「カルメン山百合に還る」3

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*カルメン山百合に還る 3 **中司 春菜 「はい、春菜さん。ちょっと遅いわよ。芽衣子さんは早くなりすぎ」  放課後の空き教室。応援合戦の練習中の赤チーム。どうしても早くなりがちなタイミングの取り方に四苦八苦してるメンバー達。春菜は早くしないようにと意識するあまり却って遅れがちになり、芽衣子は逆に気にしてるのかどうなのか早くなりがちで……。 「それじゃ、もう一度最初からね」  といったところで、 「おーい、衣装出来たよぉ。衣装あわせしよう」 「え、出来たの?」  その声で練習は中断し、みんな声をかけた生徒の前に集まる。 「取り敢えず、靴のサイズが合ってるか履いて貰うね」  と言い衣装担当の女の子達が出してきたのは、 「あれ、赤じゃないじゃない?」  赤チームでカルメンと言うことで上から下まで赤で揃える計画だったのだが、 「赤く塗り直せばよいから、取り敢えずサイズだけ確認ね」  何足かは赤以外の色のパンプスが混じっている。 「取り敢えず、春菜ちゃんに芽衣子ちゃんおいで」 「あ、はい」 「芽衣子ちゃんはシンプルな方がよいかなって」  芽衣子に渡されたのは、緑色のオーソドックスなデザインのパンプス。ややヒールが高めになってる。 「どうせならこのまま履きたいな」  緑の好きな芽衣子はそう言う。 「駄目よ、赤く塗り直すんだから。それで春菜さんは、この赤いのが似合うと思って」  春菜に渡されたのは踵にさり気なくリボンが付いてるデザインのパンプス。ヒールはさほど高くない。 「取り敢えず、ふたりともサイズ合うか履いて軽く動いてみて」 「はーい。……ヒールが高くて動きにくい」 「あ、はい……悪くないです。動きやすいですし」 「あ、春菜さん。ずるい。交換しましょう」 「ふたりのサイズが違うから無理よぉ。それに芽衣子ちゃんには、春菜ちゃんの靴は似合うかしら?」  ふたりに靴を渡した衣装係の子が、のんびりした口調で話しかける。 「だから、そこにある服を黙ってきてくれると嬉しいわ」 「あ、はい。でもどれを着れば?」 「あ、全部サイズは一緒だから適当に着ちゃって」  そう言われたように服を着るふたり。 「可愛いわよ、ふたりとも」 「ええ、可愛いわよ。ところで着心地はどう?」 「少しウエスト回りが緩いかな?」 「ああ、春菜ちゃん。少し大きめに作ってるから。少し詰めちゃおうか?」  とひとりが言うと。 「こっちの方が簡単じゃない?」  細長い布を取り出すと、春菜のウエストに巻きちょうちょ結びにする。 「あ、こっちの方が可愛い」 「じゃあ、これで決まりね」  こんな感じで準備は進み……

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