだぞ、七瀬。豪快なおっちゃんだけど、噛み付きゃしないから!」
驚きと緊張で、ガチガチになっている七瀬に、浪馬が笑いかける。
「そうそう!がっはっはっ!おっと!自己紹介がまだだったな!浪馬の親代わり
のビッグのおっちゃんだ!よろしくな!嬢ちゃん!」
あくまで豪快なおっちゃん。
「・・・」
おっちゃんのノリについていけず、固まったままの七瀬。
「それにしても、浪馬!こんな美人をカミさんにしようなんて、幸せもんだな!
それでこそ、俺の甥だ!こうなったら、おっちゃん、ビッグな祝いをしてやるか
らな!」
そんな七瀬を尻目に、思い切りマイペースな、おっちゃん。
「サンキュー!おっちゃん!ところで、相談があるんだけど・・・」
そんなおっちゃんに、浪馬が尋ねる。
「ん?なんだ?前にも言ったが、金がないんなら、ビッグな金利で貸してやるぞ
!?」
この、おっちゃんの発言に、固まっていた七瀬が気を取り直した。
「・・・!そ、それってxhuhjo@\-*Lp!!」
なにか言おうとしたが、浪馬が言葉をさえぎる。
「いや、そんな事じゃなくって、親父達の事なんだけど・・・」
「おう!それがどうしたんだ!?」
「いや、何と言うか・・・その・・・」
言い難そうな、浪馬。
「なんだ?お前らしくねぇな!はっきり言え!?」
浪馬の態度に、不満を露にする。
「ん~、そうだな・・・」
まだ煮え切らない様子の浪馬。
「ズバっと言え!ズバっと!」
そんな浪馬の態度に、いらいらした様子。
「んじゃ、お言葉に甘えて・・・。」
腹を決めた浪馬。
「ん」
納得した、おっちゃん。
「なぁ、親父達って、どこに居るんだ?」
浪馬の口から出たのは、普通では考えられないような言葉だった。
「・・・はぁっ?ちょ、ちょっと、浪馬・・・」
七瀬が困惑気味に、呟く。
「いや~、しばらく連絡してなかったから、居場所がわからないんだ!これが
!ハッハッハッ!!」
ごまかす為か、豪快に笑い出す浪馬。
「あ、あなた、それって・・・」
呆れたのか、七瀬が呆然となる。
「なんだ!そんな事かよ!」
「おっ!?知ってんのか!おっちゃん!」
「おうっ!んなもん、知ってて当然だぜ!」
浪馬の問いに、さも当然という風に、おっちゃんが答える。
「さすが、おっちゃんだ!で、どこにいるんだ?」
思わず、身を乗り出す浪馬。
七瀬は、呆然としたままだが。
「あれは、確か・・・」
おっちゃんの手が、ヒゲをまさぐる。
「うんうん?」
更に身を乗り出す浪馬。
「ん~~~?」
考え込むおっちゃん。
「・・・・・・・・・・・・忘れちまった!がっはっはっ!」
これが、おっちゃんの結論のようだ。
「お、おっちゃん・・・」
おっちゃんの答えに、ガックリしたようだ。
「細かい事、気にしてたら、ビッグになれねえぞ!浪馬!がっはっはっ!」
あくまで豪快なおっちゃん。
「いや、さすがにそれは・・・」
“まずいでしょう”と言いたげな七瀬。
「・・・まあ、心配すんな!後で調べて、俺から親父さん達に連絡しといてやる
って!」
「さ、サンキュー・・・おっちゃん」
「なーに!いいって事よ!で?用事ってのは、それだけか?」
「ああ。そうだよ。七瀬も紹介したしな」
「そうか。んじゃ、おっちゃんの方から、嬢ちゃんに話ある。聞いてくれる
な?」
おっちゃんは、そう言うと、七瀬の方を向いた。
「・・・えっ!?あっ、はいっ!!」
急に話しかけられて、少し驚く七瀬。
「嬢ちゃん・・・」
おっちゃんは、七瀬の様子を気にせずに、話を続ける。
「こいつなら、あんたを幸せに出来る!!だから、何も心配せずに、こいつを
信じろ!なっ?嬢ちゃん!」
「ハイッ!」
おっちゃんの言葉に、力強く答える七瀬。
「よ~し!いい返事だ!次は、浪馬!お前だ!」
そう言うと、今度は浪馬の方を見る。
「おうっ!!」
こちらも、力強く答える。
「いいな!嬢ちゃんを絶対に悲しませるな!」
「当たり前だ!!」
「絶対に、幸せにしろ!」
「当然っ!!」
「よ~し!んじゃ、おっちゃんとお前の、男と男の約束だ!約束を破ったら、
ビッグなお仕置きが待ってるからな!」
「望むところだ!」
おっちゃんは、浪馬の答えに、満足したようにニヤリと笑った。
「よし!いい返事だ!二人とも、幸せになれよ!!がっはっはっ!」
豪快に笑いながら、二人の背中をバンバン叩く。
「はいっ!!」
浪馬と七瀬は、おっちゃんの手荒い祝福に、力一杯の返事を返した。
よろしく・・・お願い・・・します・・・おじさま・・・」
七瀬はそう言うと、ぺこりとお辞儀をした。
「がっはっはっ!嬢ちゃん、そんなに硬くならなくていいぜ!」
おっちゃんが豪快に笑いながら、七瀬に話しかける。
「そうだぞ、七瀬。豪快なおっちゃんだけど、噛み付きゃしないから!」
驚きと緊張で、ガチガチになっている七瀬に、浪馬が笑いかける。
「そうそう!がっはっはっ!おっと!自己紹介がまだだったな!浪馬の親代わり
のビッグのおっちゃんだ!よろしくな!嬢ちゃん!」
あくまで豪快なおっちゃん。
「・・・」
おっちゃんのノリについていけず、固まったままの七瀬。
「それにしても、浪馬!こんな美人をカミさんにしようなんて、幸せもんだな!
それでこそ、俺の甥だ!こうなったら、おっちゃん、ビッグな祝いをしてやるか
らな!」
そんな七瀬を尻目に、思い切りマイペースな、おっちゃん。
「サンキュー!おっちゃん!ところで、相談があるんだけど・・・」
そんなおっちゃんに、浪馬が尋ねる。
「ん?なんだ?前にも言ったが、金がないんなら、ビッグな金利で貸してやるぞ
!?」
この、おっちゃんの発言に、固まっていた七瀬が気を取り直した。
「・・・!そ、それってxhuhjo@\-*Lp!!」
なにか言おうとしたが、浪馬が言葉をさえぎる。
「いや、そんな事じゃなくって、親父達の事なんだけど・・・」
「おう!それがどうしたんだ!?」
「いや、何と言うか・・・その・・・」
言い難そうな、浪馬。
「なんだ?お前らしくねぇな!はっきり言え!?」
浪馬の態度に、不満を露にする。
「ん~、そうだな・・・」
まだ煮え切らない様子の浪馬。
「ズバっと言え!ズバっと!」
そんな浪馬の態度に、いらいらした様子。
「んじゃ、お言葉に甘えて・・・。」
腹を決めた浪馬。
「ん」
納得した、おっちゃん。
「なぁ、親父達って、どこに居るんだ?」
浪馬の口から出たのは、普通では考えられないような言葉だった。
「・・・はぁっ?ちょ、ちょっと、浪馬・・・」
七瀬が困惑気味に、呟く。
「いや~、しばらく連絡してなかったから、居場所がわからないんだ!これが
!ハッハッハッ!!」
ごまかす為か、豪快に笑い出す浪馬。
「あ、あなた、それって・・・」
呆れたのか、七瀬が呆然となる。
「なんだ!そんな事かよ!」
「おっ!?知ってんのか!おっちゃん!」
「おうっ!んなもん、知ってて当然だぜ!」
浪馬の問いに、さも当然という風に、おっちゃんが答える。
「さすが、おっちゃんだ!で、どこにいるんだ?」
思わず、身を乗り出す浪馬。
七瀬は、呆然としたままだが。
「あれは、確か・・・」
おっちゃんの手が、ヒゲをまさぐる。
「うんうん?」
更に身を乗り出す浪馬。
「ん~~~?」
考え込むおっちゃん。
「・・・・・・・・・・・・忘れちまった!がっはっはっ!」
これが、おっちゃんの結論のようだ。
「お、おっちゃん・・・」
おっちゃんの答えに、ガックリしたようだ。
「細かい事、気にしてたら、ビッグになれねえぞ!浪馬!がっはっはっ!」
あくまで豪快なおっちゃん。
「いや、さすがにそれは・・・」
“まずいでしょう”と言いたげな七瀬。
「・・・まあ、心配すんな!後で調べて、俺から親父さん達に連絡しといてやる
って!」
「さ、サンキュー・・・おっちゃん」
「なーに!いいって事よ!で?用事ってのは、それだけか?」
「ああ。そうだよ。七瀬も紹介したしな」
「そうか。んじゃ、おっちゃんの方から、嬢ちゃんに話ある。聞いてくれる
な?」
おっちゃんは、そう言うと、七瀬の方を向いた。
「・・・えっ!?あっ、はいっ!!」
急に話しかけられて、少し驚く七瀬。
「嬢ちゃん・・・」
おっちゃんは、七瀬の様子を気にせずに、話を続ける。
「こいつなら、あんたを幸せに出来る!!だから、何も心配せずに、こいつを
信じろ!なっ?嬢ちゃん!」
「ハイッ!」
おっちゃんの言葉に、力強く答える七瀬。
「よ~し!いい返事だ!次は、浪馬!お前だ!」
そう言うと、今度は浪馬の方を見る。
「おうっ!!」
こちらも、力強く答える。
「いいな!嬢ちゃんを絶対に悲しませるな!」
「当たり前だ!!」
「絶対に、幸せにしろ!」
「当然っ!!」
「よ~し!んじゃ、おっちゃんとお前の、男と男の約束だ!約束を破ったら、
ビッグなお仕置きが待ってるからな!」
「望むところだ!」
おっちゃんは、浪馬の答えに、満足したようにニヤリと笑った。
「よし!いい返事だ!二人とも、幸せになれよ!!がっはっはっ!」
豪快に笑いながら、二人の背中をバンバン叩く。
「はいっ!!」
浪馬と七瀬は、おっちゃんの手荒い祝福に、力一杯の返事を返した。
二人の部屋
「疲れた~!」
浪馬がソファーに座りながら言う。
「お疲れ様でした!」
七瀬は、意外と元気な様子。
「なんだ?七瀬は疲れてないのか?」
浪馬が不思議そうに、尋ねる。
「う~ん?疲れてないって言えば、ウソになるけど・・・」
「うんうん?」
「私も疲れてるけど、それよりも、嬉しかったから・・・」
「嬉しかった?」
「そうよ」
「俺との事が、正式に認められてか?」
「そうね・・・、それもあるけど・・・」
「けど?」
「・・・今日、会った人達みんなが・・・祝福してくれたから・・・」
七瀬が照れながらも嬉しそうに、答えた。
「そうだな。タマなんか、おっちゃんから話を聞いて、わざわざ電話して
きてくれたもんな!」
「フフッ。こうなったら、後戻りできないわよ?」
「フンッ!それこそ、望むところだ!それよりも・・・」
「それよりも・・・なに?」
「お前こそ、覚悟しておけよ!?」
「えっ?」
「いやってぐらい、幸せにしてやるからな!」
今日、何回も口にした言葉を七瀬に投げかける。
「あら?それは、私の台詞よ?」
七瀬は、少し悪戯っぽく微笑むと、浪馬に向かってこう言った。
「昨日も言ったでしょう?あなたが私を幸せにしてくれるっていうのなら、
私もあなたを同じくらい幸せにするって。だから、覚悟しておいてね♪」
本当に嬉しそうな微笑を浮かべる七瀬。
「なに~?幸せになるのは、七瀬の方だ!」
「いいえ!浪馬の方ですよ~だ!」
「い~や、お前だ!」
「違います!あなたです!」
「なに~?」
「何よ?あなたには、拒否権はないのよ!」
「それを言ったら、お前にもないんだぞ!?」
他人が見れば、イチャついているカップルにしか見えない二人。
「・・・」
イチャつくのをやめるて、見つめあう二人
「・・・ッ・・・」
「・・・くすっ・・・」
「はは・・・あははっ!」
「・・・フフッ・・・!フフフッ!」
「ハハハッ!な、なんか、俺達、バカみたいだな!?」
「フフフッ、そ、そうね。どっちを幸せにするかなんて、バカね」
「だって、二人で幸せになるんだもんな?」
「そうよね?世界一幸せになるんだものね?」
そう言うと、二人はまた笑い始めた。
浪馬がソファーに座りながら言う。
「お疲れ様でした!」
七瀬は、意外と元気な様子。
「なんだ?七瀬は疲れてないのか?」
浪馬が不思議そうに、尋ねる。
「う~ん?疲れてないって言えば、ウソになるけど・・・」
「うんうん?」
「私も疲れてるけど、それよりも、嬉しかったから・・・」
「嬉しかった?」
「そうよ」
「俺との事が、正式に認められてか?」
「そうね・・・、それもあるけど・・・」
「けど?」
「・・・今日、会った人達みんなが・・・祝福してくれたから・・・」
七瀬が照れながらも嬉しそうに、答えた。
「そうだな。タマなんか、おっちゃんから話を聞いて、わざわざ電話して
きてくれたもんな!」
「フフッ。こうなったら、後戻りできないわよ?」
「フンッ!それこそ、望むところだ!それよりも・・・」
「それよりも・・・なに?」
「お前こそ、覚悟しておけよ!?」
「えっ?」
「いやってぐらい、幸せにしてやるからな!」
今日、何回も口にした言葉を七瀬に投げかける。
「あら?それは、私の台詞よ?」
七瀬は、少し悪戯っぽく微笑むと、浪馬に向かってこう言った。
「昨日も言ったでしょう?あなたが私を幸せにしてくれるっていうのなら、
私もあなたを同じくらい幸せにするって。だから、覚悟しておいてね♪」
本当に嬉しそうな微笑を浮かべる七瀬。
「なに~?幸せになるのは、七瀬の方だ!」
「いいえ!浪馬の方ですよ~だ!」
「い~や、お前だ!」
「違います!あなたです!」
「なに~?」
「何よ?あなたには、拒否権はないのよ!」
「それを言ったら、お前にもないんだぞ!?」
他人が見れば、イチャついているカップルにしか見えない二人。
「・・・」
イチャつくのをやめるて、見つめあう二人
「・・・ッ・・・」
「・・・くすっ・・・」
「はは・・・あははっ!」
「・・・フフッ・・・!フフフッ!」
「ハハハッ!な、なんか、俺達、バカみたいだな!?」
「フフフッ、そ、そうね。どっちを幸せにするかなんて、バカね」
「だって、二人で幸せになるんだもんな?」
「そうよね?世界一幸せになるんだものね?」
そう言うと、二人はまた笑い始めた。
オマケ
「さて、疲れてる事だし、風呂に入って、寝るか?」
「そうね。・・・あっ!お風呂から出たら、お茶を入れるわね?寝るのは、その後。
ねっ?」
「あ、お義母さんから、ケーキ貰ったんだったな!」
「かなりの自信作みたいよ?」
「へぇ~?そりゃ楽しみだな」
「それじゃあ、早く入りましょう?」
「えっ!?」
「どうしたの?入らないの?」
「いや、入るけど・・・、お前も入るのか?」
「ええ。入るわよ?」
「・・・一緒にか?」
「だ、ダメ?」
「いや、かまわないけど・・・」
「じゃあ、いいじゃない。で
「そうね。・・・あっ!お風呂から出たら、お茶を入れるわね?寝るのは、その後。
ねっ?」
「あ、お義母さんから、ケーキ貰ったんだったな!」
「かなりの自信作みたいよ?」
「へぇ~?そりゃ楽しみだな」
「それじゃあ、早く入りましょう?」
「えっ!?」
「どうしたの?入らないの?」
「いや、入るけど・・・、お前も入るのか?」
「ええ。入るわよ?」
「・・・一緒にか?」
「だ、ダメ?」
「いや、かまわないけど・・・」
「じゃあ、いいじゃない。で