nanatan @Wiki ss@11スレ(その1)


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恵方巻き1    恵方巻き2    節分    幼い二人の娘の日記    七瀬vs娘



48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/03(金) 21:34:43 ID:???
浪馬「七瀬、もっと豪快に食わないとご利益なくなっちまうぞ」
七瀬「そんなこと言われても・・・」
今日は節分。最近はやりの恵方巻きを仲良く食べる二人だったが、お行儀のいい七瀬は、
太巻きにワシワシとかぶり付く様な真似は苦手のようだ。
浪馬「ガバッっと口開ければいいんだよ」
七瀬「だ、だって、あなたの前でそんなみっともない真似できないわよ」
とうとう七瀬は、ぷぅと頬を膨らませて横を向いてしまった。
浪馬(あらら、怒っちまったか。まあ、でも何事もお上品なところも、七瀬の魅力の一つだよな)

そして夜更け。
浪馬「うぉ・・・・・!? な、七瀬、ちょ、ちょっと待ってくれ・・・こ、これ以上されたら・・・っ!」
七瀬「うふん・・・はむ・・・・ちゅ・・・・・んくんくんくんく・・・・・・・・・ちゅ・・・・・・んぐ・・・・うん」
浪馬「そ、そんなに激しくはむはむされたら・・・・うあ?」
七瀬「んふ・・・気持ちいい? 織屋君。もっとしてあげる・・・うちゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
浪馬「くおおおぉっ?」
恵方の太巻きは苦手でも、浪馬の太巻きは大好きらしい。いつもクールな瞳に淫らで妖しい
光を浮かべて、七瀬はひたすらにむしゃぶりついてくる。
浪馬(あ、相変わらず普段とベッドの中のギャップが・・・くぅ・・・・凄すぎる・・・ぜ・・・・・・・)

なんだかんだで、今日もお熱い二人なのだった。





55 名前:黙って喰うのが作法なら、こーゆーのもアリか?[sage] 投稿日:2006/02/05(日) 00:33:01 ID:???
七瀬「ああっ・・・・・それだめぇぇ・・・・・」
浪馬「こら、だから喋っちゃダメだって」
七瀬「だ、だって、だって・・・・・ひゃうん」
浪馬「黙って食べるのが作法だって言ったのは七瀬だぞ?」
七瀬「で、でも、でもぉっ」

大口を開けて太巻きを食べるのを恥ずかしがる七瀬を見て、
浪馬はムラムラと悪戯心をかき立てられた。
浪馬「上がダメなら下の口だ。よし、俺の太巻きをご馳走してやるぜ」
七瀬「ええっ!?」 こうして大人の節分儀式が始まった。

浪馬「おまえの下の口はすげぇ食いしん坊だな。俺の太巻きをもぐもぐ咀嚼してる」
七瀬「むふぅぅぅ――っ! う――っ!!」
浪馬「どうだ? ウマイか? 七瀬」
七瀬「うっ うっ むうぅぅぅ!?」
シーツを噛みしばって必死で声を押し殺す姿が可愛くて、浪馬はなんとか声を
あげさせようと七瀬を執拗に責め立てる。
浪馬「七瀬、ぴちゃぴちゃ音立てて食べるのは行儀悪いな。おまえらしくない」
七瀬「くぅ・・・うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
浪馬(こ、この耐えてる表情がタマラン。ヤベェ、もっと意地悪したくなってきちまった)
七瀬「むう゛ぅぅぅぅ――――っ!」
浪馬「七瀬、今夜は寝かせないぜ。朝までたっぷり太巻きをご馳走するからな」
七瀬「むふぅ―――っ!?」

暴走する浪馬の責めに一晩で何度も失神させられた七瀬は、翌朝開口一番
「織屋君の馬鹿! エッチ! ケダモノ!」とプリプリと怒ったが、続けてすぐさま
「あ、あんなのは節分の日だけにしてね。毎晩されたら、私おかしくなっちゃうから・・・」
と恥ずかしそうに目を伏せた。結局七瀬も太巻きプレイが気に入ったらしい。

こうして誕生日やクリスマスの他にも、七瀬が指折り数えて楽しみにする日がまた増えた。





65 名前:もー節分、過ぎたけど久々に[sage] 投稿日:2006/02/05(日) 23:12:14 ID:???
ドアの音が響く!ガラガラ!ピシャン!

【浪馬】「ど、どうした七瀬、こんな朝早く!?」
【七瀬】「今日は節分よ!オニ退治の日よ!」

【浪馬】「え!?」
【七瀬】「きた…」

【夕璃】「せんぱい、おは…」
【七瀬】「オニは外ー!うりゃー」

【たまき】「浪馬クン!朝ご飯もって…」
【七瀬】「オニは外!オニは外!オニは外!」

部屋に入ってくる人間にことごとく豆を投げつける七瀬。

【七瀬】「ハァハァ。この部屋に入ってくるオニ(女)は全て撃退しなくては…。」
【浪馬】「(オイオイ。七瀬のほうがオニに見えるよ…。)」

【七瀬】「第一波は去ったようね…。アハハハ!」

浪馬にふりむく七瀬。

【七瀬】「福はうち!チュ!」




72 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/07(火) 00:15:23 ID:???
きょうは、みんなでまめまきをしました。
そのあと、ふとまきをたべました。
パパは、すごくたくさんたべました。わたしも、たくさんたべました。
ママは、あんまりたべませんでした。

パパはママに「ことしも、おれののりまきがいいのか?」といいました。
ママはあかくなって、パパをポカポカとたたきました。

わたしが「パパののりまきってなに?」ときくと、パパは
「おとなのおんなのひとだけがたべられるのりまきだよ」といいました。
「わたしもおとなになったら、パパがたべさせてくれる?」といったら、
パパはのんでいたビールをふきだしました。

はやくおおきくなって、ママといっしょにパパののりまきをたべたいです。

幼い二人の娘の日記より




79 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/09(木) 23:07:02 ID:???
「ねえねえ、わたしのこと好き?」
「そんなこと言わなくてもわかってるだろ?」
「わかっていても聞きたいの。ねえ、わたしのこと好き?」
「ああ、好きだよ」
「うふふふ・・・・わたしも好きよ。パパのこと」
膝の上で嬉しそうに微笑む娘を見て、浪馬はつくづく思う。
(顔だけじゃなくて言うコトまで七瀬そっくりだぜ)

「じゃあねえ・・・わたしとママ、どっちが好き?」
「へ?」
「わたしのことママよりも好き?」
「そ、それはだな・・・・・」
思わず前を見れば、テーブルの向かい側に座る七瀬の瞳が剣呑な光を帯びている。
(こらこら、他愛もない子供の言葉にマジになるなよ)

「ど、どっちも好きだよ。パパは二人とも同じくらい好きなんだ」
「えー!? そんなのつまんない」
「いや、つまんないって言われても」
「ふん、パパなんて嫌い」
娘はふくれっ面で浪馬の膝から降りると、さっさと二階に上がって行ってしまう。
「あ、おい・・・・・参ったな」

「しかしわが子ながらおませさんだぜ、なあ、七瀬・・・ってあれ?」
振り向けば、七瀬もスタスタと隣の部屋に向かうとバタンとドアを閉めてしまった。
どうやら七瀬は七瀬で、娘より好きと言って欲しかったらしい。

(怒ると部屋に引きこもっちまうところもそっくりなんだよな)
浪馬はただただ苦笑して、さてどうしたものかと頭をひねった。




90 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/11(土) 01:39:22 ID:???
「母さんはオレのこと、好き?」
「ふふふ、大好きよ」
「んじゃ、オレと父さん、どっちが好き?」
「えっ……」
「ほらほら、早く答えてよ?」
「え、えっと……」
自分達の座っている、ソファの下に寝転んでいる、浪馬に視線を送った。
彼はテレビに見入っているようだ。
七瀬はこれ幸いと、息子の耳に囁くように答えを漏らす。

「そ、それは、あなたよ」
浪馬に反応はなく、聞こえなかったはね……と安堵した、その瞬間、
「よっしゃ!」
と言う息子の声がリビングを包んだ。そしてテレビの電源が落ちる情けない音。
「俺、部屋で寝るわ……」
浪馬は立ち上がり、俯き加減に部屋を出て行った。

「ははは、父さん、拗ねて、出て行っちゃったよ」
「こ、こら……」
息子を怒るにも、あまり怒れず、微妙に寂しそうな顔の七瀬。
それを見かねた息子は、彼女を部屋まで強引に引っ張っていく。
そしてドアを蹴破り、浪馬に、にやにやしながら一言。

「母さんには、父さんより好きなやつなんているわけないだろう?」

そう残し、息子は夫婦の部屋を出て行った。

「全くやれやれだぜ、からかうにも仲裁にも骨が折れるよ、あのバカッポーは」
これは息子の弁である。





106 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/12(日) 02:25:16 ID:???
「お~い、雨堂、メシ食いに行こうぜ~」
「いや、メシはいいんだが、浪馬・・・?」
「ん?なんだ?雨堂?」
「いや、ものすごい視線で見られてるぞ?」
「な、七瀬!?」
「また、何かやらかしたのか?ったく、程々にしとけって・・・」
「織屋君っ!」
「ち、ちょっと待て!俺は何も・・・」
「いいから!きなさいっ!」
「ま、待ってくれ!説教は、メシ食ってからにして・・・グッ」
「じゃ、俺は先に学食に行ってるからな」
「まて!コラッ!親友を置いて行くのか!聞いてんのかよ!」
「グズグズしてないで!早くっ!」
「・・・ハイ・・・」

107 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/12(日) 02:26:07 ID:???
七瀬に襟首を掴れ、何度も階段を踏み外しそうになり、強制連行された
先は、自治会室だった。
部屋に入ると、七瀬は浪馬に、自分の正面の席に座るよう促したきり、
黙り込んでしまった。
部屋には、重い空気だけが立ち込めていた。
「で、なんなんだ?ココのところ、説教されるような事をした覚えはないんだけど?」
重い雰囲気を耐えかねた浪馬が口を開いた。
「・・・」
それでも、時折ため息をつくものの、七瀬は無言のまま。
「お~い?七瀬~?」
正面に座っている七瀬に呼びかける。
「・・・・・・」
しかし、七瀬は無言のまま。
「もしも~し?た・か・と・う・さん?」
今度は、目の前で手をヒラヒラさせながら、普段は呼ばない七瀬の苗字で呼んでみた。
「・・・・・・・・・」
相変わらず、七瀬は沈黙している。
「おいおい、用事がないんなら、学食に行くぞ?」
そう言って、浪馬が席を立とうとした、その瞬間、正気に戻ったのか、
七瀬が大きな声を上げながら、立ち上がった。
「ダメっ!」
「だったら、早くしてくれよ。学食の混み方、半端じゃないんだぞ?」
少しイラついたように、浪馬が言うと、七瀬は、おずおずと机の下から紙袋を
取り出し、中から何かの包みを出しながら言った。
「・・・・・・・・・こ、これ!」
「ん?なんだそれ?」
「み、見てわからないの!?お弁当よ!」
「七瀬の弁当が俺に関係あるのか?」
「確かに、作ったのは私だけど、これは、あなたの分!!」
的外れな浪馬の言葉に、段々と声が大きくなっていく。
「へっ?」

108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/12(日) 02:27:19 ID:???
「へっ?」
「ああっ!もうっ!ホント、鈍いんだから!これは、あなたに作ったお弁当なの!」
「・・・あっ、そういうことか!」
「・・・まったく、鈍感・・・!!」
最後に、小さな声でそういうと、七瀬はイスに腰を下ろした。
「で、食べていいのか?それ?」
脱力感を覚えている七瀬に、またも浪馬が的外れな事を聞く。
そんな浪馬に、自然と強い口調になってしまう七瀬。
「いいに決まってるでしょう!食べたいの!?食べたくないの!?」
「い、いや、食べさせていただきます・・・」
七瀬の口調に、萎縮しながら、浪馬が言った。
「い、いただきます・・・」
「・・・(ジーッ)」
「・・・」
「・・・(ジーッ)」
「・・・・・・なぁ?」
「な、なに?」
「そんなに見つめられたら、食べにくいんだが・・・」
「み、見つめてなんかいないわよ!」
誰どう見ても、ジッと見つめているようにしか見えないが、あえて、それを否定する。
「・・・まぁ、いいか。それより、七瀬は食べないのか?」
「あっ!た、食べる!」
浪馬の言葉に、慌てて自分のお弁当の蓋を開けるが、今度は・・・。

109 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/12(日) 02:28:03 ID:???
「・・・(チラッ)」
「・・・」
「・・・(チラッ)」
おかずやご飯を口に運んでいるものの、浪馬をチラチラと見ている。
「・・・おい」
浪馬がため息をつきながら、七瀬に言葉を投げかけた。
「こ、今度は何よ!?」
「チラチラ見られるのもちょっと・・・」
「だから、見てないってば!」
「なぁ?」
「今度は何!?」
「ひょっとして、感想を聞きたいのか?」
浪馬の質問に、少し間をおいて、七瀬が答える。
「・・・・・・・・・そう」
「それなら、素直に言えよ・・・」
「だって・・・」
「うまいぞ」
「えっ?」
「だ~か~ら~、うまいって!」
浪馬の言った言葉に、七瀬の表情がパっと明るくなる。
「よ、よかった・・・」
表情は明るくなったものの、言葉はまだ不安そうな七瀬。
「自信、なかったのか?」
「だって、あなたの好みの味がわからないんだもの」
「ああ、それでか」
「それに、自分の分は作ったりしてたけど、誰かのために作るのは初めてだから・・・」
「ふ~ん?普通にうまかったぞ?」
「えっ?“うまかったぞ”って、過去形?」
「そ。ごちそうさんでした!」
「もう食べちゃったの!?」
「『もう』って、結構、経ってるぞ?ほら?」
そう言って、壁にかけられた時計を指差す。
浪馬の指差した時計と、自分の時計を交互に見ると、昼休みは残り10分を切っていた。
「えっ!?もうこんな時間!?」
七瀬のお弁当は、3分の2以上が残っている。
彼女の食べるペースからして、間に合うかどうか微妙な時間のようだ。
「そりゃ、お前、俺に見とれて・・・」
「見とれてません!」
「・・・ま、そう言う事にしとくか。それより、早いトコ食べないと、時間なくなるぞ?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!授業に遅れたら、あなたのせいなんだから!!」
この日、七瀬は生まれて初めて、授業に遅れたのであった。
当然、浪馬は「こんな時間になったのは、あなたのせいなんだから、責任を取りなさい!」
という、七瀬の筋が通っているのかいないのか分からない理由によって、七瀬が食べ終わる
まで、つき合わされ、授業に遅刻したのであった。





120 名前:ヤキモチのつむじ曲がり 1[sage] 投稿日:2006/02/13(月) 01:16:55 ID:???
七瀬(まだ終わらないのかしら・・・)
昼休みの廊下。下駄箱の陰から様子を窺いながら、七瀬は酷くイライラしている。
浪馬が身体データを取らせてくれと博子にとっ捕まっている最中なのだ。

博子「先輩が暇な時でいいんです。今度の土日はダメですか?」
浪馬「いやあ、もう予定入ってるんだよ」
博子「じゃあ来週はどうでしょうか?」
浪馬「んー、実は土日と祝祭日はもう全部先約が・・・ゴメンね、博子ちゃん」
七瀬(そんな曖昧な言い方せずに、私と過ごすからってハッキリ言いなさいよ!)

博子「では今から少し時間下さい。昼休みの間でも少しはデータは取れます」
浪馬「え? いや、俺、これから飯食いたいんだけど・・・」
博子「さ、先輩、早くしてください」
七瀬(ちょっと、織屋君は今から私とお昼をいっしょに・・あ゛ーっ?!)
血相を変えて七瀬が飛び上がった。逃げようとする浪馬の右手を博子が掴んだのだ。

頭からつま先まで愛しくてならない浪馬。中でも「手」に七瀬は強い思い入れが
あった。チンピラから守ってくれた逞しい拳。平手打ちで彼女を目覚めさせてく
れた暖かい手のひら。浪馬の手は七瀬の宝物なのだ。それゆえに・・・
七瀬(は、離しなさいっ! 離すのっ! その手はわたしの・・・わたしのっ!)
浪馬と一緒に食べようと購買で買ったパンを知らず知らず握りつぶして、七瀬は
泣きそうな顔で地団駄を踏んだ。

浪馬と公認の仲になって、七瀬に安らぎが訪れたかというとそうでもない。
彼女は、自分でも知らなかった事だが、相当なヤキモチ焼きだった。
人付き合いのいい浪馬は、仲のいい女の子が沢山居る。それが七瀬の悩みの種
だった。ただ彼女はそういった態度を浪馬には見せないようにしている。

なぜなら彼女はつむじ曲りなのだから。


159 名前:ヤキモチのつむじ曲がり 2[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 21:05:02 ID:???
体育館の片隅。ぐるぐる同じ場所を回りながら、七瀬はバスケ部の紅白戦に参加中の
浪馬を横目でチラリチラリと睨みつる。彼女は可哀想なくらいイライラしていた。

人気者の刃を目当てに多くの女生徒が集まっていたが、抜群の運動センスで活躍す
る浪馬もまた少女達からさかんに声援を浴びていた。七瀬はそれが気に喰わない。
浪馬が愛想よく声援に手を挙げて応えるのがもっと気に喰わない。
七瀬(鼻の下伸ばしたりして、見苦しいったらありゃしないわ)(織屋君のバカっ!)
タマ「高遠さん、ここは冷えるから部室に行こうよ」
見かねて一緒に観戦してたたまきが腕を引っ張ると、夕璃もコクコクと頷いた。

七瀬「私がいることに気づきもしないなんて酷いと思わない?」
夕璃「んー、でも私達は目立たない場所にいましたから・・」
七瀬「私は屋上からでもグランドの端にいる織屋君がわかるわよ」
タマ「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着きなよ、高遠さん」
部室に戻っても浪馬への恨み言しきりの七瀬を、たまきと夕璃が懸命になだめる。
二人は七瀬のヤキモチ癖を知る数少ない人物だ。

七瀬「もうすぐバレンタインだけど、私気が重くて夜も眠れないくらいよ」
タマ「どうして? 浪馬クンをますます悩殺するチャンスじゃない」
七瀬「他の子からも沢山チョコ貰って彼が大喜びする姿を想像すると、私・・・・」
夕璃「今年は織屋先輩にチョコを渡す人はまずいないと思いますよ」
タマ「そうそう、浪馬クンには高遠さんがいるもんね」
七瀬「いいえ。あんなに素敵な人だもの。きっと誰かが――――あっ?!」
たまきと夕璃の慰めにも、悲しそうに首を振るばかりの七瀬が突然ハッと部室の入
り口を振り向いた。
タマ「ど、どうかしたの?」
七瀬「織屋君。織屋君が帰ってきたわ!」
夕璃「どうしてわかるんですか?」
七瀬「足音よ」言うなり七瀬は瞳をキラキラと輝かせてドアへと向かう。
タマ「あ、足音? 外の足音がわかるの? そんなのって・・・」

恋する女のアンテナに狂いはなかった。七瀬の目の前で開いたドアの向こうに
本当に浪馬が立っていた。
浪馬「七瀬、来てたのか? ん? タマと夕璃ちゃんもか。今日は随分賑やかだな」
たまきと夕璃は驚いて思わず顔を見合わせた。


191 名前:冬のつむじ曲がり3[sage] 投稿日:2006/03/02(木) 02:12:27 ID:???
「どこで油売ってたの? 汗いっぱいじゃない。風邪をひくから早く拭きなさい」
「何か飲む? お腹が空いてるならお菓子も用意してあるわ」
先程までの憂鬱な様子はどこへやら、七瀬は溌剌とした顔で浪馬の世話を始めた。
固く締まった花の蕾が一気に満開になったかの様な、それは見事な豹変ぶりだった。
七瀬「この汗、タオルで拭いたくらいじゃダメね。シャツを換えた方がいいわ」
浪馬「こ、こら、いきなり脱がそうとするなって」
七瀬「あら、今更恥ずかしがることもないでしょう? ほら、早く脱いで」
浪馬「あのな、タマと夕璃ちゃんもいるんだぞ。七瀬も向こう行って後ろ向いてろよ」

「あれ? タマ、またシャツを洗ったのか? 下着は洗わなくていいって言ったろ?」
ロッカーの中に洗濯して綺麗に畳んだシャツを見つけて、浪馬が驚きの声をあげた。
タマ「この前も言ったよね。私は洗ってないよ」
浪馬「じゃあ夕璃チャンかい?」
夕璃「いいえ、違いますよ」
浪馬「二人じゃなきゃ、誰が洗うんだよ」
タマ「さあ? この部室には親切な小人さんでもいるんじゃないの」
背中越しに浪馬に答えながら、たまきはチラリと七瀬の顔を覗き込んだ。
七瀬「・・・・・・・・・」
犯人はむろん七瀬だ。自室の掃除。洗濯。何度申し出ても遠慮する浪馬に業を煮やし
た彼女は、たまきと夕璃に頼み込んで部室の洗濯物を一手に引き受けていた。下着は
洗わなくてもいいとその時に教わったが、七瀬は靴下もぱんつも喜んで洗う。それを
浪馬に内緒にしているのが、七瀬らしいと言えば七瀬らしい。

浪馬「小人? 童話じゃあるまいし。とにかく下着は洗わなくていいから」
夕璃「先輩、私達に言っても意味ありませんよ。小人さんに言ってください」
本気で犯人に気づかない浪馬の鈍さに、夕璃が困った様に瞳をくるんと動かした。

着替えを終わった浪馬がベンチに腰掛けると、七瀬はさっそく隣に腰掛て飲み物を
差し出した。試合を観戦していた事に気づいて貰えなかった恨みも言わず。こっそ
り洗濯をしている事に気づかない鈍さも責めず。七瀬はただ浪馬の肩に頭を持たせ
掛け、ぴったりと寄り添った。

タマ「・・・・・」
夕璃「・・・・・」
切ないほどにいじらしく健気な七瀬の姿にたまきと夕璃は顔を見合わせ、小さく溜
息をついた。このままでは七瀬が可哀想だ。二人はそう思ったに違いない。


367 名前:冬のつむじ曲がり4[sage] 投稿日:2006/03/27(月) 01:31:05 ID:???
タマ「止めないでったら。私が浪馬クンを締め上げてやるんだから!」
望 「落ち着いてよ、たまきちゃん」
タマ「だって私もう見てらんない! ほら」
たまきがビシと指を差す方向。職員室の前でみさきと談笑する浪馬と、それを遠く
離れた廊下の片隅から、哀れなほどオロオロしながら見つめる七瀬の姿があった。
望 「ヤキモチ焼きか・・・高遠さんも可愛いところあるんだねえ」
刃 「あそこまで想われたら男冥利に尽きるってヤツだな」
タマ「男冥利も何も浪馬クンはぜーんぜん気づいてないの! それが問題なの!」
洗濯の一件でさすが腹に据えかねたたまきは、刃と望にこれまでの経緯をぶちまけ
ると、浪馬に天誅を下すべきだとしきりに主張する。

タマ「ハリセンで叩いてでも気づかせてやる! ヤキモチも! お洗濯の事も!」
夕璃「でもご本人が隠してるのに、私達がバラしたら高遠先輩の立場がありませんよ」
タマ「うぅぅぅぅ・・・でもさ、これじゃ高遠さんが可哀想だよ」
望 「んー、僕は白井さんの意見に賛成。僕達からは浪馬に言わないほうがいいと思う」
タマ「このまま放っておけって言うの? 高遠さんがノイローゼになっちゃうよ」
夕璃「せめてお洗濯の事だけでも、先輩が気づいてくれれば・・・・」
タマ「それが絶望的に無理なのは、白井さんも目の当たりにしたでしょう?」
ウンザリ顔でため息をつくたまきに、夕璃は困った顔をした。
タマ「私、やっぱり言うっ! もう我慢ならない!」
駆け出そうとするたまきの腕を刃が慌てて捕まえた。

刃 「俺に考えがある。今日のところはこらえてくれないかな? たまきちゃん」
タマ「え? な、なにかいい手があるの?」
刃 「大したことじゃないさ。でも浪馬が本当に高遠を大事に思ってるなら・・」
タマ「思ってるなら?」
ハリセンよりよほど痛い目みるだろうね、と、刃は肩をすくめてニヤリと笑った。

望 「じゃあ教室で刃君の作戦を聞かせてもらおうか。そろそろ撤退の頃合だよ」
みさきとの話を終え一人になった浪馬の元へ、七瀬が気づかれないようにこっそり
と忍び寄ってゆくのが見えた。彼女は慎重に浪馬の背中を取ると、精一杯背伸びを
して、さっと両手で浪馬を目隠しをした。

刃 「なんとまあ可愛いことを。廊下でいきなり『だ~れ~だ?』とはね」
タマ「可愛いって言ったら、浪馬クンのぱんつたたむ時の顔が一番だよ」
夕璃「それなのに気づいて貰えないなんて、高遠先輩が可哀想過ぎます」
刃 「なるほどね。やっぱり罪作りのニブチン馬鹿は骨の髄まで反省すべきかな」
刃は悪戯っぽく笑うと二人にウィンクしてみせた。


417 名前:冬のつむじ曲がり5[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 02:19:48 ID:???
「――♪」
鼻歌交じりの七瀬が洗濯物を干している。まだ風も冷たい日曜の早朝にも関わらず、
七瀬は浪馬の元を訪れていた。
七瀬「さてと。次はお部屋の掃除ね」
空になった洗濯籠を手に、七瀬は眩しい朝日を見上げて満足そうに頷いた。

七瀬「まったくちょっと眼を離すとすぐ散らかすんだから。ホント困った人」
まだぐっすり眠る浪馬のほほを指でぷにぷにと突き、彼女はくすんと小さく笑う。
浪馬の部屋はつい先日掃除したばかりなのに、もう雑誌やゴミが散乱している。
七瀬「片付けが済んだら朝ごはんを作るわ。それまでゆっくり寝てなさい」
そっと浪馬の頭をなでつけると、七瀬はさっそく片付けに取り掛かる。

ここ最近、七瀬は日曜の度に朝から浪馬の世話をしにやって来る。いや、時間が
あれば平日でも学校の帰りに浪馬の部屋に立ち寄っては、面倒をみていた。あれ
ほど「あなたのために何かしてあげたい」と言っても、遠慮ばかりしていた浪馬
が、どういう風の吹き回しか突然七瀬にそれを頼んだのだ。もちろん彼女は飛び
飛び上がって喜んだ。

そしてもう一つ。七瀬にはどうしようもないほど嬉しい事があった。バレンタイ
デーの日、浪馬は七瀬以外の女の子からチョコを一切受け取らなかったのだ。人
付き合いのいい彼は毎年山ほど義理チョコを貰うのだが、今年は全部断った。
浪馬「断った理由か? そ、そんなこと、言わなくてもわかるだろ?」
ぶっきらぼうな、でもちょっぴり照れたような浪馬の答えに七瀬は狂喜した。

(あなたが世話をしてくれと頼む相手は私だけ♪)
(あなたにチョコを受け取って貰えるのも私だけ♪)
(だってあなたの一番は私なんだもん♪)
散らかった雑誌を拾い集める七瀬の顔に満ち足りた笑顔が浮かんでいる。
クールな外見とは裏腹に恋に純真純朴な彼女は、浪馬が自分だけを特別扱いし
てくれる事に、体が震えるほどの喜びを覚えるのだ。

「今日はキスで起そうかしら? それとも・・あ、そうだわ・・くふん♪」
ふと片付けの手を止めると、七瀬は一人赤くなり可愛らしく鼻を鳴らす。
鼻を摘まむ。耳に息を吹き込む。わき腹をくすぐる。浪馬に悪戯して起こすのが
大好きな彼女は、また何か素敵な技を思いついたらしい。浪馬がとっくに目を覚
まして、ベッドからじっと彼女の背中を見つめている事に全く気づかず、頬に手
を当て一人くねくねと身を揉んだ。


418 名前:冬のつむじ曲がり6[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 02:25:55 ID:???
(またこんな早く来てくれた)(最近デートよりここで世話してくれる方が多いよな)
雑誌の仕分けを再開した七瀬の背中眺めながら、浪馬はまだ眠気の抜けない頭で
ぼんやりと考える。
(俺みたいな馬鹿をこんなに大事にしてくれるおまえに、俺は何ができるんだろう?)
ふと浪馬の脳裏にあの日の出来事が蘇る。気も狂わんばかりに自分を憎んだあの時を。

浪馬「刃が俺を呼んでた? 一体何の用だよ?」
望 「バスケの卒業記念試合に助っ人を頼むとかなんとか。詳しくは刃君から聞いてよ」
浪馬「んじゃロードワークが終わったら刃のところへ行くよ」
望 「随分急いでたみたいだから今すぐ戻ってよ。部室の裏にいると思うから」
浪馬「ちぇ、しょうがねえな。わかったよ」
ロードワークに出ていくらも行かないうちに道で出合った望に言われて、部室裏に行っ
た浪馬が目にしたものは、寒風に震えながら洗濯物を干す一人の少女の姿だった。
あの時、浪馬はショックのあまり声もかけられず、無様にもその場から逃げた。

(最低だ)(七瀬の真心に俺は気づきもしなかった)(俺は七瀬をないがしろにしてた)
(『二人じゃなきゃ誰が洗うんだ?』なんて酷い事を七瀬の前でよく言えたもんだ)
(なのに七瀬は変わらず俺を好きでいてくれる)(掛け替えのない人だと言ってくれる)
(もう二度と・・二度とごめんだぜ・・・あんな思いをするのは)

刃の策は単純だった。浪馬がロードワーク中に洗濯をする七瀬の習慣を利用して
浪馬を地雷原に誘導したのだ。そして彼は見事に踏んだ。誰も七瀬の洗濯の秘密を
バラしたわけではない。ただ単に浪馬が壮絶に自爆した。「高遠を大切に思ってい
るなら痛い目を見る」という刃の言葉通り、浪馬は七瀬が好きだからこそ、引き裂か
れる様な心の痛みを覚えた。そして浪馬の七瀬への態度に変化が現れた。義理チョ
コを断ったり、家の洗濯を頼んだりしたのもその一端だ。

浪馬(それにしても片付けにしては随分熱心だな。なにやってんだろ?)
ベッドから起き出すと、浪馬は七瀬の背後に忍び寄りそっと彼女の手元を覗き込んだ。
浪馬(―――?!)

なんと七瀬は週間漫画の女の子のグラビアをせっせとカッターで切り離している。
浪馬が漫画を読むのを止めはしないが、他の女の艶姿は見せたくないらしい。
七瀬「私の織屋君を誘惑しようとしてもそうはさせないんだから」
  「なによ、ぱんつなんか見せちゃって。ふしだらな写真だわ」
  「しまぱん萌え? なんなの? この変なコピー。ストライプのこと?」
  「んー、もしかして織屋君はこんなデザインのぱんつが好きなのかも」
  「・・・・・私が履いたら織屋君喜んでくれるかしら?」

可愛らしい独り言を呟く七瀬に気づかれないように、浪馬はそっとベッドに戻ると、
美しい黒髪をうっとりと眺め、その背に心の中で語りかけた。
浪馬(また新しいおまえを見つけた)(グラビアに嫉妬なんて、酷いヤキモチ焼きだぜ)
  (気が強くて、怒りっぽい。口が悪くて、つむじ曲がり。そしてヤキモチ焼きか)
  (でもな)(でも好きだ)(お前のことはみんなまとめて大好きだぜ、七瀬)
  (俺が鈍感なところを少しでも治せたら、また新しい七瀬が見えてくるんだろう)
  (そうしたらもっと好きになる。新しい七瀬を見つける度に俺はお前が好きになる)
  (七瀬・・・・愛してる)

七瀬と浪馬の絆はいよいよ固く強くなってゆく。しかしその絆が試される最後の試練
が近づきつつあった。終章永遠のつむじ曲がりに続く。





123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/13(月) 23:45:58 ID:???
明日は2月14日、バレンタイン前日のこの日、七瀬は夕食の後、浪馬に渡す
チョコを作るため、自宅のキッチンに篭っていた。

「最後にラッピングしてと・・・」
完成したチョコを箱に入れ、慎重かつ丁寧にラッピングする。
最後に、控えめなリボンをつけると、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「・・・よし!完成!」
「織屋君、喜んでくれるかしら?」
それだけ言うと、満足げな笑みを浮かべる。。
「後は、渡すタイミングね・・・って!?去年のあれ以上の事を・・・!?」
去年の事を思い出すと、途端に顔が真っ赤になる。
我ながら、大胆な事をしたと思いながら、想像を巡らせる。
「あれを以上の事って・・・」
七瀬の頭の中で、週刊誌で読んだ読者投稿の数々が蘇る。
「ダ、ダメ!そんなふしだらな事、絶対にダメっ!!出来ないっっ!!そんな事をしたら、
変な娘だって思われちゃうっっっ!」
自分の想像を全力で否定する。
「ハァァァァァ・・・・・・。こんな事なら、普通に渡せばよかったわ・・・」
七瀬は、思いっ切り深いため息をつきながら、イスに腰を下ろした。

124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/14(火) 00:00:33 ID:???
翌日

「どうしたんだ?」
そわそわと落ち着かない様子の七瀬に向かって、ふいに浪馬が尋ねた。
「えっ?」
「いや、なんか、そわそわしてるみたいに見えるんだけど・・・」
「そ、そう?」
「ってか、挙動不審だぞ?」
「えっ?」
「デートしてるときから、ため息ついたり、何もないトコ見たり・・・」
「・・・」
「退屈だったか?」
申し訳なさそうに、浪馬が聞いた。
「違う!あなたと一緒にいるのに,退屈なんかしない!」
即座に否定する七瀬。
「なんだ?気になる事でもあるのか?なんなら、相談に乗るぞ?」
「・・・」
今度は、黙り込んでしまう。
「お~い?七瀬~?」
「・・・」
浪馬の呼びかけにも、全く反応なし。
それでも、七瀬に呼びかける。
「お~い?もしも~し?」
「・・・決めた!」
それまで無言だった七瀬が、突然、声を上げた。
「うわっ!」
その声に、驚く浪馬。
浪馬の様子を見た七瀬が不思議そうに聞く。
「どうしたの?」
「いや、何でもない・・・」
浪馬の答えに、少し首を傾げつつも、次の言葉を繋ぐ。
「織屋君!」
「はいっ!」
七瀬の変に力の入った言葉に、驚きながら、浪馬が返事をした。

125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/14(火) 00:01:32 ID:???
どんな質問が待っているのかと、緊張気味な浪馬に投げかけられた言葉は、
予想外のものだった。
「今日は、何月何日?」
予想外の質問に、一瞬ではあるが、七瀬が何を言っているのか理解できず、
唖然とした浪馬が何とか、答える。
「何月何日って・・・、今日は、2月の・・・あっ!」
「そう。14日。バレンタイン・デーね」
「・・・入試やらバイトやらで、忘れてた」
「仕方ないわよ。それで、これ・・・・・・」
そう言うと、持っていたトートバックの中から、七瀬の性格がわかるように、
丁寧にラッピングされた箱が取り出された。
少し頬を染めた七瀬は、その箱を浪馬に手渡した。
「おっ!サンキュー!」
七瀬はチョコの入った箱を浪馬に手渡すと、大仕事が終わったように息を吐いた。
「最初から、こうすればよかったのよね・・・」
「ん?どうしたんだ?」
「実はね、どうして渡そうか、悩んでたの・・・」
「去年、あんな渡し方したから・・・」
「なんだ、そんな事で悩んでたのか?」
「そんな事じゃないわよ!こっちは、去年以上に印象的な渡し方を考えて・・・」
少し怒ったような七瀬が言い終わらないうちに、浪馬が七瀬に優しく話しかけた。
「なあ、七瀬?」
「なに!?」
「俺は、お前から貰えるんなら、投げつけられても嬉しいぞ?」
「そんな事!」
「しないのはわかってるって。例え話だよ。それに・・・」
「それに?」
「・・・」
「『それに』なに?」
「・・・お・・・」
「お?」
「お前以外からのチョコが何個もあるよりも、お前からのチョコひとつだけの方が
嬉しいんだよ!」
浪馬がそう言った瞬間、七瀬の顔が真っ赤に染まる。
「・・・!」
「・・・以上だ!何か言う事は?」
こちらも、我ながらクサイ事を言ったなどと、赤面中の浪馬。
テレを隠すために、自然と声が大きくなる。
そんな浪馬に、顔を真っ赤にした七瀬が、少し俯きながら答える。
「・・・ない・・・」
その顔は、恥ずかしさ半分、嬉しさ半分といった感じだろうか。
「(織屋君が嬉しいって!私以外の女の子からのは要らないって!嬉しい!
こんな幸せな事、夢じゃないの!?いいえ!これは現実よ!だって、さっき
まで、デートしてたんだし!これは現実なのよ!・・・でも、万が一、夢だった
ら・・・!そうだ!彼に気付かれないよう、どこかを抓ってみようかしら!?)」
そんなことを考えている七瀬に、まだテレの残っている浪馬が訊ねた。
「と、ところで、どんなのなんだ?」
「・・・えっ!?」
トリップから引き戻された七瀬には、質問の意味が理解できなかった様子。
そんな七瀬に、再び同じ質問をする浪馬。
「だから、どんなのなんだ?これ」
「あ、ああ、チョコ?」
少し狼狽しながらも、答える七瀬。
「い、一応、自分で作ってみたの」
「手作りか!」
「そうよ」
「へぇ、んじゃ、七瀬の手作りチョコ、食べさせていただきますか!」
「ど、どうぞ」

126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/14(火) 00:02:30 ID:???
「綺麗にラッピングしてて、開けるのがもったいないな」
ラッピングされた箱を色々な角度から見ながら、浪馬が言う。
七瀬は、浪馬の様子を満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに見つめている。
「あなたのために作ったんだから、気にしなくていいわよ」
上機嫌の七瀬がそう言ったが、浪馬は丁寧にラッピングされたチョコを慎重に開けていく。
箱を開けると、几帳面に並べられた二種類のチョコが交互に並べられていた。
「おお~!」
思わず、声をあける浪馬。
浪馬の様子を見ていた七瀬は、先程までの嬉しそうな表情から、少し緊張したような表情になっている。
「ミルクとビターを作ったんだけど・・・」
「へぇ~」
「どっちがどっちだ?」
「そっちのまん丸の方がミルクで、こっちの楕円の方がビターよ」
「んじゃ、ミルクから・・・『あ~ん』!」
そう言うと、チョコの入った箱をを七瀬の方に持って行き、浪馬が大きく口を開けた。
「・・・えっ?」
七瀬は、浪馬の意図するところが理解できないようだ。
すると、浪馬がもう一度催促するように大きく口を開けながら言った。
「だから、『あ~ん』!」
「ひょっとして・・・」
「うん。お前の想像通りだと思うぞ?」
ニヤニヤと笑いながら、浪馬が答える。
その言葉を聞いた七瀬の頬が赤く染まる。
「・・・あ、『あ~ん』・・・」
頬を染め、そう言いながら、七瀬は、浪馬の口にスッとチョコを持って行った。
チョコが口に入った事を確認すると、口をモゴモゴと動かし出した。
チョコを食べる浪馬の様子をジッと見つめる七瀬。
「うん!うまい!変に甘すぎなくて、うまいぞ!これ!」
ニッコリと微笑みかけながら、浪馬が答える。
浪馬の答えが嬉しかったのか、七瀬の表情も一気に明るくなった。
「そう?よかった!」

127 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/14(火) 00:04:01 ID:???
「んじゃ、次は、ビターを・・・」
浪馬がそう言うと、七瀬の頬が、またも赤くなる。
「・・・こっちも?」
「当然!『あ~ん』!」
「も、もう!」
「『あ~ん』!」
「お?こっちもうまい!」
「そ、そう?よかった!」
先程と全く同じ事を繰り返す二人。
「そう言えば、味見してないのか?」
「だ、だって、あなたのためだけに作ったんだもの」
「嬉しい事言ってくれるな。んじゃ、食べてみろよ」
「え?いいわよ、そんな・・・」
「遠慮するなって!自分が作ったんだろ?」
「で、でも・・・」
「いいから!ほら!『あ~ん』!」
「えっ?ちょ、ちょっと・・・」
さっきは頬だけだったが、今度は耳まで真っ赤になる。
そんな七瀬の様子などお構い無しに、チョコを摘み上げた浪馬の指が近づいてくる。
「ほれ!『あ~ん』!」
「ちょ、ちょっと、恥ずかしいわよ・・・」
「誰も見てないんだし、ほら!恥ずかしいなら、目を閉じればいいじゃないか」
「・・・あ、あ~ん」
浪馬の言葉に、素直に目を閉じながら、七瀬は口を開けた。
チョコが入ってくるのを待っていたが、チョコは入って来ず、かわりに何か柔らかいものが
七瀬の唇に触れ、その直後に口の中にチョコが入れられた。
「!?」

128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/14(火) 00:04:45 ID:???
何がおこったのか分からない七瀬が、閉じていた目を開けると、悪戯っぽく笑った浪馬が七瀬を見ていた。
「へっへっへっ!去年のお返しだ!」
「・・・も、もう!」
それだけ言うと、七瀬は人差し指で、自分の唇をなぞった。
浪馬の方は、まだ悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「どうだ?自分で作ったチョコの味は?」
「少し、苦い・・・」
「ま、ビターだしな。んじゃ、次はミルクだな。ほら『あ~ん』」
浪馬の言葉に、慌てて目を閉じ、口を開ける。
しかし、今度は唇に触れる柔らかい感触はなく、チョコが口に入れられただけ。
「どうだ?」
「甘いけど・・・」
少しムッとしながら、浪馬の質問に答えつつ、次の言葉が自然と口をついた。
「なぜ今度は、口移しじゃないのよ・・・」
出来るだけ小さな声で、浪馬に聞こえないように、ボソッと言い放つ。
「へっ?」
七瀬の言った言葉がよく聞き取れなかったように、浪馬が聞き返す。
「・・・!な、なんでもない!」
七瀬は慌ててごまかしたが・・・。
「なんだ?口移しの方がよかったのか?」
「き、聞こえてたの!?」
「ま、これだけ近くに居るんだからな」
そう言った浪馬の顔には、先程までと同じ笑みが浮かんでいた。
「・・・」
「んじゃ、仕切り直しだ。ほら」
そう言うと、チョコを自分の口に浅く咥え、七瀬に顔を近づける。
慌てて、目を閉じる七瀬。
「・・・ん」
浪馬の唇が七瀬の唇に触れた瞬間、吐息だけを残し、部屋の中に沈黙が訪れる。
さっきより長いその行為は、口移しではなく、キスそのものだった。
「どうだ?」
長いキスの後、浪馬が聞く。
「・・・さっきのより甘い・・・」
それだけ言うと、七瀬は甘えるように、浪馬の方へと体を寄せた。