171 名前:休日の高遠家 居間 午後のティータイム[sage] 投稿日:2006/02/25(土) 00:51:17 ID:???
七瀬(もうすぐホワイトデーね。織屋君は期待してくれって言ってたわ。ああ・・・待ちどうしい)
ママン「ナナちゃん、最近ボーっとしてばかりね。何かあったの?」
七瀬「べ、別に。なんでもないわよ。母さんこそ最近いつにもましてぽややんとしてない?」
ママン「あら、そうかしら」
七瀬「母さんはのんびりしすぎなのよ。もう少ししっかりして頂戴。いい年なんだから」
ママン(でも織屋君はこの前『おばさんって若く見えるし、癒し系ですよね』と誉めてくれたもん)
(それにバレンタインにチョコケーキ持って行ったら、ちゃんと受け取ってくれたもの)
七瀬「ねえ、なに一人でニコニコしてるのよ?」
ママン「え? な、なんでもありませんよ」
七瀬「ふーん、どうだか」
二人は黙ってカップを手に取った。
七瀬(織屋君、何をしてくれるのかしら?)(織屋君のことだから、またいやらしいこと考えてるんじゃ・・・)
(ホントエッチなんだから、でもあの悪戯っぽい瞳で迫られると、私、全然抵抗できないのよね)
(あの目で見つめられると、それだけで私・・・・私・・・・・・・・・)
(う、うん・・・ホワイトデーはあなたにいっぱいイタズラして欲しい・・・・)
(ホントエッチなんだから、でもあの悪戯っぽい瞳で迫られると、私、全然抵抗できないのよね)
(あの目で見つめられると、それだけで私・・・・私・・・・・・・・・)
(う、うん・・・ホワイトデーはあなたにいっぱいイタズラして欲しい・・・・)
ママン(そうだわ。ホワイトデーのお返しを持ってきたら、今後は私をお義母さんと呼ぶように言おうかしら)
(織屋君、きっとすっごく困るわよね)(ちょっと可哀想かしら?)(でも・・・・・・)
(織屋君の困った顔ってとっても可愛いの♪)(織屋君、早くナナちゃんのお婿さんになって頂戴)
(そしたら私、毎日あなたを困らせて、あの可愛い顔をいっぱい見られるわ・・・・・)
(織屋君、きっとすっごく困るわよね)(ちょっと可哀想かしら?)(でも・・・・・・)
(織屋君の困った顔ってとっても可愛いの♪)(織屋君、早くナナちゃんのお婿さんになって頂戴)
(そしたら私、毎日あなたを困らせて、あの可愛い顔をいっぱい見られるわ・・・・・)
運命の相手を見つけた娘と娘の恋人がすっかり気に入った母。二人の口から同時に小さな呟きが漏れた。
二人「あぁぁん・・・・織屋君・・・・・・♪」
二人「あぁぁん・・・・織屋君・・・・・・♪」
182 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/02/27(月) 20:35:16 ID:???
「じゃあ15分休憩ね。その後は、いつも通り今日勉強した内容のテストよ」
「うぅ・・・七瀬、おまえって本当に厳しいよな」
「あなたの為なんだから、少しくらい我慢しなさい」
卒業後の3月。浪人となった浪馬の元に、七瀬は毎日やってきては勉強をみていた。
「織屋君、時間よ」
「頼む。あと五分休憩させてくれ。頭がまだボーっとしてんだよ」
「本番の試験ではそんな泣き言通用しないわよ。ほら、早く始めなさい」
「うぅ・・・」
「今日のテストで7割以上正解したら、ごほうびをあげるから頑張りなさい」
「ごほうび?」
「クリアできたら今夜からここに泊まって、春休み中あなたの面倒をみてあげるわ」
「ほ、ほんとうかよ?」
「ええ。食事の用意も、お洗濯も。朝はキスで起こしてあげる、うふふふ♪」
「な、なんだかやる気がふつふつと湧いてきたぜ」
「その代わりクリアできなかったらお仕置きですからね」
「げっ? ど、どんなお仕置きだ?」
「今夜から二十四時間体制であなたに猛勉強させるわ」
「二十四時間体制?」
「そう。ここに泊り込んでずっとあなたを監視するの。勉強をサボらないように」
「え?」
「炊事洗濯、その他の事も全部私がやって、あなたを勉強だけに専念させるわ」
「・・・・・・・・・」
「わかったらさっさとテストを始めなさい」
「お、おう・・・・・・」
「頼む。あと五分休憩させてくれ。頭がまだボーっとしてんだよ」
「本番の試験ではそんな泣き言通用しないわよ。ほら、早く始めなさい」
「うぅ・・・」
「今日のテストで7割以上正解したら、ごほうびをあげるから頑張りなさい」
「ごほうび?」
「クリアできたら今夜からここに泊まって、春休み中あなたの面倒をみてあげるわ」
「ほ、ほんとうかよ?」
「ええ。食事の用意も、お洗濯も。朝はキスで起こしてあげる、うふふふ♪」
「な、なんだかやる気がふつふつと湧いてきたぜ」
「その代わりクリアできなかったらお仕置きですからね」
「げっ? ど、どんなお仕置きだ?」
「今夜から二十四時間体制であなたに猛勉強させるわ」
「二十四時間体制?」
「そう。ここに泊り込んでずっとあなたを監視するの。勉強をサボらないように」
「え?」
「炊事洗濯、その他の事も全部私がやって、あなたを勉強だけに専念させるわ」
「・・・・・・・・・」
「わかったらさっさとテストを始めなさい」
「お、おう・・・・・・」
(あれ? どっちにしてもここに泊り込んで面倒を見てくれるってことか?)
浪馬はテストに向かいつつ、しきりに首を捻った。
(な、なんだか恐ろしく恵まれた浪人生活の様な気がするぜ)
浪馬はテストに向かいつつ、しきりに首を捻った。
(な、なんだか恐ろしく恵まれた浪人生活の様な気がするぜ)
199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/04(土) 01:00:15 ID:???
桃の節句で振袖を着たから是非見て欲しい。七瀬にそう言われて初めて高遠家の敷居を跨いだ
浪馬は、ママンの猛烈な歓待っぷりに目を白黒させた。下にもおかずとはこの事だろう。
ママン「どう? 織屋君のお口に合うかしら?」
浪馬「はい、すごく美味しいです。手料理なんて久しぶりですし」
ママン「あなた一人暮らしなのよね? ご飯はどうしてるの?」
浪馬「えーっと、レトルトとか外食とか・・・まあ、そんな感じです」
ママン「まあ、それじゃ栄養が偏らない?」
浪馬「うーん、一応バランスには気を使ってるつもりですけど・・・・」
ママン「ねえ、織屋君。良かったら毎晩うちにご飯食べにきたらどう?」
浪馬「え?」
ママン「ナナちゃんの大切な人が苦労してるのを見過ごせないわ」
七瀬「か、母さん! いきなり何言い出すのよ!」
ママン「それともいっそうちで暮らすのはどうかしら?」
七瀬「母さんっっ!!」
ママン「うふふふ、冗談よ♪」
浪馬「あ・・・・・・・あ、あははは・・・」(さっきの目は本気だったぞ)
浪馬「はい、すごく美味しいです。手料理なんて久しぶりですし」
ママン「あなた一人暮らしなのよね? ご飯はどうしてるの?」
浪馬「えーっと、レトルトとか外食とか・・・まあ、そんな感じです」
ママン「まあ、それじゃ栄養が偏らない?」
浪馬「うーん、一応バランスには気を使ってるつもりですけど・・・・」
ママン「ねえ、織屋君。良かったら毎晩うちにご飯食べにきたらどう?」
浪馬「え?」
ママン「ナナちゃんの大切な人が苦労してるのを見過ごせないわ」
七瀬「か、母さん! いきなり何言い出すのよ!」
ママン「それともいっそうちで暮らすのはどうかしら?」
七瀬「母さんっっ!!」
ママン「うふふふ、冗談よ♪」
浪馬「あ・・・・・・・あ、あははは・・・」(さっきの目は本気だったぞ)
その後もしきりと酒を飲ませようとしたり、風呂に入れと勧めたりするママンに浪馬はホトホト
困ったが、その度に七瀬の激しいツッコミが炸裂し、とりあえず無事に家に戻ることができた。
困ったが、その度に七瀬の激しいツッコミが炸裂し、とりあえず無事に家に戻ることができた。
浪馬(あのまま七瀬の家に泊まりでもしたら、二度と帰して貰えなりそうな勢いだったな)
(そりゃ俺だって、七瀬と暮らせる日が来ればいいなと思ってるけど、今はまだ早すぎるぜ)
(しかしお袋さん、いったい俺のどこが気に入ったんだろ?)
(いい人なんだけど、何考えてるのかよくワカンナイ人だよな)
(そういえばお土産まで貰ったんだっけ・・・この感じは食い物かな?)
(そりゃ俺だって、七瀬と暮らせる日が来ればいいなと思ってるけど、今はまだ早すぎるぜ)
(しかしお袋さん、いったい俺のどこが気に入ったんだろ?)
(いい人なんだけど、何考えてるのかよくワカンナイ人だよな)
(そういえばお土産まで貰ったんだっけ・・・この感じは食い物かな?)
ママンから手渡された包みを開けると、浪馬が予想したとおり夕食でご馳走になったママンの手料理
がぎっしりと詰まっていた。
浪馬(本当に親切な人だ。お陰で明日は朝からご馳走だな・・・・・・ん? なんだこれ?)
包みの一番下にキラリと光るそれを浪馬は不思議そうに見つめた。
浪馬(鍵? な、なんの鍵だ? あ、メモも入ってる・・・・なになに・・・・・・なぬ―――――っ?!)
がぎっしりと詰まっていた。
浪馬(本当に親切な人だ。お陰で明日は朝からご馳走だな・・・・・・ん? なんだこれ?)
包みの一番下にキラリと光るそれを浪馬は不思議そうに見つめた。
浪馬(鍵? な、なんの鍵だ? あ、メモも入ってる・・・・なになに・・・・・・なぬ―――――っ?!)
一読した途端、浪馬の体が雷に撃たれたように跳ね上がった。手からメモがはらりと落ちた。
『織屋君へ あなたにこれを渡しておきます いつでも使ってね うちの合鍵よ』
メモにはそう書いてあった。
『織屋君へ あなたにこれを渡しておきます いつでも使ってね うちの合鍵よ』
メモにはそう書いてあった。
202 名前:こんな後日談はどうか[sage] 投稿日:2006/03/05(日) 02:59:30 ID:???
浪馬「これ返しにきたんです。好意はありがたいんですが、さすがにちょっと・・・・」
パパン「妻が渡したんだね。それなら構わない。君が持っていてくれたまえ」
翌日、鍵を持って高遠家に向かった浪馬を玄関で出迎えたのは七瀬の父だった。
浪馬「これ返しにきたんです。好意はありがたいんですが、さすがにちょっと・・・・」
パパン「妻が渡したんだね。それなら構わない。君が持っていてくれたまえ」
翌日、鍵を持って高遠家に向かった浪馬を玄関で出迎えたのは七瀬の父だった。
浪馬「好意はありがたいんですが、恐れ多いです。俺、赤の他人ですから」
パパン「まあまあ、そう言わずに」
浪馬「いえ、やっぱりダメです。俺にはまだこれを受け取る資格はありません」
パパン「頼むから受け取ってくれ。私がこれを妻に渡したら大変なことになる」
浪馬「え?」
パパン「間違いなく拗ねる。そうなったら最後だよ」
浪馬「はあ」
パパン「妻は拗ねるとね、部屋に引き篭ってシクシクと泣くんだ」
浪馬「子供みたいな・・・ちょっと可愛らしい拗ね方ですね」
パパン「可愛い? 恐ろしいの間違いだよ」
浪馬「と、いいますと?」
パパン「ごはんを一切食べなくなるんだ」
浪馬「ハンガーストライキみたいなものですか?」
パパン「命がけのね」
浪馬「命がけ?」
パパン「私との結婚をお爺ちゃん、つまり父親に反対された時は餓死寸前まで続けたよ」
浪馬「は?」
パパン「最後はお爺ちゃんが青くなって、『結婚を許す。だから飯を食ってくれ』と土下座したんだ」
浪馬「・・・・・・・」
パパン「実は七瀬と君の交際に、最初私がいい顔をしなかった時も三日間ほど絶食されてね、はははは」
浪馬「・・・・・・・」
パパン「君がこれを返したら、間違いなくやると思うよ」
浪馬「・・・・・・・」
パパン「だから妻の命を助けると思って、受け取ってくれないか? 頼むよ、織屋君」
パパン「まあまあ、そう言わずに」
浪馬「いえ、やっぱりダメです。俺にはまだこれを受け取る資格はありません」
パパン「頼むから受け取ってくれ。私がこれを妻に渡したら大変なことになる」
浪馬「え?」
パパン「間違いなく拗ねる。そうなったら最後だよ」
浪馬「はあ」
パパン「妻は拗ねるとね、部屋に引き篭ってシクシクと泣くんだ」
浪馬「子供みたいな・・・ちょっと可愛らしい拗ね方ですね」
パパン「可愛い? 恐ろしいの間違いだよ」
浪馬「と、いいますと?」
パパン「ごはんを一切食べなくなるんだ」
浪馬「ハンガーストライキみたいなものですか?」
パパン「命がけのね」
浪馬「命がけ?」
パパン「私との結婚をお爺ちゃん、つまり父親に反対された時は餓死寸前まで続けたよ」
浪馬「は?」
パパン「最後はお爺ちゃんが青くなって、『結婚を許す。だから飯を食ってくれ』と土下座したんだ」
浪馬「・・・・・・・」
パパン「実は七瀬と君の交際に、最初私がいい顔をしなかった時も三日間ほど絶食されてね、はははは」
浪馬「・・・・・・・」
パパン「君がこれを返したら、間違いなくやると思うよ」
浪馬「・・・・・・・」
パパン「だから妻の命を助けると思って、受け取ってくれないか? 頼むよ、織屋君」
結局、浪馬は大人しく鍵を持って帰ったという。
227 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 05:56:46 ID:???
3月7日、卒業式の日。
卒業式は滞りなく進行し、私達は無事学園を卒業した。
友人や執行部の皆としばし別れを惜しんだ後、
私は校門である人を待ちながら、一人物思いに耽っていた。
(この三年間色々なことがあったわね…)
これまでの三年間に思いをはせていると、ふと織屋君の顔が脳裏に浮かんだ。
(そうね、彼との出会いが一番の出来事だったわ)
(最初は彼が何か悪戯する度に私に注意されて…)
(お互いに良い印象は持っていなかったわね)
当時のことを思い出し、ふふっと笑みがこぼれてしまう。
(でも、私に冷たくされても毎日のように私に話しかけてきて…)
(彼の意外な一面を知ったりして彼を見る目が変わっていった)
(最初はデートはしつこく誘ってくるから仕方なく、という感じだったのに)
(いつの間にかデートが楽しみになってたりして…)
(そして、あの出来事から私と彼の関係は変わり始めた)
これまでの三年間に思いをはせていると、ふと織屋君の顔が脳裏に浮かんだ。
(そうね、彼との出会いが一番の出来事だったわ)
(最初は彼が何か悪戯する度に私に注意されて…)
(お互いに良い印象は持っていなかったわね)
当時のことを思い出し、ふふっと笑みがこぼれてしまう。
(でも、私に冷たくされても毎日のように私に話しかけてきて…)
(彼の意外な一面を知ったりして彼を見る目が変わっていった)
(最初はデートはしつこく誘ってくるから仕方なく、という感じだったのに)
(いつの間にかデートが楽しみになってたりして…)
(そして、あの出来事から私と彼の関係は変わり始めた)
それは秋のある日の事。
私が煙草のポイ捨てをした連中を注意したところ、
襲われそうになってしまったことがあった。
そんなところを助けてくれたのが…彼だった。
私が煙草のポイ捨てをした連中を注意したところ、
襲われそうになってしまったことがあった。
そんなところを助けてくれたのが…彼だった。
思わず憎まれ口を叩いた私に対して彼は、
私の頬を叩いて「もっと自分を大切にしろ」と言ってくれた。
(そして、「お前は見た目がいい」とも言われて)
(急に私の胸がどきどきしてしまって…)
(私は素直にお礼を言うことが出来なかった)
私の頬を叩いて「もっと自分を大切にしろ」と言ってくれた。
(そして、「お前は見た目がいい」とも言われて)
(急に私の胸がどきどきしてしまって…)
(私は素直にお礼を言うことが出来なかった)
翌日のデートで、私は彼にお礼を言えなかったことを謝った。
彼はそんな私を笑って許してくれた。
(許してくれた時、私はとても嬉しかった)
(…このときにはもう、私は恋に落ちてしまっていたのね)
彼はそんな私を笑って許してくれた。
(許してくれた時、私はとても嬉しかった)
(…このときにはもう、私は恋に落ちてしまっていたのね)
その後…私と織屋くんはキスをして、愛し合うようになって…
恋人になった記念にプリクラを撮ったり、勧められてお酒を飲んでみたり。
クリスマスイヴに植物園に行ったり、一緒に初詣に行ったり。
彼の部屋で色々とエッチな事をしたり―
ふと彼とエッチした時のことを思い出し、私は思わず顔が熱くなるのを感じた。
(もう…私がこんなにエッチになってしまったのも織屋くんのせいなんだから)
(責任、とってもらわないとね…ふふっ)
恋人になった記念にプリクラを撮ったり、勧められてお酒を飲んでみたり。
クリスマスイヴに植物園に行ったり、一緒に初詣に行ったり。
彼の部屋で色々とエッチな事をしたり―
ふと彼とエッチした時のことを思い出し、私は思わず顔が熱くなるのを感じた。
(もう…私がこんなにエッチになってしまったのも織屋くんのせいなんだから)
(責任、とってもらわないとね…ふふっ)
228 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 05:58:13 ID:???
「おーい、七瀬!」
そんなことを考えていると、私を呼ぶ声が聞こえた。
その声に振り向くと、織間くんがこっちに走って向かってくる姿が見える。
「あ…織屋くん」
「はぁはぁ…悪い、待たせちまったな」
「ううん、気にしないで」
「七瀬、卒業おめでとう」
「ありがとう…織屋くんも、卒業おめでとう」
そう言って私達は校舎の方を暫く眺めていた。
「おーい、七瀬!」
そんなことを考えていると、私を呼ぶ声が聞こえた。
その声に振り向くと、織間くんがこっちに走って向かってくる姿が見える。
「あ…織屋くん」
「はぁはぁ…悪い、待たせちまったな」
「ううん、気にしないで」
「七瀬、卒業おめでとう」
「ありがとう…織屋くんも、卒業おめでとう」
そう言って私達は校舎の方を暫く眺めていた。
「…ねぇ」
「ん?」
「大事な話って…何かしら?」
私が織屋君を待っていた理由。
それは、昨日デートして分かれる時に卒業式の後に大事な話があると言われていたからだった。
「…俺、七瀬の行く大学を受験することにした」
「え…本気…なの?」
突然の話に思わず漏れた私の本音に苦笑しつつも、彼は頷く。
「…理由、聞いてもいいかしら」
「七瀬とまた一緒にキャンパスライフを送りたいから」
「!」
彼の言葉が嬉しくて、また私の顔が熱くなっていくのを感じる。
「…そ、それだけ?」
「それだけ」
「はぁ…あなたらしいわね」
私は小さくため息をついた。
「もう一度聞くけど、本当に受験する気なのね?」
「ああ」
私の問いに彼は力強く頷いた。
「わかったわ…善は急げよ、早速行きましょう」
「えっ、どこに?」
「私の家よ…私が使ってた参考書取りにいかないと」
「…今日から勉強するのか?」
「当たり前じゃない、こうなったら一日でも無駄にできないわ」
「わかったよ…それじゃ、行こうか」
そう言って彼は私に手を差し出した。
「ええ」
私はその手を取り、私達は一緒に歩き出す。
二人で歩んでいく道は平坦ではないでだろうけれど。
この人となら…きっとどこまでも行ける―
「ん?」
「大事な話って…何かしら?」
私が織屋君を待っていた理由。
それは、昨日デートして分かれる時に卒業式の後に大事な話があると言われていたからだった。
「…俺、七瀬の行く大学を受験することにした」
「え…本気…なの?」
突然の話に思わず漏れた私の本音に苦笑しつつも、彼は頷く。
「…理由、聞いてもいいかしら」
「七瀬とまた一緒にキャンパスライフを送りたいから」
「!」
彼の言葉が嬉しくて、また私の顔が熱くなっていくのを感じる。
「…そ、それだけ?」
「それだけ」
「はぁ…あなたらしいわね」
私は小さくため息をついた。
「もう一度聞くけど、本当に受験する気なのね?」
「ああ」
私の問いに彼は力強く頷いた。
「わかったわ…善は急げよ、早速行きましょう」
「えっ、どこに?」
「私の家よ…私が使ってた参考書取りにいかないと」
「…今日から勉強するのか?」
「当たり前じゃない、こうなったら一日でも無駄にできないわ」
「わかったよ…それじゃ、行こうか」
そう言って彼は私に手を差し出した。
「ええ」
私はその手を取り、私達は一緒に歩き出す。
二人で歩んでいく道は平坦ではないでだろうけれど。
この人となら…きっとどこまでも行ける―
229 名前:三姉妹物語「ナナミ、ナナカ、ナナエ」[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 05:59:50 ID:???
朝食。
七海「パパ、今日帰り遅いの?・・・寂しい・・・」
浪馬「そうだな。七海は生徒会でもあんまり遅くなるなよ。危ないからな」
七夏「お父様。新聞です」
浪馬「ありがとう、七夏。でも、家にいる時くらい伊達メガネは外そうな。引き締まるのはわかるけど」
七恵「・・・」
浪馬「七恵はだっこか。ほら、おいで」
こうして浪馬の朝は三姉妹の世話に追われる。
七瀬「・・・」
夜はもう一人の世話に追われるのだが。
夜はもう一人の世話に追われるのだが。
仮名三姉妹で書いちゃったごめんなさいorz
230 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 07:07:11 ID:???
七瀬の野望…それは、一生、自分一人を見つめてもらうことだった。
だが、子煩悩な浪馬から『子供が欲しい』と言われ、自分でもまぁいいかと思った結果、子供を授かった。
七瀬の野望…それは、一生、自分一人を見つめてもらうことだった。
だが、子煩悩な浪馬から『子供が欲しい』と言われ、自分でもまぁいいかと思った結果、子供を授かった。
一人目は女の子だった。
それはそれは母親に似て利発そうな子だったが、浪馬にべったりのお父さん子だった。
それはそれは母親に似て利発そうな子だったが、浪馬にべったりのお父さん子だった。
浪馬を取られたくないので、もう子供はいいかと思っていると、浪馬から
『子供が一人っ子では可哀想だ』といわれ、なし崩しで…結果、女の子だった。
ちょっぴり寂しがりやだけど何事も頑張る責任感の強い子だった。
むろん浪馬にべったりのお父さん子だった。
『子供が一人っ子では可哀想だ』といわれ、なし崩しで…結果、女の子だった。
ちょっぴり寂しがりやだけど何事も頑張る責任感の強い子だった。
むろん浪馬にべったりのお父さん子だった。
これ以上ライバルを増やしてたまるかと考えたが、逆に弟が生まれればそっちに注意が向くはずと考えた。
ならばもう1人と頑張った結果…女の子だった。
甘えん坊のお父さん子で、できるかぎりお父さんのそばにいないと気がすまない子だった。
ならばもう1人と頑張った結果…女の子だった。
甘えん坊のお父さん子で、できるかぎりお父さんのそばにいないと気がすまない子だった。
そして>>229な日常生活に繋がっていくのでした…
235 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 17:15:55 ID:???
七瀬「体に気をつけてね・・・」
浪馬「ん」
七瀬「生水、飲んじゃだめよ?」
浪馬「ん」
七瀬「電話・・・してね・・・」
浪馬「わかってる」
七瀬「メールでもいいから・・・」
浪馬「うん」
七瀬「・・・やっぱり・・・いや!」
浪馬「・・・」
七瀬「あなたと離れるのは・・・いや!」
浪馬「七瀬・・・」
七瀬「ねえ・・・?どうして?どうしてなの・・・?」
浪馬「仕方が無いんだよ・・・」
七瀬「仕方が無い・・・・・・」
浪馬「・・・」
七瀬「そうよね・・・わがまま言って、ごめんなさい・・・」
浪馬「いや、俺の方こそ・・・」
七瀬「でも、私の事、忘れないでね?」
浪馬「忘れるわけないだろ!」
七瀬「織屋君・・・!!」
浪馬「七瀬・・・」
たまき「あれ?あそこにいるのって、浪馬クンと高遠さんじゃないの?」
刃「ん?そう言や、浪馬のヤツ、合宿で免許を取りに行くって言ってたな」
望「それの見送りかな?」
刃「だろうな」
たまき「その割には、最後の別れみたいなんだけど・・・」
刃「いいから、他人のフリしとこう・・・」
望「・・・そ、そうだね・・・」
刃「ん?そう言や、浪馬のヤツ、合宿で免許を取りに行くって言ってたな」
望「それの見送りかな?」
刃「だろうな」
たまき「その割には、最後の別れみたいなんだけど・・・」
刃「いいから、他人のフリしとこう・・・」
望「・・・そ、そうだね・・・」
236 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 18:01:22 ID:???
「お、おい」
「お、おい」
確かに2人っきりだったとは言え、急に背中から腕を回された浪馬は声を震わせた。
「部屋の電球を交換したいけど届かないの・・・お願い、私の部屋に来て・・・」
そう言われて誘われたのだった。
もちろん彼女ももう子供じゃない。自分で十分取替えくらいできるだろう。
だが無碍にも出来ずつい浪馬は彼女の部屋に足を運んでしまっていた。
もちろん彼女ももう子供じゃない。自分で十分取替えくらいできるだろう。
だが無碍にも出来ずつい浪馬は彼女の部屋に足を運んでしまっていた。
「いや・・・こんなチャンス滅多にないのに・・・」
そう言うと頬がくっつきそうになるまでしなだれかかった。
だが肝心の浪馬はイマイチ乗り気じゃなさそうだ。
それに気付いたのかちょっぴり頬を膨らませ更に自慢の胸を押し当てる。
だが肝心の浪馬はイマイチ乗り気じゃなさそうだ。
それに気付いたのかちょっぴり頬を膨らませ更に自慢の胸を押し当てる。
「最近ちっとも私の部屋に来てくれなかったね・・・」
「そ、それは・・・」
「あの人のこと・・・考えたでしょ?」
「!?そ、そりゃあ・・・」
「やっぱりパパには検事は無理ね。」
くすくすっと笑うと腕を離して浪馬に背中を向けた。
「だってすぐ顔に出ちゃうもの。『人情家の織屋弁護士』は『鬼の織屋』とは大違いね?」
鬼の織屋
無論浪馬の妻、七瀬の二つ名である。
無論浪馬の妻、七瀬の二つ名である。
「ね、パパ・・・?」
くるりと振り返る。
「な、なんだ?」
「私がパパって呼ぶようになってからどれくらい経つかしら?」
「そ、そうだな・・・えーと・・・」
だが答えを聞くまでもなく彼女は言葉を続けた。
「いつになったら・・・私と結婚してくれるの?」
潤んだ瞳で上目遣いに訴えられ浪馬の肩がぴくんと跳ね上がった。
237 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 18:02:28 ID:???
「だからそれは・・・」
「だからそれは・・・」
「パパにはいっぱいお小遣いももらったしプレゼントだってしてもらったわ・・・」
「な、何か欲しいものでも出来たのか?」
そんな浪馬に彼女は首を振る。
「私が欲しいのは・・・」
そう言ってさりげなく左手の薬指を撫でた。
「ゆ、指輪ならこの間買ってあげただろ?」
「あれはただのペアリングだもの。私が欲しいのは!」
今度は正面から抱きついた。
浪馬も邪険にはできないしするはずもない。
そっと背中に手を回した。
浪馬も邪険にはできないしするはずもない。
そっと背中に手を回した。
「私が欲しいのはパパなの・・・パパだって」
ああ、またあの約束を持ち出されるのか。
つい浪馬は目を閉じる。
つい浪馬は目を閉じる。
「パパだってちゃんとこの間ちゃんと約束してくれたじゃない。私と結婚してくれるって。」
「い、いや、だからそれは・・・ほ、ほら」
彼女はここが正念場、と攻めの手を休めない。
「後どれだけ待てば良いの?」
だが一向に浪馬の態度は煮え切らない。
彼の全てが好きな彼女だったがこの部分だけは少々不満でもある。
例えそれが彼の優しさからきてると知ってはいても、だ。
彼の全てが好きな彼女だったがこの部分だけは少々不満でもある。
例えそれが彼の優しさからきてると知ってはいても、だ。
「私だってもう子供じゃないわ。結婚がどんな事だか十分理解してるし覚悟もあるもの。」
それに、と続ける。
「慰謝料なら私も頑張って一緒に払っていくから。ね?」
238 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 18:03:37 ID:???
すぱぱーーん
軽快なハリセンの音が部屋に響く。
すぱぱーーん
軽快なハリセンの音が部屋に響く。
「いったーーい、もう誰よ邪魔する・・・の、は・・・」
振り返った七夏の視線の先には金棒ならぬ特性ハリセンを手にした鬼の織屋・・・いや、織屋七瀬が立ってい
た。
「あ、あら、ママ」
さすがに状況が飲み込めたのか七夏の表情も引きつる。
「どこに親の離婚をしきりに勧める娘がいますか~~!!」
さすが法廷に鳴り響く『鬼の織屋』
その迫力に七夏も「ここにいます」とはとても言えない。
その迫力に七夏も「ここにいます」とはとても言えない。
「だ、大丈夫よ、ちゃんと娘としてママのお世話はしてあげるつもりでいるから」
「どこの世界に娘と再婚した夫のお世話になる妻がいるって言うのよ!」
「そこはほら、ママお得意の『過去の判例』とやらを探して・・・」
「そんな判例なんか探すまでもないわよっ!」
「ほ、ほらパパも同級生の女より年下のほうが良いに決まってるわよ・・・」
「私とパパは同い年のまま一生連れ添うから良いのよ!そうよねパパ?」
「あ、ああ、そうだな。」
急に振られたが浪馬も何とか答える。
「パパっ、女房とたたみは新しいものに限るって言うんでしょ?」
「あ、ああ、確かにそういう言葉もあるなあ。」
「ほら、やっぱり」
「なに頷いてんのよパパ!」
「ぐ、ぐえぇ、俺はただそう言う言葉があるって頷いただけで」
完璧にチョークにはいる七瀬の腕を慌てて七夏が止めに入る。
「止めてよっパパが可愛そうでしょ!」
239 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 18:04:11 ID:???
「元はといえば七夏が変なこと言うからでしょ?
結婚の約束も何もあんたが4歳の頃の話じゃない。何がこの間、よ!」
「元はといえば七夏が変なこと言うからでしょ?
結婚の約束も何もあんたが4歳の頃の話じゃない。何がこの間、よ!」
「この間が何年以内、とかそういう定義があるなんて聞いたことないわ!」
「だからって結婚できるわけないでしょ!自分の年を考えなさい」
「なんでよ!私もう結婚できる年齢よ!」
「先週17になったばかりでしょ!」
「16歳以上なら結婚できるしそれでも1年・・ううん、約束から13年も待ったのよ!」
「はっはーーん、残念でした。未成年は親の同意なしには結婚できないのよ!」
自慢げに胸を逸らしそれ見たことか、と得意げな七瀬に娘の追撃は容赦しない。
「それくらい知ってるわよ!だからパパとの結婚が決まったら同意してくれたら良いじゃない」
「ど、同意するわけないでしょ!」
「それになにがはっはーーん、よ。自分こそ年齢を考えたら?」
「な、なんですって!ママはまだ37よ、若手美人検事だって有名なんだからね」
「なによ、私より20も年上じゃない。それに美人よりも『鬼の織屋』で有名じゃないの」
龍虎相打つ。
2人の間でばちばちと火花が飛び散る。
2人の間でばちばちと火花が飛び散る。
「今日と言う今日は覚悟なさい!」
「望むところよママ」
240 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 18:05:01 ID:???
6畳の部屋の中で女性とは言え2人で暴れたらさすがに狭い。
ハア、とため息をついた浪馬は袖をくいくいと引っ張られる。
6畳の部屋の中で女性とは言え2人で暴れたらさすがに狭い。
ハア、とため息をついた浪馬は袖をくいくいと引っ張られる。
「ん?」
振り返ると次女の七海が口に指をしっとあてこっちこっち、と部屋の外に手招いた。
静かに部屋のドアを閉め隣の自分の部屋に連れてきた。
静かに部屋のドアを閉め隣の自分の部屋に連れてきた。
「パパ大変だったね。」
「はは、まったくだよ。」
娘にそう言われては苦笑いするしかない。
「ほんとママも大人気ないしお姉ちゃんも進歩ないんだから。」
中学3年生にそう言われてはあの2人も形無しだろう。
だが人の振り見て我が振りなおせ、でもないだろうが母と姉、二人を目の当たりにしてきたこの次女の七海は
だが人の振り見て我が振りなおせ、でもないだろうが母と姉、二人を目の当たりにしてきたこの次女の七海は
大人しめの女の子だ。
見た目はちょうど高校の頃の七瀬を少し幼い感じで髪の毛もセミロング。
あと3年もすれば更に七瀬と瓜二つな美人に成長しそうだ。
本人もママのように髪を伸ばしたい、と思ってるようだ。
見た目はちょうど高校の頃の七瀬を少し幼い感じで髪の毛もセミロング。
あと3年もすれば更に七瀬と瓜二つな美人に成長しそうだ。
本人もママのように髪を伸ばしたい、と思ってるようだ。
隣の部屋からはまだドタンバタンと騒ぎが聞こえてくる。
「2人とも普段は仲が良いんだけどなあ・・・」
だが浪馬は忘れていた。
七夏と同様もしくはそれ以上の手口や手段を変え襲い掛かってくる小悪魔がこの目の前と更に隣の部屋にもい
七夏と同様もしくはそれ以上の手口や手段を変え襲い掛かってくる小悪魔がこの目の前と更に隣の部屋にもい
るということを。
「ほんと、お姉ちゃんもまだ甘いんだから」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、なんでもない。うふふ、パパだーい好き」
そういって七海は無邪気な顔で波馬の胸に飛び込んだ。
すいません。4つも。名前設定とか借りました
279 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/03/13(月) 22:59:27 ID:???
「ただいま~」
浪馬くんの家から帰ってきた私は、家のドアを開けて玄関の中に入った。
「おかえり、ナナちゃん」
居間の方からお母さんの声が聞こえる。
「もう、ナナちゃんはやめてってば」
その言葉にすかさず私は、いつもの言葉を返す。
(まったく、私が恥ずかしがるのわかってていつもナナちゃんて呼ぶんだから…)
心の中でお母さんに抗議しつつ、私はとりあえず靴を脱いで家に上がる。
「あらあら、今日は帰ってくるの早かったわね」
と居間からお母さんがやってくる。
「うん、浪馬くんがちょっと用事があるからって…」
今日は浪馬くんが用事があるからと言って、今日の勉強は早めに切り上げることになった。
彼は私も一緒に行こうかと言っても連れて行ってくれず、何の用事かも教えてくれなかった。
(用事ってなんだったのかしら…)
その言葉にお母さんは何かに気づいたのか、ふふっと意味深な微笑みを浮かべる。
「な、何よ」
「ナナちゃん…彼の用事に心当たりはある?」
「特にないけど…お母さんは何か知ってるの?」
「ふふっ…さぁ、どうでしょう?」
これまた意味深な言葉を残して、お母さんは居間に戻っていってしまった。
(何なのよ、一体…)
取り残された私は、ふと玄関のカレンダーを見た。
そして、私はあることを思い出した。
(明日はホワイトデー、だったわね…)
…そう。
バレンタインデーのお返しに男性から女性に贈り物をする日。
ふと、バレンタインデーに浪馬くんにチョコを渡したときのことを思い出した。
―浪馬くんと付き合うようになって初めて知った事実。
それは―彼は意外と女の子にモテるという事。
そんな彼に普通に手作りチョコを渡しても余り印象に残らないんじゃないかと考えた私は、
何か強く印象に残るような方法がないかと考え…
そしてバレンタインデーの日、口移しでチョコを渡すという作戦に出た。
作戦は大成功で、浪馬くんはとっても喜んでくれた。
(でも…あ、あれは我ながら大胆だったわね…)
口移ししたときの光景を思い出し、思わず顔が上気してしまう。
「何顔を赤くしてるのかしら、ナナちゃん?」
「きゃっ!?…び、びっくりさせないでよ!」
いつの間にかお母さんが私の顔を覗き込んでいた。
「ふふっ、ごめんなさい」
そう言いつつも、お母さんは少しも悪びれた様子はない。
「…浪馬くんの用事が何か、わかった?」
「うん…」
「浪馬くんのプレゼント、楽しみね」
「そうね、楽しみだわ」
「ナナちゃんにエッチな白いものをたくさんプレゼントしてくれたりして」
「もう、お母さん!」
「きゃ~ナナちゃんこわ~い」
思わず怒鳴った私から逃げるようにお母さんは居間に戻っていってしまった。
(…その光景を想像しちゃったじゃない、もう…)
(べ、別にそれも悪くないけど…)
それは―彼は意外と女の子にモテるという事。
そんな彼に普通に手作りチョコを渡しても余り印象に残らないんじゃないかと考えた私は、
何か強く印象に残るような方法がないかと考え…
そしてバレンタインデーの日、口移しでチョコを渡すという作戦に出た。
作戦は大成功で、浪馬くんはとっても喜んでくれた。
(でも…あ、あれは我ながら大胆だったわね…)
口移ししたときの光景を思い出し、思わず顔が上気してしまう。
「何顔を赤くしてるのかしら、ナナちゃん?」
「きゃっ!?…び、びっくりさせないでよ!」
いつの間にかお母さんが私の顔を覗き込んでいた。
「ふふっ、ごめんなさい」
そう言いつつも、お母さんは少しも悪びれた様子はない。
「…浪馬くんの用事が何か、わかった?」
「うん…」
「浪馬くんのプレゼント、楽しみね」
「そうね、楽しみだわ」
「ナナちゃんにエッチな白いものをたくさんプレゼントしてくれたりして」
「もう、お母さん!」
「きゃ~ナナちゃんこわ~い」
思わず怒鳴った私から逃げるようにお母さんは居間に戻っていってしまった。
(…その光景を想像しちゃったじゃない、もう…)
(べ、別にそれも悪くないけど…)
(それにしても…明日、浪馬くんは何をプレゼントしてくれるのかしら?)
(とても…楽しみだわ)
(とても…楽しみだわ)
その夜、私は明日のことが気になってなかなか寝付けなかった…。
248 名前:この花に思いを込めて-1-[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 22:52:38 ID:???
「…今日の勉強はこれでおしまいよ」
「はぁ…やっと終わったか」
長時間の勉強がようやく終わり、俺は安堵のため息をついた。
「ふふっ…浪馬くん、お疲れ様」
「七瀬もお疲れ様」
いつもなら二人でゆっくりするところだが、今日は事情が違う。
「…今日の勉強はこれでおしまいよ」
「はぁ…やっと終わったか」
長時間の勉強がようやく終わり、俺は安堵のため息をついた。
「ふふっ…浪馬くん、お疲れ様」
「七瀬もお疲れ様」
いつもなら二人でゆっくりするところだが、今日は事情が違う。
今日は3月14日…ホワイトデー。
男性から女性にバレンタインデーのお返しをする日。
俺は七瀬にプレゼントを渡すために部屋に予め隠していた荷物を取り出し、
参考書を片付けている七瀬に声をかけた。
「なぁ、七瀬」
「どうしたの、浪馬くん?」
「今日は何の日だか覚えてるか?」
「確か…ホワイトデーよね」
「そうそう…で、俺からバレンタインデーのお返しがあるんだよ」
「えっ、な、何かしら」
七瀬もホワイトデーを楽しみにしていたらしく、期待に満ちた表情をしている。
「これ、七瀬に似合うと思って」
そう言って俺は、七瀬に綺麗にラッピングされた紙袋を手渡した。
「ありがとう…ねぇ、開けてもいいかしら?」
「ああ」
俺が承知すると、七瀬は期待に目を輝かせながら紙袋を開けていく。
そして、その中には…
「これは、カチューシャ?」
純白のフリルがついたカチューシャが入っていた。
「ああ、七瀬に似合うと思って」
「可愛いわね…ありがとう、早速つけてみようかしら」
そう言って七瀬が嬉しそうに笑う。
この笑顔を見れただけで、贈った甲斐があったというものだ。
「はい、これもプレゼント」
カチューシャを付け替えた七瀬に、俺はさっきよりも大きい袋を渡した。
「…?何かしら?」
「そのカチューシャに似合う服を、と思って選んできたんだ」
「嬉しい…」
「早速、着てみてくれないか?」
「うん…着替えてくるから、待っててね」
そう言って七瀬は上機嫌で俺の部屋から出て行った。
男性から女性にバレンタインデーのお返しをする日。
俺は七瀬にプレゼントを渡すために部屋に予め隠していた荷物を取り出し、
参考書を片付けている七瀬に声をかけた。
「なぁ、七瀬」
「どうしたの、浪馬くん?」
「今日は何の日だか覚えてるか?」
「確か…ホワイトデーよね」
「そうそう…で、俺からバレンタインデーのお返しがあるんだよ」
「えっ、な、何かしら」
七瀬もホワイトデーを楽しみにしていたらしく、期待に満ちた表情をしている。
「これ、七瀬に似合うと思って」
そう言って俺は、七瀬に綺麗にラッピングされた紙袋を手渡した。
「ありがとう…ねぇ、開けてもいいかしら?」
「ああ」
俺が承知すると、七瀬は期待に目を輝かせながら紙袋を開けていく。
そして、その中には…
「これは、カチューシャ?」
純白のフリルがついたカチューシャが入っていた。
「ああ、七瀬に似合うと思って」
「可愛いわね…ありがとう、早速つけてみようかしら」
そう言って七瀬が嬉しそうに笑う。
この笑顔を見れただけで、贈った甲斐があったというものだ。
「はい、これもプレゼント」
カチューシャを付け替えた七瀬に、俺はさっきよりも大きい袋を渡した。
「…?何かしら?」
「そのカチューシャに似合う服を、と思って選んできたんだ」
「嬉しい…」
「早速、着てみてくれないか?」
「うん…着替えてくるから、待っててね」
そう言って七瀬は上機嫌で俺の部屋から出て行った。
―バタン!
七瀬の着替えを待っていると、俺の部屋のドアが乱暴に開かれた。
「ちょっと!この服はいったいどういうことなの!?」
その声に驚いて振り向くと…
白いカチューシャにメイド服といった格好の七瀬が立っていた。
俺の見立てどおり良く似合っている…が、彼女は怒っている気がしなくもない。
「よく似合ってるぞ、七瀬」
「ありがとう…って、そうじゃなくて!
この服はどういうことかって聞いているの!」
「どういうことって…プレゼントだよ」
「だから、何でメイド服なのよ?」
「そりゃ…お前に着て欲しいからだ」
「えっ…」
今まで怒っていた七瀬が戸惑う。
「黙って渡したりせずにちゃんと言えば良かったな…ごめん」
「う、うん…私も思わず怒鳴ったりして悪かったわ…」
「ありがとう、七瀬」
俺が謝ったことで、七瀬は機嫌を直してくれたようだった。
「ちょっと!この服はいったいどういうことなの!?」
その声に驚いて振り向くと…
白いカチューシャにメイド服といった格好の七瀬が立っていた。
俺の見立てどおり良く似合っている…が、彼女は怒っている気がしなくもない。
「よく似合ってるぞ、七瀬」
「ありがとう…って、そうじゃなくて!
この服はどういうことかって聞いているの!」
「どういうことって…プレゼントだよ」
「だから、何でメイド服なのよ?」
「そりゃ…お前に着て欲しいからだ」
「えっ…」
今まで怒っていた七瀬が戸惑う。
「黙って渡したりせずにちゃんと言えば良かったな…ごめん」
「う、うん…私も思わず怒鳴ったりして悪かったわ…」
「ありがとう、七瀬」
俺が謝ったことで、七瀬は機嫌を直してくれたようだった。
249 名前: この花に思いを込めて-2-[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 22:54:21 ID:???
「ところで、その…」
「何だ?」
「浪馬くんのこと『ご主人様』って呼んだ方がいいのかしら?」
「えっ!?」
七瀬の思わぬ提案に、俺は驚きを隠せなかった。
「だって…浪馬くんの持ってた本に、そんな話が…」
内容を思い出したのか、七瀬が頬を染める。
…彼女はこんな時でも優等生ぶりを発揮するらしい。
「じゃあ、お願いしようかな」
「くすっ…はい、ご主人様」
七瀬が微笑んで優雅にお辞儀をする。
…な、なんだか新鮮でどきどきしてくるぜ。
「七瀬」
「何か御用でしょうか、ご主人様?」
「…目を閉じて」
「はい、わかりました」
そう言って七瀬は瞳を閉じた。
ドキドキしているのか、七瀬の頬が紅潮している。
俺は白いキャンディが入った瓶から1個取り出し、口に含んだ。
「七瀬」
「…はい」
「俺から、バレンタインデーのお返し」
「えっ…!?あっ…んっ…」
七瀬の唇に口付けし、キャンディを舌で七瀬の口の中に送り込む。
「ふっ…んむぅ…」
負けじと、俺の舌に七瀬が舌を絡ませて吸ってくる。
「ふふっ…いけないご主人様」
そして、俺は七瀬をもつれ合うようにしてベッドに押し倒した―
「ところで、その…」
「何だ?」
「浪馬くんのこと『ご主人様』って呼んだ方がいいのかしら?」
「えっ!?」
七瀬の思わぬ提案に、俺は驚きを隠せなかった。
「だって…浪馬くんの持ってた本に、そんな話が…」
内容を思い出したのか、七瀬が頬を染める。
…彼女はこんな時でも優等生ぶりを発揮するらしい。
「じゃあ、お願いしようかな」
「くすっ…はい、ご主人様」
七瀬が微笑んで優雅にお辞儀をする。
…な、なんだか新鮮でどきどきしてくるぜ。
「七瀬」
「何か御用でしょうか、ご主人様?」
「…目を閉じて」
「はい、わかりました」
そう言って七瀬は瞳を閉じた。
ドキドキしているのか、七瀬の頬が紅潮している。
俺は白いキャンディが入った瓶から1個取り出し、口に含んだ。
「七瀬」
「…はい」
「俺から、バレンタインデーのお返し」
「えっ…!?あっ…んっ…」
七瀬の唇に口付けし、キャンディを舌で七瀬の口の中に送り込む。
「ふっ…んむぅ…」
負けじと、俺の舌に七瀬が舌を絡ませて吸ってくる。
「ふふっ…いけないご主人様」
そして、俺は七瀬をもつれ合うようにしてベッドに押し倒した―
「はぁ…あんなに激しくするなんて…」
メイド服姿の七瀬と何度も愛し合った後。
俺達はベッドの中で余韻に浸っていた。
「ははは…七瀬が可愛かったから、つい」
俺の言葉に七瀬はぽっと頬を染め、
「…もう」
とはにかんだような表情になった。
「ねぇ」
「…ん?」
「その…私のメイド姿、どうだった?」
俺の感想が気になったのか、七瀬がおずおずと感想を尋ねてくる。
「とてもメイド服が似合ってて可愛かったよ、それに…」
「それに?」
「七瀬に『ご主人様』って言われて新鮮な感じだった…七瀬はどうだった?」
「…私も、いつもと違う感じがしてドキドキしちゃった」
俺達は顔を見合わせて微笑みを交わす。
「たまには、こういうのも悪くないわね…」
どうやら、七瀬もメイドのコスプレが気に入ってくれたようだった。
メイド服姿の七瀬と何度も愛し合った後。
俺達はベッドの中で余韻に浸っていた。
「ははは…七瀬が可愛かったから、つい」
俺の言葉に七瀬はぽっと頬を染め、
「…もう」
とはにかんだような表情になった。
「ねぇ」
「…ん?」
「その…私のメイド姿、どうだった?」
俺の感想が気になったのか、七瀬がおずおずと感想を尋ねてくる。
「とてもメイド服が似合ってて可愛かったよ、それに…」
「それに?」
「七瀬に『ご主人様』って言われて新鮮な感じだった…七瀬はどうだった?」
「…私も、いつもと違う感じがしてドキドキしちゃった」
俺達は顔を見合わせて微笑みを交わす。
「たまには、こういうのも悪くないわね…」
どうやら、七瀬もメイドのコスプレが気に入ってくれたようだった。
250 名前: この花に思いを込めて-3-[sage] 投稿日:2006/03/12(日) 22:55:39 ID:???
…おっと、エッチに夢中で本来の目的を忘れるところだったぜ。
「…七瀬」
「何?」
「ホワイトデーのプレゼントは実はもう一つあるんだ」
「え…?」
「七瀬、これ…」
そういって俺は七瀬に一輪の花を手渡した。
「この花は…アイリス?」
「ああ」
「綺麗ね…」
七瀬はじっとアイリスを見つめていたが、
はっと何かに気がついたのかぽっと頬を染めた。
「…ねぇ、浪馬くん」
「?」
「アイリスの花言葉、言って」
「え!?」
七瀬のことだから花言葉に気づくとは思ってたけど…
さ、流石にそれは照れくさいぞ。
「私はあなたの口からそれを聞きたいの」
七瀬は上目遣いで瞳を期待に輝かせながらおねだりしてくる。
…はっきり言って、俺はこの表情に弱い。
「…『あなたを大切にします』」
「よくできました」
そう言って七瀬は、満面の笑みを浮かべて俺をぎゅっと強く抱きしめた。
「七瀬…これからもお前に迷惑をかけるだろうけど」
「…うん」
「俺、お前のこと大切にするから…これからも一緒にいてくれないか?」
「当然じゃない…だって、私にはあなたがいない生活なんて考えられないもの」
「俺もだ、七瀬…」
「嬉しい…」
不意に、七瀬の瞳から涙が零れ落ちる。
「…ごめんなさい、余りにも嬉しかったものだからつい…ぐすっ」
七瀬も自身の流した涙に気づき、少し罰が悪そうな表情をした。
「いいさ、それだけ嬉しかったんだろ?」
俺の言葉に七瀬はこくりと頷く。
「だったら…好きなだけ泣いていい」
「うん…うん…」
溢れ出す涙を堪えきれなくなった七瀬は、暫く俺の胸の上で泣いていた―
…おっと、エッチに夢中で本来の目的を忘れるところだったぜ。
「…七瀬」
「何?」
「ホワイトデーのプレゼントは実はもう一つあるんだ」
「え…?」
「七瀬、これ…」
そういって俺は七瀬に一輪の花を手渡した。
「この花は…アイリス?」
「ああ」
「綺麗ね…」
七瀬はじっとアイリスを見つめていたが、
はっと何かに気がついたのかぽっと頬を染めた。
「…ねぇ、浪馬くん」
「?」
「アイリスの花言葉、言って」
「え!?」
七瀬のことだから花言葉に気づくとは思ってたけど…
さ、流石にそれは照れくさいぞ。
「私はあなたの口からそれを聞きたいの」
七瀬は上目遣いで瞳を期待に輝かせながらおねだりしてくる。
…はっきり言って、俺はこの表情に弱い。
「…『あなたを大切にします』」
「よくできました」
そう言って七瀬は、満面の笑みを浮かべて俺をぎゅっと強く抱きしめた。
「七瀬…これからもお前に迷惑をかけるだろうけど」
「…うん」
「俺、お前のこと大切にするから…これからも一緒にいてくれないか?」
「当然じゃない…だって、私にはあなたがいない生活なんて考えられないもの」
「俺もだ、七瀬…」
「嬉しい…」
不意に、七瀬の瞳から涙が零れ落ちる。
「…ごめんなさい、余りにも嬉しかったものだからつい…ぐすっ」
七瀬も自身の流した涙に気づき、少し罰が悪そうな表情をした。
「いいさ、それだけ嬉しかったんだろ?」
俺の言葉に七瀬はこくりと頷く。
「だったら…好きなだけ泣いていい」
「うん…うん…」
溢れ出す涙を堪えきれなくなった七瀬は、暫く俺の胸の上で泣いていた―
「…落ち着いたか?」
「ええ」
ようやく泣き止んだ七瀬が少し恥ずかしそうにしながら頷いた。
そして、七瀬は自身の手に持っているアイリスの花を見つめる。
「ありがとう…この花は、私にとって最高のプレゼントだわ…
だって、あなたが私への想いを込めて贈ってくれたんだもの」
「七瀬…」
「ねぇ、私のこと大切にするって言ったわよね?」
「…ああ」
「じゃあ、約束のキス…して」
俺は七瀬にゆっくり顔を近づけ、熱い誓いの口付けを交わした―
「ええ」
ようやく泣き止んだ七瀬が少し恥ずかしそうにしながら頷いた。
そして、七瀬は自身の手に持っているアイリスの花を見つめる。
「ありがとう…この花は、私にとって最高のプレゼントだわ…
だって、あなたが私への想いを込めて贈ってくれたんだもの」
「七瀬…」
「ねぇ、私のこと大切にするって言ったわよね?」
「…ああ」
「じゃあ、約束のキス…して」
俺は七瀬にゆっくり顔を近づけ、熱い誓いの口付けを交わした―