「早朝の図書館にて 後編」

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*早朝の図書館にて 後編 **中司 春菜 かずらが図書委員の仕事をするべく図書館に来たのは8時少し前。別に遅刻したのではなく、元々開館7時半、貸出返却は8時からと決まっている訳だから普通に来たと言える。鞄を教室に置いてきたので、かずらは手ぶらでカウンターに向かう。 「ごきげんよう、は……」  先に来ていた後輩の委員を見つけ、声をかけようとするかずら。しかし、途中でその声はとぎれる。 「春菜さんたら……」  カウンター内で寝てしまっている春菜を見て微苦笑をするかずら。春菜が寝不足な原因を半分知ってるかずらは『普通はない、連続での早朝担当だもの。仕方ないですよね』と心の中で呟くと、空いてるもう一つの貸出コーナーに座る。貸出用のパソコンは既に起動してあった。ログイン名は春菜の名前になっており、貸出準備をすませては有るようだった。 「あの、返却をしたいんですけど」 「あ、はい」  かずらが席に座って少しすると、貸出や返却を希望する生徒がぽつりぽつりとやってきた。それに対応しつつもかずらは、春菜が椅子から落ちたりしないかしらと少し心配そうに、ちらちら様子を見ていた。もっとも様子見している方の時間が長いのだから、はっきり言って暇だったのだが。 「あら、柚妃さん。ごきげんよう」 「あ、ごきげんよう、かずらさま」  無言でカウンターに入ってきた柚妃に気付き、声をかけるかずら。柚妃はびくっと反応すると、かずらに挨拶を返す。 「どうしたんです?柚妃さんは今日委員会の仕事はなかったはずでは?」 「えーっと」  柚妃の目が泳ぐ。それを見てかずらは、柚妃が来た理由に思い至り軽いため息を吐く。そして柚妃は自分の小物入れを見つけ出す。今日の忘れ物は小物入れだったらしい。 「ところで春菜さんは?」  柚妃は居るはずのもう一人の委員に思い当たり、かずらに尋ねる。かずらはくすくす笑いながら春菜を指さす。 「あー。気持ちよさそうに」 「そうね」  柚妃の率直な感想に、かずらは微笑みながら答える。 「でも、もう15分だし起こた方が」 「ええ……春菜さん、起きて」  柚妃が時計を見て言うと、かずらは春菜を起こそうとする。 「……かずらしぇんぱい?……かずらさま!」 「春菜さん、ごきげんよう」 「ごきげんよう……あぁ、申し訳有りません!」  仕事もせずにすっかり寝ていたことに気付き、春菜は慌てて謝る。 「気にしなくて良いですよ。殆ど誰も来ませんでしたし」 「でも」 「そうですね……じゃあ、放課後『ライブラリィ』の編集を手伝って貰えます?」  かずらは何かさせた方が春菜が気にしなくなるだろうと考え、委員会誌の作成の手伝いを頼む。 「はい、わかりました。かずらさま」  かずらの予想通り、春菜は少しほっとした顔をしてる。しかしその直後、 「可愛かったわよ、春菜さんの寝顔」  柚妃の台詞に春菜の顔は一瞬にしてトマトと化す。 「そうね、起こすのが勿体なかったですね」  かずらもいたずらっぽく笑いながら言う。 「柚妃さん、かずらさまぁ」  情けなさそうな口調で二人の名前を呼ぶ春菜。かずらは、 「さて、もうそろそろ朝拝ですし、片づけましょうか」  そして、3人で片づけを済ますと、それぞれの教室へと連れだって図書室を出て行った。 **あとがき 今回の募集で葛城かずらさまと東雲柚妃さんのPLさんからリアクションがありました。有難うございます。 後、前編で春菜が夜遅くまで読んでいた本ですが、伊都工平著「第61魔法分隊」(電撃文庫)です。

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