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*セント・メアリの鐘の音は 1話 最初のお客さん
**中司 春菜
お店の戸を開けて最初に入ってきたのは、
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「お、お嬢様!?」
いきなりそんなことを言われ目を白黒している央だった。
「どうぞ、こちらの席へ。お嬢様」
「あ、はい」
呆然としつつも、席に着く央。
「メニューをどうぞ、央さま」
「あ、春菜さん。これはいったい?」
春菜につい尋ねてしまう央。
「えっと、古き良き大英帝国風が、何処か間違って展開されたみたいで……」
「そ、そうなの?」
「ええ、そうなんです。ところで何になさいますか?」
春菜に促され、メニューを見る央。
「じゃあ、シュークリームとカフェラテをお願いしてもいいかしら?」
「はい、シュークリームはカスタードと生クリームがありますよ」
「ずいぶん拘ってるのね」
「その分、数が少ないんですよ。メインは紅茶とサンドイッチとかですので」
「じゃあ、カスタードでお願いね」
「はい、判りました」
暫くして央のところに注文の品がやってきた。
「お待たせしました、お嬢様」
「えっと、何でお嬢様のなのかな?ちょっと落ち着かないんだけど」
「ああ、それはですね」
春菜は解説を始める。
「ちょっと喫茶店とかを調べたときに、とあるサイトでメイド服のウェイトレスさんが『お帰りなさいませ旦那様』と挨拶するお店があると書いてあったので」
「それを真似たわけ?」
「ええ、でもここに来るのは、リリアンの生徒が中心ですから『お嬢様』と呼ぶことにしました」
「そうなの。それにしても美味しいわね」
「ありがとうございます」
そんな会話をしているうちに、央の皿は空になり、
「それではごきげんよう。春菜さんにひめ乃さん。それに志保子さん。テニス部のレッスンにはおくれずに来てくださいね」
「はい、承りましたお嬢様。それでは、いってらっしゃいませ」
「だからお嬢様は止めてよ」
最後までお嬢様扱いされた央でした。