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*It's a beautiful day
**月城 玲
繰り返す過ちを犯した罪さえも、
洗い流せる術をくれた人。
「お姉さま」
聞き慣れた心地良い声に、ゆっくりと振り返る。どきどきとした新鮮な喜びはないけれど、淡く優しい色の絵の具に心が染まっていく。
「ごきげんよう、かずら」
窓から差し込む穏やかな光をまとって微笑む妹の姿を、ゆっくりと視界に捉えた。
光に透けたかずらの瞳と、私の漆黒の瞳とが、しっかりと見つめあう。
ふ。と、二人で同時に笑い合った。
「お姉様の髪、綺麗ですね」
「唐突だな」
そういえば以前かずらにそう言われた事があった。
夏の、髪を切ろうかと言った後に。
なんにせよ、綺麗だと言われたものは残しておこうと思ったので、私の髪は長いままだ。
窓ガラスから差し込む光が綺麗だと、思う。
急に思いついて、かずらに歩み寄り、手をつないだ。冷たい窓ガラスに二人でよりかかる。
ガラス一枚隔てた世界から伝わる穏やかな熱と光が、背中へと伝わっていく。
「何ですか、お姉さま?」
びっくりしたように、窓ガラスに背を預けたままかずらが言う。
「思いついたからやってみただけだ」
「そう、ですか?」
楽しそうにくすくすとかずらは笑う。
きらきらと、光は平等に私たちの上に降り注いだ。
私は目を閉じる。何もない。あるのは穏やかな熱と、かずらのあたたかい手だけだ。
このままで居られるのならば、たぶん私たちに言葉など要らない。
この手がしっかりと繋がれていれば、何処へでも歩いてゆける。
光にあふれたここを、心地良く思った。