「カルメン山百合に還る」1

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*カルメン山百合に還る 1 **中司 春菜  ある日の放課後、視聴覚室。椿組こと赤チームの実行委員と団長、副団長が集まっている。 「この映像を見て欲しいの」  2年の実行委委員がビデオを流す。それは数年前のリリアンの体育祭の風景。3人の生徒が赤いドレスに身を包み、ステップを踏み、赤チームの応援をリードしていく。 「これって、カルメン?」 「ええ、今年の応援合戦。これでどうかしら?」  ビデオを流した生徒が聞く。 「良いわね、印象的だわ」 「これなら盛り上がりそうね」  他の生徒の反応も上々で、 「じゃあ、これで良いかしら?」 「ええ、良いと思うわ。反対の人はいる?」  反対はなく、今年の赤チームの応援合戦のテーマは「カルメン」に決まる。 「ところで誰がカルメン役をするんですか?」  春菜は、小首をかしげながら尋ねる。 「それなんですけど、確か薔薇ファミリーの方がお一人我が赤チームに」 「そうね、それにしても緑チームは良いわよね。3人もいらっしゃるもの」 「白・黄・ピンクにはいらっしゃらないのですから、贅沢は言わない方が良いわね」  お姉様方の会話で、春菜にも誰が選ばれたのかわかり、 「お姉様方、芽衣子さんを出したいんですか?」 「ええ、ロサ.ギガンティア・アン・ブゥトンが代表で舞えば、我がチームの士気は必ず上がりますわ」 「そうね、確実ね」 「でも芽衣子さんにはどう言うのです?」 「大丈夫よ、春菜さんが説得して下さるでしょう?」 「えぇ!」  いきなり説得なんて大役を預けられ、あわてる春菜。 「春菜さんも踊ると言えば、ロサ.ギガンティア・アン・ブゥトンも無碍にはしないでしょう」 「あ、あたしも踊るんですか?」  続けざまの衝撃に春菜の声は少々裏返ってる。 「ええ、春菜さんも踊ったらいいと思って」 「春菜ちゃん、可愛いし。見栄えがよいわよ、きっと」 「カルメンの衣装が似合いそうね」 「そんなぁ」  もしかしたら、あたしの知らないところで大筋は出来てたのかも。そう思うと心の中で溜息をつく。 「でも、芽衣子さんを説得できる自信はありませんよ、その時は」 「それでも春菜さんは踊って下さりますよね。皆さん期待してますもの」  最後の退却路まで断たれてしまった春菜は、こう答えるしかなかった。 「分かりました。お姉様方」

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